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作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (総ページ数: 23ページ)
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第2章 第1話;「自分の運命を決める闘い。」 【お父様。】
「藤~花ちゃんっ!あたしが準備していい?」
部屋を訪ねられて追い返すのも性に合わないので北小路さんを部屋に入れた。
準備というのは私の家――つまり、マンションを造った管理者。
お父様の誕生日パーティが行われるからそのドレスなどの準備という事だ。
「藤花ちゃん、元気ないわね。」
……!!私は北小路さんのことを見ようとしたら、
「動かないで、今髪を結ってるからね。……図星かしら?チビ……じゃなくて九条の事?」
私は昨日、九条君に酷いことを言った。
やっぱり、人と一緒には生きていけないと考えたのに今、こうして人と話している。
私は、矛盾している。
「どんなことが原因なの?」
――私は心のモヤモヤを取る為に素直に話した。
「誰かに裏切られても気にしなかったのに、九条が誰かにキスされているところを見て動揺し酷いことを言った……。」
それは――と言い私の髪を丁寧に結う。
「嫉妬ね。」
嫉妬……?
「藤花ちゃんが九条の事を簡単に言えば大切に思っているてこと、難しく言えば説明出来ない感情を九条に抱いてるという事よ。」
大切?説明出来ない感情?
「出来た!説明出来ない感情の答えを自分で見つけるしかその感情の事は解らないわ。」
次、ドレスいくわねと言い部屋に有るドレスを持って来る。
「これは悩むことじゃないわ、悪い事でもない。良い事よ。」
良い事……。
「はい、出来た!!」
鏡に映し出された私は私じゃないみたいだった。
髪は綺麗に梳かされていてトップの髪は上げられていて可愛い髪飾りで結わかれていた。
ドレスは淡いピンク色でビーズや小さなお花がちりばめられていて、
腕の方には薄い半透明のきめの細かい布があって純清楚なドレスなっていた。
私じゃないみたい……。
「そんなに九条の事気にしてるんだったら、さっさと仲直りしなさいな。」
仲直り……。
「――アドバイス、ありがとう。北小路さん。」
えぇ、と北小路さんと私は微笑み合う。
会場に行くと多くの関係者が居た。
「おっ、藤花。すげえ似合ってるな。」
と藤谷が笑う。
「流石に藤谷もジャージじゃないな。」
「あぁ、今朝さー。ヒノのさ。お付きの人たちが部屋に来て、なんかやってくれたんだよねー。」
「ハッロ~ン☆猫さんの登場だよ~。あ、うかたんはそういうドレスなんだね~。」
「君はパーティ会場でもそんな感じなんだね。」
というと、猫月さんはこちらに近づいてきて言う。
「君が探しているのはどちらかな?冷静で君の事を大切に思っている月?それともいつでも明るく照らしてづける太陽かな?」
どちら?と楽しそうに笑いかける。
月?太陽、探す?
疑問が頭にでき始める中、私は頭をフル回転させて考える。
――!!
……多分、猫月さんの言う月と太陽はあの二人のたとえだ。
私は――。
「いっぱい食べる……!!」
「る、瑠璃一緒に食べよ。」
「うん、水無瀬頑張ろう……!!」
「本当に初々しいわね~。」
真っ赤に染まっている水無瀬君、料理を次々と食べている小倉さん、ニマニマして二人を見つめている北小路さん……。
「……。」
辺りを見回しても九条君はいない。
――パーティに来ていないの?でも、マンションに住むものは全員参加だ。
来てる、来てるはず――。じゃあ、なんで彼はいないんだ。
私が探そうと走り出したその時――。
グイっ!!
「――!!」
誰かに腕を掴まれた。
「――やっぱり藤花か。普段と違うから呼び止めようか迷っちゃったよ。」
太陽――穂高……!!
戸惑って穂高を見てから周りを見渡すと、九条君が見えた。
九条君――!!
