コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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†he legend of story【カキコの書き手登場】
日時: 2011/04/05 00:06
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)
参照: http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=5292

↑登場参加希望はこの掲示板にカキコしてくださいなv【凡のリクエスト掲示板(こっちに移動しました!)】


お し ら せ ☆



カキコのイラスト投稿(お絵かきカキコ2号館)で
【書き手さんRPGver.!描いてみた☆】企画をしておりますv
ぼんの名前で出しているので、よかったら見に来てくださいなww

今のところ

★ライトサイドのそるとs、黒兎s、萌恵s、友桃sの集合絵
★野宮詩織sオンリー絵
★ダークサイドの紗夢羅s、月読愛s、ゆんs、山下愁sの集合絵
★だいこん大魔法s(人間ver)オンリー絵
★おまけ2点(そるとくりーむfeat.だいこん大魔法,グリモア城)
、挿絵1点(Ep10)追加!
★大七賢者の集合絵

をうpしています!
下手なイメージ画ですが、凡のなかではこういう感じ☆






————…この物語は、カキコで執筆している方々…通称『書き手』の方々が主人公…—————


●あらすじ


舞台は【魔法大陸ファンタジア】
この大陸には太古の昔より2つの王国があった…

1つは人間の住む【桃源郷ノスタルジア】

もう1つは、魔族が住む【魔界都市グリモア】

この2つの国は隣接していながらも交わることのなく、冷戦状態のまま張り詰めた時間が過ぎていった。

—————————……そして、ついにある日。

【桃源郷ノスタルジア】の王と王女が魔物によって襲撃されるされる事件が起こる。
不可侵条約を結んでいたにも関わらず、魔族が【桃源郷ノスタルジア】に入り込んだのだ。

幸いなことに王と王女は生きながらえたが、王宮の被害は大きかった。
この事件によって人間と魔族には決定的な溝ができてしまった。

…さらに、判明したことがある。

それは、その事件の首謀者が、【魔界都市グリモア】の現魔王だったとされることである。
この知らせは【桃源郷ノスタルジア】にとって皆を震撼させるものであった。

そして…必然のことわり。

人間は魔王討伐の運動を巻き起こした。
長年、危うくも音沙汰なかった両国に「戦乱の世」が訪れたのである。

————…そんな中、


【桃源郷ノスタルジア】で、一人の若者が予言を受けた。


『おまえは、必ずや魔王を倒す運命にあるであろう』


預言者はそう言って立ち去る。民衆は、その若者を強引に魔王討伐特別チームの筆頭として持ち上げた。

そうして…王宮からも魔王討伐を命じられた若者は、仲間と共に【魔界都市グリモア】へ出発することになるのだった。


魔王の狙いとは…?若者と仲間の運命は…?


RPG系ファンタジー小説、開幕!!


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……うん、ちょっと色々やりすぎちまった感はあるものの頑張っていきたいですw

まだまだ登場人物が少ないので、どしどし参加者募集してます。
上のURLから「【凡のリクエスト掲示板(こっちに移動しました!)】」というスレに行けますので、もし「出てやってもいいよv」って方がいればカキコしてください☆
待ってます!!


〜現在出演予定の皆さま〜

【味方サイド】
 
だいこん大魔法s(Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜執筆中☆)
黒兎s(腹黒スペードじゃっく執筆中☆)
友桃s(Enjoy Club 執筆中☆)
そるとくりーむ ◆04Sod1e4Kw s(真白-masiro-執筆中☆)
萌恵 ◆jAeEDo44vU s(森の最奥部には妖精が住んでいる執筆中☆)
美波s(読み手の方です★)
コウタ ◆qr.mj5XW0Q s(ハチャメチャな日常生活執筆中☆)
黎 ◆YiJgnW8YCcs(女神と二人の契約者執筆中☆)



【ダークサイド】

紗夢羅s(白泉荘のひまつぶし執筆中☆)
山下愁 ◆kp11j/nxPs s(俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-執筆中☆)
月読 愛 ◆o9WCM38pVQ s(古本少女!執筆中☆)
ゆn ◆sJpB9ckHBE s(奇跡と軌跡執筆中☆)
魔王軍元帥(モントルア王国戦史執筆中☆)
スバルs(読み手の方です★)
銀弧s(『意味がわかると怖い話』執筆中☆)
野宮詩織 ◆oH8gdY1dAYs(おいでませ、助太刀部!!
執筆中☆)
影闇の王s(天使はこの世界を救うため道標執筆中☆)
Neon ◆kaIJiHXrg2s(不条理を塗りつぶす理不尽執筆中☆)


