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君を想い出すその時には君の事を――。
作者: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM  (総ページ数: 23ページ)
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10~ 20~

*9*

第2章 第2話;「自分の運命を決める闘い。」 【九条 総司。】

 薄暗い、小さなパーティ会場の一室――。
僕――九条 総司は黙って跪く。

「――総司、大きくなったわね。何年振りかしら?」
凛とした、それでも控えめな声が響いた。
僕の恩人――日高 藤花の母親。
日高 菖蒲だ――。
「12年振りですね。」
「12年かぁ……。あの出来事から12年も経ったなんて、まさか貴方がうちの娘に自ら近づくなんてびっくりしたわ。」
――あの時から会おうともしなかったからと呟く。
彼女に近づいたのは自分からじゃない、初めて会ったあの日――いや、再会の日。
僕は彼女がこんなにも大きくなって可愛くなったことにもびっくりしていた。
どこかに彼女と一緒にまた、居たい。今度こそ護り切る。
 その気持ちがあったのだろう。
だから、あんなの事言えた、そう思う。だってあの12年前のあの日は僕は彼女の事を護れなかった、逆に護られた。
――能力を使ったあの時、彼女の大切な両親との思い出も何もかも代償としてすべて失った。
僕は両親との絆を壊し距離を取るようになったのも人見知りを重ね、捻くれてしまい無口になったのも
 全て僕のせいだ。
こんな僕が彼女の傍に居られるはずないのに居ることがおかしい、分不相応だ。
彼女が知ってたら、騙してたの?嘘つき!そんなことを言われるに違いない。
なのに、傍に居たいと思ってしまう、新しい婚約者とも上手くいってほしくないと思った。現に日野西との事を邪魔した。
 僕は矛盾している、こんな自分は嫌なはずなのに彼女の傍を離れられない。
唇を噛み締めて下を見て考えていると、
 温かい腕が僕を包んだ――その時___。

  「!」

柔らかい匂いが香ってきた。

___この匂い、この花の匂い。___

「……こんな風に総司や藤花ちゃんの事を抱きしめていたわね。」
 みんなで一緒にお茶を飲んだり遊んだりとしたわねと優しく目を伏せて僕の頭を撫でる。
「総司……。もう悩まなくていいの、今度こそあの娘の事護ってあげて。」
 いいのか?僕なんかが傍に居ても……。
僕の気持ちを察したようにフッと微笑む。
「いいのよ。今回の機会で貴方があの娘の事を護れるって貴和に証明しなさい。」
この機会は貴方の為でもあるのよ?と優しく微笑む。
 ボスに……?
「応援してるわ。貴方が他の誰よりも藤花ちゃんの事を思ってるって知ってるから。」
とウィンクして部屋を出ていく。
 また、彼女は僕の婚約者になってくれるときは来るのか。護らせてくれるようになるのか。
そんなことを考えながら部屋を出た。


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