コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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僕があの日君に言えなかったこと
日時: 2012/12/01 07:24
名前: かずくん (ID: GYxyzZq9)

お互い想い合ってるのに、すれ違ったあの日。


君は、涙を流しながら、僕の前から去っていった。




僕が見た、最後の君。




伝えたい言葉は山ほどあった。


したいことも、行きたい場所も。




もう一度、少しだけでいい。


君に会いたい。


そんな僕の儚い願いは…、






「あっ…、すいません…、」






かなったみたいだ。

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Re: 僕があの日君に言えなかったこと ( No.10 )
日時: 2012/12/12 20:29
名前: かずくん (ID: GYxyzZq9)

**俊サイド**


「おっせーよ!!」

通話ボタンを押してからの第一声。

それに向こうは笑いながらこう返した。

『ごめんごめん。ちょっと話、長引いちゃって』


それは俺にとても興味深い一言で。

「あ、教会の件、…どうだった?」

ドキドキしながらもそう聞くと、圭太は『使っていいって』と。

その瞬間、俺の心は嬉しさでいっぱいになった。


「まじでー?!ありがとう圭太!!持つべきものはやっぱ友達だなっ」

『おう、こんぐらい任せとけよ』


圭太は、色んな人と仲がいい。

俺たちが住んでる市にある教会の神父とも知り合いだそうで。

俺が計画のことを話すと、神父に教会を使わせてくれと頼んでくれた。


最後に、圭太は言った。


『成功することを祈ってるよ』


と。

その言葉に、俺は涙が出そうになった。


電話を切って空を見上げると、吸い込まれそうな程黒かった。


クリスマスまで後2日。

俺の『計画実行』まで後2日。

そして、俺は、いや、圭太も本人も知らなかっただろう。




















綾が、いなくなるまで後、2日——…。

Re: 僕があの日君に言えなかったこと ( No.11 )
日時: 2012/12/07 20:06
名前: かずくん (ID: GYxyzZq9)

……なによ。

あんなに楽しそうに喋っちゃって。


俊はクリスマスイブに『私に言えない用事』があるらしい。


そしていまの電話。

俊は着信音が鳴った途端、凄いスピードで携帯をとって。

いつもなら私が居ようとお構いなしに電話に出るくせに、ベランダに出て話しだした。


ねぇ、俊。

本当のことを教えてよ。

私を安心させて。









貴方の心には、本当に私しかいないの?

Re: 僕があの日君に言えなかったこと ( No.12 )
日時: 2012/12/07 20:22
名前: かずくん (ID: GYxyzZq9)

「綾…起きてる?」

起きてるよ。

でも返事はしてあげない。




昨日の夜、俊が電話をやめてから、私はずっと笑顔でいた。

笑顔じゃなかったら、泣いちゃいそうだったから。

作ってなかったら、壊れちゃいそうだったから。


ずっと、高1から6年間、今22歳だけど、俊ばっかり見てたから。

だから俊がもしかしたら、……浮気してるのかも、なんて思ったら、すごく悲しくなって。


今思い返してみたら、昨日の私は笑顔だけど中身がからっぽって感じ。

俊も、もしかしたらおかしい、って思ってたかもしれない。




「…寝てる、か」

そう言った俊は、私の頬を指でなでてから、「いってきます」とつぶやいて寝室を出た。

そのすぐあと、玄関のドアの閉まる音、鍵をかけた音、車の去っていく音が聞こえた。

私は体を起こして、寝室の窓から外を覗いた。


いつもと全く同じ風景。

なのになぜか違う。

それは、俊が遠くにいるか、いないかの違いだ。


俊が遠くに感じる今は…、街はひどく寂しく感じた。

Re: 僕があの日君に言えなかったこと ( No.13 )
日時: 2012/12/12 20:27
名前: かずくん (ID: GYxyzZq9)

トン、トン、とゆっくり階段を下りる。

リビングのドアを開けても、俊はいない。

壁にかかっている時計は、午前9時を少し回ったところだった。


ふとテーブルを見ると、手紙が置いてあった。

手にとって読む。


『綾へ。

 朝ごはんはテーブルの上に置いてるのを食べてて。
 昼ごはんは冷蔵庫の中に入れておいたよ。
 
 午後3時くらいには帰って来れると思うから、待っててね。

 大好きだよ。

 俊より。』


テーブルの上のお皿を引き寄せる。

されていたラップをはがすと、ハムエッグと、クロワッサンが入っていた。


「…俊」


手紙に『大好きだよ』と書いてあるのは、きっと私が不安なのが俊に伝わってるんだ。


心は温かくて寒い。









俊が—…信じられなくなっちゃう。

Re: 僕があの日君に言えなかったこと ( No.14 )
日時: 2012/12/12 20:37
名前: かずくん (ID: GYxyzZq9)

**俊サイド**


「…とうとう買ってしまった…」


車の中で一人、そう呟く。

視線の先には、黒い小さな箱。

そう、綾に贈る指輪が入っているのだ。

12月25日に日付が変わる瞬間、俺はこれを綾に渡して—。


「緊張する…」


俺は、綾にプロポーズする。

もちろん、受け取ってもらえるか分からない。

でも、綾に、この想いが届いたら嬉しいな。

「……って、何気弱になってんだろ、俺」


そうだ、今は信じるしかない。

綾のことが大好きで大好きでしょうがない。

この想いが伝われば、きっと綾も受け取ってくれる。

そう信じて…。


俺は、上着のダッフルコートのポケットに、その箱をなくさないように仕舞った。


時計は午後1時を過ぎていた。

そろそろ帰るか。


俺は、綾が待っている家へと、車を走らせた。


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