コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- CLOWN BY STEP
- 日時: 2015/09/21 21:23
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
「君は、ジョーカーになりたくないか?」
ハートのA、クラブの3、ダイアの5。
そして、スペードの11。
彼らの織り成す、青春群像劇。
ちょっと久しぶりに小説カキコに戻ってきましたw
昔書いていたものが未完のままテキストで残っていたので、編集を加えながら更新していきます。
コメントいただけると嬉しいです!
アドバイス等あればぜひ!!!
<目次>
〜序章〜
>>1
〜第一章 愛一の求める四角形〜
>>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
〜第二章 A to K〜
>>8 >>9 >>10 >>11 >>12
<お客様>
・SilverLight様
- 〜第二章 A to K④〜 ( No.12 )
- 日時: 2015/09/21 21:07
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
■□■□■□CLUB
「じゃあね、愛一、某S君」
「やめろよそれ……」
分かれ道を過ぎる。
愛一は女の子らしくいつまでも手を振っているけど、商五はじゃあな、と一言だけ残して振り返らずに歩いていく。
時刻は午後六時、太陽は恣意的と言って良いほどに、世界に置かれたもの全ての影を伸ばしていく。
夜に向けて、人間の影も深くなる。
愛一と商五、二人の姿が見えなくなっても、私はそこに立っていた。
——ジョーカー。
創士が昔から、何かと口にしていた言葉。
だらだらと、重い足を運んでいく。
愛一が勘違いしそうだから一応言っておくけれど、これは比喩であって、本当に重い訳ではない。
私は決して重量級じゃない。決して。
家に着くまで、ずっと考えていた。今までのこと、これからのこと。
ごく普通の一軒家が、私を出迎える。
そこに特徴があるとすれば、母の趣味であるガーデニングのおかげで、庭が華やかに彩られている、くらいだろう。それも別に、たいしたことではない。
ドアを引くと、施錠されたままのドアが音を立てる。
ドアを開けるために母が階段を下りてくる音が聞こえたが、それより先に、ポケットの中の鍵を使った。
「あら、おかえりなさい」
私は素っ気なくただいまを言い、手を洗ってから、自分の部屋に入った。
お気に入りの本が立ち並ぶ木製の本棚の上に、大好きなシロクマのマー君が、いつも崩さぬ微笑み顔で佇んでいる。
それとは対照的に、少しむすっとした顔の私が写った、何枚かの写真が、机の前の窓に立てかけてある。
部屋は全体的に白い。クリーム色の照明が、明るく部屋を照らしている。
鞄を掛けて、ベッドに思いっきり飛び込んだ。
ふかふかと柔らかい雲の海の中に、私は、沈んでいく。
僅かな記憶は、気付かぬ間に虚空に消えていった。
- Re: CLOWN BY STEP ( No.13 )
- 日時: 2015/09/21 21:21
- 名前: SilverLight (ID: 5NmcvsDT)
はじめまして、SilverLightです。
ここまで読ませていただきました!^ ^
青春時代の心情の変化が透き通るような雰囲気で描かれていて、読んでいて戻りたいなぁ、なんて思っちゃいますねw
続きも早く読みたいです!
- Re: CLOWN BY STEP ( No.14 )
- 日時: 2015/09/21 21:22
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
>>13 SilverLightさん、はじめましてですね。
読んでいただきありがとうございます(^O^)/~
続きも更新していきたいと思うので、どうぞこれからもよろしくお願いします。
- Re: CLOWN BY STEP ( No.15 )
- 日時: 2015/09/22 16:33
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
■□■□■□CLUB
また、週の終わりがやってくる。
外国人に言わせれば、週は日曜日にはじまり、土曜日に終わるのだ。
そして平日という枷を壊すべく、約九時間ほど前に、時間というとてつもなく大きなジオラマの中で、小さな飛行船は日付変更線を突破した。
その船員たる私たちは、本日は特別、重役出勤である。
通常の土曜日とは少し違う。
今日は電車に乗らない。
今日は創士が朝から創士の祖母の家にいるというので、迎えに来なくていいとのことだ。
私は鞄を持ち、ドアを開けると、いってきまぁすと、間延びした声を残していった。
少し歩いたところで、楽しそうな愛一と、やっぱり眠そうな商五と合流する。
いつも通り、非生産的な会話を交えながら、試蔵の表札に向かって、一歩、二歩、三歩と進んでいく。
軽やかな足取りの中で、商五の欠伸はいつもより目立たない。
愛一はやっぱり、微笑み顔を崩さない。
遠くに、手を振っている少年の姿が見えてきた。
森と一軒家を背景に、影と陽光を背負い、きらきらと反射する。
だがしかし、何かが、いつもと違う。
顔が、黒くて白い。
そして白くて黒い。でもやっぱり黒くて白い。
一体どうなっているの?
