コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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Memory Dust(学園ミステリー)
日時: 2012/07/11 00:29
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0270ba/

・あらすじ

「君は、生きているの?」「私は、私を殺せる人を探しにここへ来た」——それが僕と彼女たちとの出会い。そう、暴君「水無月アスカ」とツンドラ転校生「時雨悠」との……。——あっ、ついでにアスカの双子の弟「水無月アキト」も忘れずに……。

・当作品は超常現象交じりの学園ミステリーとなっていますご了承ください。

・なお、当作品は小説家になろうさまの方でも投稿させていただいていますご了承ください。(只今、諸事情により更新停止中。涼しくなった頃に再開予定)

※お気軽にご感想などをよろしくお願いしますm(。-_-。)m

・亡霊姉弟篇

 第零章 〜数奇な運命の出遭い〜 >>01

・死にたがりの少女篇

 序 章 〜死にたがりの少女 前 篇〜 其の一 >>02
 序 章 〜死にたがりの少女 前 篇〜 其の二 >>03 >>04
 序 章 〜死にたがりの少女 前 篇〜 其の三 >>05 >>06
 序 章 〜死にたがりの少女 前 篇〜 其の四 >>07 >>08
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の一 >>09 >>10
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の二 >>13
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の三 >>14 >>15
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の四 >>16
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の五 >>17
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の六 >>18
 第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の七 >>19
 第二章 〜死にたがりの少女と天真爛漫少女〜 其の一 >>20 >>21
 第二章 〜死にたがりの少女と天真爛漫少女〜 其の二 >>22 >>23
 第二章 〜死にたがりの少女と天真爛漫少女〜 其の三 >>24 >>25
 第二章 〜死にたがりの少女と天真爛漫少女〜 其の四 >>26 >>27

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(2)序 章 〜死にたがりの少女 前 篇〜 其の四 ( No.8 )
日時: 2012/06/11 00:41
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0270ba/5/

 すると、唐突に大きな溜め息を吐いたアスカは僕たちの肩から徐に手を離した。
 解放された僕たちの肩は粉砕骨折こそ免れたが、未だに激痛が走っている……。

 「まぁ〜いいわ。そんな事よりも——私たちのクラスに転入生が来るみたいなのよ」

 少し興奮気味に発せられた言葉から「ウキウキ感」が十二分に伝わってきた。

 「ああ、俺もその話を聞いたわ。——何でもかなりの美少女らしい」
 「へぇ〜。転入生ねぇ〜。——何でまた?」
 「そんな事、知る訳ねぇ〜だろ」
 「まぁ〜確かに……」
 「でも、気にならない? その美少女と謳われている転入生が果たして——私の地位を脅かすほどの美少女なのかって……」

 真顔で自意識過剰発言をした少女に僕は思わず口を開けて馬鹿面をさらしてしまう。
 ……いや、確かにコイツがこういう性格だって一年も付き合っていたら、自ずと分かっては来るが……。

 ——こうも堂々と公言されちゃ〜、どういう反応をしていいか分からなくなる。

 アスカが外見上、非の打ち所のない美少女なのは確かなのだが、中身がな……。
 ワガママ姫と言うかおてんば姫と言うか……。

 ——まぁ〜一言で纏めるなら暴君、独裁者って所、か……。

 そんな彼女の被害を一番に被っているのは弟のアキトかも知れないが、僕もその一人になりつつあるな。

 ——いや、もうなっているか……。

 僕が馬鹿な考えにふけっていると、

 【キンコンカンコーン!】

 と、チャイムが鳴り響いた。

 「やべ、そろそろ教室に行かないと……」

 チャイムの音を聞いたアキトが辺りを見渡しながらそう呟く。

 「そうね。——アキ、シゲル。さっさと教室に行くわよ」

 アキトの言葉に頷きながらアスカは僕たちに行くように促した。
 その言葉に僕たちは軽く返事をし、自分たちの教室へ足早に向かう。
 僕は新しい教室の場所が分からないため、水無月姉弟の後を追うように歩く。
 廊下を歩き階段を上がって、また廊下を歩いて辿り着いた三階のとある教室。

 ——二年C組と表札がぶら下がっているその教室に入り、黒板には各々が座る座席表が描かれていた。

 僕の席は幸運な事に後列の席だった。
 でも、その束の間の至福は無残にも打ち破られてしまう……。
 自席が中庭を臨める窓側の席(黒板を正面に左)から二番目の席で、そこまでは良かった。
 だが、その席の左隣にはあの暴君が座り。
 暴君の前にはアキトが座った……。

