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第二の人々
作者: ももた  (総ページ数: 13ページ)
関連タグ: クローン 
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10~

*4*

第2章:疑念

無事に寮にたどり着いた3人は、アイザック達の部屋で、難しい顔をしながらベッドに腰を下ろした。
「どうなってんだよ……」
ダンは頭を抱える。未だに状況が掴みきれていない。
「もう一度、あの子のことを思い出してみましょう……」
ノゾミの提案に、3人はあの衝撃的な昼下がりのことを思い出した。

***

シンリーにそっくりな少女は、アイザックの顔を見て、残念そうに、そして恥ずかしそうにうつむいた。そして、そっとアイザックのシャツを放す。
「どうしたの?お友達とはぐれたの?」
ノゾミが優しく問いかけた。少女はコクリと頷く。
「まちがえました……ごめんなさい……」
少女は謝罪を述べ、ワンピースの裾をクシャッと握る。3人はその様子を見て、さらに仰天する。その声も、その癖も、シンリーと全く同じなのだ。
「……君、名前は?」
今度はアイザックが問いかけた。嫌な予感がする。間違いであっても、無くても、きっと自分たちはショックを受けるだろう。少女が次の言葉を紡ぐまでの時間が、異様に長く感じる。
「シンリー……ワン・シンリーです……」

***

「あのシンリーは、アイザックを友達と間違えたのね。送っていくという口実で、うまいこと住所も聞き出せたのは良しとして……」
「なんでエリア1にシンリーがいるのか……問題はそこだね」
アイザックは考え込む。
「他人の空似じゃねえか?」
「でも、あの子はシンリーと名乗っている。見た目も声も癖も同じで、他人とは考えられないわ」
ダンの考察をノゾミが切り捨てる。ただの空似だと思えたら、こんなに悩む必要もなかっただろうに……
「考えたくもないけど……可能性は一つだね」
アイザックが言う。ダンは今ひとつ分かっていない様子だ。
「今日、万博で見てきたでしょう?……クローンよ」
ダンの顔がサッと青ざめた。当たり前だ。人間にあんな技術を適用するなんて、映画の中だけだと思っていたからだ。
「シンリーは6歳だと言っていたわ……前のシンリーが死んだのは6年前……」
「なっ……死んだら、クローンが補充されるって言うのか!?でも、何のために……?」
3人はさらに深く考える。しかし、答えが見つからず、諦めた。
「……確かめるしかなさそうね」
ダンのベッドから立ち上がり、ノゾミは呟いた。
「何を?」
ドアの前で立ち止まり、ノゾミは振り返る。そして、アイザックの方を向いた。
「カルテを見るの。シンリーの分が保管されていたら、そこから何かわかるかもしれないわ」
なるほど、と2人はうなずく。しかし、アイザックの脳裏に、また嫌な予感が沸き起こった。
「まさか……」
「忍び込むわよ、今度は病院に」

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