コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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LAST SUMMER
日時: 2014/11/07 19:10
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xIf6nAEu)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=10068

夏の日に現れる不思議な少女。
小さく穏やかなその街で語り継がれる少女の影は、規則的に海岸の砂の上に映し出されていた。
—だが、いつしかその淡い色のワンピースを見る者は居なくなった。

+++++

この話の本編は、あなたがこの粗筋を読んで広げた想像の翼です。
だから副題を"parallel"、"dream"と名付けました。
これから描く物語は、私自身の翼です。
この羽根を一枚、あなたに託します。
これをあなたの翼の一部として仕舞って頂けると幸いです……。

【登場人物】
木田 英樹(きだ ひでき)
山下 夏実(やました なつみ)
※parallelもdreamも登場人物の名前は同じですが、ストーリーは違います。別世界(parallel)と夢物語(dream)は分けてお考え下さい。

【目次】
《ストーリー》
・LAST SUMMER parallel >>1-16>>21-
・LAST SUMMER dream

《コメント》
・ぱる 様 >>17 (紙風船より >>18)
・るくねこ 様 >>19 (紙風船より >>20)

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LAST SUMMER parallel ( No.1 )
日時: 2014/07/27 17:40
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xhJ6l4BS)

「危ない!」
英樹はその黄色い悲鳴のする方へ顔を向けた。
耳を塞ぎたくなる程のブレーキ音。
大きなトラックの先には—、目を見張る光景。
英樹は反射で乗っていた自転車を放り、思い切り手を伸ばした。
柔らかい感触。
勢いを付け過ぎたのか足を引っ掛け、ゴロゴロと転がる。
急いで英樹は抱いた小さな身体を自分の腕の中に収めた。
車に轢かれそうになっていた子供を辛うじて道路脇に押し出し、

英樹の視界は真っ暗になった。

LAST SUMMER parallel ( No.2 )
日時: 2014/07/27 17:41
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xhJ6l4BS)

重たい身体を持ち上げる。
目を擦り、ぼんやりした頭で辺りを見渡す。
「ん……、何だ、ここ?」
英樹はいつの間にか、見たことも無い場所に座り込んでいた。
壁等無く虹色の空気の様なものが包んでいて、何だか丸い形をしている。
円形競技場みたいな楕円型ではなく、—球体。
立ち上がって虹色に手を当てる。
「!?」
英樹は息を飲んだ。
手が虹色に埋まっていきく。
何の感触も無い。
怖くなって手を抜くと、腕を通した穴は無かったかの様に元通りになった。
軽く足踏みをする。
今度はびくともしない。
寝惚けた思考回路は一気に冴え、頭の中をぐるぐると駆け巡っている。
俺は何を考えているんだ。
…何かをだ。
とにかく俺は俺の知らない場所に来ちまったらしい。
分かったのはそれだけ……………。
英樹は深く溜め息を吐いた。
焦っても仕方無い。
そう呟き、自分に言い聞かせる。
実際は幾度も汗が頬を伝っていた。


不意に、足元に違和感を抱いた。
しゃがんで靴付近を見詰めると、細長い緑色のリボンがあった。
虹色に反射してキラキラと光っている。
英樹は触ろうとリボンに手を伸ばした。
「それは駄目っ!!」
「えっ!?」
英樹は驚いて、怒鳴り声のした方へ顔を向けた。
そこへ仁王立ちしていたのは、小柄な女の子だった。
淡い水色のワンピース、小さな裸足。
ストレートで肩より少し長めの茶色が混じった黒い髪。
美人とは言い難いが可愛らしい顔立ち。
少し日焼けした腕を腰に当て、英樹を上から睨んでいた。
何かが引っ掛かり、英樹はその少女を真っ直ぐ見上げた。
そして英樹は幼き夏の日に甦って行った。



LAST SUMMER parallel ( No.3 )
日時: 2014/07/27 17:42
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xhJ6l4BS)

「き…木田英樹です、よろしくお願いします。」
都会から引っ越してきた英樹は目を見張りながらも深々と頭を下げた。
「ほら、早く顔上げないとヒンケツになっちゃうぞー!」
—"貧血"の意味を良く知らない年齢であった英樹はすっかり混乱してしまったが、言われた通りに頭を上げた。
教室には、男3人と女1人、それに女の先生。
1学年に4クラス程あった前の学校とは大違いの空間だった。

昼休みは外でサッカー。
広々とした野原でボールを追い駆ける。
違う学年もいつの間にか入って来て、体格に負けじと懸命に走っていた。
他にも野球、木登り、段ボールを使ってそり遊び…と、田舎特有の遊びまで手を出した。
前の学校だったら怒られていた、と思えるものも少なくない。
楽しい暮らしの中で、たった一つ、気掛かりがあった。
気掛かり、と言うのは……

