コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- なるやん、時々へたつん。【シリアス編進行中】
- 日時: 2016/01/04 11:34
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=38844
- この小説はナルシスト×ヤンデレの2人の、よく分からないイチャイチャ(?)物語と、主人公×ツンデレのラブコメです……読めば分かります!!← 
 とか言ってますけど、なるやんの部分少なめです←
 どっちかというと、へたつん、時々なるやんですw というか、その四人以外のラブコメも多めです←
 気が向いた時に更新するので、更新止まったら「あ、この作者飽きたんだな…」とでも思っといてくださいw
 ≪2014.12/30執筆開始≫
 +゜*。:゜+.゜目次+゜*。:゜+.゜
 キャラ紹介>>01
 オリキャラ応募用紙>>07
 プロローグ1「なるへた」
 >>02>>03>>04
 プロローグ2「やんつん」
 >>05>>06
 第1話 「俺じゃ釣り合わないから」
 >>10>>11>>12>>13>>14
 第2話「鈍感恋模様」
 >>17>>18>>21>>24
 第3話「君とスポーツバッグ」
 >>25>>28>>29>>30>>31
 第4話「転校生トライアングル」
 >>32>>33>>34>>35>>38
 第5話「きっと恋は変わってく」
 >>43>>44>>45>>46>>47>>50
 第6話「恋心に変わった日」
 >>51>>54>>55>>56>>57>>58>>59
 第7話「首吊りなんかじゃ救われない」
 >>61>>62>>63>>64>>65
 第8話「あっかんべをあの日のように」
 >>66
 《祝、参照1000超え 2015.12/30》>>60
 ゜・†。+゜お客様゜・†。+゜
 椎名さん >>08>>15すごい良いキャラありがとうございます!!!ヾ(*´▽`*)ノ
 春音>>19>>26>>40ボクっ娘&可愛い系男子キャラありがとΣb( `・ω・´)グッ
 むむさん>>22ハイキュー良いですよね(((
 四之神綾芽さん>>36ハイキュー好きがいてうれしいです!!(そこじゃない)
 正義さん>>39マトモなキャラありがとうございます!!アレンジしがいが(((((
 てるてる522>>48>>52久しぶり&ありがとう!!…φ(・ω・*)
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- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.53 )
- 日時: 2015/11/16 22:31
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- あざっす!!! 
 笑ってもらえて嬉しいです(*´ω`*)
 優人くんはですね、とにかく提供してくださった正義さんに謝りたい気持ちでいっぱいなんですw
 こんな変態キャラにするはずじゃなかった…(((
 友哉派多いですねw かく言う私も友哉派←
 主に友哉なんですが、幼なじみ三人には過去色々あったり…なので、続きもお楽しみに!((((
 てるてるの小説も応援してる!!ヾ(o´∀`o)ノ
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.54 )
- 日時: 2015/12/28 12:46
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- 「…………ない……!?」 
 何がって、定期入れ(を模したつっくーの写真入れ)が、だ。全く、あの写真高かったのに。
 あの写真はいわばお守りだ。辛くなった時や疲れた時にあれを見ただけで疲れが吹っ飛ぶから、ないとやっていけない。
 もし本当になければまた買ってもいいが、一人暮らしをしているため、無駄遣いはできない。それに、仕送りがとても少ないのだ。
 何故なら、この高校に決める時に親と話し合った際、僕は
 「田舎じゃBlue Nightのライブはやらないですが、都会に出てくれば行き放題です。最初から都会に住めば、交通費は安く済みます。
 それにつっくーはどうやらこの街の高校へ行くらしいので、この街の高校へ是非行きたいです。一人暮らしをしてでもこの街の高校へ行かせてください」
 と正直に言ったからだ。
 両親には大反対されたが、結局「仕送りは最低限しか送らない。後は自分で稼げ」という条件付きで了承された。
 そのため、仕送りがとても少ない。一ヶ月分の家賃にギリギリなるかならないかだ。立地も悪ければ日当たりも悪い、古くて狭いアパートだというのに。最低限すら送らないのか、うちの親は。
