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*3*
(第二章 集会室の時計)
「では、星のように輝いてみんなで作る石奈色に決定していいですか?」
「いいです!」
運営委員の明るい声が集会室に響き渡る。
私、宮城穂乃香は委員長やってます。
あの和真相手に見事に勝利しました。
はい、拍手。
そしてお楽しみの雑談タイム。
今日は5年生の李奈ちゃんの話を聞く。
「この本は民俗学のことも載ってるんですけど、いつか本物の怪異に出会いたいな、なんて」
「おい、感覚大丈夫か?」
笑いながら返したのは大ちゃん。
「でも高槻彰良の推察面白いよー」
なんて返してみる。
「そういえばこの学校にも色々な七不思議あるんですよね」
と李奈ちゃん。
「例えば4時44分のやつとか」
「そんな時間まで学校に残っていられないよー」
と夢ちゃん。
「じゃあ、集会室の時計とかは」
「えっ、なにそれ!」
その場にいた全員が李奈をまじまじと見る。
「集会室の黒板に大きな絵を三つ、白チョークで書くんです。そして、真ん中の円に手を当てると、あの集会室の時計が止まって、真ん中の円に時計が現れると願いが叶うそうです」
「そういう系なら危なくなさそう」
と大ちゃん。
放課後やろうという李奈ちゃんの提案で私たちは放課後集会室にきた。
順番は李奈ちゃん→大ちゃん→夢ちゃん→私。
時計は自分にしか見えないそうなので、みんなで報告を待つ。
最初に李奈ちゃん。
「うーん」
見えなかったみたい。
次に大ちゃん。
「なんか見えた」
目の悪い大ちゃんでも見えたの?
みんなで顔を見合わせる。
そのまた次に夢ちゃん。
「何も見えないよ?」
残念。
そして、ついに私。
そっと目を開けてみる。
見えていた何かは、だんだんと形を現してきた。
「時計だ、、」
思わず呟く。
「え?」
というみんなの反応。
でも、見えた。
何か、いや時計が確実に。
とりあえず報告会。
「大ちゃんと私だけが見えたということは、大ちゃんと私には何か共通点があるはずだよね」
みんなで共通点を出し合っていく。
「イケメンアンド美人!顔がいい!」
「でもそれって見える理由になる?」
みんなで考え込んでいたら、
「2人とも目が悪い!」
という夢ちゃんの指摘が来た。
「確かに2人とも目悪いよねー」
「でも、はっきりと見えるってなんか不思議じゃない?」
結局その日はそんな感じで終わった。
そして、後日民俗学の先生と、霊感のある波ちゃんを呼んでやることにした。
みんなでそわそわしていると山崎育三郎さん似の長身イケメンが来た。
山崎育三郎推しとしては嬉しい。
「今日は呼んでくれてありがとう。藤本大学で准教授をしている橋本優と言います。隣にいるのは助手の山本圭くんです。よろしくね」
隣の助手は目がクリンとしていて赤楚衛二似である。
優さんに劣らないイケメンだ。
「時計というのは?」
優さんが質問すると
「あれです」
と波ちゃんが案内した。
「特に何も感じませんが」
と圭さん。
「私もです」
と波ちゃん。
「今時計は動いているよね?」
と優さんが確認すると、
「はい」
と二人の声がした。
「じゃあ、始めるね」
優さんの声で集会室が静かになる。
優さんは黒板に手を当てている。
突然波ちゃんが苦痛に顔を歪めた。
そのまま倒れてしまう。
「保健室が他の教室に運んであげてください!」
という圭さんの指示で何人かが動いた。
「それにしても、オーラを感じる気がします」
と圭さん。
「さっきまで何も感じなかったんですよね?」
と質問してみると、
「うーん」
という回答が返ってきた。
私にも霊感はあるが、オーラまではわからない。
すると時計がカチャリと音を立てて止まった。
優さんがやけに興奮し始めた。
「わぁ、すごい!本物の怪異・・・?」
とても興奮していて、今にも時計にぶつかりそうである。
その横で圭さんが
「先生!せんせっ!」
と必死にとめている。
やっと落ち着くと、ため息をついていた。
ふと廊下を見ると1人の少女が立っていた。
高校生だろうか。
紺のブレザーに紺のスカート。
胸には赤いリボンをつけていて、黒い長めの靴下を履いている。
ミディアムの長さの髪。
そしてミント色のスニーカー。
かなりの美少女だ。
しかし、半透明なので幽霊だ。
少女は私の方を振り返った。
そして、自ら語り始めたのだ。
自分が亡くなった日のことを。
★ ★ ★ ★ ★
彼女には彼氏がいた。
名前は圭。
当時、高校3年生だった2人は卒業式の帰り一緒に出かけていた。
しかし、コンビニに入ろうとした時、車が激突。
彼女は即死したのだそうだ。
★ ★ ★ ★ ★
「ずっと何故か成仏できなくてさ」
と彼女。
「それは彼氏に未練があるんじゃないんですか」
と私が言うと、
「そうなんだけど結局私、幽霊だからさ、あんまり気づいてもらえないんだよね」
と返事が返ってきた。
「圭さんなら中ににいますよ」
と私が言うと、
「私のこと見えるのかなぁ」
とため息混じりに帰ってきた。
「圭さん霊感あるって言ってましたし、彼女さんですから、絶対に見えますよ」
と私が言うと、彼女はそっと足を集会室に踏み入れた。
「圭、見える?」
圭さんは驚いた様子で、
「由奈なの?」
と聞き返した。
「うん」
「あの時守ってやれなくてごめん。僕だけのうのうと生きて、ずっと苦しんでたはずなのにごめん」
「そんなことないよ」
「ごめん」
「だから大丈夫だって」
そういった由奈さんの体は消えかけていた。
「大好きだよ」
そう言い残し由奈さんは消えてしまった。
「圭さん、彼女さんのオーラとかわかるんですね」
「うーん」
と圭さんは返すと、
「由奈を見つけてくれてありがとう」
とだけ言い、帰っていった。
大騒動の集会室の時計はこれでおしまい。