 「なんつうシフトだ」と僕は思った。

 僕とアキトで暴君の妨げを担う最後の砦として敷かれた布陣のようである。

 ホント、僕に何の恨みがある?
 悪意を感じられる……。

 しばらくして、このクラスの担任教師らしき人物が現れた。
 何の特徴もない平々凡々な中年男性である。

 ん?
 そういえば、僕の前の席が空いているみたいだけど……。

 ——まさか転入生の席って事は無いよな。

 幾ら何でも初見の方には荷が重すぎる席だと思う。
 特に左斜め後ろの要注意人物が、な……。

 「じゃ〜小耳にはさんでいると思うが……転入生を紹介する」

 教卓の前で担任教師がそう宣言した瞬間。
 クラスメイトたちが一斉に「ざわざわ」と騒ぎ始めて。色々と憶測を流し始めた。

 ある男子生徒は「帰国子女なんじゃね」と話し。

 ある女子生徒は「どこかの国のお姫様なんだって」と話す。

 ホント、どれもこれも馬鹿な推測で「この国は平和だなぁ〜」と、僕は年寄り臭くしみじみと思っていると「ガラガラ」と前方の扉が開いた。
 そこから綺麗な黒髪をなびかせながら、凛々しい物腰でゆっくりと入って来た……。

 ——噂の転入生さん。

 少し幼さが残る顔立ちで。
 血が通っているのかさえ分からなくなるほどの透き通った白い肌。
 すらりと伸びた手足のスレンダーな体躯の少女で……。

 ——うん、噂通りの美少女なんじゃないかなと思う。

 アスカの地位(?)を脅かすかどうかはさておき……。

 少女はゆっくりとした足取りで教卓の方へ足を運ぶ。
 そんな少女の姿を目の当たりにしたクラスメイトたちは一瞬にして物静かになり。
 教卓まで足を運んだ少女は黒板に自分の名前らしきモノを書き始めた。

 しばらくして書き終わったのか、こちらを振り向く。
 すると、少女はどこか物寂しげな表情を浮かべた。

 「ふむ、気苦労が絶えないのかね〜」なんて事を考えながら、少女の背後にある黒板に目をやる。
 そこには時雨悠(しぐれはるか)と振り仮名まで丁寧に書き記されていた。

 「私は……」

 と、自己紹介をするのか、唐突に声を上げた少女だったが、途中で口ごもった。

 ——うん、大勢の前で自己紹介する事になったんだ、緊張しない方がおかしいだろ。

 少女は気持ちを切り替えるために瞳を閉じてゆっくりと深呼吸をする。
 そして、ゆっくりと瞳を開いて、

 「——私は……私を殺せる人を探しにここへ来た」

 と、冷たい眼差しで淡々とそう語った……。

(1)第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の一 ( No.9 )
日時: 2012/06/11 15:12
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0270ba/6/

 転入生の告白にクラスメイトたちは何の事か分からずフリーズし。
 隣に座る暴君に至っては「良い人材を見つけたわ」と言わんばかりに羨望の眼差しを彼女に向ける。
 そして、転入生は何事もなかったように「すたすた」と僕たちがいる一角に向かって足を進め。僕が座る、前席に静かに座った。

 「……え〜、これから今後の説明をしようと思う」

 この教室に漂う変な空気を変えるべく立ち上がった勇者。

 ——担任教師が開口一番に言葉を述べ。

 今後の説明(自分の自己紹介や日程について)をし始めた。
 その機転を利かせた好プレーにフリーズをしていたクラスメイトたちは我に返り、担任教師の話に耳を傾き始める。

 ——そんな中。

 とある女子生徒だけは教卓の前で熱弁する担任教師ではなく。
 皆をフリーズさせた転入生に熱い視線を注いでいる。
 言うまでもなく、あの暴君しかいない……。

 「はぁ〜」と、嘆息を吐きながら、

 「——なぁ〜アンタ。どういう真意であんな事を言ったんだ?」

 僕は何を思ってか、転入生にコンタクトを取ってしまっていた。
 ホント、自分自身にびっくりだ。
 まぁ〜でも……見ず知らずの輩の言葉なんてスルーされるだろう。

 すると、

 「——そのままの意味よ。それと……モブの分際で、この私に気安く話しかけないでちょうだい」

 と、スルーされるかと踏んでいたのだが、淡々と罵声を浴びさせられてしまった。
 まさかの罵声に僕は胸を押えて机に項垂れてしまう。
 だが、僕は先ほどの罵声は「何かの間違いだろう」と考え。
 もう一度転入生に話しかける事にした。

 「なぁ〜。アンタの事を熱い視線で見つめる輩が——」
 「私のさっきの言葉が理解出来なかったのかしら? モブはモブらしく話しかけられるまでその辺を往来しときなさいな」

 こちらを一切振り向く事無く、淡々とまた僕に罵声を浴びせる転入生。
 僕はまた胸を押えて机に項垂れる。

 ——しかし、僕は果敢にも攻めようと思う。

 一応ながらこの学校に通っている「先輩」として色々とアドバイス(ほとんどないが……)をしないといけないだろ?

