完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*3*
「ほ……本当に来ちゃったよ……」
アイザックは唖然とその文字を見上げた。
『21世紀の科学展』
ダンが本命としていた展示コーナーだ。軽い足取りで入って行くダンの後ろから、アイザックはビクビクとしながらアーチをくぐり抜けた。そんなアイザックを、ノゾミがコツンと小突く。
「挙動不審にしていると、逆に怪しまれるわ。ダンを見習って、素直に楽しんでなさいよ」
ノゾミは帽子の下で微笑を浮かべていた。いつも通りな彼女を見て、自分も平静を装う。
「アイザック、あなた普段はそんなに背筋を伸ばしてないわ。もう3°くらい前かがみになって……」
「分かんないよ!ていうか、なんでそこまで覚えてるの!?」
振り返りながら声を上げるアイザック。ノゾミはそんな彼の頭に、ポンと自分の手をのせた。
「それでこそアイザックよ」
からかうようなノゾミの笑み。アイザックはもやもやとしながら「分かった……」と小さく呟いた。
列に並んで進んで行くと、お目当の展示物が見えてきた。
「あったあった!クローン技術!」
「この間観たSF映画に出てきたんだよね!」
ダンとアイザックは、その説明に釘付けになる。CG動画で分かりやすく説明してあり、2人の探究心を満たしていった。
「ノゾミもこっちにおいでよ!」
「……私はいいよ」
ノゾミは後ろの方で、2人の様子を見守っていた。帽子を殊に深くかぶっている。今更バレたところで、関係ない気もするのだが……
***
十分に万博を堪能し、気がついた頃にはティータイムを過ぎていた。小腹が空いた3人は、適当な店を探した。ちょうど、クレープ屋がある。店頭のAIから3人はクレープを受け取った。
「クレープを食べたら、そろそろ帰ろうか?夕飯までには帰らないと」
アイザックが帰りの時間の話をし始めていると、不意に誰かに服の裾を引かれる。誰だろうかと、アイザックが振り返ると……
「な……!?」
まるで、亡霊にでもあっているかのようだった。短い黒髪。黒く大きな瞳。見間違えるはずはない。最後に会った時よりも、時間が逆行したように幼くなっているが……
「シンリー……?」
彼女に瓜二つな少女が、不安そうにアイザックを見上げていた。