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君を想い出すその時には君の事を――。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*20*

最終章 第1話;「幸せになろう、君と一緒に。」【リペント。】

「―――……で、話って何よ。」
私は澄んだ夜空に照らされたジャガイモを睨む。
「紫、俺と付き合って。」
ん??
サラッと何を言ったの??
私は耳を疑った。
「な、何だって?」
ともう一回訊ねてみるとジャガイモは深い溜め息をを吐く。

「だから―――……紫、俺と付き合って。」

私は三度目の正直と思ってもう一回聞き直す。
すると、ジャガイモはその瞬間、真っ赤に染まる。
「何回告ればいいんだよ!ったく俺と付き合って!!」
何度聞き返しても同じ答え―――……私は現実だと驚く。
「あんた、まだ私の事諦めてなかったの?」
と目を伏せながら言ってみると、
「うん。」
即答されてしまう。
「何でよ。」
「好きだから。」
ジャガイモが私を??
「呆れた、そんなの理由じゃないわよ。―――……やっぱりあんた、顔は老けてるけどさ根は高校生のお子ちゃまよね。」
私は28歳、コイツは19歳―――姉弟に間違われてもおかしくない歳だ。
「付き合う理由が好きだからって何がお子ちゃまで駄目なんだよ。」
怒ったような拗ねたような声。
これだから男は嫌だ。
「本当に面倒くさい、男は嫌い。―――……あんたがここに越してきた時、私は言ったわよね?誰とも付き合う気がないし好きにもならない、そして結婚願望もないって。」
とビシッと言ってやると私は踵を返した。
アイツが越してきた時、初めて出会った私に急に告白した。
それからも何度も告られたけど全て断った。

――――男は嫌い、ただそれだけ。

『紫よりも大事な人が出来たんだ。すまない、別れてくれ―――……。』

まだ癒えぬ男に傷つけられた心。
トラウマ、ただ臆病なだけ。
嫌い、嫌い、大っ嫌い。
フラフラしてて一度「好きだ。」だなんて言えば他の人が今度は「好きだ。」なんて言って。
本当に気持ちが悪い。
口を開けば嘘の愛の告白ばかり。
「…………恐い。」
だから、誰も信じない。
男なんて好きになんてならない、二度と騙されない。
近寄らないで、触らないで、入ってこないで。

『付き合う理由が好きだからって何がお子ちゃまで駄目なんだよ。』

アイツが言っていることは正しい。
だけど、無理なものは無理。
嫌いなものを好きになんて簡単になれない。
それだけ、心の傷は深い物なの―――……。

***

今日は三人でショッピングだ。
「私……フワフワのニットが欲しいな……。」
「ふん、別に楽しみで早く来たんじゃないから。」
瑠璃ちゃんに藤花ちゃん、私はこの二人を見てニヤニヤしてしてしまう。

****

「さてっと、藤花ちゃんはコレに着替えてきて。瑠璃ちゃんはこのフワフワのニット。」
二人に洋服を渡し、私は待ち時間、服を物色する。
この服―――……トレンドの色だ。
靴、凄い、履きにくそう……。
私は色々な服を見ては苦笑したり手に取ってみたりしていた。
「―――……紫?」
低音の声。
忘れもしないあの声―――……大好きだった人は私の悪夢に変わり果てた。
私は驚いて振り向く。
「りょ……陵葉。」
名前を呟くとあの時の記憶が瞬時に蘇ってくる。
「紫、偶然だな―――何だ、どうしてここに。」
訊ねられて私はそっぽを向いて言う。
「こっちのセリフよ。」
「紫……俺は嫁さんと服を買いに来たんだよ。で、紫は?」
私は手を握りしめる。
「―――……友達の洋服を買いに。」
すると陵葉は苦笑交じりに話す。
「また人のばっか見て自分の服買えてないんだろ?」
私は図星をつかれ恥ずかしくなる。

「変わってないなあ、紫は。」

なんで嬉しそうに笑うのよ、あんた達のせいで私は―――……。
「その声で私の名前を呼ばないでよ……!!」
私は苦しくなっている胸を抑えて口を開く。
「陵葉達のせいで私は――――どんだけ心に傷を負ってると思ってんのよッ!!!」
何を言っているのか解らなくなっていた。
溢れ出した想いは抑えきれなかった。
「忘れるわけないじゃないのッ、結婚をするって時に好きな相手がいるって言ってその相手は―――……私の姉で可笑しいわよッ。」
陵葉は悲しそうに眉を寄せる。
「それは、すまないって思ってる。紫、許してくれ!!」
「紫、陵葉を許してあげて。」
姉さんがやってきた。
ほら――――どれだけ足掻いたって私は姉さんに勝てない。
味方なんて誰もいない。好きな人は姉さんの事を好きになる。
涙が溢れ出した。
「紫。」
一瞬で顔に温もりが伝わった。
誰かの大きな手が私の目を覆った。
誰―――……ジャガイモ?
「俺さ、紫に何回も告ってるんだけどさフラれるんだ。悲しい顔してそれってあんたらが思う以上に傷負ってるんじゃないの?解ってないくせに許してくれだなんておかしいだろ。」
私の事を庇ってくれてる……。

「貴方に何が解るの?」
「そうだ、君がフラれるのは君の事が嫌いなだけじゃないのか??」

二人が口々に言う。
「俺が紫に嫌われているのは確かだけどさ、この人が男嫌いなの知ってる?」
二人はそう訪いかけられて口を噤む。
「あんたらのせいなんじゃないの?」
と言われ二人は黙り込む。
「ったく、胸糞悪くなっちまった。行くよ、紫。」
身体が一瞬軽くなったと思って目を恐る恐る開けてみたらジャガイモに抱っこをされていた。
「じゃ、ジャガイモ!!下ろしなさいよ、馬鹿ッ!!」
私が怒鳴ると、椅子に下ろす。
「あっ。藤花?うん、俺だけどさ―――……紫が気分悪くなったって言ってるから先、マンションに戻ってるわ。」
携帯電話を片手にぺらぺらと嘘を吐く。
「え、何で俺がいるのかって?偶然にも会っちゃってさ、うん。解った、服買って来いよ~!」
と言って電話を切るとニコッと微笑んだ。
「んじゃ、帰るか。」

****
「何で、私の事を庇ったの?」
とさり気なく聞いてみるとジャガイモは言う。
「好きだし守りたかったから。」
と当然の事のように答える。
「そう……。」
何か恥ずかしくなってしまう。
「紫、あのさ俺―――……待つよ、紫の気持ちが整うまで。」
と言って私の事を抱きしめる。
「待ってる、いくらだって。俺、犬みたいに。」
そう言ってマンションに踵を返し入る。
――――とくん。
ナンダロウ、コノドキドキハ……。
顔も熱いし、、、、、手汗が凄い。
「――――まさか!!」
私は自覚して木に頭をぶつける。
「落ち着いて、紫!!」
まさか、まさか、まさかまさか―――……!!!
「アイツの事が好きになったんなんてどうかしてるわよ!!」
私はそう叫ぶ。

それがおよそ1年後―――……結婚を前提に付き合う事になるなんて私は思ってもみなかった。
男嫌いでトラウマがあった私がまさか年下のお子ちゃまの事を好きになるなんて――!!
彩のない私のモノクロ世界は鮮やかに色づき始めたのであった。

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