コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- TRUMP
- 日時: 2016/03/20 16:00
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
彼女は、唐突に私の目の前に現れた。
「よし決めた!君を魔法少女として歓迎するっ!」
...魔法少女なんて幻想が、現実になりました。
***
初めましての方は初めまして。
そうでない方も一応初めまして←
鈴と申します。
今回はファンタジーものになっております。
ただ、何しろ書いたことがないので拙いものになるかと思います。それでも最後までお付き合いいただけたら幸いです。
それでは。
- Re: TRUMP ( No.16 )
- 日時: 2016/04/02 19:30
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「ん、じゃあ、質問はこんなところで終わりかな」
その後、わたしはメリア様に質問をされて答えてと何回か繰り返していた。
「じゃ、配属先を決めようか...なんか夢の無い名前でしょう?簡単だよ、どの神様に力をもらうか決めるんだよ」
配属先?と首を傾げたのを目ざとく見つけ、メリア様は補足説明をしてくれる。そんなにわかりやすいかな、わたし...。
「...じゃ、ちょっと眠ってもらうことになるけど、気にしないでね」
え?
「これからあたしが詠唱するから、その間は喋らないで?黙って聞いてるだけでいいよ、っていうかその方が助かるかな」
詠唱?
と思うが同時、メリア様が喋り始めてしまう。
「今汝に問う。自らの本質を思い出し、自らの目的を定める事を———即ち、汝が定めし信条に添い、新たな決意を生み出して改める事を。難事を打ち破り何時にも変わらず何事をも揺り動かす真理を今、汝が思い出し汝の歩む道とせよ。———その先にいる者は如何か———理解したらば一睡に堕ち、生まれ変わる意志を以て再醒し挑め。畏れ多き神々の加護により権利を保証しよう———【TRUMP】」
何を言っているのかさっぱりなまま、ただメリア様が「トランプ」と言った瞬間、強烈な睡魔に襲われて眠りに堕ちた———
***
ねえおじいちゃん。
「何だい、未帆?」
おじいちゃんは、どうしてわたしにバイオリンをやらせたの?
「それはな、未帆が音楽とバイオリンの素晴らしさに気づけるようにだ。若干、わしの願望が入っているのも認めるけどな」
じゃあ、どうしてわたしは、七果みたいにうまくならないの?
「おお?変なことを聞くな、未帆は。七果ちゃんは勿論上手だが、未帆が上手じゃないっていうのは間違っている。技術的な意味じゃ、ないぞ」
ぎじゅつてき?
「ああ...難しかったな。つまり、えーと...技って言えばわかるか?やっぱり、長く練習してきた人の方が、そりゃあ技は上手だろうさ。でもな、バイオリンは———音楽は、技だけじゃない」
.........?
「心が大事だ。勿論、技が上手いに越したことはないが、何より心が伴わなければ美しくない。...わしは、そう考えるよ」
こころ...?
「つまりな。未帆、バイオリンは好きか?」
うん、好き!
「それだ。その気持ちだ。バイオリンと音楽が好きだっていう気持ちが大事なんだよ。わかるか?」
...うん、わかった!
***
「んー...ん?」
目を覚ますと、そこはベッドの上。
何でわかるかって、ふかふかしたものに横たわっているからだ。ベッドでしょ、これ。
どんな部屋か、ってあたりを見回すためにゆっくり起き上がろうとした瞬間———
「痛ったぁ...!」
激痛に見舞われて、慌ててまた寝ころんだ。
一瞬見えた部屋の景色からするに、最初に来たあの純白の部屋らしい。
「ああ、起きた?」
聞いたことのある声がした。
- Re: TRUMP ( No.17 )
- 日時: 2016/04/03 21:12
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「えっと...リーナ、さん?」
確かラヴ様がそう呼んでいたはず、と名を呼ぶと、リーナさんは「なっ...?」と一瞬戸惑ったあと、「あの神様は...」となにやらぶつぶつ呟いていた。
「...まあいいや。ラヴ様」
「はいはーい、目覚めたんだね?」
ラヴ様がひょっこり顔を覗かせる。身体が痛くてしょうがなくて動かないので、何もできなかった。
「あー、やっぱり痛くて動かないかな、身体?リーナ、治癒してくれなかったのかい?」
「うー...はい、わかりましたよ...」
渋々といった様子で頷き、こちらへやってくるリーナさん。
「...じゃ、ちょっと失礼。《アラード・ラ・アイリス》」
何やら魔法?みたいなものを呟き、リーナさんがわたしに手をかざす。...何も起こらない。
「終わりました。ラヴ様」
「んー、ご苦労。どうかな?身体」
「え...?」
ゆっくり身体を起こす。
...さっきまで鉛のように重く硬かった身体が、すっと動いた。
これが、魔法...?
