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君はかわいい女の子
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 12ページ)
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10~

*6*

episode3【幼馴染。】

 ――彼は、飛行機を降り呟く。
「望、帰ってきたぞ。」
赤に近い癖毛の茶髪のぱっちり二重の高身長イケメンは、“望”と言う女の子を思い出すように笑う。


 梅雨も終わり、日差しの強い夏に季節は変わり制服も半袖になった。
 もうすぐ夏休みに入るのか……。
「きゃ~悠翔君日本に帰ってきたって!」 
「悠翔君ってあの!?海外に留学してたんじゃないのっ!?」
「それが帰ってきたらしいよ!!」
はると??誰それ……。
騒ぐ女子たちの話に注目していると後ろから声がかけられる。
「のーぞみっ!」
振り向くと可愛い童顔でふわふわの金髪の毛先を巻いた女子がいた。
 ……びっくりした。今日は女子なのか。
「なんだ、葵か。で何?」
「切り替え早いなぁ。もー生徒会の人たちが望の事、呼んでたよっ!」
葵にそう言われ、あたしは時計を見ると生徒会室に集合する時間を過ぎていた。
 げっ!!! 
葵に、お礼を言いあたしは急いで生徒会室に向かっていく。
「すみませんっ!遅れました!!」
中には誰もいなくて寝ている会長だけがいた。
 ……何これ??なんでいないの。
ホワイトボードを見ると書いてあった。

『副会長、お疲れ様です。
副会長は急いできたでしょう、
いつも副会長に頼ってばかりで
僕らは何もしていないと思い
副会長が居なくても会長と
一緒に頑張ってみました。
話し合った結果は机の上です。』

あたしは、読み終えて、目を抑える。
「……っ……!」
涙がポロポロと出てくる。
 駄目だ、嬉しい。
寝ている会長を見て、あたしは呟く。
「……会長、ありがとうございます。」
そっと寝ている会長に毛布を掛けあたしは、生徒会室を出る。

 家路につくと、あたしは空を見る。

『のんびり日向に当たりながら雲を眺めながらお菓子でも食べたらいいんじゃない。』

あたしは、あの時の会長の言葉を思い出す。
 その通りだ、あの時からのんびりして考えすぎず気楽にしていたら、男子との距離もとれるようになった。
今でも女の子を助けたり、喧嘩を止めたりしていると
『虎。』だって言われることもあるけど前よりは状況が良くなった気がする。
 会長のアドバイスは的確でぼんやりしているように見えてしっかりしている。

「――やぁ、可愛い子だね。 僕とお茶しない?」
気の抜けるような声が後ろから聞こえてくる。
 ……葵?いや、違う。こんな太い声じゃない。
じゃあ――と思い不審者どうしようと思い、冷や汗をかく。
あたしは不安な気持ちを抑え込んで、振り返る。
「…………え?」
後ろに立っていたのは黒いキャップとサングラスを身に着けた成人を済ませているような雰囲気をただ寄せる怪しい男性だった。
あたしは、睨み付けて言う。
「お茶をする気もありません。」
そういうと怪しい男性は困ったように追いかけてくる。
 ……もう、しつこいなぁ。
あたしが拳を握りしめてもう一度振り返ると彼は言う。
「――もしかして、俺の事分からなくなった?望。」
彼は黒いキャップとサングラスを外して微笑む。
 ――!!この人、この香り・顔をあたし知っている!
「あ、分かった?」
そういうと彼はあたしの手を握り目を細め言う。
「久しぶり、ただいま。望、会いたかった。」
「お帰り、はるちゃん。あたしも会いたかった。」
はるちゃん――双葉 悠翔はあたしの幼馴染で第二のお兄ちゃん的存在。
頭も良くて運動神経、お父さんが外交官だったから語学が得意。
約5,6年、アメリカに留学していた。
「いつ、帰ってきたの?」
「今朝。連絡したかったんだけ……。」
 ブーッブーッ!
はるちゃんが言いかけたそのとき、携帯が鳴る。
はるちゃんが難しそうな顔で携帯を見つめてあたしに向きなおる。
 ?
「……本当にごめん、仕事が入った。」
「いいよ、行ってきなよ。仕事の方が大事でしょ。」
そういうとさっきまでの強張った顔が徐々に安心した顔になって言う。
「ありがとう。」
――はるちゃんは、パタパタと走っていく。
なんか大変だな、はるちゃんも……。

 そういえば、はるちゃんって何の仕事しているっけ?
……思い出せないなぁ、まぁいっか時期に思い出すよね。
 
「キャ~超イケメンが校門にいるって!」
「マジっ!?見に行こ、見に行こ!!」
女の子たちが立て続けに廊下を走る。
 校門、何だろう??
そう思い、窓を見ると一緒に居た会長が言う。
「……やっぱり、のんちゃんもカッコいい人が好き?」
会長の顔は後ろを向いており、見えない。
「会長?」
あたしが会長の名前を呼ぶとビクッと肩を揺らし振り向いて笑顔をつくる。
「――いや、何でもないよ。ごめん、帰ろっか。」
 ……あきらかに様子がおかしい。でも、何でもないって言うんだったら聞くのはやめよう。
しつこいのは誰だって嫌いだしと考え、あたしは黙る。

――女の子たちが何かに群がって騒いでいるのをあたしは見つける。
「あの!!悠翔君ですよねっ!?」
「サインくださいっ!!」
 は・る・と??
もしかして……はるちゃん?と思い考えてみる。
でも、はるちゃんって芸能人じゃないんだし知ってる人少ないよね。
じゃあ、違うかそう自分の中で結論を出し会長と帰ろうとしたその時、

誰かがあたしの腕を掴んだ――。

  「!」

……え。

___誰?そう思い、あたしは目を見開く。___

 女子はざわめきだし、天は望の腕をつかんだその男を睨む。
「――望、なんで俺んとこ来ないわけ?待ってたのに。」
 なんではるちゃんが……!
「仕事終わり出来てやったのに――。冷たいよ、望。」

そういえば…!!はるちゃんの勤めてるところって芸能プロダクションだった!!
この状況ってかなり、ヤバいんじゃない??
――だって、
●ファンの女の子達がいる、あたしの事を呼び捨てで呼んでいて待っていたって本人が言っている。
●会長があたしと帰ろうとしていた。
―あたし、女の子に殺されるんじゃないっ!?
 修羅場だ。SYU・RA・BA!!!
あたしはブルブルと震え始め、思わず後ずさりをする。
「…終わった。」
「のんちゃん、誰この人。」
会長は、心配そうに魂の抜けそうなあたしを見る。
会長の質問にあたしが答えようとしたその時、はるちゃんが言う。
「……のんちゃん?望、そう呼ばれてんだ、へぇ。俺は双葉 悠翔、望の幼馴染です。」
「俺は、春風高校の生徒会長で名前は瀬名 空です。」
そういうとはるちゃんは、眉をぴくっと上げ鼻で笑う。
「へぇ、君が生徒会長??見えないね。」
「よく言われます。それでも俺が、生徒会長って言う事実は本当ですから。」
会長もはるちゃんも突っかかるように話している。
 なんか、二人に殺気と言うものを感じているあたしがいる。
この二人超怖い、火花が散っているように見える。
この会話を聞き、ファンの子達も震えて帰っていく。
あたしだけを置いてかないでよ。何で、こんな修羅場になっちゃったんだろう……。

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