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第1話「大脱出、差し伸べられた温かい手」
自分は一体何のための存在なんだろう、何のために生まれて生きているのか、それすらも虚しく、苦痛に思い、生きることすら絶望を感じていた。そう、この世界にくるまでは・・・・。
「ううう・・・」
暗く冷たい牢屋の中。その中で一人の少年が目を覚ました。
「ここは・・・」
少年、狩須門人は辺りを見て、暗く狭い牢屋の中にいると理解した。でも、少年はどこかホッとしたような気持ちになった。少年の瞳は暗く、何かに疲れているようだった。
「そうだよな、俺の人生何て、ここなら、まわりにいじめられずにひっそりと死んでいける。それでいいんだ。もう、俺は誰にも・・・」
少年の脳裏に現実にあった嫌な日々が浮かんだ。その時、
ドカーン!
「?!」
突如、牢屋の扉が破壊された。少年は驚いて、何が起きたのか理解できないように呆然としていた。
「ふー、結構頑丈だったなー、あ、見つけた!」
少年の目の前に現れたのは、一回りもの巨大な剣を担いだ少女だった。赤い毒気のない綺麗なポニーテールの髪、白く純白の長袖の服にショートパンツ、長袖は羽織っていて紫色のビキニが露出していた。ショートパンツの方もビキニパンツの部分が見えている。紫のニーソックスを履いていて、瞳はガラスのように美しく輝いている。
「大丈夫だった?君を探していたんだよ!さあ、一緒に行こう!」
その少女は門人の前でしゃがむと、純真さとピュアさが一杯の不安な気持ちを拭い去ってくれるような天使の微笑みで白く綺麗な手を差し伸べた。
「あ、その・・・」
門人は戸惑っていたが、その少女は話を続けた。
「私達、君のことが必要なの、さあ、つかまって」
少女に導かれるように門人はその手を掴んだ。その手はか細いながらも、相手を落ち着かせるように温かみに満ちていた。そして牢屋を出る二人。
「ガーネット、うまくいったようですね」
そこへ参謀らしい青年と、三色の豚の怪物であるオーク、三色の餅のような丸っこいモンスター達が駆けつけた。
「お目当ての子は見つかったブヒン?」
アカオークが言うとガーネットは見つけたと相槌をした。
「うん、この子がそうよ」
「あら、この子がそう・・・」
アカオークは門人のことをマジマジと見た。
「あの、何・・・」
「ふうん、あんた、好みじゃないけど中々いい男じゃないブヒン」
「それってどう言う事?」
「大丈夫、褒め言葉よブヒン」
アカオークはニマニマ笑って手を振った。
「ガーネットお姉ちゃん、その人〜?」
「可愛い・・・」
門人は初めて見る丸っこい生き物、モッチにうっとりしてしまいそうになった。
「この子達はモッチって言うモンスターよ。私はガーネット、よろしくね。君の名前は?」
「俺は・・・・、狩須門人・・・」
「門人、わああ、いい名前じゃん!」
少年の名前を聞いてガーネットは目をキラキラさせて門人の手を握った。門人はガーネットの反応に戸惑っていた。それもそのはず、自分にこんな風に明るく接してくれる人はいなかったから。
「参謀のシオンです。こちらはオークとモッチ達。挨拶はここまでにして、今はここを脱出しましょう」
「そうそう、さあ、着いて来て」
「あ、ちょっと、その・・・」
ガーネットに引っ張られ、少年は無理矢理ながらも連れて行かれるのだった・・・。
続く・・・。