「驚いてるとこ申し訳ないけど、大事な話をするよ。あ、今のは魔法ね?それはいいとして。...あのね、魔法少女には魔法少女としての名が与えられるんだ。そこで、君にも魔法少女名が与えられた」
魔法少女名...。
じゃあ、リーナさんも、本名じゃなくて、魔法少女としての名前?
「ああ、うん、リーナもだよ。...それでね、この魔法少女名はすごく大事なものだ。この世界では、本名を晒すことは絶対的タブーだからね、わかったね?もう一回言うよ、本名は絶対誰にも教えるな」
本名は...誰にも教えるな?
未帆、という名を誰にも晒すな。
じゃあ、わたしに与えられた魔法少女名は...?
「じゃあ、言うよ。君の魔法少女名は———
———アリス、だ」
アリス...。
「あとこれ。君のマジックカード。安直な名前でしょ?ここには君の魔法少女名、Lv.、HP・MP、そしていずれは【TRUMP】が書かれる。...意味わかんないと思うけど、まあ説明は省略させて?今のところ、君のカードはこんな感じ」
ぴらっとカードを見せてくるラヴ様。
—————
アリス
Lv.1 HP:10 MP:10
—————
「まだこれしか書いてないけど、いずれはもっと書かれるから。ま、それはその時言うよ...で、リーナ」
「はい」
「君、アリスの『先輩』だから」
「...はい?はいっ!!?」
- Re: TRUMP ( No.18 )
- 日時: 2016/04/07 16:21
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「ちょっと!ちょっと待ってください!何で!?何でですか!?」
『先輩』と言われた瞬間、リーナさんは酷く取り乱した感じでラヴ様に詰め寄った。顔と顔の距離、目測で5cmくらい。ちょっと背中を押せばそのままぶつかりそうな距離だった。
「何でって...1番適任だって判断されたからだけど」
「そんなことはわかってますよ!何で———何で、私が適任なんですか!?絶対他に誰かいたでしょ、アリアとかリンフィンとかルッソスとか...!」
「いやいや、それを考慮してもなお、リーナを『先輩』にしようって決められたんだよ...ってことで、アリス」
「え...はい」
ラヴ様に名を呼ばれて、ぼやんと返事をした。本名じゃないはずなのに、このアリスという名前は妙にしっくりくる。そういえば、不思議の国のあの少女のお話、好きだったな...。
「アリス、君の配属先は僕、ラヴのところになった。それで、『先輩』っていう制度があるんだけど...」
「ラヴ様勘弁してください無理です」
「...同じ配属先の、前からここにいた魔法少女が、この世界について案内する。でも、大勢に教えられても戸惑ってしまうし、同じことを何度も教えられる可能性がある。それじゃあ非効率的だろう?」
「聞いてますかラヴ様!?」
「だから、ひとりにつきひとり、マンツーマンでこの世界のことを教えてくれる、『先輩』をあてているんだ。つまり、アリスの『先輩』が、この———」
「違う私じゃない絶対嫌!!嫌だ!嫌だ、やめてやりたくない!!やりたくっ、ない、無理、絶対ダメ絶対無理絶対できない...!」
「———リーナだよ」
「—————」
無情にも、ラヴ様はリーナさんの話を全く聞くこともなく説明を終えた。リーナさんは死刑宣告を受けたような絶望に染まりきった顔になっている。...あ、涙...。
「わかったかい?じゃあ、アリスはリーナにいろいろ教えてもらうこと。教えられるのを待つばっかりじゃなくて、自分から教わりに行く...ってまあ、当たり前だけどね?リーナも、ちゃんと教えてあげるように」
「...無理です」
「無理じゃない」
「嫌です」
「嫌でもやってもらう」
「出来ないです!」
「何で?」
「だってっ———
ニーナ以外に私は誰とも喋れませんから!!」
...?
喋れてるのに?何で...?
- Re: TRUMP ( No.19 )
- 日時: 2016/04/10 20:36
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「...あのねえ、リーナ。そういう事情を僕も知らないわけじゃないけどさ...やっぱり、Lv.5になってもまだ、MPが飛躍しない事情がここにありそうでしょ」
「だったら飛躍しなくていいです。だから私にひとりでいさせてください」
「...リーナ」
はあ、とラヴ様は厳しいため息ひとつ。
そして———これまでのラヴ様からは想像もつかない、恐ろしい形相でリーナさんを睨み付ける。
「何のためにこの世界に呼んだと思ってんの、リーナ?君がコミュ障なのは百も承知だよ。だけど、それじゃダメだろ、それを一番よく知ってんのはリーナのはずだ。...それとも」
そこで一息ついて、ラヴ様は一言。
「まだ、ニーナちゃんに逃げる気か」
びくり。
わかりやすくリーナさんの肩が跳ねた。
それを見て、ラヴ様はふっと力を抜いて笑う。
「自分ひとりでニーナちゃんを助けられるのなら、そうすればいいさ。けど、無理だろ?ニーナちゃんを助けたいなら、そのコミュ障を少しでも治すことだね。人に頼るためにね?...リーナを誰かの『先輩』にしようとはずっと思ってたけどね、アリスとなら上手くやってけそうだよ」
わたしとなら?