 まぁとにかく、あれがないと困る。なので一度家に戻ったが、探すために僕は学校へ舞い戻った。
 「……参ったな……」
 家を飛び出してきて、通学路を全速力で駆け抜け、昇降口の前に立ったところであることに気がついた。
 あまりにも急いでいたためか、とんでもない格好になっていたのだ。
 黒いTシャツの上からシャツを着、ボタンも第三まで開け、シャツを出していたので、すごくチャラく見える。
 まさか自分が、服の上からシャツを着てしまったとは思わなかった。どれだけ焦ってたかこれで分かる。
 さらに、家でゴロゴロしていた時の寝癖が逆に、そういうセットに見える。慌てて撫でつけても全く直りゃしない。
 いつもしている黒縁眼鏡をかけていないことも相まって、「誰だこのチャラ男」状態だ。
 せめてシャツを閉まってボタンを閉めるか、と思ったが、焼け石に水な気がする。
 来る途中で同級生に一切気付かれなかったが、こういうことか。自分でもびっくりするほどに印象が違う。
 どうするか、と悩んだが、ここで戻るという選択肢は存在しない。早く僕のつっくー(ただし写真)を取り戻したい。取り戻して早くキスをしたい(ただし写真に)。
 ままよ、とそのまま上履きを履きつ潰して急いで教室へと駆けた。
 つっくー(ただし写真)は無事に机の中に入っていたが、帰る時が問題だった。
 「……やっぱり、どうしてもダメなんですか、友哉くん?」
 昇降口から声が聞こえた。この優しい声は考えずとも分かる。つっくー(ただし本人)だ。
 友哉くん、ということは吉岡さんと喧嘩でもしたんだろうか。
 とにかく隠れて様子を伺おう。そして、話の内容によっては吉岡さんを叩きのめしてやろう。つっくーファンはいつでもつっくーの味方だ。
 「…………考えたけどやっぱ____俺じゃ無理だ」
 何が無理なんだ一体。僕は昇降口のロッカーの陰に身を隠しながら、盗み聞きをしていた。
 「……何でですかっ?かっこいいし、優しいし、気遣いができるし、スポーツ万能だし、それに____」
 「ちょ、ストップストップ。お前絶対催眠術にかかってんだろ。何度も言ってるけど、そんな王子様かってくらいのイケメンじゃねえし」
 「王子様ですよっ!わたしにとっては」
 「だからそれがおかしいっつってんだろ!どこをどう見ればこのクズが王子様に見えるってんだよ」
 「クズじゃないですっ!王子様ですっ!」
 「……お前一回精神科行ってこい。こんな、ブサイクだしキモいし運動も勉強も全然できねえし性格最悪だしそれに____」
 「友哉くんこそ催眠術にかかってますっ!何でそんなに自分を卑下するんですかっ?」
 ____どうやら、喧嘩は喧嘩でも「友哉くん大好きです」「何でこんなクズなんだよおかしいだろ」というような言い争いらしい。卑屈だという噂は本当だったか。
 っていうか、付き合ってるなら今更そんなこと言わなくても。
 「何でって。俺がどうしようもないクズだからだよ、決まってんだろ」
 「クズじゃないですっ!もっと自信を持ってくださいっ!」
 「持てるかよ。俺がクズなのは間違いないだろ。つーか、お前いい加減目覚ませよ。俺なんかじゃ唯の黒歴史になるだけだっつの」
 ____どうやらこれは、相当根深い卑屈さだ。
 よくある、「私ブサイクだから〜」と言いながら自撮りアップして「ブサイクじゃないじゃん」「可愛いじゃん」待ちの人とは訳が違う。
 吉岡さんは心の底から自分をどうしようもないクズ野郎だと思っているらしい。どこをどう解釈すればそうなるんだか。
 「____もしかして、わたしと付き合えないのって他の理由ありますか?」
 ____ん?付き合えないのって他の理由ありますか、って……付き合ってないんですか!?
 「他の理由?何だよ」
 「それは____」
 しばらく声が途切れ、やがてぽつりと呟くような声がした。