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登場人物紹介○ライトサイド【>>1】【>>7】【>>29】●ダークサイド【>>2】【>>8】【>>31】◎過去編【>>62
イメージソング♪【>>72


EP1【>>3】EP2【>>5】EP3【>>9】EP4【>>16】EP5【>>26】EP6【>>39
EP7【>>51】EP8【>>52】EP9【>>60】EP10【>>61】EP11【>>69-70
EP12【>>71】EP13【>>81

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現在時点で登場した書き手の方々…

だいこん大魔法s(Erret Crimson〜紅蓮の契約者〜執筆中☆)
黒兎s(腹黒スペードじゃっく執筆中☆)
そるとくりーむ ◆04Sod1e4Kw s(真白-masiro-執筆中☆)
萌恵 ◆jAeEDo44vU s(森の最奥部には妖精が住んでいる執筆中☆)
紗夢羅s(白泉荘のひまつぶし執筆中☆)
山下愁 ◆kp11j/nxPs s(俺様メイド?!!-クライマックス突入!!-執筆中☆)
月読 愛 ◆o9WCM38pVQ s(古本少女!執筆中☆)
ゆn ◆sJpB9ckHBE s(奇跡と軌跡執筆中☆)
友桃s(Enjoy Club 執筆中☆)
魔王軍元帥(モントルア王国戦史執筆中☆)
銀弧s(『意味がわかると怖い話』執筆中☆)
野宮詩織 ◆oH8gdY1dAYs(おいでませ、助太刀部!!執筆中☆)
美波s(読み手の方です★)
コウタ ◆qr.mj5XW0Q s(ハチャメチャな日常生活執筆中☆)

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Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.67 )
日時: 2011/04/03 13:01
名前: 山下愁 ◆kp11j/nxPs (ID: GlvB0uzl)

お久です、山下です。

絵、拝見させてもらいました☆ 何て神絵なのでしょう、嬉しすぎて本当に泣きそうです。
小説も上手くて絵も上手いってまさに神ですね! 尊敬します、マジで。

ハイ、もうこの小説を読むのが楽しみしすぎて毎日来てますからね←
え? しつこいとか言わないでください。だって楽しいんですもん。
黒兎さんがすごいカッコ良かったです!!

更新楽しみにしてます、頑張ってくださいー^^

Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.68 )
日時: 2011/04/03 18:05
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

>黒兎s


突然の急展開(笑)すみませんっしたw
これからライトサイドはいろいろ分裂していきますv
黒兎は影で仲間を想ってる子にしたかったんですが…
なかなか文章力なさすぎて説明しきれなかったですwww
絵のほういつも見ていただいてありがとうございまっす!!



>ダレンs


まだまだ登場が遅くなりそうです(>_<)
ちんたら遅すぎ更新ですみませんっww
賢者は過去編での重要人物になるので期待しといてくださいなvv



>だいこん大魔法s


過去編のだいこん大魔法はかなり重要ですよ!キーポイントですよ!
そして現在にも大きく関わったりしてきますwまだ謎がたくさんありますが、それをじわじわ解いていければいいなぁv
お、応援ありがとうございまっす!がんばりまっせー☆


>紗夢羅s


ようやく動き出しましたね!紗夢羅、始動って感じですwww
魔王様ラブなヤンデレ(?)系秘密少女ですv大好きなキャラのひとりでっす!
まだこれといった活躍はもう少し先になりそうですが、暖かい目で見守っていてくださいませ!
イラスト見ていただけて光栄ですvv


>愁s


絵の方でも小説の方でもコメをありがとうございますvv
やる気が出ます!そう言っていただけるだけで凡の身体の奥底からエネルギーがぁああ(笑)
これからの愁の暗躍に注目☆ゆんsとの共演でいろいろと頑張っていただく予定でっす!
毎日!?来ていただいてありがとうございますっ!がんばります!!

Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.69 )
日時: 2011/04/03 19:59
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

Ep11




魔界都市グリモアの南、暗黒街。暗い夜空にランプが灯るこの町は、まるでハロウィン・パーティーの舞台のようだった。

だが、行き交う者はもちろん人間ではない。
異形の姿をした魔物や魔族が溢れかえり、ワイワイと賑やかに話し、歩き、店に入っていく。
万全の配慮で進んでいた友桃、そるとくりーむ、萌恵は全身を包み込む麻衣のローブを纏い、身を隠していた。
このローブには魔獣の毛が組み込まれており、これを羽織れば人間の匂いはなかなか嗅ぎつけられない。
しかし、少しの油断も許されない。一寸先には魔族。ここで人間だとバレてしまえば取り囲まれて一貫の終わりだ。