行こうとしても、腕を掴まれているから行けない。
いつもは手の届くところに居るのに――今は届かない。
あれ、痛い。胸が締め付けられるように――。
悲しい、君の声が聞きたい。君の様々な顔が見たい、君の事をもっと知りたい。
「ごめん、穂高。用事があるの!!」
「お、おいっ!藤花!!」
伝えなきゃいけない、君にこの言葉を届けなきゃいけない――。
『そんなに九条の事気にしてるんだったら、さっさと仲直りしなさいな。』
『気持ちを込めてごめんって言うだけよ。』
「九条君っ!!」
九条君は止まってびっくりした顔で私を見る。
「九条君、私――。君に酷いこと言った。」
そういうと九条君は泣きそうな顔になってだけれど私の話を黙って聞いていた。
「ごめん――。私には、君が必要なんだ。」
九条君は涙を流して言う。
「――僕は、日高さんを不快にさせた。それでも、いいのか?また同じことになるぞ。」
「いいよ。言ったでしょう、私は律儀で正義感が強いんだ。そんなことぐらいで君との契約は一生取り消さない。」
思い出したかのようにクスッと笑って言う。
「そうだったな、忘れてた。」
小指を出し私は言う。
「こんな私でもいいですか?」
「勿論、むしろ君に何と言われようがこれからは一生離れない。」
私達は契約を結びなおした――。
二人で微笑み合っていたその時、歓声が沸いた――。
「ボスっ!!お誕生日おめでとうございます!!!」
「長生きを願います!!」
――ボス?
繊細な色素の薄い髪をオールバックにして紫水晶色の瞳――。
あれは!!お、お父様とお母様――。
お父様はパーティ会場のセンターに着くと笑顔で言う。
「今日は俺の為に来てくれてありがとう!!俺の誕生日を祝う場でもあるが俺の娘・藤花が組織に入ったこと、今年で16だという事を機に!!」
……私?え、どうして?
みんな、私を見る。は、恥ずかしい……。
そう思い、思わず顔を隠す。
「セグレートデュエロを行うことにした!!」
セグレートデュエロ……?何、それ?
「娘の婚約者がいるが本当にふさわしいか調べる為。尚、デュエロに勝った者は娘と婚約をし願いを叶えたあげよう。」
それって、私には参加権がないってこと?
私は商品の一部でただ誰かの婚約者にまたなってじっと見ているだけって……!あんまりよ!!
気づいたら、私は、お父様の前に立っていた。
「あんまりよ!商品の一部にされて私の望みは叶える可能性もないなんて!!取り消してよっ!」
そういうとお父様は何ともないような顔をする。
「藤花、拳で戦うか?俺に勝ったら受け入れてもいいぞ。」
私が負けるって思ってるからこんなこと言うんだ。
私の何かがキレる音がした――。
周りの人はどうしたらいいか集まって戸惑っている。
「はあっ!!」
私、渾身の蹴りを入れてもお父様はビクともしない。
それよりかはまだまだだなと言わんばかりにニヤッと笑う。
「あ、甘く見ないでよ……!」
何度も蹴りを入れたり拳で殴り掛かったりしてもお父様は笑う。
まるで娘の練習を見ているかのようにアドバイスを入れてくる。
「突き出すようにやるんだ、目的のところを見て!!」
「くっ……。」
ためらうとお父様は言う。
「どうしたんだ。もう終わりか、藤花。」
お父様は強い。だから組織のトップに君臨している。
みんなはざわざわする。
「藤花(ちゃん)……。」
「日高さん――。」
負けたくない、ここで負けたら意見を通してくれない――。
なのに、どうして?
足が動かないんだろう、私はこんなに弱いんだろう。
私がお父様をキッとにらみつけた。
その時――。
「貴方、もうやめたあげて……。」
凛としたそれでも控えめな声が響いた。
お母様……。
「藤花ちゃん、貴方への参加を私は認めます。不公平すぎるわ、でも。」
扱い方は女、ボスの大事な一人娘だとしてもみんなと同じ分かったわね?と言いお父様の方を優しく見つめる。
「いいでしょう?ねぇ、今回は見逃してやってくださいな。」
そういうと、渋々目を閉じて言う――。
「日高 藤花の参加を認める!尚、扱いは同じ。」
認められた……?
良かった……。これで、未来が自分で開ける可能性が広がった――。
「藤花ちゃん、お疲れ様、怪我してない?やったわね!これで意見、通ったわね。」
「まさか、ボスに闘いを挑むなんてビックリしたよな。」
「このデュエロ、負けられねぇな。」
「……勿論。5年分のズワイガニ、お肉勝って食べる!!」
みんなが笑いあって、でも真剣な表情で言う。
私も、絶対に負けられない――!!
勝って、自分で未来を切り開くんだ――。
……そういえば、九条君はどうしたんだろう。
さっきまでは居たのにトイレかな?
この時――。
私は知らなかった――。
九条君が今、何をしているかを――。