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episode1「フェナスシティ」パート2
街の中央、その右側に市長の家があった。近くに来ると、扉が開く。
「きゃっ!」
現れた人物にムンは怯えてヌーンの後ろに隠れてしまう。ヌーンは彼女を守るように前に出た。
「ほう、中々頼もしい少年ではないか?」
その人物は、灰色の蛇のようにくねったヘアーに血のような赤い目をして紫の禍々しい衣装を着た男だった。にやりと薄笑いを浮かべて二人をつぶさに見た。
「君とはまたどこかで会いそうだな。ではこれで失礼するよ」
男は静かに去っていった。
「はあーっ、怖かった。何だか死神みたいで夢にも出てきそう・・・」
ムンはため息を吐き、落ち着いた。
「大丈夫だよ、僕がちゃんと守るから」
「うふふ、ありがとう、ヌーンさん。さ、行こう」
手を繋いで二人は市長の家に入る。
「おや、旅の方ですかな。ようこそフェナスシティへ。私が市長のバックレーです」
左右にある団子型の髪型にマスコットキャラのようなゆるい笑顔。丸っこい体型をした大道芸に出て来そうなピエロのような愛嬌のある人物がそこにいた。
「市長さん、私の話を聞いてくれませんか?」
「ええ、よろしいですよ」
ムンの話をゆるふわの市長は快く受け入れた。
「私、見たんです!黒いオーラをまとったポケモン達を」
「何と、そのような恐ろしい存在がいるのですか」
「はい、それで怪しい人達にさらわれて、勝手なわがままかもしれませんが、そのポケモン達について調べてもらえないでしょうか?」
「ええ、もちろんですとも。こんなにか弱い娘さんを狙うなど許してはおけませんからね。お任せ下さい。そうだ貴方達、折角この綺麗な街に来たのですからコロシアムに行ってみませんか?」
そう言ってバックレーはコロシアムで腕を振るってみてはどうかと進めてきた。
「ヌーンさん、どうする?」
「行ってみようかな、いい腕試しになるからね」
市長の家を出て奥にあるコロシアムに足を運んだ。早速、受付に来るが、
「申し訳ありません、出場の受付は終了しました」
もうすでに大会の受付は終わっていた。
「そんな、ヌーンさんのカッコいい姿が見たかったのにな」
「そう落ち込むことはないよ。君を狙うあいつらとの戦いで存分に見せてあげるよ」
「そうだね、えへへ」
笑顔になって取り敢えずコロシアムを出たが、
「な、何この人達?!」
「く、こんな所で・・・!」
外で待ち受けていた相手にムンは驚き、ヌーンは苦い顔をした。
「くくく、久しぶりだなヌーン、ここにいると知らされて来てみれば本当にいるとはな」
スキンヘッドの集団が二人を囲んでいた。そのうちの一人サングラスをかけたリーダー格と思われる男がヌーンの前に出た。
「ヤッチーノ・・・!」
「そうだ、俺はスナッチ団ボスの右腕のヤッチーノだ!ヌーン、よくも我々を裏切ってくれたな!」
サングラスで見えないが瞳は裏切り者への怒りの炎で燃えていた。
「ちょっと、何なのあんた達!ヌーンさんが何をしたって言うの?!」
驚くムンにヤッチーノが説明した。
「おっと、おじょうちゃん、俺達がスナッチ団なのは知ってるかな?」
「知ってるわよ、ポケモンを泥棒する集団でしょ?!」
「その通り、そしてこいつは、元はといえば俺達の仲間だったんだ!」
ヤッチーノがヌーンに指をさして彼が自分達の仲間だったことを明かした。
「ヌーンさんがスナッチ団の・・・?」
「そうさ、なのにこいつ、俺達の大事なスナッチマシンを盗み出して俺達のアジトを出て行ったんだ!」
「ちなみにスナッチマシーンって言うのは身につけると相手のポケモンを奪える高性能の・・・」
「てめ、それ以上ベラベラ喋るな!」
下っ端の男が話し出すともう一人の男がその頭をべシっと叩いた。
「ヌーンさん、本当なの・・・?」
神妙な面持ちになるムンにヌーンは迷ってしまう。こんな展開になるなど考えてもみなかったからだ。このことは隠し通しておきたいと思っていたのに突然の展開、もう隠しきれない、ヌーンは遂に口を開いた。
「そう、なんだ・・・、僕は、スナッチ団だったんだ・・・」
失望される、軽蔑されてしまう、そう思っていたが、
「何だかそれって凄い驚きよね!」
気にかけていた彼女はビックリした顔をしていたが、けれどもその顔に失望の念は微塵も無かった。
「おいおいこいつら・・・、まあいい、ヌーン!裏切り者のお前をここで倒してやる。覚悟しておけ!」
ヤッチーノはボールを投げてヘイガニとクサイハナを繰り出して来た。ヌーンはボールを投げようとするも正体を知られたことで心に隙間が出来ていた。
「ヌーンさん、頑張って!」
しかし、そんな彼にムンが応援する。
「ムン、何で・・・」
「大丈夫、ヌーンさんなら勝てるもの。私、貴方を信じてるから」
彼女の笑顔は何かを吹っ切ってくれるようだった。ヌーンは気持ちを切り替えてエーフィとブラッキーを出した・・・。
続く・・・。