完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*3*
episode1「フェナスシティ」パート1
「はあ、はあ・・・!」
何もない暗い世界、ムンは必死に走って逃げていた。後ろを向くと、黒いオーラをまとったと思われるポケモン達が彼女を追いかけていた。
「いや、いや、来ないでよ・・・」
怯えた瞳で涙を流しながら走るが徐々にポケモン達が近付いていく。すると、足場の感覚が無くなり、奈落の底に落ちる。
「きゃあああああ、助けてーーーっ!!!」
その時、落ちていく少女の手を誰かが掴んだ。
「ああ、貴方・・・」
その人物を見てムンの顔から笑顔が浮かんだ。
「ヌーンさん・・・」
「君は僕が必ず守る・・・」
「はっ?!」
そこで彼女は目を覚ました。息を吐いて、体中が汗で濡れていた。
「ムン、どうしたの?」
ヌーンが目を覚ましてムンを見た。フェナスシティへ向かう途中、夜になり荒野の真ん中で夜を明かすことになったのである。マシンで寝ていた所で、ムンが目を覚ました所だった。
「ヌーンさん・・・、う、ひっく、ヌーンさーん!!!」
彼の顔を見てムンは彼に泣き付いて来た。体は恐怖に震えていてヌーンは彼女を放さないように受け止めている。
「何か悪い夢でも見たの?」
ヌーンが言うとムンは目に涙を流して無言で頷いた。
「私、時々怖い夢を見ることがあるの。黒いオーラをまとった恐ろしいポケモン達に追いかけられる夢を。どんなに走っても追いかけて来て、最後は・・・嫌!思い出すだけで怖い!ヌーン、貴方にはまだ言ってなかったんだけど」
「何だい?」
「私、その黒いオーラをまとうポケモンが見えてしまうの。それが原因であいつらにさらわれて、それであの夢を見てしまう。私、怖い・・・。自分が自分で無くなっちゃうと思うと・・・」
目を涙で濡らしてムンは自分の過去とその悪夢を語った。ヌーンは静かに聞いて彼女を優しく抱き締めた。
「ヌーンさん・・・?」
「これなら怖くないよ。安心して、これから先、どんなことがあろうと君のことは僕が守る。泣きたい時、悲しい時は必ず側にいる」
「ありがとう・・・、ヌーンさん、優しいんだね。夢で見たように・・・」
「夢?」
「今日見た夢である人が助けてくれたの。それはヌーンさん、貴方だったの。私、貴方に会えて良かった。いつも一人で心細かったの・・・、一緒なら、怖い夢も見ないよね」
ムンの顔から不安が無くなっていた。彼女を寝かせると、ヌーンも一眠りにつくのだった・・・。
<フェナスシティ>
そして、ヌーンとムンは目的地、フェナスシティに到着した。
「うわあ、綺麗・・・」
石と水による美しい景観にムン心ときめいていた。石を詰み合せて出来た街並み、そして街を流れる水が陽に照らされて水晶のように輝いていた。
「ムン」
ヌーンがムンに手を差し伸べた。
「手を繋ごう。それなら襲われない」
「えへ、ありがとう」
ムンはヌーンの手を繋ぎ、街を歩いていく。
「ここで何をするの?」
「うん、街の市長さんと話がしたくて・・・」
中央の噴水でランニングしているポワルンを連れたトレーナーに市長の家がどこか聞いた。
「市長さん、市長さんなら階段を登って左側にあるよ」
「そうなの、ありがとう」
「しかし、お似合いだね、お二人さん」
「え?」
「美男美女のカップルって絵になるって言うしさ」
トレーナーの言葉にヌーンとムンは頬を赤くして照れてしまった。
「二人共、旅をしているならパイラタウンには気を付けなよ」
「パイラタウン?」
ヌーンが聞くとトレーナーが説明した。
「あそこは風がいけれど住んでいるのは戦いのことしか能がない野蛮な連中ばかりだからね。それに比べればここは一番住みやすくていい方だよ」
トレーナーの話を聞いた後二人はその市長の家に歩いて行った・・・。
続く・・・。