コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- TRUMP
- 日時: 2016/03/20 16:00
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
彼女は、唐突に私の目の前に現れた。
「よし決めた!君を魔法少女として歓迎するっ!」
...魔法少女なんて幻想が、現実になりました。
***
初めましての方は初めまして。
そうでない方も一応初めまして←
鈴と申します。
今回はファンタジーものになっております。
ただ、何しろ書いたことがないので拙いものになるかと思います。それでも最後までお付き合いいただけたら幸いです。
それでは。
- Re: TRUMP ( No.11 )
- 日時: 2016/03/17 18:19
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
***
「こんな世界に連れてこられてまで、信じない?」
真に迫る表情で淡々と告げる少女———もとい、神様。
「.........っ」
この少女は、神だと名乗った。
何を司る、とか言ってた気がするけど、衝撃すぎてその内容はもう覚えていない。というか入ってこなかった。
神様...。
さっき、わたしをここまで連れてきた少女、確かリーナ?とかいう人も様付けで呼んでたし、ここに来る前に語ってくれたお話も妙にしっかりしすぎてるし、今見せられてる光景もとても現実的な風景には見えない。どう形容していのかわからないけど、なんというか全体的にファンタジックな感じのする街並みや農村らしき村、工業地帯などが見えた。そんな場所を見せられていることもあるし、さっきの言葉———『この世界』と合わせると...、ここは、魔法世界?
辻褄が合いすぎて、そして非現実的すぎて、少しの気持ち悪さを覚える。
けど...。
「どうかな。納得したかい?ここは魔法少女の集う魔法世界で、僕ら神が創り出した世界だ。そこに現実世界からただの少女を誘い、魔法少女になってもらってるわけだよ」
もうわたしは、この世界が『そういう世界』であることを受け容れなければならないようだった。
わたしは、魔法少女として魔法世界に送られた、ただの少女なわけだ。
「...わかりました。納得...しました」
「おお、そっか。じゃあ、これからちょっとばかり説明の時間になるけど、いいかい?ま、拒否権は無いに等しいけどね」
笑顔でそんなことを言われて、少しの冷や汗を掻きながら笑うしかなかった。
***
「じゃあ、まずは自己紹介だね。
僕はラヴ。愛と豊穣を司る神だ。主にハートの柄をつけている魔法少女は、僕の管轄だね。使えるようになる魔法は、察したと思うけど、そういう系統の魔法だよ。愛とか、豊穣とか、団欒とか。まあそんな感じで、よろしく!」
「は、はあ、よろしくお願いします...」
現在、わたしたちは廊下を歩いていた。
ここは魔天楼...魔法世界最南端に位置する塔で、さっきの部屋はそこの最上階にある一室なのだという説明を受けた。そしてそこから、エレベーターでいくつか階を下って地下10階に来ている。ちなみにこの魔天楼、30階構造らしい。地上には20階建っている。
「これから、僕以外の神たちに会ってもらうよ。そのためにこうして移動しているんだ」
「え」
「何だい?まさか神は僕だけだと思っていたとか?」
「...あ、いえ」
図星を突かれて言葉に詰まるも、なんとかそれだけ絞り出した。
何を司る、とか言ってる時点で気づけ、わたし。他のものを司る神様もいるだろうって予測くらいはできるはずだ。
「さ、ここだね」
- Re: TRUMP ( No.12 )
- 日時: 2016/03/14 19:45
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
連れられてきたのは少々薄暗い一室。
ちょっと見づらいけど、それなりに大きな部屋のようだった。入り口に行くにつれ明るく、奥に行くにつれ暗い。
真ん中には円形、いや、ドーナツ型の金属的なテーブルが置かれていた。視力検査に使われるあの輪っかみたいに(ランドルト環とか言ったっけ)一部が欠けている輪っかの形だ。
その向こうには棚が置いてあり、形的に書類を入れるもののようだった。それにしてはいささか大きすぎる気もする。
「来たよ。新入りちゃん」
神様…ラヴ様は奥の暗がりに向かって話し掛けた。
「-----ああ。楽しみにしてたわ」
暗い空間から聞こえた声は、妖艶でありながら透き通っており芯が強く、かと思えば繊細で上品な響きのある、一言で表すならば「美しい」声だった。
「来たわね。もうチアもメリアも待機済みよ。奥にいるわ」
暗がりから現れた人、もしくは神様。
想像を絶する美貌を持つ誰かが、わたしの前に現れた。
見ているだけで骨抜きにされそうな程の美しさ。放たれるオーラは物凄い強さで、見えるはずもないオーラに圧倒されまくった。まるで薄暗い部屋の中でそこだけ光が差し込んだような。小説なんかじゃよくある表現だけど、まさか本当にそんなオーラを放つ人物がいるとは。
目は切れ長で大きく、眼光は鋭いがそれでいて柔らかさも持ち合わせている。そしてスペードのマークが入っていた。ラヴ様だとハートだ。勿論頬にも入っているし、服にもスペードマークがたくさんついている。
輝かんばかりの白い肌、端正であり妖艶な顔、病的には見えないが常人を逸する細さである身体のライン、その中で大きく膨らんでいながら全く形の崩れていない胸部、すらりと伸びた長くしなやかな手足、どれもが完璧でありながら決して無機質さを感じさせない柔和さと温かみ。どれを取っても欠点のない、完璧な「美」がそこにあった。
「ええと、自己紹介よね。俺はウィズよ」
…俺?
