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お菓子な家の魔女【完結】
日時: 2015/03/11 23:37
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

はじめまして、またはこんにちは。
ひよこという者です(●´ω`●)

前作はわけあって更新停止させていただきます。
本当に勝手ですが、よろしくお願いしますm(_ _)m
事が収まったら更新再開しますので、暫しお待ち頂けると嬉しいです。

そして今回書かせていただくのは、童話「ヘンゼルとグレーテル」をもとにした、魔女と恐れられた少女の物語です。



*登場人物

・マリア
森の奥に住む少女。
町の人々から魔女と呼ばれ恐れられている。
動物と話せる不思議な力を持つ。

・ヘンゼル
町を危険から守る騎手。
若くして剣の腕は一人前で、最年少の騎士。
双子の妹がいる。

・エリオット
幼い男の子。
森で迷ってしまい、マリアと出会う。

・ハリー
白い毛並みの大きな犬。
マリアの友達。

・グレーテル
ヘンゼルの双子の妹。
強気だが、実は傷つきやすい女の子。

・ケンディ
ヘンゼルたちの住む町の町長。
横が広い。

・ヴェルトン
騎士団の団長。
見た目はゴツいが、根はいい人。


※この物語に出てくる人物は、童話の人物とは別人です。



*お客様

・マヤ様
・杏月様
・モンブラン博士様
・夕陽様
・はるた様
・覇蘢様
・ヒナ様
・スミレ様
・てるてる522様
・PIERROT様
・Tanpopo*様
・ユキ様
・あんず様

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Re: お菓子な家の魔女【11/6更新】 ( No.37 )
日時: 2014/11/12 00:42
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

二人はしばらく歩き続け、ある場所でピタリと足を止めた。

(迷いの森……!?どうして……ここは魔女が住んでいるのに)

まだ朝だというのに、森はどこか不気味な雰囲気か漂っている。
魔女の使いと呼ばれる動物たちが、森を徘徊しているという噂もある。
ヘンゼルは辺りを注意深く見渡したあと、エリオットの手を引き森の中へと入っていった。

(……入ってっちゃった……ど、どうしよう!?私も行ったほうが……)

ごくりと喉をならし、グレーテルは意を決したように森へと足を踏み入れた。
初めて入る森は静寂に包まれていて、動物の鳴き声一つ聞こえなかった。
夜行性が多いと聞いていたが、そのためだろうか。
ヘンゼルたちを見失わないように、必死にあとを追いかけていく。
複雑な分かれ道を、二人は迷うことなく進んでいく。

(どこへ向かってるのかな……)

しばらく歩いていると、小さな木の小屋が見えた。
美味しそうな、お菓子の甘い香りが漂っている。
ヘンゼルがその小屋の扉をコンコンっと叩くと、扉はキィと音を立てて開いた。

「いらっしゃい、二人とも!!ちょうどクッキーが焼けたのよ」

中から、艶やかな黒い髪をなびかせた少女が嬉しそうな顔をして現れた。
傍らには、白い毛並みの大きな犬がいた。

(こんな森の奥に、人が……)

「わあい、クッキー!!僕、お姉ちゃんのつくるクッキー大好き!!」

「あんまり食い過ぎるなよ、エリオット……」

ぴょんぴょんと跳ねながら喜ぶエリオットを、ヘンゼルが苦笑いを浮かべながらなだめた。

(もしかして、いつもここに……?でも、森に誰かが住んでいるなんて聞いたことがない……だって、ここには魔女が……)

グレーテルには、一つの考えが浮かんだ。
ヘンゼルたちのやり取りを、微笑ましそうに見つめているこの少女こそが、魔女なのではないかと。

(もしそうなら、お兄ちゃんたちが危ない!!)

少女は二人を小屋に招き入れ、パタンと扉を閉めた。
グレーテルは気づかれないように、中の様子が窺える窓に身を移した。
僅かではあるが、会話が聞こえた。

『……あ、マリア。これ、やるよ』

『ん?なに、これ……わ、服だ……!!可愛い……!!』

『ヘンゼルのお兄ちゃんがねー、頑張って選んだんだ!!』

『なっ……!!余計なこと言うなよエリオット!!あとクッキーをボロボロこぼすな!!』

『そうなの?ふふ、ありがとうヘンゼル。大事にするわ』

『……おう』

会話を聞いているぶんには、なんら問題はない。
だが、油断は出来ない。本性が現れたら扉を蹴破ってでも窓を割ってでもヘンゼルたちを助ける!!と、グレーテルはいっそう耳を澄ました。

『……それで、この前のお話の続き、聞かせてくれないかな』

『ん、どこまで話したっけか……ああ、そうそう。騎士の話か』

『どうしてヘンゼルお兄ちゃんが騎士さまになったかだっけ?僕も気になる〜!!』

『俺の両親はさ、俺と妹……グレーテルを残して死んじゃったんだ』

ヘンゼルの言葉に、グレーテルは様々な想いを巡らせた。

(ママ……パパ……魔女に殺された……)