 「……あのさぁ〜」
 「……ああ、ごめんなさい。これは私のうっかりミスね。——アナタはモブじゃなく、ただのドットだったわ。……ほら、ここにアナタが——」

 と、言いながらこちらに振り向き、転入生は徐にメモ紙を僕に提示した。
 やっとこさ、こちらを振り向かせる事に成功した僕は少し浮足立ってしまった。
 が、彼女が提示したメモ紙に目をやると、そこには黒ゴマのような小さな点が描かれている。

 ——えっと、つまり、この黒ゴマのような小さな点が僕だと言うのか……。

 ……なぜだろう、親近感が湧いてきたや。

 それになんだか、目頭が熱くなってきた……。

 すると、僕がそのメモ紙を見た事を確認するや否や転入生は紙を「ぐしゃり」と握り潰して床に捨てた。
 そして、そのぐちゃぐちゃになった紙にトドメを刺すかのように彼女は足で思いっきり踏み潰す。と、

 「……あら? 手が滑ったわ」

 悪ぶれた様子も無く、そう呟いた。

 「ギャー! もう一人の僕がぁ!」

 もう一人の自分(?)に感情移入してしまった僕は堪らず大声で叫んでしまっていた。
 その声にクラスメイトたちは一斉に僕の方に振り向き、僕は羞恥の目にさらされてしまう。

 「そこ〜うるさいぞ〜」

 熱弁している最中に大声を発したものだから担任教師に注意されてしまい。
 クラスメイトたちが「くすくす」と笑い始める。
 そんな憐れな僕に対して転入生は先ほどと一転し。
 不気味な笑みを浮かべながら、床に落としたメモ紙を未だに踏み潰していた。

 ああ、胸が痛い……。

 僕は胸を押えて机に突っ伏した。

 ——しばらくして、

 【キンコンカンコーン!】

 と、チャイムが鳴り響き、クラスメイトたちは帰る支度をし始めた。

 ——はぁ〜、やっと帰れるのか……。
 この傷だらけの身体を早よう癒したい……。

 そう心に思いながら僕もクラスメイトたちを見習って帰り支度をしようとした矢先。

 ——妙な視線を感じ取ってしまう。
 ……なるほど、そう易々と帰れないって訳か……。

 大きく嘆息をしながら、その妙な視線を感じる方向に目を向けると……。

 ——うん、言わずとも分かると思うが、暴君降臨である。

 「シ〜ゲ〜ル〜く〜ん。——彼女と何を話したのかなぁ?」

 怪しく目を光らせながら、僕にしか聞こえない声量でアスカが話しかけてきた。

 「別に他愛もない話だよ」

 と、彼女の問いに僕はそう返答する。

 ——そう、本当に他愛もない話だった。
 一人の少年の心がずたずたにされた事以外はな……。

 淡々と返答した僕の言葉に、アスカは眉をひそめ、怪訝そうな表情を浮かべる。

 「——へぇ〜他人に興味がない、如月瑞希(きさらぎみずき)君がまさか見ず知らずの転入生に積極的に声をかけるなんてねぇ〜。ホント、世の中には不思議な事があるものねぇ〜。彼女が陰りのある美少女だからかしら?」

 不敵に微笑みながら嫌みったらしく「ネチネチ」と口撃を繰り出したアスカに僕は額を押えて大きく嘆息をした。
 アスカが僕のフルネームを織り交ぜて口撃をする場合は本当に機嫌が悪い時である。
 「どうして、不機嫌なのか」理由は定かではないのだが、恐らく……。

 ——アスカと初対面を果たしたあの時。

 当時の僕が彼女に対してほぼ総スルーで素っ気ない態度を取っていたにも関わらず。
 今回、僕は転入生に対して自分から積極的に声をかけてコミュニケーション図った。

 ——この態度の差に不快感を示したと思われる。

 ……いや、誰だって宗教勧誘みたいな話を熱心に語られて、まともな対応なんて出来ないだろ。

 ——うん、それもあるかも知れないが。

 あの頃の僕って良い意味(いや、他人から見たら悪い意味、か……)で出来上がっていたから、他人に対して素っ気ない素振りを見せていた、っけ……?