 「____他に、好きな人がいるとか。桃音ちゃんとか」
 「…………桃音?何でまた」
 桃音____あぁそうか、代々木さんか。
 「だって友哉くん、桃音ちゃんには遠慮がない気がするんですもん。あと、友哉くんが使っているエナメル、桃音ちゃんからのプレゼントですよね?きっとわたしがあげても、遠慮して受け取らなかったんじゃないんかな、って思って」
 「それは____桃音が……」
 自分でも訳が分からないようにどもる吉岡さんの声が聞こえた。
 不意にあははっ、とつっくーが笑うような声がした。涙混じりにも聞こえる湿った声だった。
 「やっぱり、ですか。わたしに遠慮して、変な断り方しないでいいんですよっ?桃音ちゃんが好きだから唯とは付き合えない、ってはっきり言ってくださいよっ!
 ____ホントの理由聞けて、よかったですっ。そうじゃないかなとは思ってたんです。……これでようやく、諦めつきました。今まで、ありがとうございましたっ!」
 そして、駆けていくような足音がし、だんだん小さくなっていった。
 その音がしなくなった頃、「…………どうすりゃいいんだ、俺」という吉岡さんの呆然としたような声がした。
 僕は考える間もなく、吉岡さんに近付いていた。
 「つっく____じゃなかった、月詠さんを追いかけないの?吉岡さんはそれでいいの?」
 「いやその……。つか、誰だお前」
 怪訝そうな顔で吉岡さんにが言う。
 「え?僕は中嶋だよ。中嶋優人」
 「…………うっそ!?」
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.55 )
- 日時: 2015/11/17 16:59
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- 「え、だって中嶋 優人って____ゆうさんっ?お前あのゆうさんなのっ!?」 
 「うん、そのゆうさん」
 そこで僕は思い出した。そっか、今すごい格好してるんだっけ。
 「……ゆうさん、そんなチャラい格好する奴だっけ」
 「急いで再登校したからTシャツの上からシャツ着たのに気付かなかっただけ」
 「……髪型は」
 「寝癖。家でゴロゴロしてたから」
 「……眼鏡は」
 「かけ忘れた。元々そんなに度強くないしね」
 「はあー……。これはまた、随分と印象違うな……」
 感心したように呟く吉岡さん。
 「髪、それくらい跳ねてる方が逆に似合ってると思うわ。それと、度強くないんだったらかけないことをお勧めする」
 そして苦笑いしながら「ただ、Tシャツ中に着て第三まで開けるのはやめといた方が無難だな」と吉岡さんは言った。
 「そっか、じゃあ考えとく」
 僕はそう頷いた。____あれ?何の目的があったんだっけ。
 ____そうだ。
 「……じゃなくて!月詠さん追いかけなくていいの?このままじゃ月詠さん、振られたと思っちゃうよ?」
 吉岡さんは視線を落として考え込んだ。
 「………………いいんだ、それで」
 そして、徐に呟いた。
 「何で!?付き合ってるんじゃないの?」
 「は!?そういう噂でも流れてんの!?」
 酷く驚いたように吉岡さんは顔を上げた。
 「噂というか……皆そう思ってるよ?」
 「うっそだろ……っ!?うっわー、唯に悪いことした……」
 ぶつぶつと呟く吉岡さんに僕は疑問を投げかけた。
 「……何で、月詠さんと付き合わないの?月詠さんの何が不満?」
 すると吉岡さんは焦って手を振った。
 「い、いやいやいやっ、不満なとこなんてひとっつもねえよっ?可愛いし、性格いいし、料理上手いし、挙げ句の果てには人気アイドルだし。だから俺なんかじゃ付き合えねえんだよ」
 「……告られてるのに?」
 「告られてるからこそ、だよ。早くあいつは目を覚ますべきだったんだ」
 「……卑屈過ぎない?」