そんな中、そるとくりーむが突然、歩を止める。

「……っ…」

そして片手で耳たぶを押さえて、うつむいた。急に立ち止ったそるとくりーむを心配して萌恵が近づく。先頭を歩む友桃も振り返った。

「そるとさん…?どうしたんですか」

萌恵がそう聞くと、そるとくりーむは手を耳から離し、壊れたピアスを彼女に見せる。そこには、そるとくりーむがいつも右耳に付けていた赤のピアスがあった。しかし、今、それは醜く歪み、真ん中からパキリと割れている。萌恵は「あっ……」と声をあげた。

「それ、そるとさんが大事にしてたピアスじゃないですか!…残念でしたね…綺麗だったのに…」

そう、それはそるとくりーむが両耳につけているピアスの片方だった。左耳には緑、右耳には赤のピアス。左耳に残された緑のピアスを見て、ふと思う。変な組み合わせだったが、何か意味があったのだろうか。…前から気になっていたので、萌恵はこの際聞いてみようと思った。

「そういえば…そのピアス、何かの魔道具なんですか?片耳ずつ、色が違ってますよね!」

萌恵がそう聞くと、そるとくりーむは壊れたピアスをポケットにしまいこんで、答える。

「…いや、ちょっと違いますねー…。——---…お守り、なんですよ」

「お守り……?」

「そうですー。健康祈願というか、安全祈願というか」

ほぇー…と驚く萌恵は一瞬考え込んで、「あ」と思いつくように声をあげる。

「じゃあ尚更壊れちゃったらダメなものじゃないですか!…うわあ…何かよくないことが起こる予兆だったりして」

その呟きに反応して、そるとくりーむは目を瞑った。脳裏に、あの黒髪紅目の魔剣使いが思い浮かぶ。そして小さな声で静かに呟いた。

「………よくないこと、…———もう、起こってたりして…ね」

「…え?」

「いや、なんでもないですー」

そるとくりーむは誤魔化すように微笑んだ。萌恵は少し不思議に思ったが、それは前方の声にかき消される。友桃がにっこりと笑って、そるとうりーむと萌恵を呼び、ある一点を指差した。
振り返る萌恵とそるとくりーむ。友桃が続ける。

Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.70 )
日時: 2011/04/03 20:00
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

「そるとさま、萌恵さま、もうすぐ宿に着きますよ。暗黒街を通り抜けて、あの丘にある…———ほら、あの屋敷。今宵はあそこに泊まる予定です」

2人は驚き、目を見開いた。友桃が指差す先に在るのは、見るからに宿とは言えない豪邸。どこかの大富豪の別荘のような屋敷だった。
萌恵が感嘆して、友桃に向かって叫ぶ。

「友桃さん!あれ、本当に私たちが泊まれるんですか!?すごい…立派な建物みたいですけど———……」

信じられない、という思いで萌恵がたずねる。友桃はその様子を「ふふっ…」と笑って、微笑んだ。

「驚いたでしょ?ふふ…でも、本当ですよ。私の知人が住んでいる屋敷なんですが…人間に好意的な魔族の所有しているものなんです。信頼のおける方なので、大丈夫。心配はいりません」

穏やかに笑う友桃の姿を見て、萌恵は半ば困惑気味に「そ、そうなんですかー」と笑い返す。ガイドである彼女がそこまで言うのだから安全なのだろう…だが、多少なりとも不安はあった。人間に協力的な魔族がいたことにも驚きだ。
腑に落ちていないような、とまどっている萌恵の様子を見て、友桃は彼女の手を取った。

「大丈夫です。私を信じてください」

萌恵はハッと友桃を見つめた。彼女は目を開き、どうか私を信じて———…と瞳で訴えかけてくる。普段から笑っていて、目を瞑っているところしか見たことがなかった萌恵にとっては、それは強烈な印象を覚えた。
普段、友桃はおだやかで、笑顔満点で、お花が飛んでいるようにポカポカとしているようなオーラを放っている。しかし、目を見開いた彼女の雰囲気は一転変わって鋭く、芯の通ったものとなっていた。相対する二つの面。
萌恵はその雰囲気に押されるように、コクリとうなづいた。すると、再び目を細めて笑う友桃。彼女は2人に背を向けて、「さあ、行きましょう。あと少しです」と言って先を進んでいった。
萌恵は高鳴っていた胸をおさえ、友桃の後をついていく。


歩き始めながらも、萌恵は内心、吃驚していた。
友桃という人物が思っていたより奥深くてミステリアスなのだと。穏やかで丁寧で優しい笑みを持つ人…。しかし、それだけではないらしい。もっと、本当の彼女の素顔がある。そう感じた。

