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カオスヘッドな僕ら【連載終了】
作者: むう  (総ページ数: 51ページ)
関連タグ: コメディー 未完結作品 妖怪幽霊 現代ファンタジー 天使 
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10~ 20~ 30~ 40~ 50~

*13*

 
〈朔side〉

 今日は土曜日なので、俺―百木朔は朝から自室にこもっている。
 下の階ではママのすすり泣く声が聞こえる。
 愛する息子を失った悲しみを、ママはずっと引きずっている。
 そんなママの背中を、パパがさっき優しくさすっているのを見かけた。

 俺の勉強机の上には、写真立てが三つほど置かれてある。
 一番小さいやつには、赤ちゃんの頃のチカとの写真。
 中くらいのやつには、七五三の時神社で撮ったチカとの写真。
 一番大きいやつには、小学校の卒業式の日、友達数人とチカと撮った写真。

 小学校卒業後、頭が良かった彼は近所の公立中学じゃなくて、中学受験して私立の中学へ進学した。
 俺もその中学の入試を受けたけれど、あっさりと落ちた。
 チカと一緒の中学じゃなくても、実際上手くやっていけている。
 それでも、もう少し兄弟で過ごす時間を、満喫したかった。

 チカが幽霊だと知った時、会いにいけることが嬉しかったけど、パパやママはチカにもう一生会えないことに、少なからず胸が痛んだ。
 俺だけ、いいのかな。


『ねーねーチカ! これ、聞いてみて!』
『それ、またデスメタルでしょ。最近の流行りの曲とか、興味ないの?』
『俺の中ではこれが流行りなの! ほらほらー。再生するから感想ちょうだい!』

 
 こんなふうに、兄が参考書とノートを読み比べながら勉強していた時、俺はぐいぐい身を乗り出して、半ば強引におススメの曲を進めることがあった。
 でもチカは失礼な弟を怒ったりせずに、まぁ少し迷惑そうではあったけれど、それでも優しく俺の話を聞いてくれたっけ。


 これは、チャンスかもしれない。
 今までチカには沢山世話になったから、こんどは俺の番だ。
 ここからが、朔ofストーリーだ。ここが、リスタート地点なんだ。

 黒札だろうが、流行に疎い性格だろうが知ったことか。
 俺は俺のやり方で、チカに会いに行くよ。


「というわけで……シアちゃんから盗んできたiPadでチカを探したいんだけど…これ、どうやって使うんだろう……?」

 シアのiPad(悪魔が最新機器を持ってるのもおかしな話だけど)は、可愛い紫色。
 人間が使うものと同じようなつくりだ。
 ホームボタンがあって、長押しすればsiriもとい、『ari』が「コンニチハ」。

 ……天界のグローバル化ってすごい。


「Hey ari。iPadの使い方を教えて」
≪はい。まずは、両足がちゃんと地面を踏みしめているか、確認しましょう≫



 ……………んん?
 何か今、変じゃなかったか?

 

「うん、ちゃんと地面を踏みしめてるけど……」
≪ちゃんと、指はついていますか? 脚は切断されてありませんか?≫
「怖いんだけど!??」

 流石、悪魔のiPad。AIも中々のサイコパス脳だ。
 初めてだよ、四肢が両断されている前提でAIに話しかけられるの。
 万が一そんな状態で、多分操作できるだけの力なんかないよ?

 
「あ、じゃあさ、チカの居場所を教えて」
≪地下駐車場の、web検索結果はこちらです≫

 あ、そーゆーところは同じなんだね。
 滑舌が悪いと、siriがちょくちょく聞き取りをミスるやつ。
 

「百木周の居場所を教えて」
≪かったりーな≫


 …………………んん?
 今、聞き間違いじゃなければ「かったりーな」と聞こえたんですが……。
 おーい電気屋さん、今すぐ返品してもいいですか? 電話の子機はどこ行った?


 
≪百木周は、身長158㎝、貴方の方が若干小さいですねアハハハハ≫
「二択だ選べ。お風呂に沈められるのがいいか、マンションの48階から落とされるのがいいか」
≪お風呂は38℃設定でお願いします。マンションの階段を登るときは、人にすれ違ったら挨拶を≫


 ああ、もうコイツはダメだ。
 シアちゃん、こんなAIをよく相手出来るなぁ。俺は開始3分でガチギレしたよ。
 こんな調子で、本当にチカに会えるのかなぁ?
 

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