 「そうか?皆思ってるだろうことを言ってるだけなんだけど」
 「……そ、そっか」
 ……駄目だこれ。手の施しようのないネガティブだ。しかも、あっけらかんとしたネガティブだからさらにたちが悪い。
 「……俺なんてどうせ……どうせ……」みたいないじましい奴じゃなく、「え?俺クズだろ?」みたいな、それを事実として平然と受け止めちゃってる感じがする。
 「……代々木さんは?」
 そう訊くと、途端に吉岡さんは黙りこくった。やっぱり、好きなのかな。
 「………………恋なんて、したくないんだけどな…………一体何なんだよこれ…………」
 そう口の中でもごもご言ったかと思うと、「……あー!」といきなり叫んだ。
 「わっかんねえわ!自分でも何が何だかっ!だから保留っ!」
 「そっか、じゃあ聞かない」
 「おう、そうしてくれ」
 「……じゃ、月詠さんは追いかけないんだね?」
 「付き合わねえし。なのに追いかけんのはおかしいだろ?」
 「……そっか」
 僕はそう返事すると、靴に履き替え始めた。
 「……ゆうさん、もしかして」
 「うん、僕が追いかけて慰めに行く」
 毅然として僕が告げると、「ま、待った!」と何故か慌てて吉岡さんが声をかけてくる。
 首を傾げると、吉岡さんは僕の胸元あたりを指差した。
 「下に着てるTシャツ、脱いだ方がいいぞ。いきなりそんなチャラい格好のやつに話しかけられたら、ちょっとひくと思うし」
 「そんなチャラく見えるかー……うん、分かった」
 そう言いながら僕はその場で着替え始めた。
 「おまっ、ここで……まぁいいか。誰も通らないだろうし」
 吉岡さんは焦ったように目を剥いたが、すぐ諦めたようにため息をついた。
 「じゃあ僕行くから」と言って走り出すと、後ろから吉岡さんの声が降ってきた。
 「ゆうさーんっ!絶対お前の方が唯と似合ってると思うぞーっ!」
 ____どうやら吉岡さんは、僕がつっくーのことを好きだと勘違いしたようだ。そしてお世辞まで言ってきた。
 嫌だなぁ、僕はしがないドルオタなのに。
 ____つっくーは、帰り道の途中にある小さな公園のベンチに座っていた。座ったまま、顔を隠すように太ももに顔を突っ伏していた。
 近くまで寄ると、微かに鼻をすする音としゃくり上げる声がした。
 追いかけてきたはいいものの、どうすればいいんだろう、と僕は今更ながら悩んだ。何も考えずに追いかけてきてしまった。
 しばらくその場で固まってごちゃごちゃ考えたが、普通に慰めればいいか、という結論に達した。
 僕はベンチの空いたスペース、つまりつっくーの隣に座り、ポケットからハンカチを取り出して肩を叩いた。
 ハンカチやティッシュや絆創膏などを持ち歩く人は、男子はもちろん女子でも少ないという事実を最近知った。
 一体皆は親にしつけられなかったのか。トイレの後には手を洗う、くらいに普通なことだと思っていたが。そのせいで「女子力高い」「おかん」なんて不本意極まりないことを言われるが____って、今はそんなの関係ないか。
 不思議そうな色を浮かべ、つっくーは顔を上げた。その瞳は赤く潤んでいた。
 その顔に一瞬理性が吹っ飛びかけたが、何とか持ち堪え、ハンカチを差し出した。
 「泣いてたから気になって。月詠さんは笑ってる方がいいよ」
 つっくーはハンカチをおずおずと受け取ってから、湿った声で尋ねた。
 「……誰、ですか……?」
 困ったな、そんなに分からないものかな。髪型と眼鏡を変えただけで、こうも変わるものか。
 「えっと、中嶋 優人って言って分かる?」
 一応一緒のクラスだが、これで「……えぇっと、誰ですか?」なんて聞かれたら立ち直れないかもしれない。でも、接点ほぼないけど、分かるかなぁ。
 「……えっ?もしかして、あのゆうさんですかっ!?」
 よかった、分かってくれて。
 「うん、そのゆうさんです」
