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作者: メタルメイドウィン ◆B/lbdM7F.E (総ページ数: 25ページ)
関連タグ: メイドウィン小説SEASON3 ウマ娘 たぬき要素有り オリキャラ
*21*
タキオンの表情は変わらない。
たくっちスノーは呆れ顔だ。
シンボリルドルフは表情を変えずに聞いていた。
灰作はタキオンの手を握ったまま、目を離さない。
タキオンが口を開く。
灰作が握っている手を握り返し、灰作の目を見つめ返す。
「私も私で、私の実験に付き合ってくれる人が欲しいだけなんだ」
「ただそれだけの為に、お互いはここまで来た」
「君が私と一緒に来てくれるなら、君の望む限り最高のモルモットにしよう」
「ま、刺激はあるさ…で、さっきの答え合わせだったな」
「……さっき言った通り、常人のフリして生きてたら失敗作ばらまいて、うっかりトレーナー権を逃した、本当に鈍り始めたんだな」
「だから、また実力で取り戻した」
「実力…本当にあれを実力って言っていいの?」
「ある世界で大規模パンデミックが発生した、人が突然変異で虫になるというバクテリアがばら撒かれた」
「ある人物がその薬の特効薬を出した、それを提供する条件が」
「俺をアグネスタキオンのトレーナーにしろ、だろ?当人の目の前でもったいぶるな」
灰作の返事を聞いたタキオンは笑みを浮かべた。
灰作に見えないよう、ルドルフに目配せをする。
ルドルフはそれに応えるに首を振る。
灰作はタキオンに背を向ける。
「言っとくが虫の件は俺じゃないぞ、何かしらに貢献すればURAも動かざるを得ないと思っただけだ」
「何かな、ここに来たのは樫本辺りに探ってこいとでも言われたのか?」
「好奇心」
「そう…だが実際成功したし役に立ったからいいじゃないかね」
「そういう問題じゃねぇだろ……失敗したら時空犯罪者になってもおかしくないのに」
タキオンの言葉を遮るようにたくっちスノーが言う。
ルドルフ達が言いたいことは分かる、確かにこの男を野放しにするべきではないだろう。
しかし、ルドルフにはどうしてもこの男が危険人物だと思えなかった。
それはタキオンも同じようで、二人は黙っていた。
「それで、お前はプロジェクトを進めなくていいのか、俺に構うよりはそっちの方が大事だろ」
「あぁ、今はいいよ俺も暇だからお前と会話してるわけじゃないし」
「……たくっちスノー」
「何?」
「……いやなんでもない」
「ふーん……じゃ、俺そろそろ行くわ」
タキオンが小声で話しかけるが、たくっちスノーは気にせず、ルドルフと共に研究室から出ていった。
「トレーナー君、私からも一つ質問がある」
「何よ、タキオン…俺そろそろ薬作りたいんだけど」
「彼が言っていた事件は、そして君の真意はどこまでも本当なのかな」
「そんな事気にしてなんになる?」
「……何にか、ならあえて私はこう答えよう」
「トレーナーくん、私が君をトレーナー君として選んだのは、君が望まない平凡な君を見たからでもある」
「…………」
「大口叩いたけどさぁ、俺がお前をまた選んだのって……」
「何もしてないとなんか勝手に死んでそうって思ったからなんだよね」
「…………」
タキオンは絶句していた。
灰作は自分の発言がツボに入ったらしく、笑い転げていた。
タキオンはため息をつく。
灰作がタキオンの方を見て、呟くように言った。
まるで独り言のように。