コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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微妙な短編集【リクエスト募集中!】
日時: 2016/02/01 20:57
名前: ガッキー (ID: okMbZHAS)

微妙な短編集です。大体一話か二話で終わります。面白かったら「良いね」とか「YES」とかいっていただけたら続き書きます。自由にやります。
もう一度言います。微妙です。
あと、更新が遅かったり、誤字脱字がある時あります。笑って許して!
頑張ります(‾+ー‾)

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Re: 微妙な短編集 ( No.14 )
日時: 2015/12/31 15:36
名前: ガッキー (ID: Jhl2FH6g)

不幸である。
不遇である。
不憫である。

不運である。

そんな、【不】塗れの僕の人生。不具合しかない、不可能しか課されない僕の人生。
嫌です。出来るモノならリセットしたい。
しかし、親から貰ったこの命。質はどうであれ粗末にする等、親不孝。
親を不幸にする位なら、僕が不幸を、不運を背負おう。
覚悟は無いけど。
ゆるゆるの決意なら出来る。
そもそも、何故僕がこんなに暗い事をダラダラと語っているのか。


人生とは、生まれた瞬間から決まる。
僕はつくづくそう思うね。

0歳。僕を寝かせるベッドを運悪く間違えられ、危うく親が変わる事に。
1歳。親の手元から離れたベビーカーが坂を下り、運が悪く壁に衝突して怪我。
2歳。運悪くスーパーボールを誤飲して、窒息。
3歳。フラフラと二足歩行をしていて、バランスを崩して運悪く近くにあったテーブルの脚に頭をぶつける。
4歳。階段から落ちる。
5歳。妹がストーブの隙間にカードを差し込み、それを止めようとしたら運悪く発火して火傷。
6歳。運悪く階段から落ちる。
7歳。自転車に乗っていた所、道路の凸凹に運悪くハンドルを取られ、転倒。前歯を折る。
8歳。運悪く散歩中の他所の犬に手を咬まれる。
9歳。運悪くカンニングの冤罪をかけられる。
10歳。運悪くバスケットボールが後頭部に当たり、脳震盪。
11歳。運悪くトランプの角で指を切り、カードに付着した血を見た友人にイカサマ扱いされる。
12歳。教室の窓の掃除をしていたら、運悪く転落する。
13歳。階段を降りていると、生徒と肩がぶつかり転げ落ちる。
14歳。手首を捻挫して、包帯を巻いて登校したら中二病扱い。半年間イジられる。
15歳。卒業式の入退場の時に転ぶ。
16歳。喧嘩の仲裁に入ってボコボコにされる←今ここ。

表にすると、馬鹿か僕は。
まあ、これだけ見れば「別に普通だろ」と思うかも知れない。けど考えてほしい。
『この出来事全て、僕のせいじゃないのだ』
そういう事。運が無いだけ。神に見放されてるだけだ。あと、三回も階段から落ちている辺りも不運を感じさせる。
こんな人生を歩んできたからこそ、僕は自主的に何もしない。
スポーツは、入ったチームは必ず負け。
公園に行けば、使いたい遊具は使用中。
もう嫌だ。出来る事が勉強くらいの人生何て嫌だ。それが後何十年続くんだ。
でもね?そんな僕でも一つだけ良い事があるんです。
後悔をしない。
・・・・・・あっ、別に、ご大層なモノじゃない。ただ、悔やむと、どこから悔やんで良いのか分からない程人生が負け犬過ぎて・・・。
多分悔し泣きとかもしないんだと思う。