 「全然違いますね……。分からなかったですっ……」
 驚いたように言うつっくー。そんな顔もびっくりするほどに可愛くて、つっくー天使説の信憑性がさらに高くなった。
 「何があったのかは分からないし、話したくなかったら話さなくてもいいから、せめて涙は拭いてよ」
 何があったのか分からない、って嘘ぐらい許されるよね、うん。
 「あ、ありがとうございます……何で」
 「何で、って。そりゃ、月詠さんの笑顔が好きだからだよ」
 思わずそう言ってから、しまったと思った。なんだこの気障な台詞。僕が言ったらサムいだけだって。
 すると、つっくーはびっくりしたように目を開き、笑った。
 「ゆうさんもそんなこと言うんですねっ、何か意外ですっ!それに、いつもと全然印象が違いますし」
 あ、笑った。画面越しでも遠くからでも可愛いが、近くで見るつっくーの笑顔は格別だ。しっかり胸に刻みつけておこう。
 「……とにかく、もし悩みとか聞いて欲しかったら今聞くし、邪魔です消えてくださいって言うんならすぐ消えるよ?」
 するとつっくーは
 「邪魔なんてそんなっ。声かけてもらえて、嬉しかったですっ!」
 と少し涙声で言った。うん、天使だ。
 「……あの、一つ聞きたいことがあるんです」
 「何?何でも聞くよ?」
 すると、つっくーは迷ったように口ごもり、やがておずおずと言葉を紡ぎ出した。
 「………………し、失恋って、どう立ち直ればいいんでしょう……?」
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.56 )
- 日時: 2015/12/28 12:49
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- つっくーの言葉が、心にぐさっと突き刺さった。 
 何も伝えてないのに失恋した気分だ。
 ……違う、これは「娘はやらん!」っていう親父の気持ちだ。そう思っておこう。
 失恋の立ち直り方、か。僕が思いつくのなんて二つしかないけど。
 「うーん……。やっぱり、忙しくしてみるとかかなぁ」
 あえてもう一つは言わなかった。
 そう言うと、つっくーは
 「忙しく、ですか。……今でも忙しいので、それで立ち直れるとは……。あ、すみません、せっかく言ってくださったのに」
 と答えた。
 ならばあまり気は進まないが、もう一つを提案しよう。
 「なら、新しい恋を始めるとか」
 「新しい恋、ですか……?確かに、それも一つの案かもしれません……けど、誰に……?」
 なんて答え辛い質問だろうか。
 『僕なんてどう?』なんて言えればいいんだけど、駄目だろうしな。
 というか僕はしがないドルオタ、つっくーは見てるだけで天国だ。それ以上を望むなんておこがましい。
 「うーん……、月詠さんに相応しい人だよね……。あ、三澤さんなんてどう?」
 するとつっくーは苦い顔で首を傾げた。何故だ。
 三澤さんは吉岡さんに負けず劣らずのハイスペックなのに。
 『実はオレアイドルなんですよー』って言われたら百人中九十人以上は「やっぱり」と言うような外見をしているし。
 ただ女子に、本当にアイドルかっていうような対応をとるときがある。よく言えば、ファンサービスが素晴らしい。
 吉岡さんとは違い、もしかしたら自分のカッコよさを自覚してるんじゃなかろうか。
 「三澤くんですか……あの人はちょっと……。____前、偶然友哉くんとの会話を聞いちゃったんですけど、三澤くん、かなりのナルシストだったんです……」
 「うっそ、そうなの?もしかしたら自分のカッコよさ分かってるんじゃないかなとは思ってたけど本当に……」
 いくらハイスペックでもナルシストは勘弁してほしいよね、うん。
 じゃあ駄目元で言ってみるか。つっくーを元気づけるためなら道化にでもなってやる。
 「じゃあ僕なんてどう?」
