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第二の人々
作者: ももた  (総ページ数: 13ページ)
関連タグ: クローン 
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10~

*5*

二日後、3人は食堂で夕食をとる。ノゾミは先に済ませたい用があったらしく、2人にいつもより遅い時間を指定した。そのため食堂に入る頃には混み合う時間となってしまい、コックの前には列ができている。
「ダン、注文を決めたら、先に席をとっておいてちょうだい」
「了解!アラビアータで!」
ダンは即答すると奥の方は消えて行った。しばらくして順番が周り、ノゾミは3人分の注文を告げる。
「ダンの分は、私が運んでおくわ。アイザックは、水を汲んできてくれる?」
「分かった」
言われた通りアイザックは給水機に向かう。3つのコップにそれぞれ水を注ぎ、盆にのせて帰ってくると、すでにダンとノゾミは席についていた。
「お待たせ。それじゃ、食べようか」
アイザックとダンが食事に手をつけ始めると、ノゾミはレポート用紙を取り出した。
「病院の一階の地図よ。ここが入り口ロビー、ここが夜間診察室、多目的トイレ、カルテ保管室、この四箇所を覚えて?」
病院は口の字型をしており、そのうち一つの突き当たりに入り口がある。入り口からまっすぐ廊下を進んでいくと、右手に診察室、左手に多目的トイレ、右手にカルテ保管室の順に並んでいる。
「夜間、病院に配置してあるAIは、ドクター1体、ナース2体。ナースの片方は巡回用で、28分周期で廊下を回ってくるわ。ドクターと残りのナースは診察室にいる」
ノゾミはペンでAIの位置、巡回ナースの動きを説明する。
「1人は診察してもらってドクターとナースの気を引いてちょうだい。その間に、残りの2人でカルテを探すの。1回目の巡回は、多目的トイレの電気を点けたままにしてやり過ごしましょう。そして、2回目の巡回がくる前に診察室前のベンチに戻る」
赤いインクで、移動手順を示す。アイザックとダンは一通り理解すると、うなずいた。
「探索時間は最長で56分。30分以内に帰ってこれたら上出来ね」
「でも、このドクター達の気をひくのは誰がやるんだ?」
ダンが問いかける。ノゾミはその質問にニコリと笑顔を返した。
「それは……ダン、貴方にお願いするわ」
ダンの心に雲がかかる。ノゾミがいい笑顔を浮かべているときは、大抵とんでも無いことを考えているからだ……

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