それに———…彼女の雰囲気が変わった時、背筋が一瞬ぞくりとした。
だって、…彼女の目は…——

自分の命を懸けても何かをやり遂げようとする、そんな目だ。

覚悟の目。しかしそれは私たちを無事にナビゲートすることに向けられている物ではない気がする。
もっと、何か、別のものに対しての覚悟。それが垣間見えたように感じて、萌恵はドキリとしたのだ。

萌恵は、友桃の背を見て、わずかに息を吐いた。少し前まで一緒に旅を続けていた黒兎の姿と重なる。
しかし、彼女はここにはいない。

——…黒兎さん、大丈夫かな。やっぱり、心配だな。あの人、あいかわらずゴーイングマイウェイだし、注意力散漫だし…危険な目に合ってないといいんだけど…——--

萌恵はブンブンと頭を振って、気を取り直す。大丈夫だよ、黒兎さん、頼もしいし、強いし。萌恵は強引に心配ごとを頭から消去した。


…一方、そるとくりーむはずっと考え込んでいた。口をつぐみ、友桃の背を凝視する。
そしてポケットに入れた赤いピアスを握りしめながら、ひとり呟いた。

「…ぼくが今日中に使える魔法は、あと二つ…か」

ふと夜空を見上げ、月を見る。まだ夜が明けるまで時間は長い。
一日24時間以内に使える魔法は最大三つ…それがそるとくりーむの幻術師としての枷であった。
高位魔法専門のそるとくりーむにとっては、一回に使う魔法ごとに体力の消費が激しい。しかし、そるとくりーむはそれでも最上ランクのほうであり、普通の幻術師が高位魔法を無理に使うと死にも値するのだ。それを一日に三回も使えるそるとくりーむは確かに天才であった。

だが……———


もう一度日が昇るまでは、そるとくりーむが魔法を使える回数はわずか残り二回。
それがそるとくりーむには気がかりであった。それに、状況が状況なだけあって、尚更。

「——…せいぜい、今宵が良い夜になることを願おうか…。ねぇ…?——————…黒兎サン」

そるとくりーむは、夜空の流れ星を見つめて、笑った。

Re: †he legend of story【カキコの書き手登場】 ( No.71 )
日時: 2011/04/03 22:01
名前: 凡(ぼん) (ID: CbmxSfx3)

Ep12





「あーあ、夜になっちゃった…。まったく、この地図おかしいよ。グリモアの門なんて、どこにもないじゃないか。高くそびえたつ漆黒の門…って聞いたんだけど、見当たらないし。それにこの荒れ地、ビッグ・ベアーが出るって噂があるんだろ?やだなぁ、もう。誰だよ、僕を魔王討伐チームに推薦した奴!こんなの割に合わないっつの!」

少年は地図を広げて、機嫌の悪そうな声で独り言を繰り返しながら荒れ地を進んでいく。日が完全に落ちた今、この荒れ地は闇に包まれており、先も見えない。
それに加えて、道に迷ってしまったらしい。こんなところで翌朝まで野宿なんて…と少年はひたすらに歩きまわっていた。

「なにか…なにか、目印みたいなものないのかなぁ。ま、期待しても無駄だとは思うけど!」

ランプを四方八方に翳しては、キョロキョロと辺りを見回した。しかし、そこに在るのは枯れかけた木と草むらのみ。
少年が本日何度目かもわからない溜め息をついたときだった。


——-------リンッ…—---------—

場違いなほど綺麗な、鈴の音。

「…?…なんだ?気のせい、かな。さっき鈴の音が聞こえた気がし…——-」

——------リンッ…リンッ…—-------------

再び、その音は続く。それはこの少年を誘うように、だんだんと離れていった。暗い荒れ地に木霊する、鈴の音。

「僕を…呼んでるの?…——-あ、ちょっと待ってよ!置いてかないで!」

遠のく鈴の音に、慌てて少年はその音を追いかける。何故かはわからないけれど、その優しく優雅な響きについていかなければならないような気がしたのだ。少年の走るペースに合わせて、リズムよく鳴る音。

——-----リンッ………—-------------

途中で、その鈴の音は途絶えた。少年がそこで立ち止まる。その鈴の音の正体を探ろうとしてランプをかざすと、花びらが点々と落ちて積み重なっている道があった。花…それも、よく見ると桜ではないか。

「桜なんて…季節はずれなのに———…」

少年は疑問に思いながらもその道をザクザクと歩んでいく。しばらくすると、開けた平地に出た。そこで、驚愕のものを発見する。その巨体にランプをかざすと…——薄緑色の分厚い肌。手に持った金棒。これは…—---!!

