コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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LAST SUMMER
日時: 2014/11/07 19:10
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xIf6nAEu)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10068

夏の日に現れる不思議な少女。
小さく穏やかなその街で語り継がれる少女の影は、規則的に海岸の砂の上に映し出されていた。
—だが、いつしかその淡い色のワンピースを見る者は居なくなった。

+++++

この話の本編は、あなたがこの粗筋を読んで広げた想像の翼です。
だから副題を"parallel"、"dream"と名付けました。
これから描く物語は、私自身の翼です。
この羽根を一枚、あなたに託します。
これをあなたの翼の一部として仕舞って頂けると幸いです……。

【登場人物】
木田 英樹(きだ ひでき)
山下 夏実(やました なつみ)
※parallelもdreamも登場人物の名前は同じですが、ストーリーは違います。別世界(parallel)と夢物語(dream)は分けてお考え下さい。

【目次】
《ストーリー》
・LAST SUMMER parallel >>1-16>>21-
・LAST SUMMER dream

《コメント》
・ぱる 様 >>17 (紙風船より >>18)
・るくねこ 様 >>19 (紙風船より >>20)

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LAST SUMMER parallel ( No.12 )
日時: 2014/08/24 13:03
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: 0M.9FvYj)

「…英樹。また明日、一緒に、線香花火、しようね。」
自分でもそう思っている。
馬鹿げた約束をした。
—自分から、この世に未練を残すなんて。

あの日の夜。
夏実は死のうと思っていた。
両親は夏実が物心ついた時から喧嘩だらけで離婚寸前だった。
夏実の母も父も子供に恵まれたとは言い難かった。
最初に出来た子供はお腹の中で死んだ。
男の子だった。
もうすぐ産まれる、と誰もが楽しみにしていた。
その分、父は会社内で恥ずかしい思いをしたと母を責め、母も反抗して仲が悪くなっていった。
そんな中で、夏実は出来た。
産まれなかった兄と、5歳も年が離れていた。
父は古い人で、男が欲しかったと言った。
夏実は歓迎されずに誕生した。
誰も、喜んでなんかいなかった。

LAST SUMMER parallel ( No.13 )
日時: 2014/08/25 13:02
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: .KyU0SCB)

夏実の後に子供は産まれなかった。
小さい頃から、自分が女である事を責められた。
夏実が男なら、こういうことにはならなかったのに。
母は良くこう言って嘆いた。
本当は些細な事の筈の喧嘩は大きくなっていった。
何故自分が男でなければならなかったのか、夏実には理解出来なかった。
ただ、望まれた子では無かった事だけが薄々と感じられた。

どうやら父は駄々をこねただけだったらしい。
だがその言い訳が通用する程甘くない位に事態は悪くなっていた。
夏実が小学校に上がる直前に、両親は離婚した。
夏実は母に引き取られ、小さな海に面す街へ連れていかれた。
父は父より7つも年が上の女性と再婚した。
父とはそれ以来会っていないし、今何処に居るかも分からない。
母は小さな家を構え、細々と仕事をしながら生計を立てた。
母はあまりにも忙しく—多分男ともそれなりに会っていたのだろう、深夜まで家に戻ることは無く、夕飯はカップラーメンばかりだった。
少しずつ料理を覚え始めたのはこの頃だった気がする。
肩身が狭い思いをしながら生活していく中で、学校が唯一夏実の支えとなった場所だった。
育った環境があんなものだったし、周りは男子ばかりだった為友達は少なかったが、誰も自分の存在を責めない場所で、此処だけが夏実にとって広々とした気持ちになれた。
そして、教室に男の子が一人増えた。
都会から来たと言う小さなそいつは、たどたどしく自分が「きだひでき」だと名乗り、おののく位に頭を下げた。
その時はどうでも良い、と思っていた。
……その時は、である。

LAST SUMMER parallel ( No.14 )
日時: 2014/08/26 21:18
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: YiQB1cB2)

小学4年になった後、母は再婚した。
再婚してすぐ、男の子を産んだ。
あんなに子に恵まれなかったのが嘘の様に、今またもう一人お腹の中に居る。
母も新しい父も、当然の様に夏実と父が違う弟ばかり可愛がった。
夏実はもう存在してもしなくても変わらなかった。
ただ話し掛けると邪魔そうな目を向けるだけ。
一度、愛されてみたい。
そんな願いすら叶いそうに無かった。

夏実は自殺計画を立てた。
10歳の身を離れたいと強く思った。
怖くなんてなかった。
むしろ、今の状況から解放されると思うと嬉しくてたまらなかった。
それぐらい夏実の心は閉ざされていた。

