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閲覧数400突破! ありがとうございます!
これからも皆さんの固定概念をメッタメタと破壊しますので( `・∀・´)ノヨロシクです。
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〈朔side〉
そんなこんなで、俺は壊れた(?)iPadをお風呂に沈めようと思い立つ。
腰かけていたベッドから降りようと、お尻を数センチ浮かしたそのとき。
バキバキバキバキバキッッ
突然、轟音が轟き、ベッドのすぐ横の窓ガラスに亀裂が走った。
……………え???
俺は状況把握が出来ず、ただ茫然とヒビの入った窓ガラスに視線を移した。
「朔――――? 大きな音がしたけど、大丈夫――――――?」
そしてその音は、下の階にいたママたちにも聞こえたようだった。
さっきまで、チカを失った悲しみを拭いされずにすすり泣き、あんなに何十分もかけたメイクをぐちゃぐちゃにしていたママが、今はよく透る野太い声で叫んでいる。
「あ、だ、大丈夫だよママ!」
「朔、今本当に大丈夫なの? ママ上に行こうか?」
それをされると、どれだけ男としてのプライドを傷つけられるか、ママは分かっているのだろう?
そうじゃなくても、この状況をママがすんなりと呑み込めるとは考えにくい。
俺は内心冷や汗ダラダラになりながら、それでもなお下にいるママに向かって叫び返した。
「ほ、ほほ、本当にダイジョブだから! ドアに腕打ち付けてヒビ入っただけだから!」
「え、……そ、それなら大問題だけれど……」
「とにかく、俺もう子供じゃないよ! あっち行ってて!」
俺のその言葉を機に、階段を上がっていた足音が次第に遠ざかる。
『全くこの子はいつもいつも……』というグチは俺の左耳から右耳を通って空気の中へ。
ふう、と胸をなでおろしたのもつかの間。
パリンッッッッッッッッ!!
また、大きな音が響いて、今度は完全に窓ガラスが割れた。
頭から毛布を被って、破片の落下の衝撃をふさいだ俺は、毛布の隙間からそっと部屋を見渡して。
そして……見てしまった。
部屋の中央にいる人物たちを。
多分、こいつらが窓ガラスを突き破って、部屋に侵入したのだろう(大問題だけれど)。
でも彼ら、人物と呼べる存在ではない。なぜなら、それはどれも人の形をしていないからだ。
白いワンピース姿の、長い黒髪の女はテレビでよく見る「貞子」そっくりだし。
中には地獄の番犬「ケルベロス」にそっくりな、頭が三つもある犬が呻き声をあげているし。
そして何より、部屋の真ん中で圧倒的な存在感を放っているのは。
ヘドロ状の体に、無数の目玉が埋め込まれたカイブツの姿だった。
「朔―――――――? ちょっと本当に大丈夫? またドアで挟んだりしたの?」
「そそそそそ、そ、そうだよママ! ちょっと最近疲れてて、PS4足の上に落としちゃった」
「気を付けなさいよー?」
……………え、え、これはどういうことだろう。
夢、だったりするのだろうか。試しにホッペをつねってみるが、赤くはれただけ。
夢じゃない。じゃあこれは一体どういうこと?
もしかして、俺が黒札の資格者だから、黒札に引かれて悪霊が集まってきたとか。
考えがまとまったのと同時に、背中から悪寒が走り、手足に鳥肌が立ち始めた。
やばいよ………! このままじゃ俺、あいつらに食われて終わりだ。
なにか、戦えるもの……ないよ!
チカの部屋だったら、数学オリンピックのトロフィーとかあるけど、隣の部屋だし……!
神様ごめんなさい! できの悪い人間で本当にごめん! チカごめん、許して!
生まれ変わったらママとパパに優しくします! ちゃんと先生の言うことも聞きます!
女子に優しくするし、あぐらかいたり鼻ほじったりしません!
だから、誰か助けてッッッッッッッッッッッ!!!!!
俺がそう心から叫んだときだった。
――――――――「スターバスト!」
誰かが鋭く叫ぶのと同時に、部屋いっぱいに閃光が駆けぬけた。
よく、弾幕ゲームとかでよくある、「ズバァァァン」的な効果音がつく必殺技のような感じ。
閃光に吹っ飛ばされた貞子(仮)やケルベロス(仮)たちが、「プピャギュッ」と変な悲鳴を上げながら光に呑まれて行った。
「……………――?」
「一件落着だな! ほらよー。テメー、このまんまだと永遠に狙われるぞ!」
超絶ロリ声でそう言ったのは、外見年齢15歳くらいの女の子。
黒を基調としたドレスに身を包み、明るい茶髪の髪はヨーロッパの貴族みたいな縦ロール。
そして背中には、コウモリっぽい羽がついている。
「…………助けてくれて、どうもありがとう。………君は?」
「ユルはユルミス・ローズベリ! あっでもぉ、パイセンたちには『ロリ』って言われてっから、ロリでいーぞ。ユルはただパイセンに会いたかっただけなんだけど、まぁ命救えてよかったー!」
乱暴な口調ではあるけど、ハイトーンボイスの、それもショタに言われちゃ全てが「可愛い要素」にチェンジ。シアの可愛さはちょっと怖いけれど、この子の可愛さは純粋そのものである。
あぁぁぁ、尊い……。ギュってしたい。抱きしめたい。
「ん? 君、苗字はローズベリなの?」
「さっきからずっとそう言ってるじゃん」
「いや、君と同じ苗字のシアって子に、つい最近会ったばっかりだから」
もしかして、家族―だったりするのかな?
シアも、『姉は札狩の方についたからメーワク』とか言ってたし。
よくよく見ると、ユルミスの顔はシアにそっくりだ。
「………別に、同じ苗字の人がいただけ。つーかさ、あんたと一緒に逃げようかと思ってんだけど」
ユルミスは一瞬の間をおいて、視線をそらして言った。
「あ、そ、そうですか」
「パイセンが百木なんちゃらと一緒にいるらしーから、そいつのことも知りたいし」
………ん? 百木、なんちゃら?
百木はよくある苗字じゃない。もしかして!
「その、百木なんちゃらさんは、ひょっとしてチカっていう名前だったんじゃない?」
「おー、よく知ってるなー!」
「その子、俺の双子のお兄ちゃんなんだ。だから、一緒に行きたい!」
「テメー、百崎チカの弟なんだな。ってかよく見ると顔も似てるし。名前、何ていうの?」
ユルミスさんユルミスさん、いい流れで悪いんだけど一つ突っ込ませてもらうと。
百崎じゃなくて、百木です。
「朔。百木朔、中3」
「んじゃ、テメーのことは今日から『ももたん』だ! 嫌だとか言ったら魂抜くかんな!」
「ももたんっ………!! 俺死んでもいいかも……! って、魂、抜くんですか?」
「魂のスープ、めっちゃうめーんだよ。お前も飲むか?」
…………ご遠慮しときます。
というか、魂抜いたり、身体を両断したり、人間の脚食べたり……。
天国って、もっとDon’t warry be happyなところかと思ってたんだけど……。
「あ、人間の脚食べるていうのは、悪魔族の冗談みたいなもん。だから真に受けなくていーよ!」
「大分エッジがきいた冗談!!!」
というわけで、ユルミスという悪魔(?)の少女が、今日から俺の味方となり、一緒にチカを探す手伝いをしてくれるようになったのだった。
それはいいとして、………………窓ガラス、割れちゃったze☆
……どうすんだよ、これ。