 すると、つっくーは目をぱちくりとさせた。うん、相変わらず天使。
 「今なら提出課題代行サービスもついてきて、なんと無料でご購入いただけます。お買い求めはこちらから」
 両手を広げてふざけてみせると、「えっ?」と言ってつっくーは笑い出した。
 「ゆうさんもそういうこと、言うんですねっ、意外です」
 「もしかして、ただのお人好しの真面目くんだと思ってた?」
 そう言うと、つっくーは苦笑いしながら首肯した。
 よく言われるんだけど、全然そんなことないんだけどなぁ。
 こう見えても、提出課題以外の勉強は、教科書を十分くらい読むくらいしかしていない。
 だって、勉強する時間なんてあったらつっくー(ただしライブ映像)を愛でていたいし。
 変態?知ってる。
 「ところで月詠さん」
 つっくーは首を傾げてこちらを見た。
 「時間、大丈夫?この後仕事とかないの?」
 するとつっくーはみるみるうちに焦りの色を現した。
 「そうでした……!今日ダンスレッスンがあるんでした!」
 「それは急がないと大変?」
 その言葉に何度も頷くつっくー。
 「もう大丈夫?まだ話聞いてほしかったら後で聞くから」
 僕は気遣うように言ってみせた。
 いえ、決してもっとこの天使フェイスを間近で眺めていたいなどということは思っておりません(大嘘)。
 「大丈夫ですっ、わたし結構立ち直り早い方なんですよっ?それに、ゆうさんと話してたら元気が出てきましたっ!」
 ゆうさんと話してたら元気が出てきました、って何だこの可愛い生き物は。
 これはあれか、強引に迫ってくれと言っているのか(百パーセント違う)。
 立ち上がりかけたつっくーだったが、すぐに「そうだ!」と思い出したように制服のポケットから何かを取り出した。
 何だと思って見ると、つっくーはメモ帳とペンを取り出していた。そこに何かをさらさらと書きつけると、一枚破り、僕にそれを差し出した。
 「……僕に?」
 「はいっ、わたしのメアドですっ!あの、相談したいときはメールしてもいいですか……?」
 思わず受け取る手が震えた。
 つ、つ、つっくーのメアド……だと……!?一生このメモは家宝にしますありがとうございます。
 返事をしない僕を訝しんだように見るつっくーに、慌てて返事をした。
 「も、も、もちろんしていいよ毎日でも構わないよというかむしろ毎日メールさせてくださいお願いします」
 焦り過ぎて気持ち悪い答えになった。ただし本心。
 しかしつっくーは気にせず、「よかったですっ」と笑った。どこまで天使だったら気が済むんだ。
 「じゃあわたし行くので、また明日っ!」
 そう言ってつっくーはスクバを引っつかんで去っていった。
 ____のはいいが、
 「……待って今の僕のスクバだった……!?」
 ……どうやらスクバを取り違えられたようだ。
 別に僕の方は中身を見られても何ら問題はない。やばいものといったら定期入れ(を模したつっくーの写真入れ)のみだが、それは今僕のポケットの中にある。
 問題は____
 「つっくーのスクバを覗くか否か……ッ」
 欲望に忠実になれば、中身を覗いて目に焼き付けておきたい。
 しかしそれがプライバシー侵害なのも重々承知している。
 覗きたい、いやでも、でも____
 「……ち、ちょっとくらいならいいよね?下着が入ってる訳でもないんだし」
 ……僕は最低の人間だ。
 そろそろとチャックを開けていくと、何となく甘く柔らかい香りがした。何を入れたらこんな匂いがするのか。
 そして中にあったのは、教科書、ノート、ペンケース、ポーチなどの勉強道具と、スケジュール表、台本などのアイドルで使いそうなもの。それと、
 「……小説……?」
 表紙にそう書いてある、シンプルなノートが何冊か入っていた。それと、一つ「設定」と書かれた分厚いノートがあった。
 中を開いてみると____