そんな、僕。不運な僕は今日も下校し、帰路に着く。
自室も殺風景なモノで、ベッドと机。机の上には教科書しか無い。
趣味を持つだけ無駄だと確信しているから、モノが無いのだ。
「やる事ないなぁ」
ゴロンとベッドに横たわる。白い天井が視界に。夕食迄はまだ時間がある。勉強ーーという気分でもないし。
窓の外の景色でも見て、色の数を数えて暇潰しでもしようか。
山の緑色に、空の青色。コンクリートの灰色に、・・・・・・・・・何だアレは。
白いーー大きなーー動いていてーー近付いてくる!?
「え、うわっ!」
驚くべき速さで眼前に迄迫ってきたソレを視認してから、仰け反る。上手く足をストッパーに出来ずに、後ろに倒れ込んだ。
「痛たた・・・」
背中をさすりながら立ち上がる。そして硬直。

「こんにちは、悲野・喜吉(ひの・きよし)様」

窓枠に座っていたのは美人な女の人。白い大きな翼を閉じて、僕の大嫌いな自分の名前を言ってきた。
「だ、誰ですか」
「私は、天界日本支部人類直轄科のフィエールと申します」
真っ白な肌に真っ白な翼に真っ白な髪の毛。瞳と唇以外は全て真っ白な女性は、訳の分からない事を言っていた。
女性は更に訳の分からない事を言う。

「貴方の不運を治しに来ました」

Re: 微妙な短編集 ( No.15 )
日時: 2016/01/18 23:13
名前: ガッキー (ID: 62e0Birk)

ガッキーです。
これから投下する話は、また長くなります。
私が他に投稿している作品とリンクしていたりするかも・・・?

Re: 微妙な短編集 ( No.16 )
日時: 2016/01/18 23:22
名前: ガッキー (ID: 62e0Birk)

勇者。
という職業は、中々面倒なモノでして。
異世界に勇者として召喚された中原・悠梨(なかはら・ゆうり)ーーボクはそう思っている。
あっ、因みに性別は女だから。勘違いは止してね。
女かよ!とか思った?
そういうのも、面倒事の一つなんだよね。
勇者と言えば男とかいう風潮。女勇者だっている事にはいるけど、世間に浸透する程ではない。
それ位なら、まだ許容範囲内だ。許せるし、我慢出来る。
ボクが、異世界に召喚された初めの頃が一番面倒だったね。間違い無く。

仲間が居ない。

普通、勇者と言えば、他に僧侶やら格闘家やら白魔術師やら何やらが仲間になるモノなんだけど、ボクにはそれが無かった。
召喚されて、驚いて、迷って、困って、理解して、歩いて、遭遇して、戦って、理解して、着いて、買って、装備して、また歩いて、出遭って、倒して、強くなって、切って、斬って、叩いて、殴って、蹴って、裂いて、突いて、潰して、撃って、射ってーー魔王城。それから、世界を救って。
文字にすれば途轍も無く短く、しかし体感し体験した身としては
限り無く、長い道程だった勇者としての旅。
力もスキルもあがりに上がり、カンスト状態。
しかし、世界を救って全てを手に入れたと思われたボクにも、失ったモノはあった。
笑顔である。
苦しみを共有する仲間を居ず、独りで旅をし、独りで開発し、独りで攻略。
常に独り。
いつからか笑顔を無くしたボクは、そのまま元の世界に戻された。
失った笑顔をーーそして、この身体に培ったスキルと力をそのままに。




Re: 微妙な短編集 ( No.17 )
日時: 2016/01/19 22:52
名前: ガッキー (ID: qRt8qnz/)

異世界からの帰還。しかしボクを待っていたのは、涙の再開でも、温かい祝福でもなかった。
遠回しな言い方をしよう。

ボクが居なくても時は流れ、三年も経っていた。

更に言うと。
親はどこかに引っ越したのか、懐かしみながら歩いた道の先に自宅は存在しなかった。
しかし、それは予想していた事だ。ボク自身何年も旅をしていた記憶があるし、こちらの時が進んでいるのも当然と言えば当然だ。引っ越しだって、結構前からーー異世界に召喚される前から話は出ていた。
だけれど、それはあくまで大雑把な方針の話であって、細かな計画ではない。どこへ行ってしまったのか分からないので、どうしても驚いてしまった。
人生に都合の良い事なんてありはしないのだ。
「さて、これからどうしようか」





