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ヤシノキ町物語 第一話
作者: アルセ  (総ページ数: 109ページ)
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 第一話『HELLO 南国ニュータウン』





?.フェリー船・2階のデッキ(午前)




手摺につかまり、海を眺めるポニーテールの少女。

少女M「(深呼吸して)来たんだ・・・とうとう来ちゃったんだ、アタシ。同じ日本なのに・・・こんなに何もかも違うトコロがあるなんて(英単語で)信じられない!まるで外国に来たみたい」

女性Jの声「日本国内ですよ。お客様」

少女M「(気付き)ジュンコ叔母さん!」

ジュンコ「船員さんに聞いたら後1時間ぐらいで港に到着するそうよ」

少女M「本当?!早いなぁー、昨日乗ったと思ったらもう降りなきゃいけないなんて・・・」

ジュンコ「あらぁ?小さい子みたいにマダマダってうるさく言っていたのはどこの誰?おかげで、昨日はグッスリ眠れなかったわ」
   と、欠伸をする。

少女M「(照れ笑い)エヘヘ・・・だって、待ち遠しかったんだもん!・・・(急に)そうだよね、やっぱりココは遠いんだよね・・・」
   と、ポケットから年季の入った野球ボールを取り出し・・・寂しげに俯いたまま・・・しばし、見つめる。

ジュンコ「・・・」
   
  フェリー船の汽笛が鳴る。


 ビーズのシュシュでまとめたポニーテールがトレードマークの卯野木モモ(中学1年生)は、医者になるため親元を離れ、『ヤシノキ町』という町で開業医をしている叔母の灰花ジュンコと一緒に暮らすことになった。彼女の手の中にあるこのボールは、同級生からプレゼントされた物である・・・・・・。


  ブォーッ・・・フェリー船の汽笛が鳴っている。
   
  俯いたままのモモ。

ジュンコ「・・・モ・・・モモっ!」

モモ「(ハッ)!」

ジュンコ「灯台よ、灯台が見えてきたわ!」
   
  ジュンコの視線の先を見るモモ・・・陸地が見えてくる。

モモ「(表情が明るくなり)わぁー・・・」
  と、感嘆の声をあげる。
   
  汽笛を鳴らしながら進むフェリー船・・・海と山に囲まれた大都市がモモ達の目の前に現れる。

モモ「(感激して)素敵・・・これが・・・これがヤシノキ町?!これからずっとココに住むんでしょう、叔母さん?!」
   
  頷くジュンコ。

モモ「(テンションMax)ヤッタァ〜!」

ジュンコ「(ホッ)良かった・・・」

 本当のことを言うと、ジュンコは今回のことを少し不安に思っていた。姪自らが願い出たこととはいえ、大好きな家族と長期間離れて他人様の家で暮らすことは、モモにとって人生初めてのことだから何時ホームシックにかかってもおかしくはない。さっきの寂しそうな彼女の様子を見て「案の定か」と、心配していたのだが、故郷とは異なる町の景色に大はしゃぎしている姿を見て一安心している・・・・・・。





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