- Re: なるやん、時々へたつん。【オリキャラ募集!!】 ( No.57 )
- 日時: 2015/12/28 12:51
- 名前: 彼方 (ID: dzyZ6unJ)
- 「あ゛ー、つっかれたぁー。アタシにダンスは向かないんだってばぁ。もーアタシはライブ出なくっていいよ、ひたすらバラエティー出てるから」 
 「駄目ですよ、宵那。諦めたらそこで「試合終了?試合終了?」
 にやにやしながら言う星河 宵那にわたしは苦笑いで返した。いきなりス○ムダンクのネタを持ち出されても。
 わたしと宵那は今、ダンスレッスンの帰りで一緒に帰っている。そう、宵那はわたしと同じ『Blue Night』に所属しているアイドルなのだ。
 と言っても、同じグループだから仲良い訳ではない。気が合うから仲良いのだ。事実、わたしは他のメンバーとは仲良くない。
 宵那はファンの間では「よなっち」と呼ばれていて、独特の立ち位置にいる。と言うのも、宵那の売りは歌でも顔でもダンスでもない。
 やる気の無さから来るゆるーい雰囲気と、それに似合わぬ毒舌っぷりなのだ。
 しかし仮にもアイドル、それもスカウトされたくらいだ、決して可愛くない訳ではない。むしろかなり可愛い。
 ポニーテールがよく似合う、目鼻立ちがはっきりした顔だ。
 「でもさーぁ、アタシからやる気の無さ取ったら何も残んないよぉ?例えばさ、いきなりアタシが
 『皆ーっ、いつも応援してくれてありがとーっ!皆のこと、だーいすきっ♪』
 って言い出したらどうよ、キモくない?てか不気味じゃない?」
 「それは確かに」
 「頭打った?大丈夫?ってファンに言われるね、間違いなく」
 「でしょうね」
 アイドルとしては普通なんですけどね。
 「そういえば、さ」
 思い出したように宵那が言う。わたしは首を傾げて宵那を見た。
 「友哉くん、だっけ?とはどうなったのさ?」
 途端に苦味が口の中で込み上げてくる。その苦味をどうにか飲み下し、息を吐いてから答えた。
 「……フラれました」
 すると宵那は目を剥いた。
 「ええぇッ!?唯をフッたりするような男っていたんだっ!うっわ、人間国宝レベルじゃない、そいつ?唯の何が不満なんだろ、逆に知りたいわぁ」
 少し大袈裟な言い方に苦笑しつつ、わたしは付け加えた。
 「友哉くん、好きな人がいたみたいなんです」
 「はぁ、なるほど一途なのね。いいねぇ一途。アタシなんか、すぐ恋に落ちて一週間くらいで冷めちゃうからねぇ」
 うんうんと頷く宵那。そして、「ま、でも?」と笑った。
 「唯なら男は選び放題だしぃ?落ち込み過ぎんのも毒だから、さっさと別の恋見つけちゃいなさいな」
 宵那はどんな重たい話題でも、何でもないようなゆるーい話に変えてしまう力を持っている。これに何度救われたことか。
 「別の恋、ですか……」
 ふと、ゆうさんの顔が浮かんだ。
 ……って、ゆうさんはわたしを元気付けるためにあんな冗談言っただけ、なのに。変に意識しちゃって馬鹿みたいです。
 でも、髪型が違って眼鏡をかけていないゆうさんは、控えめにいってもかっこよかった。
 「お?なになに?もう候補いる訳?きゃー、案外恋多き女な訳ぇ?」
 「そ、そんな訳ないじゃないですかっ!あ、そ、そういえばわたし、新しい小説書いたんですっ!」
 誤魔化すように話題を変えた。宵那もあっさりと興味の対象を変える。
 「よっ、来ました唯先生!」
 そしてスクバを開けてみると__
 「……あれッ!?」
 そこにはわたしのものは何一つとしてなかった。というかこれ、
 「……バッグ、取り違えました……」
 ゆうさんのスクバだった。
 __どうしよう、あの中には中二感満載の設定の小説があるのに。見られたら死んじゃいます。
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