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作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (総ページ数: 23ページ)
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第一章第6話;「メゾン・ド・セグレート」【考えるよりも。】
心配していた学校生活も約3週間が経とうとしていた。
「先生!小倉さんがいません!!」
「先生っ!!小倉さんが教室に犬をつれてきています!!」
『ワンっ!』
「先生ー!小倉さんがアルコールランプでのりをあぶっています!」
私の事よりも彼女の事の方が心配です……。
「おい今度は早弁だよ。」
「すげえ。」
周りの人が小倉さんがの事をヒソヒソと話している。
「……。」
大丈夫なのか?早弁なんかして――。
キーンコーンカーコン……。
「お昼……。」
きゅるるるる……。
小倉さんがお腹を鳴らしながらお財布を振る。
「お金がないのか?早弁なんかして後の事を考えていないからだよ。」
小倉さんは、絶望した顔をして私を見る。
「これでも食べるか?私は少し胃の調子が悪いから。」
「くれるの…?」
「なんなら、豆乳もつけるけど。」
ぱぁあぁぁぁあっと一気に小倉さんの表情は輝いて私に近づいて抱きしめる。
「好き…!!」
「えっ」
す、好き?!!好きって言われた…!!
「うかちゃん、初めて会った時から優しい子だと思ってた…。」
「う、うそつけ!!大好きな食べ物をもらったからだろう…!」
そういうと小倉さんは、少し悩んでから言う。
「ううん、第六感で判るよ?」
「判るか!?」
「じゃあ…。」
「思いついた事言ってるな?」
そういうと小倉さんは、ぎゅ――っと抱きしめてくる。
温かい…。
『君はもっと他人とかかわった方がいいよ☆』
でも、私はどうやって関わったらいいか解らない……。
アハハ!
女の子が笑う声が聞こえる。
何だろう?
「ねぇ、なんで猫耳なの~?」
「人生の遊び人だからさ~☆」
この声――まさか…!!
「意味わかんない~。」
「ミステリアスな猫さんだからね~♪」
「あっ!!うかたんっ。朝ぶり~!!」
やっぱり、猫月さんか……。
「え~どういう関係?」
「秘・密な関係❤」
恥ずかしそうに体をクネクネさせて言う。
まったく、この人はいつもふざけている。
「誤解を呼ぶようなことを言うな。」
「も~誤解じゃなくない?」
本当にこの人と付き合っていても時間の無駄だな。
もう無視しよう…。
「待ってよ!いつもそーたんにメールを送っていいかクッションを抱きながら迷っているシャイなうかたーん。」
なんでそれをっ!!
「視たなっ…!?」
「ツンデレ?というか乙女っていいよね~。」
私はデリカシーのない猫月さんにイライラしながら言う。
「そ、それで、何の用かな?なければ警察に通報するが??」
「ジョーが喧嘩して保健室に居るんだけどさー案内してくれない?」
は、早く言え!!!
本当にまったく、この人はいつもふざけている。(大事なことだから2回言った。)
保健室――。
水無瀬君はボロボロになって座っている。
「あらら、ボロボロじゃないの。」
そういうと水無瀬君はスイッチが入ったようで目をキラキラさせて言う。
「この傷もヒーローの証だっ!!」
……全く、何が原因でこんな傷になるまで喧嘩してたんだ。呆れる。
「先生が聞いても言わないらしいよ。」
ふーん。
水無瀬君を見たら背を向けて何も言わない素振りを見せる。
それを見た猫月さんはニヤニヤして私に囁く。(本人は囁いているつもりのようだがとても声が大きい。)
「あのね、ジョーがいくつまでおむつを着けていたかというと~~~。」
おむつ……?何を言っているんだ、この人は――。
それを聞いた水無瀬君は真っ赤になって叫ぶ。
そういうことか、なるほど――。
「わ――っ!!言う言う言う!!」
この人は………本当にずる賢いな。
と私は、猫月さんに気づかれないように横目で見て思う。
「瑠璃の事、頭おかしいって言ったんだ。」
確かに小倉さんは、いつもボーっとしていて危なっかしい。
「でもいいんだ。あいつは何にも考えてなくても解ってるんだ。」
へー、そうなんだ。
「考えることよりも深いトコ…。きっと本能とかで理解してんだ。」
本能――?
「だから…。あいつの事を何にも知らないで言う奴を俺が倒すんだ。」
小倉さんの事をそんなに…。
「俺はあいつのヒーローであいつは俺のお姫様だから。」
お姫様…?ヒーロー?
その時――。大きな笑い声が隣から聞こえた。
気になって、隣を見ると猫月さんを見ると赤くなって大笑いしていた。
「ぎゃはははひひひひははははは!!」
ひぃひぃひぃと足をジタバタさせて震えている。
あーあ。本人が居るのに……。
猫月さんが大笑いするのを目の前で見た水無瀬君は、私の思った通りに赤くなって叫ぶ。
……ガララ。
「水無瀬……。」
おっとりとした小さな声は保健室の中を響いた。
この声――。小倉さん――?