恐ろしいほどの美貌から酷いくらい美しい声で発せられた一人称は「俺」だった。女性らしさを具現したような見た目がゆえに、違和感が半端ない。
「美と知性を司る神。でも、比率的には美の方が強めでね、美の神なんて呼ばれたりしてるわ。実際、こんな見た目だし」
自分の美しさを謙遜することなくはっきり口に出すあたり、なんだか威厳を感じてしまった。これが神様のオーラか、なるほど。
美の神か…本当にそんな神様、いたんだ…。確かに、普通に話してるだけなのにくらくらするほど美しい。顔も、身体も、声も、雰囲気すらも。
「他の神にも自己紹介させるわ。神は俺を含めて4人」
ウィズ様が後ろの暗がりに目を向け、「いいわよ」と言うと、神と思しき影が歩み出てきた。
- Re: TRUMP ( No.13 )
- 日時: 2016/04/07 16:00
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
出てきたのは2人の神様。2人ともウィズ様には到底及ばないものの、容姿端麗だ。改めてラヴ様を見るとやはりラヴ様も端正な見た目をしていた。いろんなことがありすぎて混乱していたせいか、全く気付かなかったらしい。
その内の一人がもう一方の、ダイヤのマークが入っている神様に「じゃ、チア、GO」と言ってウインクした。どうやらチアという名前の神様らしい。「え、わ、私からですか?」と、ちょっとキョドってるので、なんか親しみやすそうだなと思った矢先。
「あー...私、チア。神、特に私以外のお三方、特にメリア様に触れようもんなら瞬殺で捌くんでよろしく。成功と戦を司る神」
つっけんどんに言葉を並べられ、ぽかんと呆けてしまった。
まるで人格が変わったかのようにキッと顔が変わり、わたしに対する敵意しか感じない。...つまり、自分以外の神様たちをかなり好きらしかった。
「チア、やっぱり不器用ね。ちょっと残念かな〜」
そう言ってくすくす笑うもう一方の神様。クローバーのマークが入っている。トランプで言うと、クラブ?だっけ。
メリア様、というのはこの人のことだろうか?
「いや、その、不器用なんかじゃっ」とわたわたするチア様をよそに、メリア様は自己紹介を始める。
「初めまして、あたしはメリア。幸せと神秘を司る神よ。この4人の中では1番階級は上。ラヴに聞いてるかしら?」
階級...?そんなものを聞いた覚えはない。頭を横に振った。
「そう、聞いてないのね。...まあいいか。ええと、わかりやすく言うと、神にも上下関係があるってこと。この4人で言えば、下から順にチア、ラヴ、ウィズ、そしてあたしの順で並んでるよ。順番の決め方はいろいろ複雑だから省くけど」
どうやらメリア様はこの4人の神様の中で1番偉いらしかった。...確かに漂うオーラがどこか異質だ。ウィズ様の「美」のオーラともまた違う、何かが確実にあった。
「それで、その見分け方だけど。ほら、あたしが1番髪長いでしょう?それで区別つけて。あとこれは魔法少女にも同じことが言える。髪が長いほど強く、偉いの」
確かに、チア様はベリーショートをもうちょっと伸ばしただけみたいな髪型だけど、メリア様は背中のあたりまで髪があった。というか、メリア様の髪型はちょっと特殊で、後ろから見ると外側から内側に向かって長くなっていた。更に、くるくるした癖っ毛だから実際はもっと長いんだろう。
「さ、神の自己紹介も済んだことだし、本題に参りますかぁ?」
にやり、と笑みを浮かべてメリア様が宣言する。
本題?
- Re: TRUMP ( No.14 )
- 日時: 2016/04/07 16:24
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
episode.2 魔法契約は困難に
「ああ、そうだね。本題行こうか」
「くれぐれも慎重にやるのよ?またこの前みたいに失敗したら、今度こそあなた達に任せられないわ」
「う、うぅ...すみませんでした、ウィズさん」
「まあまあ。じゃ、やろうか」
え、え、え、と何が何だかわからないまま、メリア様に腕を引っ張られて、円形テーブルの欠けた部分に立たされた。よく見ると段差になっていて、危うく躓きかける。...結構高い。
メリア様たち神様は、円形テーブルをぐるっと囲んで座った。書類と筆記具らしいものを持っている。
「貴女、名前は?」
「え...柏木、未帆です」
「ミホね、わかった。チア、書いといて」
「わかりました」
チア様がさらさらと書類に何かを書き込んでいた。何を書いているかは、暗くて見えないけど...わたしの名前を書いているんだろうか?