 「——で、結局シゲルは彼女とどんな会話を交わしたの?」
 「いや、本当に何もないよ……。——そんな事よりも転入生様にコンタクトしなくていいのかよ」
 「彼女なら早々に帰ったわよ」

 その言葉に僕は転入生が座っていた座席に目をやる。
 と、アスカの言葉通り、そこには誰も居なかった。

 「……お前が目に掛けた獲物を逃がすなんて珍しいな〜」
 「誰が狩人よ……。でも、彼女結構骨が折れそうだから、長期戦は覚悟の上よ。どうせ、同じクラスなんだし……」
 拳を強く握り締め、闘志を「メラメラ」と燃やし、やる気を見せるアスカ。
 ……何て言うか、どこからそんなやる気が湧いてくるのかが、分からない。
 ただ言える事があるとすれば。

 ——自分を楽しませてくれそうな玩具を見つけて、純粋に喜ぶ「子供」って感じだな。

 ……はぁ〜。
 転入生、アンタに同情するよ……。

 ——ん?
 そういえばアキトの奴はどうしたんだ?
 一向に姿を見せないが……。

 「なぁ〜。アキトは?」
 「アキならもう先にいつもの場所に行ってるわよ」
 「って、言う事は……」
 「さっさと行くわよ」
 「……はぁ〜」

 行く際に皮肉っぽく溜め息を吐いたらアスカに睨まれてしまい。
 身体が「ビクッ」と強張りました。

 ああ、怖……。

 しかし、一体何を企んでいるんだコイツは……。
 どうせ、ろくでもない事を言い出すに違いない。
 少々、頭を悩ませながら僕たちはアキトが待つ、女王様の私室へ向かう事にした。

(2)第一章 〜死にたがりの少女と女王様の戯れ〜 其の一 ( No.10 )
日時: 2012/06/11 15:15
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)
参照: http://ncode.syosetu.com/n0270ba/6/

 「女王様の私室」と言ってもやや広めの部室なんだが、アスカが自分の部屋のように好き放題にリフォームをして「私物」と化してしまっている事からそう名付けられている。

 ——ホント、どうやって手に入れたんだか……。

 本人の話では「もらった」と言う事らしいのだが、公共の建物の一室をただの女子生徒がもらえる訳がなかろうに……。
 一体、何を仕出かしたんだ?

 「……何、難しい顔をしているのよ」

 表情に出てしまっていたのか、少し呆れ顔で指摘され。

 「いつも通りだろ」

 と、淡々とした口調で返してやった。
 しばらく階段を下りたり、上がったりと、せわしなく進み。
 ようやく、たどり着いた部室棟のとある一室の前で立ち止まった。
 そして、ゆっくりと扉を開ける。
 と、部屋のど真ん中に置かれたガラステーブルの上でアキトが横たわっていた。

 ——何やってんだ、アイツ……。

 僕はアキトの様子を窺うべく、彼の元へ近寄る。
 うん、何とも微笑ましい光景だろうか……。
 アキトは白目を向き、白い泡を吹きながら熟睡しているようだ。

 ——って、え?

 僕はもう一度、アキトの事をじっくりと見つめ、検証してみようと考えた。

 まずは、目だ。
 彼は白目を向いているが……これはセーフだな。
 白目を向いて寝る方が少なからず、この世界で一割ほどいると、どこかで聞いた事がある。

 ——ような気がする。

 だから、これは問題視する事ではない。

 じゃ〜何がおかしいんだ?
 口から吹いている白い泡か?
 確かに傍から見れば、おかしな光景かも知れない。
 しかし、涎が凝固して白い泡を吹いているように見えているだけかも知れない。
 その可能性も否定出来ないだろ?

 じゃ〜何だ?
 アキトの傍らで転がっている、ドクロのマークが描かれた怪しげな瓶が原因か?
 でも、今どきこんなあからさまなモノに毒薬みたいなものは入っている訳ないだろ。
 どうせ、生産者が茶目っ気たっぷりに造った代物だろう……。

 ——うん、結果は出たようだな。

 水無月アキトは稀な寝方をする少年だったようだ……。

 「……すっごい、効き目」

 突然、ぼそっとそんな言葉が聞こえた。
 振り向くまでもない。
 この部屋には僕と熟睡中のアキトともう一人、アスカしかいない。
 したがって、僕以外の人物となるとアスカが言った事になる。

 ふむ、どういう意味なのだろう。
 これは聞くべきなのか、聞かざるべきなのか……。

 すると、アスカが「すたすた」とアキトの元へ歩み寄って行き、何を思ってか。徐に彼の手首を軽く握った。

 「……脈はあるみたいね」

 アキトの手首を握りながら不吉な事を言い出したアスカ……。

 ……全く、脈があるに決まってるだろ、馬鹿野郎!
 アキトはただただ珍しい寝方をしているだけであって、決して天に召されている訳じゃないだよ、馬鹿野郎!