「あ、ジョーのお姫様。」
「る、瑠璃…。」
すると、ニヤニヤしながら言う。
「それじゃあ、ボク達はお暇しよーかね~。」
パタン。
ドアを締める直前――。
見えた小倉さんが、水無瀬君を心配するように背中をさすって何かを喋っていた。
「……仲がいいんだな。」
私が猫月さんに問いかけるように言うと楽しそうに笑って言う。
「二人は幼馴染さ~。友達以上恋人未満の二人の世にも美しい恋物語~♪」
他人のプライデートを……と思い無視する。
「あるところに能力の化身達の封印を解いた一人の男がおりました。化身達は自分にふさわしい人間を選び契約したその人間の家系は不思議と繁栄していきました。」
私は猫月さんの事を見つめる。
「その家でも化身達と契約し特別な能力を持った――。それがボク達です。」
猫月さんの事を私が睨み付けていることも気にもせず話を続ける。
「ボク達は契約を受け継ぐだけでなく同じ日、時間。同じ容姿性質を持って生まれ化身達のおかげで稀に記憶まで受け継いで不思議と同じような運命を歩むのです。」
契約を受け継ぐ……。
「家々はそんな貴重な存在を一族全体で大切に育てることにしました。」
つまり……と言う。
「家族という存在はボク達にとっては希薄な存在です。いつもボク達は孤独、えーん寂しいよぅ。」
猫月さんが楽しそうにケラケラ笑いながら嘘泣きをしているのを横目に私は一人で呟く。
今更だ……。家でも、学校でもいつも私は一人だった、孤独、絶望。
「だからこそ~求め合い身を寄せ合う二人のお話~❤人は良くも悪くも他人と関わらずに生きるのは難しいよ?」
でも、私は一人になる為に――。
「さぁ、うかたんもレッツコミュニケーション♪ジョーも瑠璃りんも面白い子だよ~☆お友達になってみたら?」
……やけにおせっかいだな、猫月さんは。
「『おせっかいだ、どうやって関わればいいか解らない?』なんて難しく考えちゃ駄目だよ。そんなのいつの間にかだよ~☆」
こいつ……。
「また視たな!?」
私は、猫月さんに震えながら怒鳴った。
「お昼食べよー。」
「あー、腹減った。」
騒々しくなり始めたお昼。
今日もお昼は一人か……。
そう思い食べようとした時――。
ぎゅう~~。
「!!」
誰かに抱きしめられた――。
私を抱きしめていたのは小倉さんだった。
「なっ……。なんだ、君か。」
私は平然を装う。
すごい、まだドキドキしてる。顔、焦りで赤くなってないかな?
そんなことを考えていると小倉さんは私に問いかける。
「うかちゃん、お昼。私と水無瀬と食べよう?」
一緒に…?
「……ど、どうしても一緒に食べたいというのだったら仕方がない、食べよう。」
そういうと小倉さんは、嬉しそうに笑って購買の方に走っていくときに思い出したかのように言う。
「じゃあ、お昼買ってくるから屋上で待っててくれる?水無瀬は居るから。」
屋上……。みんな一緒、ご飯――。
初めてかもしれない、クラスメイトと食べるのは――。
屋上に向かって私は喜びを隠せずに廊下をスキップで行っていると声が聞こえた。
……誰か居るのかな?
私は声が聞こえる方に向かってそっと忍び足で歩く。
「……きです。九条君が他の女の子を好きなのは分かっています。」
この声――。聞き覚えがある、聞いていると鼓動が速くなる。
「すまない、僕には――。」
九条君の声、名前……?ここに居るのかな、じゃあお昼誘ってもいいよね……。
そっと近寄って苗字を呼ぶ。
「九条君――。」
そこにいたのは、一人の女子生徒と九条君。
姿をみた瞬間、目を見開いた。
――二人はキスをしていた。
ズキン、ズキン。
あぁ、胸が痛い。苦しい、痛みから逃げたい――。
「あ――。」
驚いて声を漏らしてしまい、九条君は私に気が付いて女子生徒と払い抜ける。
私が立ち去ろうとすると、腕を掴まれる。
「待って、日高さ……ん。!!」
私の瞳に涙が溢れ出してきているのに気づき、焦る彼が視界の端に見えた。
「……してよ。離してよっ!!触らないで、汚い。」
今後私に近づかないで!!と私は言い残し立ち去る。
その後は無我夢中で走り続けた。
なぜか今まで溢れなかった涙が急に流れ出して涙を止めるのに大変だった。
どんなに酷いことをされても、裏切られても動じず涙なんて慣れてしまい流すことなんてなかったのに――。
どれだけの時間がたっても彼の事でいっぱいだった。
思い出すたびに胸が締め付けられて涙が溢れてきて部屋に帰っても自然と彼のいる隣の部屋ばかり気になってしまって。
自分から言ったのにそんな彼を気にする自分が嫌になった。
後の事は覚えていない。ただ、眠りについてしまい記憶がない。