「どうして夏実ちゃんは皆と遊ばないの?」
「…ちゃん付け止めて、気持ち悪い。」
「じゃあ、夏実?」
「名前呼びもやだ。」
教室でたった一人の女子、夏実の事。
「山下…………さんは、」
何故間が空いたのかと言うと呼び捨てにしようとして鋭い目がこちらに向いたからだ。
「どうして皆と遊ばないで、ずっとそうやって座ってるの?」
夏実は頬杖をつきながら英樹から視線を外し、窓を眺めて呟いた。
「……………私は誰からも好かれない。お母さんもお父さんも、私が嫌い。…多分、皆も。」
小学4年生とは思えない言葉に、英樹は戸惑った。
その時、夏実が言っている事が理解出来なかったのだ。
英樹は分からないなりに—、即答した。
「俺は好きだよ。夏実の事。」
逸らされていた視線が驚いた様に一瞬戻り、また逸らされた。
バカ。
そう唇が動いたが、声は発されなかった。



LAST SUMMER parallel ( No.4 )
日時: 2014/07/27 17:43
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xhJ6l4BS)

その夜、夏実に誘われて海へ向かった。
少し歩けば着く、小さくも綺麗な海。
パジャマのまま親が寝ている事を確認して窓から抜け出すのは、何とも言えないスリルがあった。
夏実は先に着いていて、こちらは昼のワンピースのままだった。
一人で砂浜に座り、海を見詰めていた。
波が寄り、夏実の足に近付く。
夏実が少し足で波に砂をかけると、海水は素直に引き下がった。
数秒してからまた波は海岸に身を乗り出す。
そして去って。
寄って。
去って。
寄って。
去って。
この波を見る目は何だか悲しげで、英樹は近寄りがたくなり夏実を見詰めているしか出来なかった。
しばらくして、気配を感じたのか夏実はこちらに振り向いた。
肩より少し長めの髪が、風に靡かれて音を立てた。

夏実はポケットから線香花火を取り出して、マッチを擦った。
暗く青い色の中に明々と光る。
2つ一気に火を着けて、マッチに息を吹きかけて海に放り投げた。
小さな球がパチパチと火花を散らす。
「結構好きなの、線香花火。……優しい感じがするから。」
そう言いながら英樹に1本渡す。
英樹は何も言わずに頷き、それを受け取った。
球の明かりが2人を包む。
英樹は海に向かってその光を掲げた。

線香花火が無くなるまで、色々な話をした。
どんな事を話したか覚えていないが、他愛ない雑談であったのだと思う。
球が落ちると、夏実はまた線香花火に火を近づけた。
夏実の手持ちが尽きると同時に、会話も途切れた。
長い沈黙が夜の海を渦巻く。
「…英樹。また明日、一緒に、線香花火、しようね。」
「……うん。」
小さな約束を交わして、英樹はゆっくりと家へ帰った。






次の日。
夏実は、学校に来なかった。
風邪でも引いたのかと思い先生に尋ねた。
…………が。
「なつ…み?誰なの、それ。」
「だから、山下夏実です。ほら、このクラスでたった1人の女子ですよ!」
「何言ってんだヒデー。ウチ、男しかいねえじゃん!!」
担任との会話に割り込んだのはクラスの友達だ。
「てか、このちっせー街にはナツミなんて奴居ないぞ、ヒデ。」
この街の子供達は皆知り合いなのだ。
「もしかして……、都会に居た時のカノジョとかじゃねーの!?」
男だらけの癖に歓声が上がり、面倒なので口を閉ざした。

放課後、少ない小遣いで線香花火を買い、自転車を走らせた。
夏実の家にも行ってみたが、「家に子供は居ない」と言われてしまった。
信じられない。
まさか………………………まさかまさかまさか。
有り得ない、絶対有り得ない。
—そう自分に言い聞かせてペダルを踏んだ。




LAST SUMMER parallel ( No.5 )
日時: 2014/07/27 17:44
名前: 紙風船 ◆j5fpcv1lQM (ID: xhJ6l4BS)

いつの間にか、日が暮れた。
夏実は見付からなかった。
ほんの少し残った体力を振り絞り、昨日の浜辺へ向かった。

夕暮れの海は綺麗だった。
夕日が海に沈んで、溶けているみたいだ。
よろよろと自転車を降り、道端に停める。





「…夏実?」
浜辺には—ワンピースの小柄な少女の背中。
砂浜に立ち、海を見詰めている。
「夏実!」
名を呼ぶと、髪がさあっと揺れた。
一瞬、こちらにその顔が向いた。
その口元は、嬉しそうで悲しそうな、何故か胸を刺す様な笑顔だった。
「な…つ、み。」
動揺を隠しきれないまま、もう一度繰り返す。
夏実の存在を確かめる様に。
「……やろう。線香花火。」
英樹はポケットの中でくしゃくしゃになった線香花火を取り出した。
「約束、だろ?」
そう言うと、夏実は俯いた。
髪が顔に掛かって、見えなくなった。
一粒の滴が砂に吸収されたのと同時に、—その姿は消えた。
英樹は涙が落ちた砂を拾い上げた。
まだほんの少し水気が残っていた。
その砂をハンカチに包み、夏実が立っていた場所に線香花火を置いた。
頬を沢山の水が濡らし、虫生に悔しかった。
次の日には、その線香花火は無くなっていた。



その後、目撃情報が幾つも流れ、小さな怪談として囁かれていった。
夏の、実りの時期に現れる不思議な少女。
しかし、英樹はあの時以来、背中を一度も見ることは無かった。
その思い出はいつしか胸に仕舞われ、顔も思い出せなくなった。
あれから、4年の月日が経った。





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