「じゃあ、年。年は幾つ?」
「14、です。中学2年生」
「身長と体重、血液型、誕生日は?」
「え、えーっと...155cm、43kg、A型...あと、何でしたっけ」
「誕生日だよ」
「6/16です」
「...ん、基本情報はこんなとこね。ウィズ、一致してるかな」
「ええ。カシワギ ミホ、間違いないわ」
ウィズ様が何やらタブレットのようなものを操作していた。タブレットっていうか、ウィンドウ...?半透明の電子的な何かが宙に浮いていて、それをウィズ様が操作している。
ていうか、一致って何だろう?
「じゃ、読み上げるわね。間違いがあったら言いなさい。
カシワギ ミホ。日本在住、中学生。家族構成は父、母、妹。学校での成績は中の上あたり———」
何で知ってるんだろう...いや、神様だし、当たり前なのかな...?あのウィンドウに全部映ってるのかな...。
「———習い事は学習塾と習字、バイオリン」
ビクッ。
意識せずとも肩が跳ねる。
バイオリン...。
「バイオリンは最近やめようと思っていて、理由は祖父の死」
ビクッ———
まさかそんなことを言われると思っていなかった。
さらに何を言われるか、最早ずっとビクビクしながら、続きを聞く。
「祖父は2週間前に逝去しており、援助がなくなったことにより続ける意味を失ったがゆえ、バイオリンを続ける意思を消失。そのことで落ち込み、親友に見抜かれたことで喧嘩、その後迷子に」
何でそんなことまで、っていうか、もう、やめて...!
「...その後、ラヴに連れられ、魔法世界へ。合ってるかしら」
「合ってます..けど!何で、何でそんなこと...!」
ぐさりぐさりと突き刺さる明け透けな物言いに、さすがに耐えきれなくて声を荒げた。
けど、ウィズ様はそれを何でもないことのように、言った。
「それが魔法少女の原動力だからよ」
- Re: TRUMP ( No.15 )
- 日時: 2016/03/31 17:50
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「はっ...?」
「だから、原動力。もし魔法少女になって魔法が使えるようになっても、意志と目的がなければ意味がないでしょう?動力がない機械は動かないもの。その『動力』を失った少女に、新たな『動力』を与えるために作り上げたのが、魔法なのよ」
「ちょっとウィズ、難しいって...つまりは、こうだよ」
ウィズ様の説明にメリア様が口を挟み、更に説明がなされる。
「現在、貴女は祖父を失ったね?自分の生きる意味であり、原動力であった祖父を。そして親友と喧嘩し、何もかもどうでもいいという自棄に陥った。つまり貴女は今...そうね、ウィズの言葉で言うなら、動力のない機械なの。それをどうにかして動かすためには、動力となる何かが必要でしょう?それが、貴女の意志———祖父への執着と親友への罪悪感と、貴女の目的———その問題の解決。つまり意志という動力を入れて機械を動かす目的を達成することね。そしてその手段が動力と本体を繋ぐ導線、すなわち魔法。簡単に言えば、こう———
———魔法世界で魔法少女として魔法を動力にして、自分の意志で現実世界での問題をクリアする目的を達成してみせろ———機械を動かしてみせろってね。そのための原動力が、貴女の問題だよ」
一息ついてから、メリア様は話を締めくくった。
...おじいちゃんが死んだこと。七果と喧嘩したこと。何もかもを捨ててしまいたい衝動にかられたこと。
それらを原動力にして、それらを解決するために、魔法少女となって魔法世界で頑張れと?
.........。
「...悪い話じゃ、ないのかもね...」
ぼそりと呟いてみる。
神様たちには聞こえたようだけど、何も言わずに見守ってくれていた。
どうせ、現実世界に戻ったところで何も出来ない。
だったら、この世界で———魔法世界で、出来ることをやってみようじゃないか。
「...わかりました。それで、わたしは、どうすればいいんですか?」
そう言うと、メリア様はにっこり笑って言った。
「じゃあ、契約式の続きと行くよ。その前に言うけど、この世界で過ごした時間は現実世界には干渉しない...つまり、ここでいくらの時間を過ごそうとも、あちらの世界ではその時間は『無いもの』になっているよ、という話。だから存分に頑張って、楽しんでね」
そういえば現実での時間の経過を気にしていなかったけど、そういうことなら安心だった。...あれ、でも、そうすると、現実に戻ったときにわたしがいるのは、あの路上?
...まあいいか、と無理やり自分に言い聞かせて、契約式に戻った。
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