コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 雨の社
- 日時: 2015/06/05 19:29
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: YAHQda9A)
昔話を聞いてくれる?……さぁ、座って。
はにわという者です。こんにちは。おそらく短編です。
実質2作目の作品となります。
前回は洋風の小説を執筆させて頂きました。
今回は「和」に重点を置いていく予定です。何事も挑戦ですよね。
拙い文章ではありますが、気軽に読んでいただけると幸いです。
アドバイス等ありましたら遠慮なく!
◆
雨の音をBGMにして読んでいただけますと、少し、嬉しいです。
不定期更新ですが、とりあえずやってみよう精神で頑張ります。
>>1 【プロローグ】
第一章 【夕立】‐金平糖と娘‐ 第二章 【恵雨】
>>2 >>28
>>3 >>29
>>4 >>30
>>5 >>31
>>6
>>7
◆
【小雨】-落涙- 第三章【××の嫁入り】
>>18
>>19
>>20 >>28
>>29
>>30
>>31
終章【月時雨】
>>32
>>33
>>8 ※キャラシート(一旦募集停止します) >>7
- Re: 雨の社 ( No.1 )
- 日時: 2015/03/18 20:12
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: De6Mh.A2)
どうしよう、
どうしよう————
此処はどこでしょうか、
少女の弱い声も、この豪雨にかき消されてしまうのでしょう——
当然です、見回せど見回せど、同じ景色しかないのです。
陰鬱として、じっとりして、綺麗とは程遠い、木々の、
——嗚呼、そんなものは見たくない!!
とにかく出口を、と。激しい雨音に追い立てられるように走り続けていました。
——やがて少女の足が止まった。
呆然と、目を見開いたまま。
- Re: 雨の社 ( No.2 )
- 日時: 2015/03/18 21:28
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: De6Mh.A2)
「いいねえ、雨ってのは」
縁側で、
そんな事を呟く、夕方、雲量多し。
威勢の良い雨が、神社に叩きつけられていた。
よっ、と下駄を履き、深呼吸をすると、懐かしいような雨の匂いがする。
「まぁ、こんな雨ん中散歩するのも悪くはない……ってか」
歌うようにしながら、境内を見て回る。
歩くたびに、ばしゃ、と水が跳ねた。
鳥居、参道、手水舎——
後、燈籠————お?
……立ち止まり、自分以外の足音が聞こえることに気づいた。
青みがかった黒色の眼を、凝らした。
何かがいる。何か——
「……そこか」
少しの笑みさえ浮かべて、
呟くやいなや、気配のする方向へ歩き出す。
「それ」の正体が、分かった。あどけない少女であった。
しかし、今は固まったように、目を大きく開けたまま、突っ立っていた。
「……珍しい来客だな、迷子か?」
少女と目線の合う様に屈んで、話しかけてみる。
あ、と少女が声をあげた————瞬間。
ああ、どういうことだ。踵を返して——思い切り走り出した。
「こら待ちなさい、怪しい人じゃないから!!!」
怪我でもさせたらことだ。俺も全力で追い駆けさせていただく。
——ご、ごめんなさいぃ!!
その子はそういい終わるか終わらないかの内に——思い切り、すてんと、こけた。
うぐぅ、という呻き声をあげて、立ち上がろうとするので、慌てて止めた。少女の黒い髪が、はらりと水に浸かる。
「大丈夫か、あんた……」
着ているブラウスも、えらく長いスカートも、悲惨なことになっていた。水で。
苦笑しながらとりあえず声をかけ、どうするかな、雨に濡れない所まで連れて行くか?