今日死のうと思っていた。
夏実はいつになく固くシャットアウトし、最後になる青空を眺めた。
一人の、最後の一日にしようと思っていた。
……まさか、話し掛けられるとは思わなかった。
「どうして夏実ちゃんは皆と遊ばないの?」
転入してから、事務的な話しかした事の無かった、無邪気な表情の男の子。
驚きを隠す様に全然関係の無い事を口にしていた。
「…ちゃん付け止めて、気持ち悪い。」
本当は別に嫌な訳ではないのに、つっけんどんな答えしか出来なかった。
その男の子……、「木田」君も困った様に頭を掻いている。
「じゃあ、夏実?」
「名前呼びもやだ。」
ああ、何でこんな事言ってるんだろう。
夏実は益々不機嫌になった。
「山下…………さんは、」
八つ当たりで鋭い目を向かせたら間があいた。
戸惑ったのかもしれない。
「どうして皆と遊ばないで、ずっとそうやって座ってるの?」
夏実は頬杖をつきながら英樹から視線を外し、窓を眺めて呟いた。
何故、産まれてからずっと心に秘めていた事を言えたのだろうか。
「……………私は誰からも好かれない。お母さんもお父さんも、私が嫌い。…多分、皆も。」
見ていなくても、英樹が動揺しているのが分かった。
…この後、すぐにこの言葉が出てくるなんて思ってもいなかった。
「俺は好きだよ。夏実の事。」
驚いて逸らしていた視線を一瞬戻し、また逸らした。
自分に向けられた言葉なんて信じられなかった。
誰にも愛された事なんか無くて。
愛されたいといつも思っていて。
それすらも願いは叶わなくて。
叶わないと知っていても願っていて。
そんな自分に掛けられたものだとは思えなかった。
視界が潤んで、何も見えなくなった。
バカ。
辛うじて発そうとしたその言葉は、声にならなかった。

LAST SUMMER parallel ( No.15 )
日時: 2014/08/29 20:58
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: YcGoCaZX)

「夜の10時、一緒にやらない?海で線香花火。」
放課後に夏実は無意識の内にそう誘っていた。
夏実は線香花火が好きで、色々な種類を見付けては買い、とっておいていた。
最後の夜にちょっと花を飾るくらい、神様もきっと許してくれる。
後でそうやって、自分を納得させた。

予定より少し早く海に着いた。
この後海で楽しんで……、海で死ぬ。
そうしようと決めていた。
時間は刻一刻と進む。
英樹が遅れたらこのまま死のうかと思っていた。
穏やかな波を見詰める。
夏実は知っていた。
今日の夜は風が強い。
真夜中になるとほんの少し波が荒れる。
その時に、と決意していた。
今更惜しくなった訳ではないが、何となく寂しい気持ちになったところで、気配を感じた。
英樹がパジャマのまま、こちらを見ていた。

穏やかな夜だった。
何でもない、どうでもいい話ばかりだけれど、胸が弾んだ。
線香花火の優しい光が、英樹のはにかんだ笑顔を照らした。
英樹との交流は、本当にこれだけだった。
なのに何故か、言葉には表せない、今まで感じたことの無い不思議な感情を抱いていた。
楽しい時は、驚く程早く流れた。
風が強まっていく。
夏実が持ってきた花火も尽きた。
今思うと、もっと持っていけば良かったのだが、夏実が生きた証が全て無くなるような気がしていたのだ。
そして……、どうして言ってしまったのだろう。
気付くと、約束、と心の中で呟いていた。
実際そんな可愛らしい事言える訳がない。
「…英樹。また明日、一緒に、線香花火、しようね。」
言えたのはこれだけだった。
もっともっと、他の色々なこと言いたかったのに、これだけだった。
「……うん。」
英樹は小さく頷いて、優しく笑った。

自分からした約束だった。
心の底から破りたくないと思っている自分を、夏実は認めた。
こんな小さな事で、10年の鬱憤を消し去れた訳では無かった。
でも、この10年間よりも、さっきの1時間弱の方が、特別に思えた。
帰ろう、と家に向かう為、丘に上った。
この下の海は深くなっていて、此処から飛び降りようと思っていた場所。
そこに……、父と母の姿が見えた気がした。
父は、自分の本当の父。
母も父も夏実を睨んでいた。
夏実は思わず後ずさった。
両親は夏実に近付いて来た。
一歩後ろに下がったとき蹴った石が、静かな音を立てて海に沈んだ。
父と母は、一緒に片手を振って空中を斬った。
その時夏実は全てを悟った気がした。
つい先程まで夏実が待っていた強風が、夏実を煽った。
踏ん張ったが耐えきれなかった。
父と母の姿はもう見えず、あれは幻覚だったのだと知った。
待ち望んだ筈の行動に、恐怖を感じた。

夏実は、海に落ちた。

何かに掴もうとしたが、海には空しい程何も無かった。
息を吸おうとしたが、荒れた波に逆らうことは出来なかった。
くっきりと「死」が見え始めたところで、夏実の意識は途切れた。

LAST SUMMER parallel ( No.16 )
日時: 2014/09/06 23:18
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: 6xeOOcq6)

「……ごめん。」
英樹がいきなり頭を下げた。
夏実は赤い目のまま頬を膨らました。
「どうして謝るのよ。」
「……え、えっと…………。」
英樹は顎に人差し指を当てた。
英樹は嘘を吐けない。
「……何か、泣かせちゃったし。………理由分からないの、俺が悪いもん。」
夏実は吹き出した。
「バーカ。」
「…え?」
「バーカ!」
夏実は泣き笑いの表情で英樹に向かって叫んだ。
あの日、声に出来なかった言葉だった。


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