町長の口から告げられ、目の前が真っ暗になったことを覚えている。

『兄として、グレーテルを守らなきゃと思ってさ……どうしたら守れるんだろうと思って見つけたのが、騎士だった』

騎士はこの町を守る英雄で、人々から敬われていた。

『その中でも俺が憧れたのが、騎士団長様でさ。強くてかっこよくて、誰もが羨む人で、そんな風になりたくて騎士団に入ったんだ』

喜々として語るヘンゼルを、グレーテルは複雑な想いを抱えながら見つめていた。
もちろん、そんな兄を尊敬しているし、慕ってもいる。
騎士になったのも全て自分のためだとわかっている。
それでも。

(寂しいなんて、私の我が儘だよね……)

騎士になり、剣の腕前もいいと評判になり、ヘンゼルは忙しくなった。
家にいる時間が減り、グレーテルは一人ぼっちだった。
両親がいなくなってしまった今、一番そばにいてほしいのに。
騎士を止めてほしいと、何度も思った。
そのたびに、これは自分のためにしてくれているんだと言い聞かせ我慢してきた。

__騎士じゃなくていいから、そばにいてよ。

そんな想いを、いつも抱えていた。    

Re: お菓子な家の魔女【11/12更新】 ( No.38 )
日時: 2014/11/16 00:23
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg (ID: 34QCmT3k)

お久しぶりです、はるたです。

ヘンゼルくんがかっこよすぎです!最初に「騎士」という単語を聞いただけでもかっこいいと思ったのに、そのうえ何ともイケメンな性格……っ。いわゆるツンデレさんというやつなのでしょうか!!やっぱりひよこさんの作品に出てくる男性キャラはイケメンが多いですね。はるた発狂しまくって大変です、はい(笑)

グレーテルちゃんのも買いくて大好きです。お兄ちゃんが女物服を買っていたら、それが自分のサイズかどうかわかるなんて……。これはブラコンの域を達していますね。大切な家族に一緒にいてほしい、そういうグレーテルちゃんの健気な気持ちが胸に刺さりました。

続きを楽しみに待ってます!
更新がんばってください。

Re: お菓子な家の魔女【11/12更新】 ( No.39 )
日時: 2014/11/16 23:34
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

はるたさん


お久しぶりです〜(*´▽`*)

ヘンゼルは金髪イケメン、グレーテルは金髪美少女という、美形双子です。
私もはるたさんのキャラ、イケメンが多くて毎度ニヤニヤさせてもらってます( ´艸`)
ツンデレですね!!((
まあ、エリオットがいるおかげでいちゃこらできないわけですが(笑)

グレーテルはかなりのブラコンです、はい。
ヘンゼルしか家族がいなかったっていうのもありますが、根っからのお兄ちゃん大好きっ子です。
あと強気で嫉妬深くて色々面倒くさい子(笑)


コメントありがとうございました!!

Re: お菓子な家の魔女【11/12更新】 ( No.40 )
日時: 2014/11/17 00:23
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

