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8月2日。【赤葦×菅原】
作者: 大和 撫  (総ページ数: 17ページ)
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10~

*4*

高校の時 叶わない片想いをした。
相手は一つ上の先輩。 しかも同性の
きっかけは部活の合宿での事だった。高校二年になった夏 毎年あるその合宿は
去年とは少し違かった。 初めて聞く学校名
【烏野高校】IHで、宮城の強豪相手にフルセットの戦いをしたら1しい。聞いたことの無い名前だったこともあって、少しの興味はあった。 ただそれだけだった
「へいへい!!赤葦、いいトス寄越せ!!!!」
「...はい...!!木兎さ.........ぃ......っ」
他校との試合が終わってからの自主練
月島や木兎さん達との練習中に突き指をしてしまった
「赤葦さん、大丈夫ですか?突き指したんじゃ、」
「大丈夫だよ。よくあることだし、あとで
テーピングしておくから。」
なんとなく誤魔化してしまった。でも、本当は痛かった。でも、これぐらいの事で練習を中断させたくない。 ちゃんとしないといけないのだ、自分は。皆から進められたとはいえ二年生としての副主将はプレッシャーがある。勉強も両立させないといけないし、木兎さんが満足するトスを上げ続けなければいけない。コート上の三年生にも追いつかないと。試合に出たい。追いつかなければ、自分がしっかりしないと、もっと、副主将として相応しく居ないと
「赤葦、顔色悪いよ?」
副主将としての初めての合宿
今思えば少し気を張りすぎていたと思う
「......すみません、少し考え事してました」
「うーん、でもこれ以上続けると明日の練習に支障が出るかもしれないからな。今日はもう切り上げようぜ」
「......すみません、」
黒尾さんの提案で、今日は少し早く切り上げることになった。自分のせいでそうなったのだと思うと、罪悪感があった。
突き指した所がじんじんと熱を帯び始める
「すみません、突き指したみたいなので少し指冷やしてから戻ります。」
「......?おう。 早く戻ってこいよー」
小走りで体育館を出て水道へ向かう。
やっぱり顔色が悪かった
余計なことを考えすぎていたからだろうか
(..........)
蛇口を捻って指を水で冷やす
突き指した所は相変わらず痛んだ
痛みと熱のせいでまともに物を考えられなくなっていた
(早く治れ...早く治れ...)

「......もっと、ちゃんとしないと...」


「......赤葦?」
ふいに名前を呼ばれた。
「やっぱり。梟谷のセッターの......赤葦だよな?」
「はい.....確か....烏野の...」
「菅原な。なにやってんの?」
「.........」
「突き指?......ちょっと見せて 」
「え、...あっ...」
蛇口の水を止めると、菅原と名乗ったその人に手を引かれた
「やっぱり突き指だ。なんですぐテーピングしなかったんだ?」
「......少し焦っていたんです。 すぐ固定すればよかった...」
「そっか。 分かってるならいいよ。でも今度から気をつけろよ。」
「はい......ご迷惑かけてすみませんでした。じゃあ、俺は、、」
先輩を引き止めてしまったこともあって、すぐに梟谷の部屋へ戻ろうとしたが、またしても手を掴まれた
「...?菅原さん?」
「まって、まだ手当て終わってない」
菅原さんはポケットからテーピングを出して笑った
「後輩にもいるんだよ。直ぐに怪我隠そうとすんの。ほんと、少しくらい頼ってくれてもいいのに。」
そう言いながら手際よくテーピングを巻いていく。
「赤葦は、最近副主将になったばかりだよな?」
「.........」
いきなり痛い所を突かれてしまって黙ってしまった
「すごいと思ったよ。俺だってまだまだなのに、二年で副主将なんだ。それに、ほとんど三年がレギュラーの中であのエースにトスを上げてるんだ」
ほんと、すごいと思うよ
そう菅原さんは言った。そうか、彼は正セッターではなかったはずだ。
「すみません......」
「いやいや、なんで赤葦が謝るんだよ。」
菅原さんは苦笑いを浮かべた
「すごいと思うけどな。少し気を張りすぎなんだと思うよ。俺もすごい悩んでた時期があったし。自分のポジションについてとか、残されてる時間についてとか。今になって思うんだけどさ、長くバレーやってると忘れがちになるんだよな。......っと、できた。」
「......?」
テーピングを巻き終わって、手を離す。
「何もかも放棄しろとは言わないからさ。でも、一回全部忘れてバレーを楽しめばいいんじゃねえかな。」
「バレーを......楽しむ...」
「やっぱり忘れがちになるよなー。あ、でも木兎はもう バレー楽しい!! って感じでやってるよな。 木兎には赤葦を見習って欲しいと思ったけど、そこは木兎を真似してもいいんじゃねえの?」
この人には全て見透かされていると思った。
それは確かに、一番大事なことで一番忘れやすいことだ。最後にバレーを心から楽しいと思ったのはいつだっただろうか
「ん?赤葦どうした?」
俺は思いっきり自分の頬をビンタした
「えっ!!?、急にどうした?赤葦」
「すみません。 おかげで吹っ切れました」
「え...?あ、ど、どういたしまして?」
「ありがとうございます。菅原さんのおかげです」
そう言って頭を下げる
「いやいやいやいや。むしろごめんな。初めて会ったのに随分上から目線で。......でも、吹っ切れたんならよかったよ 遠目から見ててもすこしぎこちなく感じたからな。」
そう言うと、菅原さんはくしゃっと笑った
「もう、あんまり無理するなよ。お前の事が心配な先輩だっているだろうし、他校でも、もうお前は俺の後輩だからな」
頭を撫でられる
「じゃあ、帰るか! 随分話し込んじゃったからな、一緒に謝りに行くべ!」
そう言って二人で立ち上がる
何故か頭に置かれた手の温度や、あの顔いっぱいの笑顔が頭について離れなかった。
その時は ただこの人の横に居たいと思っていただけだった。

それが恋だなんて知らなかった

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