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いつだって私達は。
作者: のゆり  (総ページ数: 17ページ)
関連タグ: 熱愛 依存 サイコパス 風俗 復讐 自惚れ 嫉妬 
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10~

*6*


 ドンッ

 その音と共に、私の防音イヤホンは外れ、一瞬で人の声が流れ込んで行く。
 慌てて耳を塞ごうとするが、もう遅い。
 ぶつかった人が、私があまりにも動揺しているから、
 「大丈夫ですか」
 と目を合わせて声を放った。

 プツン

 死神の呼ぶ声が、聞こえた気がした。

 心配する若い男性に向かって、勝手に手が伸びる。
 首にグッと爪を立て、皮膚を破っていく。血が流れる。
 血を見てさらに興奮してしまい、男性の頬を掴んで右にまわす。
 大きく目を見開いて、あちこちから血を流す彼を、どうしても殺したい。
 ___やっぱり私は、サイコキラーを克服できなかった。
 目から涙が溢れる。紙袋に血が付く。
 「ごめん、私…もう抑えきれないや」
 その言葉を放ってからは、何一つ覚えていない。













 気が付くと、辺りは血だらけになっていた。
 原型が無いぐらいぐちゃぐちゃで、眼球はちゃんと2つずつ転がっている。
 私に意識が向かい、自分の姿を確認すると、手には血が。足には包丁が。
 あぁ、私、殺っちゃったんだ。
 お土産の紙袋にも血が付着していて、中身を確認すると、まだ無事だった。
 持って帰るか。
 でも、服や靴の血が気になる。足も痛い。
 無人レジ___デパートの人を全滅させたから、全部無人だけど。
 服と靴を適当に買って、ちゃんとお金を置いて、着る事にした。
 付着した血を取りたいのでトイレに行き、ワンピースと百合菜の靴を水で洗った。
 だいたい取れたので袋に入れて、緊急時用の梯子でデパートを出る。

 防犯カメラなんて付いてない。それぞれの店内にしか付けてない、頭の悪いデパートで良かった。
 だから、私が犯人だという確信には至らない。
 証言者も居ない、原型が無いから指紋採取もできない。
 靴の跡だけじゃ特定できないし、私物はお持ち帰り済みだ。
 本当、サイコキラーには良いデパートだったな。

 音の無い音楽を、イヤホンで再生する。
 下を向いて、点字ブロックを足で辿る。何て事無い、サイコキラーの日常。
 今日、人を殺して無くともこう帰っていたのだろう。
 エレベーターに乗って、住んでいる部屋まで歩く。

 百合菜に手紙を書いて、冷蔵庫にマカロンを入れておく。
 隣の麗奈と結花の部屋にワンピースとアイシャドウ、私の手紙を置いて帰った。
 きっと今日の事はニュースになるんだろうな。
 別に、証拠隠滅した訳じゃないんだけど、サイコキラーが悪いから、私は悪くない。
 そう思うからこそ、私は人を殺したくない。

   続く

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