リーナさんの方を恐る恐る見てみると、何かに負けたような表情でぷるぷるしていた。顔が真っ赤だ。
「...わかりましたよ!『先輩』になりゃいいんでしょ、そうなんでしょ———頑張ってやりますよ!てことで、アリス!!」
「ひゃ、h、はい!?」
「私があんたの『先輩』だっ!仕方ないからよろしくしてやるっ!!」
「え、は、はいっ...!」
半ばやけくそのようにこっちを向いて叫んだリーナさんの勢いに押されて、返事をしてしまった。
リーナさんに何があったかは知らない。...けど。
「...ニーナぁ...私、ニーナ以外の人間と話すの超久しぶりだよぉ...」
天を仰いで「ニーナ」というリーナさん。
そのニーナさんと何かがあって、来てるんだろうなと思う。
「アリス、察しの通り、リーナもアリスと同じように少し現実世界で問題があってね。それを解決できる手がかりが少しでもつかめるように、こっちに呼び寄せたわけさ」
やっぱり、か。
わたしに限った話じゃないようだった。
「この世界にいる魔法少女は、ほとんどがそういう理由で呼び寄せられてるよ。...リーナ、そろそろ戻っておいで?」
「うぅ...ニーナぁ...」
未だに天を仰いでいるリーナさんを呼び、ラヴ様は柔らかいため息をついた。
- Re: TRUMP ( No.20 )
- 日時: 2016/04/24 18:35
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
episode.3 魔法学校は壮大に
「...あの、えと、リーナさ...先輩」
リーナさん改めリーナ先輩を横目に見て、恐る恐る声をかける。
リーナ先輩が『先輩』になってから1時間ほど経ち、今、わたしはリーナ先輩とともに【魔法学園】———オリエンティア・ザーブ・アッセンブリ—の近くに来ている。目印として教えられたキノコ屋さんを通り過ぎたので、もうすぐ着くだろう。
ラヴ様に「そうだリーナ、魔法学校に連れてってあげて」と言い、リーナ先輩とここまで来ているのだが———
「...............」
「(うわぁ...)」
先輩の顔は青白く血の気が失せ、身体は小刻みに震えていた。歩くスピードも魔天楼を出た直後よりだいぶ落ちている。
何でこうなったかっていえば、まあ、なんとなく察しはつく。
自分はコミュ障だと全力でカミングアウトしていたさっきまでの先輩のようすを見れば、学校なんて人の集まるところに行くのは相当な行為なのだろう。それ以前に、わたしという人間と歩いてる時点でいくらか重荷になっている部分もあるだろうし。...ちょっとだけ、へこむ。
「せ...先輩。リーナ先輩」
「ひっ!?あ、な、何だ、ああああアリスか。驚かせないで」
「いや、軽く小突いただけですけど...」
さすがに無視されるのは困るので、ちょんちょんと肩を叩いたら先輩は過剰反応した。声もガタガタに震えているし、冷や汗みたいなものが首を伝って滴っている。
「あの...大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫。大丈夫、大丈夫、大丈夫大丈夫大丈夫だいじょ...う、ぶ」
「大丈夫じゃないですよね!?今吐きかけましたよね!?」
一度立ち止まって先輩の背中をさする。しゃがませようかと迷ったが、逆に少しも動けない雰囲気を感じて何もできない。先輩は軽くえずきながら、どうにか落ち着こうと必死だった。...そして、ぽつりと言った。
「...ニーナ...ニーナぁ...」
ニーナ、という人の名前を呼び、その名にすがるように何度も呟く。呪文のように、ぽつりぽつりと呟く。———そして、
「ニーナ」
はっきりとその名を呼んだと思ったら、
「助けるから、待ってて———こんなところで潰れてなんかいられない」
わたしの目など気にせず、決意のこもった声でそう言った。
そしてこちらを振り返る。
青白くなり、汗をかいていた顔は爽やかで血色のいい笑顔に変わっていた。震えも消えている。
「ごめん、アリス。じゃ、行こうか」
「え...は、はい」
先ほどとは打って変わって、すたすたと進んでいくリーナ先輩を慌てて追いかけた。
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