更に月日は流れ、半年。
あれから色々あり、一人暮らしをする事になり、高校に通う事になったボクは(勉強は図書館で死ぬ気でやった。その甲斐あってか、ギリギリ高校には入れたのだけれど)、また苦労をする事になる。人生は苦労の連続だと誰かは言ったが、きっとボクの苦労はこの期間に詰め込まれていたのだと思う。
掲示板にクラスが発表され、それに従い教室に入る。
人、
人、人、
人、人、人、
人、人、人、人ーー
クラスメンバー計四十人。その内の三十人位が、教室に入ってきたボクを見た。恐らくボクの勝手な思い違いだろうが、ジロリと。そんな感覚で。睨めつけるように。
参ったな。そう一言呟いた。
これから一年間、このメンバーでやっていくのか。
ボクが知らない流行りの話をし、ボクが分からない造語で話す彼ら彼女らと・・・一年間?




そんな訳で、回想は終わり。長い地の文続きの語りもうお終い。今からは平凡な日常コメディが始まるよ!(大嘘)
結局、流行りのファッションも人気のアイドルグループも知らないボクがクラスに馴染める訳もなく、孤独に日々を過ごしていた。
あっ、嘘はいけないね。
友達が出来ないのは、自分が無知だからではない。
笑わないからだ。
だってそうだろう?誰が好き好んで、愛想の悪い人とーー愛想の無い人と仲良くなろうとするんだ。リスクがあってもリターンが無い。百害あって一理無しだ。
季節は初夏。ブレザーを着ている人はもう疎らになってきたこの季節。ボクは自分の席が窓際である事を恨みつつ(主に、日差し等の関係で)、今日も一人で着席していた。
嗚呼、暇だ。休み時間にする事が無い。休む事しか無い。日々が充実している方々なら、友達と喋ったり、携帯で(今はスマホと言うらしい。ボクはパカパカ携帯なのでよく分からないけれど)遊んだりするのだろう。
暇。
いっその事、ボクの数あるスキルの一つ【スランプ気味の氷刻師(アイシング・ブローキング)】でその笑顔を凍り付かせてやろうかと考えてしまう程暇だ。丁度暑いしね。
机に突っ伏して、何気無く窓の外を見たらーー目を剥いた。

人がいるではないか。

とは言え、空を飛んでいる訳でも、上の階から落ちている訳でも無い。ただ、外側の窓に張り付いてこちらを見ているのだ。
そして、
「いやー、遅刻遅刻」
窓を開けて中に入ってきた。爽やかな笑顔で、靴を片手に。恐らくその笑顔は、ボクに向けての笑顔ではない事は分かっている。
好青年。といった感じのは男は、汗で煌めく黒髪を掻き上げ、鞄の中からタオルを取り出して汗を拭い始めた。その周りに、男子が集まる。
「おい土手、お前また窓から登校かよ!」
「今日は何やってたんだ?」
「あぁ、迷子がいたから一緒にお母さんを探してたんだ」
「毎日毎日、よくやるよな。まっ、それが土手の良い所なんだけどな!」
と、耳に入る会話としてはこんな感じで。
どうやら、窓から登場した土手という生徒。かなりの人望があるらしい。
普通、窓から登校なんかしたら、ザワつく筈だ。そうでなくても、距離を置かれる。
けれど彼にはそれが無い。寧ろ、人が集まってくるではないか。
これこそ、彼の人望が成せる業。ボクとは大違いだ。
少しだけイライラしながら彼を見てみる。非難とかやっかみと言う思いではなく、嫉妬の視線で。
運が悪く、目が合った。
「・・・・・・」
「・・・・・・お、おはよう?」
ボクの目付きを見てどう思ったのかは知らないが、彼は恐る恐る挨拶をしてきた。
「・・・おはよう」
ボクも返す。勿論、無愛想な無表情で。
「おい土手、アイツには何言っても無駄だぞ」
「そうだよ。何せ感情が無いんだからな」
ボクの事をロクに知りもしない男子ーー今は土手の周りにいるだけのサブキャラ風情が勝手な事を言う。しかし彼は、困り顔でもやんわりと否定した。
してくれた。
「いや、でもクラスメイトだろ?そういう言い方はちょっと、な?」
その言葉に、周りの男子は少々面食らったようだが、丁度良いのか悪いのか鐘が鳴り、皆着席した。