『そっか……お兄ちゃん、かあ……』

少女が頬杖をつき、微笑みながら言った。

『私にもしお兄ちゃんがいたら、騎士なんかしないでーって言ってるかもなぁ』

『なんでだ?』

『だって、怪我するかもしれないし。それに、私はそばにいてくれるだけでいいかな。親がいなくて、家にひとりぼっちってさ、結構寂しいんだよ?』

__なんで。

『でも、騎士じゃなきゃあいつを守れない……』

『騎士じゃなくったって、そばにいれば守れるものくらいあるんじゃないかな……私は、そういう人が欲しかった。一人でいいから、いてほしかった』

__なんで私が思ってること全部、言ってくれるのよ。

グレーテルは走り出し、扉を思いっきり開けた。

「そうよ!!」

「ぐ……グレーテル!?なんでここに!?」

突然現れたグレーテルに、ヘンゼルたちは目を丸くした。
そんなこともお構いなしに、グレーテルはびしっとヘンゼルを指差した。

「私は!!お兄ちゃんともっと一緒にいたいの!!寂しいの!!」

涙が、気持ちと一緒に溢れ出す。
もう止まりそうにない。

「守ってくれなくてもいいから、そばにいてよ!!」

その言葉を最後に、グレーテルはしゃがみこんで泣き出した。
そんなグレーテルに、ヘンゼルはそっと近づいた。

「グレーテル……お前……」

「っ……わがまま言って……ごめんなさいっ……でも、でもぉっ!!」

涙をとどめることなく零すグレーテルを、ヘンゼルは優しく包み込むように抱きしめた。

「ごめんな……俺、気づかなくて。これからは時間つくってなるべく家にいるから……でも、騎士はやめたくない」

その言葉に、グレーテルはヘンゼルの顔を覗き込んだ。

「騎士は、俺の夢なんだ。これは……俺のわがままだ」

グレーテルは、そう言う兄の顔をしばらくみつめたあと、ぐしぐしと服の袖で涙を拭いた。
そして、花が咲いたかのように笑った。

「やっぱり私たち、双子だね!!」

「そうだな……どっちもわがままだ」

笑いあう二人を、微笑みながら見つめている少女に気がつき、グレーテルは慌てて立ち上がった。

「あなた、お兄ちゃんとどういう関係なわけ!?こんな森の奥に住んでるなんて、魔女じゃないの!?」

「へ!?あ、いや、私はその……」

「グレーテル……話すからとりあえず落ち着け!!」

「ちょっとお兄ちゃん、まさかこの人のことす……「あーあーあー!!なにも聞こえんなあ!!」」

「二人とも落ち着いて……!!」

「お姉ちゃんだあれー?」



***


「……とまあ、そういうわけだ」

あのあと、なんとか騒ぎを収め、グレーテルにマリアのことを話した。
マリアは、ヘンゼルの妹だからと快く話してくれた。

「……てことは、なに?魔女なんかいないってこと?」

グレーテルは驚きを隠せず、勢いよく椅子から立ち上がった。

(……まあ、普通はそうなるよな。俺もそうだったし)

「簡単に言えばそういうことだ」

グレーテルはゆっくり腰を下ろした。
そして、なにかを考えるように顎に手をあてた。

「グレーテル?」

「……お兄ちゃん、帰ろう」

「え?」

「ほら、はやく!!エリオット君も!!」

ヘンゼルとエリオットの手をとり、グレーテルは足早に扉へ向かった。
ふと足を止め、呆然としているマリアのほうに顔をむけた。

「……ありがとう。私の言いたいこと言ってくれて。……でも!!お兄ちゃんと恋人になろうだなんて私が許さないからね!!」

「ちょ、お前なにを言って……!!」

ヘンゼルの抗議もむなしく、ずるずると外へ強制連行された。
扉が閉じ、部屋が静かになると、マリアはぽつりとつぶやいた。

「……嵐みたいな人たちだなあ」

外はすっかり日が沈み、美しい月が森を照らしていた。

Re: お菓子な家の魔女【11/17更新】 ( No.41 )
日時: 2014/11/20 00:03
名前: ひよこ ◆1Gfe1FSDRs (ID: OcHJFEPy)

すっかり夜も更け、マリアはベッドに潜りうつらうつらしていた。

(今日は色々あったなあ……楽しかったけど)

ヘンゼルとグレーテル、性格はまったく違う双子の兄妹。
どちらも、お互いを大切にしているのが伝わってきた。
どうしても、羨ましい、と思ってしまう。

(……私の……わがまま、か……な……)

だんだん意識がなくなっていき、ついにマリアは深い眠りについた。











「……ん」

あれからどのくらい時間がたったのか、マリアはふと目を覚ました。

「今……誰かの声が……」

そばに目線を移すと、いつもいるはずのハリーの姿がなかった。
不思議に思い、マリアはベッドから体を起こし、ハリーを探しに隣の部屋へ向かった。

「ハリー?」

じっと窓の外をみつめている、ハリーがいた。
その姿は、月の光に照らされて、とても美しかった。
こちらに気づいたハリーが、マリアをみるなり顔をしかめた。

「え……なに?『こっちにこないで』……?どうして」

はっ、と、マリアも窓の外を見やった。

(今の……女の人の声……)

月明かりで、外の様子がよく見えた。
遠く……遠くといっても、目で見える距離の場所で、若い女性が尻餅をついていた。
その女性に、なにか尖ったものがむけられている。

(あれは……)

「剣……?」

それをむけているのは、鎧を着た騎士だった。
どうして騎士が……そんな疑問は、すぐに打ち消された。

嫌な予感がする。

いつかヘンゼルが言っていたのを思い出した。

「行方不明者……森の中に入って……魔女に、食べられた……」

__ああ、そうか。行方不明なんて、嘘だったんだ。

本当はずっと、おかしいと思っていた。

「ハリー……あなた、知ってたの?」

ハリーはじっと、マリアの顔を見つめた。

「森に誰かが入ってきたら、みんなが気づかないはずがない。しかも夜に。知ってたの?ねえ……答えてよ。もしかして、行方不明者って、みんな、ここで騎士に……」

声が震える。
もしそうだったとしたら、知らなかったではすまされない。
こんなに、近くにいたのに。

「ハリーたちは、私に隠してたの……?なんで?なんでそんな大事なこと言ってくれなかったの!?知ってたら、一人くらい助けられたかもしれないのに!!」

わかっている。ハリーたちは、自分のためにこのことを伝えなかった。
これを見たら、傷つくと知っていたから。自分を責めると、わかっていたから。
もしかしたら、それだけじゃないかもしれない。
それなのに、口が勝手に動く。

「もう……いい……私助けにいく……」

ハリーが、マリアにむかって吠えた。
その目は、どこか悲しげだった。

「行くなって……そんなの無理だよ……すぐそこにいるのに、どうして助けちゃいけないの……?」

いまだ吠え続けるハリーをおいて、マリアはタンスから黒いフードつきのローブを引っ張り出した。
それを身につけ、家を飛び出した。
ハリーの『声』を振り切って、マリアは走った。


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