考え込んでいると、少女は、ぐったりしたようすで、俺の甚平の裾をぎゅっと掴んだ。
あ、つい、あつい…………あ、
「あつい?」
「……うわ、これ本物だわ」
少女の額に手を当てると、確かに熱っぽい感じがした。
- Re: 雨の社 ( No.3 )
- 日時: 2015/03/20 09:27
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: De6Mh.A2)
少女を介抱し、今に至る。
神社のすぐ近くにある、俺の家まで何とか担いできた。
「とりあえず布団しいとくから寝とけ、直るぞ」
畳にうみうしのようにへばりついていた少女に何とか動いてもらう。
「きもちわるいー……ぐらぐらする」
目の焦点があっておらず、ぼんやりした顔で呟いていた。
「熱にうかされる、っつーのは正にこういうことだよなぁ……死ぬなよ?」
「し、しなない……」
笑いながらいう俺に、さも迷惑そうに半身だけ起こして言い放った。
「終わったぞー。入れ入れー」
まるで猫か何かのように扱っているが、悪いな。
「んー……ごめんなさい」
全身がすっぽりと布団に覆われたと思うと、すぐに寝息を立て始めた。
その少女の頭をぽん、ぽん、と軽く叩いて、離れる。
起こしちまったら、可哀想だもんな。
◆
畳の床を、片足だけぺたぺたとリズムをとりながら、
木目がちょっと鬱陶しい感じのする棚を、正確には棚の中を引っ掻き回していた。
「料理はてんで駄目だもんなー……」
なにか元気づけるものはないだろうか、と。
何かの袋、何かの入れ物、何かのお守り、何かの空き箱。
地味な色彩の中で、一つ目を惹くものがあった。
がさ、と手にとる。
{金平糖}
小さくて淡い色を放つ星を、そのまま袋に閉じ込めたような、お菓子。
その、名前。
手書きの字で、そう書いてあって。
——沈黙。雨の音がよぉく聞こえるようだった
嗚呼、なんだろう、それを見て、少し切なくなった。
「とりあえず、これおいといてやっかなぁ」
自分の、黒髪を直すフリをして、少し目を擦る。
食器を出して、金平糖をざら、と開けた。
- Re: 雨の社 ( No.4 )
- 日時: 2015/03/29 10:44
- 名前: はにわ ◆wrfkg3Dbu. (ID: Bl6Sxw0v)
◆
日付は変わった、だが——
何かに未練があるように、いじらしく小雨が降っていた。
まぁ、雨は大歓迎だけどな……
そう考えながら、薄目を開けた。
あ、
「うわ俺見張ってるつもりだったのに……」
頭を抱えながら項垂れた。
どうやら、椅子に座って考え事をしたまま、寝てしまったようだ。
振り返る。壁だ。……。
昨日、金平糖を少女の枕元に置いた事は覚えているのだが——
仕方ない、と立ち上がり、少女のもとへ向かう。
襖をそっと開けた。
——無心で、「それ」を食べる少女の姿があった。
「あの」
声をかける、と我に返ったように、こちらを見て硬直した。
「わあああ!!ごめんなさい、ごめんなさいっすぐ帰る!! 」
「あんたはいっつもそれだなぁ!!落ち着け!!摘み出したりしないから!! 」
なんか真面目なんだろうけど、間が抜けてるというか……
「いや、もう元気になったので、でもこれがおいてあってあの」
金平糖——まぁほとんど残ってないけど、の器を掲げてアピールする。
「食べなきゃ、って思って、それでっ食べたら——」
そこで止まって俯く。なんだ、なんだと顔を覗き込む、と
お、おいし……く……てっ
頬に朱が差していた。そこ恥ずかしがるところじゃないだろう。
「まぁ食欲があんのはいいこったな。直ってよかった」
それも全部食ってしまえよ、と目線を傾ける。
「う、うん……」
遠慮がちに金平糖をつまんで、ぽりぽりと食べ始めた。
なんだか、小動物のようである。やっぱり猫かなんかか?
「でも、……どうしよう、母さんと父さんに怒られる」
「知らない人の所にいさせてもらったとかいったら……」
少女の表情がさっと暗くなり、そんな事を呟き始めた—ー何て?
人? はは、言ってくれるねぇ————人じゃねえな。
「俺はここの社を守る神様だよ」
「……え」
「うん。かみさま」
「神様」
信じられない、という目で、金平糖と俺を交互に見つめ、
——数秒後。
昨日の豪雨にも肩を並べるほどの声が響いた。
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