「野生のトロール…ッ!」

少年は身構える。とっさに辺りに生えていた草むらに忍び込んだ。が、様子がおかしい。そのトロールは動きもしない。眠っているのか、とも思ったが、それにしては呼吸音がない。トロールは下品な怪物だ。眠っているのなら寝返りをうったり、うるさいいびきをかいているはず。少年はそっー…とその巨体に近寄った。そして、もういちどランプをかざす。

トロールは、死んでいた。

———…否、殺されていた。

「…ッ…野生のトロールはかなりの荒くれ者だ…そう簡単には倒せない…——誰がやったんだ…?」

亡骸となったトロールの巨体を見回すと、雷に打たれたような黒いコゲ痕があった。そしてその中心部には胸から背中まで貫通した、大きな穴が開いている。血液は飛び散っていない。となると、一瞬の炎か電撃を喰らったんだろう。…それに、死んでからあまり時間が経ってない。まだ生温かい肌を触って、確信した。

殺された時刻は、ついさっき。
雷なんて落ちていないから、これは誰かが仕組んで殺した痕跡だ。
けれど、トロールの身体にはこの貫通した穴以外に傷がない。
他の魔物と争った形跡も、なかった。

——------------……これは、まさしく人間の技だ。

それもただの人間じゃない。僕と同じ、魔王討伐チームのメンバー…。


「…けど、なんで魔王討伐チームの人間がここにいるんだ?もうとっくに魔界都市に入ったのだとばかり思ってたんだけど…——-」

そう。僕、コウタは魔王討伐チームの追加派遣員。
先に魔界都市に入って行ったはずのチームを追いかける形でグリモアの門を探していたのだ。
しかし、ついさっきまで、そのチームの人間がここでトロールと戦っていた…?

「…変なの」

コウタは呟いた。そして、考えを巡らせる。最初に思いついたのが、もしかして僕と同じように道に迷った挙句、魔界都市に入れずじまいのところでトロールと遭遇して戦ってたってパターン。ま、それならそれで僕はチームと早く合流できそうだからいいんだけど…——-。って、これじゃあなんかオマヌケだな。道に迷って敵地に入れなかった勇者なんて、かなり情けない。…あ、僕もひとのこと言えないケド。

コウタが溜め息を吐いてトロールから離れようとした時…——

「……誰か、誰か…助けて。この人が…死んじゃう」

それはそれはかすかに耳を澄ませていなければ聞こえないほどの声。
少女の声だった。せいいっぱいの震える声で泣きじゃくりながら呟いているような…。

「そこに、誰かいるの!?ねえ、どこにいるんだ?」

コウタが叫ぶと、その声は微弱ながらも先程よりは大きな声で叫び返した。

「……ここ、ここよ!はやく、はやくしないと…この人が、死んじゃう…っ!!」

コウタは振り返る。すると、一番多い茂みの中に、わずかに動く人影を見つけた。コウタはランプを前方にかかげながら走り寄る。ビクリと肩を震わせる人影に、コウタはできるかぎり優しい声で茂み越しに話しかけた。

「大丈夫。僕は人間だし、キミの味方だよ。…そこにトロールが死んでいたけど、それはキミがやったのかい?」

人影は、ふるふると首を横に振る。そして、ようやく茂みを腕で割いて、その少女は姿を現した。

「ちがうの。わたしじゃないの……この人が」

金髪の少女は振り返って、茂みの中を見る。コウタはつられるように、茂みの中に足を入れてその奥を見た。
そこにいたのは、ひどい傷だらけの女の子。
漆黒の長い髪を散らせて、蒼白な顔で横たわっている。口元には血がこびりつき、その剣を持つ手は火傷をしたように赤くなっていた。一見、死んでいるのかとも思ったが、喉が動いている。
…生きている。でも、危険な状態だ。
コウタは急いで少女にたずねる。

「この人、誰なんだ?」

「わたしを助けてくれたの。トロールに襲われそうになっていた時、この人が現れて……でも、あの金棒で怪我を。わたしがこの人を見つけた時には倒れてて……それで…ここまで運んで…」

少女はかなり動揺しているようだった。
確かに、少女の服にも血がところどころついている。これは横たわってる彼女を運んだ際に付いたものだろう。少女のスカートが少しずつ破られており、それは彼女の出血を抑えるための布として使われていた。応急措置の仕方が丁寧で、正しい。
これなら、助けられるかもしれない。

コウタは少女に向かって言った。


「この人を助けよう。…手伝ってくれる?ええと…キミの名前はなんだっけ?」

少女は涙目でコクンとうなづきながら、小さな声で言った。

「……美波」


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