どんどん距離は縮まっていく。
今朝着けたコンタクトレンズが、ようやく、その姿を捉える。
顔の中心を軸に、対称的な図形、左側に白、右側に黒のベタ塗りが施され、両目からは真っ赤な血の涙が流れている。
涙の線の終点には、溜まった滴が表現され、地味なところに凝っているのがよく分かる。
塗りつぶしもバランスも綺麗なのだが、おそらく万人が、いきなりその仮面をつけて現れた少年に対して、一瞬、もしくは人それぞれの、恐れをなすだろうと思う。
隣で愛一がクスクスと笑っている。
故にあれは間違いなく創士だ。
「なんでそんなキモい仮面つけてんだ? あれか、受験ノイローゼっての。でもお前そんなに勉強してないしなぁ」
商五がけらけらと笑う。
「ちょっと趣向を変えてみたんだ」
「顔の?」
「うん」
創士はにへらっと笑った。
「整形を繰り返してるみたいに聞こえるからその言い方はちょっと危険だと思うぞ」
「まぁ取り合えず上がってよ」
仮面に遮られて声がよく聞こえないが、とりあえずみんなでお邪魔した。
おじゃましまーーー! だのおじゃまします、だのおじゃましまぁあすだの、それぞれ気の抜けた挨拶をする。
まあ、そこらの野良犬が鳴いているようなものだ。
創士はなんだかやけに嬉しそうで、見ているこっちが不安になってくる。
普段はもう少しクールというか、表情が安定しているというか。
今は表情が見えないけど。
「ねぇその仮面、いつまで着けてんの」
愛一が怪訝そうな顔で尋ねる。まぁ当然だ。
言いづらいところだけど、正直……気持ち悪い。
「正直気持ち悪い、とか思ってるでしょ。ひどいなぁ」
「げっ、創士に心読まれた!!!」
愛一はやや大げさに驚いていた。
後ろに飛びのくような仕草は、愛一らしくて可愛らしかった。
「本当なのか…ひどいなぁ愛一」
創士と愛一はクスクスと笑う。
どうやら創士に、仮面を外す気はないらしかった。
- 〜第二章 A to K⑤〜 ( No.16 )
- 日時: 2015/10/01 22:23
- 名前: ストレージャ (ID: 5NmcvsDT)
今日は何故か、ババ抜きをやるみたいだ。
怪人がカードをシャッフルして、怪人がカードを配っている。
なんとも珍妙で滑稽だ。
か……創士から時計回りでゲームはスタートする。
だが残念、ここは怪人の独壇場ではないということを忘れてはいけない。
「上っがりー」
私が一番に上がる。当然のことだ。
ババ抜きとは、いわば全年齢対象の心理戦なのである。
大富豪のように、ずっと先の手まで予測する思考の高回転は商五の得意分野だが、心理戦、例えばポーカーとかは、私の得意分野だ。
逆に愛一は、運頼みのゲームではその幸運ぶりを余すところなく発揮するので、将来宝くじを当ててしまうのではないかと少々不安になる。
創士は、カードゲームの中に得意なジャンルはあまりないけど、極度のトランプ雑学保持者であるが故に、皆の知らない戦術を使いこなしたりするから恐い。
商五の趣味は多種雑多だから、トランプに特化はしていない。
「っはい、上がり」
創士が上がる。とてもクールに、二枚の束を投げ捨てる。
ここから商五と愛一の駆け引き。お互いに、自分のカードと相手のカードの裏をキッと睨む。商五の右手が愛一のカードに触れる。愛一の表情は少し傾く。
……あれ。何かがおかしい。はっきりとしない違和感を感じて、先勝国として、二人の手札を確認する。
「あ」
私の違和感は、絶対的なものに変化する。確証を持っておかしいと言える。
二人とも、カードを二枚ずつ持っているのだ。
これがつまりは何を表すか。
ババ抜きとは、ジョーカーを最後に持っていた人が負け、先にカードが無くなった人が勝ち、というルールのゲームである。
ごく単純だ。
それもそのはず、残り二人になれば、どちらかの表情が重たくなり、ジョーカーの所在が分かる。
だけど二人とも、悩んでいるのは愚か、どこかに余裕すら持っている。
「これはゲームリセットじゃないか」
愛一から一枚のカードを引き、二枚のカードを真ん中に放りながら、商五も言う。どうやら気がついたらしい。
これだけ焦らしてなんだが、最終的に結論を言えば、ジョーカーが無い。
このまま愛一がカードを引けば、商五のカードが無くなり、また愛一もペアが揃う。二人が同時に上がることになる。
「おい誰だ? ジョーカー隠してんの。勝負なんだからズルはだめだろ、愛一」
商五は言う。
「あたしじゃないし! だったらポケットとか全部確認してみなよ、ほら」
「それはちょっと……アレだろ。よく考えてから発言しようか」
愛一ははっとして、顔を赤くする。
まあ愛一じゃないだろう。ならば。
「商五、ジョーカーを出しなさい。こういうのは大概、始めに騒いだ奴が犯人なんだから」
「確かに、世界にその事実が少なからず存在するのは認めよう。だけど俺じゃないぜ。なんなら……」
「商五、寝言は寝て言うのがこの世界の摂理だと思うよ」
「そうだな。上滑りした冗談を言うのは愛一だけで十分だ。ってか、先に上がっちゃってる三葉の方が怪しいんじゃないの? おう。どうなんだよその辺」
「私じゃない。断固として私じゃないわ」
こんなところで疑いあっても仕方がないので、皆で探し回る。
鞄の下、ソファの下、その辺りには見当たらない。
ちょっと探したところで、皆は諦める。
「こりゃ見つかんないな」
「どうすんの? もう一枚のジョーカーは?」
「このデッキはジョーカーがもともと一枚だから、無いわね」
そして創士が言う。
「まあ、しょうがないさ。無いものは無いんだ。今度新しいものを買っておくから、今日はもうこれでお開きにしよう」
いつもより少し早い。
太陽は、まだ沈む境目を探して天球を彷徨っている最中で、まだ顔を隠そうとしない。
仕様が無いのだけれど、なんとも惜しい気がする。
「じゃあ、なんか喋ろうよ」
愛一が提案する。
きっと、わざわざ提案するまでもなく喋るんだろうけれど。
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