・・・何だ、彼は良い人じゃないか。
単純なボクは、そんな感想を心の中で呟くのだった。

Re: 微妙な短編集 ( No.18 )
日時: 2016/01/31 23:41
名前: ガッキー (ID: gF4d7gY7)

あれからも、変わり者の善者土手・帰路との出会いがあってからも、ボクの高校生活は変わったりはしなかった。
通常運転。いつも通りの独りぼっち。
一緒に帰る友達も、知り合いも居ないボクは帰り道も独り。電車通学でもバス通学でも自転車通学でもないボクの帰り道は、尚更独りが引き立つ。目立つ。
「はぁ・・・」
無駄に二酸化炭素を吐いてみる。ボクの一回の溜め息で、果たしてどれほど地球温暖化が進むのだろう?と、小心者みたいな考えをしながら歩いていると、後ろから声を掛けられた。何だ?財布でも落としていたのだろうか。それとも、ボクの近くに居た違う人を呼び止めたパターンだろうか。
前者だったらマズいので、振り向く。
硬直。まるで、異世界で冒険をしていた頃に居た敵キャラの硬直スキルを食らった時のように、ボクは固まってしまった。
「お前が、中原・悠梨か?」
目の前には、黒スーツにサングラスという、分かり易い格好の集団。その中の真ん中にいたリーダーのような雰囲気の男が、そう問うてきた。可笑しいな。近くで撮影何てあっただろうか?と的外れな疑問を抱く。
仮に、偶然にも近くでテレビの撮影があったとして、そんな集団に呼び止められるボクもボクだ。
何かしただろうか?
「何でしょうか?」
丁寧に、問う。
その問いに対する答えは、ボク自身が持つどんなスキルを以ってしても防ぐ事の出来ない位衝撃的だった。