 もう用が済んだのか、アスカが「さてと」と呟き。
 何事も無かったようにいつもの定位置(この部屋で一際目立つ豪勢な造りの机)に向かう。
 それを見て、僕もいつもの定位置に向かう事にした。

 ここ「アスカ様の私室」には、現在アキトがベット代わりに使用しているガラステーブルとそれをはさんでふかふかのソファーが配置されている。
 僕とアキトの二人はいつもそのソファーに座り。
 この部屋の持主たるアスカは豪勢な造りの机に腰掛ける。

 他にもこの部屋には冷蔵庫やらテレビやらの備品が充実しているので、本当に自分の部屋のようにくつろぐ事が可能である。

 「——で、アスカ。今回は一体、何を仕出かすつもりだ?」

 ソファーに深くもたれかかり、まるでどこかのVIPのような態度で僕は目を細めながらアスカに問いかけた。
 その問いにアスカは徐に机の上で腕を組み、僕の事を見据えた。
 「ふぅ〜」と感慨深く息を吐いて、たっぷりと間を開ける。

 この緊張感が漂う空気にあてられてか。
 僕も自ずと固唾を呑んで、アスカが話し始めるのをつい見守ってしまう。

 そして、ようやくアスカが口を開こうとした、その時!


 「ぶはぁ〜! ぜぇ〜。ぜぇ〜。ぜぇ〜……」

 目を覚ましたアキトが目を極限まで見開き、身体を揺らしながら必死に呼吸をする。
 ふむ、何か悪い夢でも見ていたのか、少し額から冷や汗が滲み出ているようにも見えた。
 それにスローモーションでアキトが起き上がる所を再生したらホラー映画を彷彿させるような様相でもあった。

 「——俺を殺す気か!」

 怒号を上げながら豪勢な椅子に優雅に佇むアスカを睨めつけたアキト。
 それに対して、姉も引けを取らず睨み返す。
 アスカの鋭く殺気の込められた睨みにアキトは「ビクッ」と身体を強張らせ、小さく縮こまってしまった……。
 そのまましょんぼりとしながらアキトはゆっくりとガラステーブルから降り、僕の向かい側のソファーに腰を下ろした。

 「で、そろそろ話したらどうなんだ?」

 一連の流れで少々台無しになった緊張感を、再び戻すかのようにアスカが僕たちの事を見据えて、小さく息を吐く。
 と、口を開いて、

 「……時雨悠を殺してみようと思うの」

 淡々と発せられたアスカの言葉に僕たちは意味が分からず「きょとん」としてしまい。
 思わず、間抜け面をさらしてしまった……。

Re: Memory Dust ( No.11 )
日時: 2012/06/11 16:50
名前: 飛鳥 ◆7ZwAdm0uqc (ID: gB.RcQK6)
参照: ▼. season1 / episode5






 はじめまして!!!飛鳥というものです、
 私もこちらで小説投稿させてもらってます。

 とりあえず、、、すごいですね!!
 文章力というか、なんというか。
 情景描写がすごい丁寧で入り込みやすかったです。

 心情描写も分かりやすくて、羨ましいです!!
 私もyuunagiさんみたいにしっかりとした
 小説書いてみたいです!!そのくらいできたら
 きっと書くのも楽しいですよね(・ω・´)

 これからも執筆頑張って下さい!
 応援してます!&更新楽しみにしてますね!!!

Re: Memory Dust ( No.12 )
日時: 2012/06/11 18:31
名前: yuunagi(悠凪) (ID: wfu/8Hcy)

「飛鳥」さん、こちらこそ初めまして。ご丁寧に長文でのご感想どうもありがとうございます。
文章力をまさかお褒めいただけるとは思いもしませんでした(‾◇‾;)
自分でもあまり実感はなく、妥協する部分が多々ありますよ。

ーーだけど「飛鳥」さんが仰られる通り「楽しむ」っていう気持ちは大切だと私事ではありますが、そう思います。

こちらも長文になりましたが、今後ともよろしくお願いします。


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