完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*28*
episode4「バトル山」パート5
崩れ落ちたエンテイをヌーンとエーフィ、ブラッキー、カポエラー、ムウマ、ハリテヤマ、メガヤンマが動向を見守っていた。
「グ、グルルル・・・!」
エンテイはダメージを負いながらも起き上がって咆哮を上げて攻撃に出ようとした。
「待ちたまえ!」
ヌーンのポケモン達が身構えて攻撃に出ようとすると、セネティが止めに入った。
「セネティさん?」
「これをエンテイの前に立って吹いてくれ」
セネティの掌に蔓のまかれた緑色の笛が乗せられていた。
「セレビィのふえだ、この音色を聴いたものは荒ぶる心や負の気を浄化させる効果がある。頼む、あのエンテイは悪いポケモンには思えないのだ。恐らく奴等に悪の心を植え付けられて暴走状態になっているのだ。君のまっすぐな心で、エンテイを掬ってくれ・・・」
セネティの言葉を受けてヌーンはふえを手に取った。エンテイに歩み寄って目の前に立ち、穏やかな笑みを浮かべてエンテイを安心させる。そしてそっと笛に口を当ててその音色を拭き始めた。
「ぐう!まずい!」
ダキムが慌ててボールを投げて、メタングを繰り出して妨害しようとした。
「プラ!」
プラスルが走り出してでんじはを飛ばし、メタングを痺れさせた。ヌーンは落ち着いた心で笛を吹いていく。草を薙ぐ風のような穏やかで心が安らかになる、くさぶえのような音色、草木の香りのする、眩く光る風が流れて、エンテイを包んでいく。
(思い出すんだ、正しい心を、君は必ず自由になれる。君を僕が救ってみせる)
エンテイの体から邪悪なエネルギーが解き放たれていき、それを消し去っていった。
「やった!」
エンテイの浄化が成功してムンが喜んでセネティも静かに頷いた。心を取り戻したエンテイはヌーンを静かに見つめていた。
「おのれえええい!ならば力付くでも返してもらうぞ!」
メタングが攻撃に出ようとする。エンテイがだいもんじを飛ばしてメタングを倒した。
「な、バカな!この俺が、こんな奴等に!」
敗北したダキムが動揺していると、そこへシャドーの戦闘員達が駆け付けて来た。
「ダキム様!」
「あいつは!」
ムンが気付いた。ダキムの前に現れたのは、アゲトビレッジでほこらを壊そうとしたあのコワップだった。
「コワップ、どうしたのだ!」
「遂にあのタワーが完成しました!」
「そうか・・・ふ!」
ヌーン達に視線を向けてダキムは言い放った。
「いいかお前等、これで終わりではないぞ!俺達シャドーの最終計画が遂に完成し、整った。これからオーレ地方は全てのポケモンがダークポケモンと化すだろう!その時を楽しみにしているんだな!」
ダキムはコワップ達を連れてバトル山を去って行った。
「オーレ地方のポケモン達がダークポケモンに・・・。何のことなの?」
「解らない、だが、奴等が恐ろしい計画を動かしたことは間違いないだろう。しかし・・・」
セネティが振り向くと、そこにはエンテイを優しくなでるヌーンの姿があった。
「彼ならきっと、このオーレ地方を救ってくれるだろう。彼の優しさと揺るがない信念がある限りは・・・」
セネティの言葉にムンは頷いた。思えば彼は優しさと温かさに満ちていて、これまでに自分と様々なポケモン達を助けて来たからだ。
「うん?」
するとヌーンの通信機が鳴り出した。開くと差出人は、パイラタウンのギンザルだった・・・。