「勇者よ。異世界に帰って来い」

「・・・・・・え?」
「お前は、あちら側にいるべきだ。魔物を斬り伏せ、悪を退け、平和を呼び寄せる。そんな存在であるべきだ」
「ちょ、ちょっと待ってくれないかな?何でボクの経歴を知っている?」
正体ではなく、経歴。ボクはもう勇者じゃない。
兎も角、思わず敬語を忘れてしまう位ボクの脳内は混乱していた。
何故だ。何故黒スーツの男達はボクの経歴を知っている。向こう側の人間か?いやいや、世界と世界を跨ぐ何て、そう安易に出来る事ではないのに。
未知の敵との遭遇に、ボクは無意識に構えを取る。鞄を盾代わりに、構えてしまう。
「それをお前が知る必要は無い。良いから、戻って来い」
「・・・嫌だね。ボクは元々こちら側の人間だ。帰るも何も、居場所はここなんだよ」
「お前が一番輝けるのはあちら側だ」
「輝けるかどうかじゃない。行きたいか行きたくないかと問題だと思うね」
「・・・分からんようだな」
その言葉を最後に、気付いたらボクは宙を舞っていた。遅れて、額に鈍い痛み。世界が逆さまに見えて、それから、頭から地面に着地。
額を押さえて立ち上がる。押さえた手には、真っ赤な血。出血しているようだ。
「いきなりじゃないか、キミ達・・・!」
沸々と身体の内から込み上がってくる怒りがボクの体温を上げる。
さて、やられたらやり返すのが日本人のスタイルだ。
どんな手段で、どんなスキルで破壊してやりましょうか。
「強行手段だ。従わないお前が悪い」
その言葉を聞いてから、
ボクの眼が獲物を捕食する肉食獣のソレに酷似した眼に変化する。これこそが、ボクが戦闘モードに入った証。ボクの事を知っている者なら、この状態をこう呼ぶ筈だ。
【勇者らしからぬ獰猛鬼神(ミスチョイス・スーパーヒーロー)】と。
・・・断っておくけど、こんなダサい名前、ボクが考えた訳じゃないからね?勝手に野次馬が考えたんだからね?
武器なんか無くても、素手で相手を地に屠る最強の勇者。と、人は言う。
この状態でも、それは変わらない。
黒スーツの集団が何だ?瞬く間に退けてやろうじゃないか。
と、思った矢先。次の瞬間ボクはまたもや宙を舞っていた。
「ーーな!?」
ロクに受け身も取れずにコンクリートの地面を転がる。その際に、なけなしのお金で入学時に買った制服が汚れてしまう。自分の肌が傷付く事よりもショックだった。
「世界を救った勇者、中原・悠梨ーーそんな奴に、私達が何も対策を考えていないと思っていたのか?」
そう、確かにそうだ。普通なら、警戒して当然。
しかし、
ボクは。
自分が世界を救った英雄なのだと、心のどこかでフィルターを掛けていたのだ。
未知の敵から一発貰っても、スキルを使えば難無く勝てると思い込み。
自分を阻む者何て誰も居ないと勝手に断言していたのだ。
嗚呼、ボクは何て浅ましくて愚かな人間何だ。
立ち上がれない。まだ身体に限界は来ていない筈なのに、立ち上がる事が出来ない。
「断言しよう。お前は今から、一回もスキルを使う事が出来ない。勇者補正が掛かったその腕力も脚力もな」
「言わせて、おけば!ーー」
「無駄だ」
しゃがんだ姿勢からの、ボクが男の顔面を狙って放った回転跳び膝蹴り。しかしその一撃も、男が片腕で止めてしまう。一瞬、蹴ったままの姿勢で宙で停止するボク。その足を掴む男。掴んだまま腕を乱暴に振るう。ボクが飛ぶ。背中から壁に当たる。肺の空気が外に押し出される。落ちる。呼吸が困難に。空気を求めて喘ぐボク。倒れているボクの横顔に足を置く男。段々と力が入る。
「どうだ?まだ抵抗するか?」
「うぐぅ・・・!まだ、だ!ボクはーーぎゃああああああ!」
「ほら、早く『了解』と言え!言わないと、顔に傷が残るぞ?」
女にとっては、致命的だなぁ。と男はせせら笑いながら更に足に力を入れた。頭蓋骨が軋む。
「・・・・・・」
「どうした?話す事もッ出来ないか!?」
一度足を離してから、踏み付ける。何度も、何度も。それをやられている内に、ボクの脳内から『抵抗』の二文字が消えた。無くなった。双眸からいつの間にか流れていた涙と共に、どこかへと消えた。
完全なる『無抵抗』。しかし、『了解』と言うまで男の攻撃は止まらない。
視界は、涙のせいで滲んで見える。指で涙を拭おうとも、男の攻撃がそれを許さない。
耳も、あまり聴こえなくなってきたようだ。男の台詞にノイズが走っているように、途切れ途切れにしか聴こえない。
感覚も、無くなってきたのかな?頭に痛みを感じない。
壊れかけの耳を頼りに、周囲の状況を把握しにかかる。
「なーーお前ーーうやってーーグハッ!?」「やめーーウゴッ!?」「あああーーああーーああああ!?」
何が。何が起こっている。見えない。聴こえるのは、途切れ途切れの断末魔。

「大丈夫か!?」

(恐らく)ボクに投げ掛けられた一言。それだけは、ボクの頭にスルリと入ってきた。
しかしそれは奇跡でも偶然でも何でもない。身体を起こされたから、踏まれていない方の耳が音を受け付けただけだ。
上体が起こされた事により、重量に従って涙袋から落ちる涙。映った視界には、心底心配そうにボクの顔を覗き込む土手がいた。


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