コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- TRUMP
- 日時: 2016/03/20 16:00
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
彼女は、唐突に私の目の前に現れた。
「よし決めた!君を魔法少女として歓迎するっ!」
...魔法少女なんて幻想が、現実になりました。
***
初めましての方は初めまして。
そうでない方も一応初めまして←
鈴と申します。
今回はファンタジーものになっております。
ただ、何しろ書いたことがないので拙いものになるかと思います。それでも最後までお付き合いいただけたら幸いです。
それでは。
- Re: TRUMP ( No.6 )
- 日時: 2016/02/22 17:46
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
お願い?
え、変な内容だったらどうしよう...。
ぐるぐると思考が脳内を駆け巡り、どう答えていいか悩む。
「えと...で、できる限り」
しばしの逡巡の後、わたしはそう答えていた。一応安全策は立てた。無理難題を言われたり、命の危険に晒されたりは、多分ないだろう。...わかんないけど...。
少女はわたしの答えを聞いて満足そうに頷いた。
「そうかそうか、ありがとう。大丈夫、誰でもなれるから」
なれるから?
なれるってどういうことだろう?できる、じゃなくて?
わたしが不思議がっていると、少女は更に不思議なことを言い出した。
「君に、魔法少女になってほしい!」
...え?
***
とある天界の、とあるテリトリーにて。
今日も神は、退屈でつまらない日々を送っていました。
ああ、私たちって、何でも出来てしまってつまらないわね。
神の内のひとりは言いました。
そして別の神はこう言いました。
そうだね。地上の人間たちを操って暮らすのも、そろそろつまらなくなってきたね。
神たちは、人間を操り、動かすだけの日常を、つまらなく感じていました。
神たちは、何でも出来ます。
天地を創造するのも、生物を生み出すのも、宇宙を死滅させるのも。
そんな神たちの仕事は、世界を操ることでした。
宇宙のことや、惑星のこと、細かく言えばそこに住み着いた生物のことなど、その全てを操ることでした。
中でも特に、神たちは人間のことを操らなければなりませんでした。
勿論人間だって、神がもといた生物から進化させてつくった生き物なのですが、だからといって、つくったら勝手に動いてくれるものではありません。
それを操るハメになった現在の神は、先代の神は大層やっかいな生物をつくったものだと言います。
人間は、自ら考え、自発的に行動し、何より明確な感情を持つ生物でした。
つまり、神は、その全てを操らなければならなかったのです。
人間の考えも、行動も、社会も、感情も、全て。
それは他の生物を操るよりはるかに難しいことでした。
難しいからといって出来なくはありません。けれども、人間を操ることは、神にとって、大層面倒なことでした。
しかし、どんなことでもそうですが、そんな面倒なことでも、いつかは慣れていくものです。
マニュアルが作られ、パターンが明確にされ、大体何をしたらいいかが決まってきてしまう。現在の神たちは、つまり、パターンやマニュアルが固定された状態の今の仕事を、とてもつまらなく感じているのでした。
そこで、神たちは考えます。
あるひとりの神が言いました。
じゃあ、私たちが操らなくても、自在に動く生き物がいたらどうかしら?
- Re: TRUMP ( No.7 )
- 日時: 2016/02/29 18:30
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
神たちが操らなくても、自分で考え、行動し、感情を持つ生き物がいたら。何をするかわからない生き物を眺めることができるなら。
少し暇を紛らわせることくらいはできるんじゃないかしら———と、神は言いました。
***
「それがつまり、魔法少女...?」
「せーかいっ」
目の前の少女から話を聞き終えたわたしは、正直、なんか感心していた。
いくら何でも、魔法世界とかありえないし...そんな世界観をすんごいしっかり持ってるなんて、厨二病とかイタいとか通り越して最早感心してしまったわけだ。一体どれくらいの人にこうして語ってきたんだろう。
「君さー...信じてないでしょ、その顔?」
いつの間にかしゃがみ、視線を合わせてくる少女。
その睨むような視線や声音が暗くて、わけもなくビクッとしてしまう。それまでに渦巻いていた思考や感心も、瞬く間に飛んでいってしまった。
「信じるわけ...ないじゃ、ないですか」
目線を右下に逸らしつつも、なんとかそう答えた。
そう言い、恐る恐る視線を戻すと、少女はぷくっと頬を膨らませていた。そして言った、
「もー...しょうがないな。じゃあ、信じさせてあげよう」
にやっとした笑みを浮かべて。
信じさせるってどうやって?と聞く前に、少女はわたしの手を取り、両の手をぎゅっと握りこむ。
「ちょっ、何する気———」と言った瞬間には、既にわたしの意識は飛んでいた。
***
「そろそろ来るはずよ。新しい子が」
魔法世界にて。
神・ウィズは、人間たちの住む世界...いわゆる現実世界を特殊なウィンドウで覗いていた。回転式の椅子に座ってウィンドウを覗きながら、隣にいる魔法少女と言葉を交わす。
「そうですか。ラヴ様が連れてくる子ですか」
「そうね。ラヴはこの前も連れてくる時、転移する前に逃げられて失敗してたし、不安だったけれど...無事に転移したみたいだわ」
「そうですか。ていうか失敗してたんですか、ラヴ様」
「ええ。チアほどではないけれど」
「そうですか」
たった今、こちらに向かった神・ラヴ...そしてラヴに連れられている人間の少女を、転移の直前までウィンドウで見ていたウィズは、安心からくるため息をついた。
そして椅子に座ったまま、くるりと後ろを向いた。
「さて、メリア」
「何かな?」
「何かな、じゃないわ」
少々呆れたようにしながら、ウィズはメリアと呼んだ神に向けて、1枚のカードを掲げる。
「契約式の準備よ」
- Re: TRUMP ( No.8 )
- 日時: 2016/03/05 17:38
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
***
未帆、おまえは可愛いな。
未帆、未帆のヴァイオリンは、すごく深い音色がするな。
未帆、自分の正しいと思ったことは、正義として守り抜くんだぞ。
———うん、おじいちゃん!
***
「...ん、うー...?」
目を覚ます。
「.........?」
さっきまで夢を見てた気がするんだけどな...、何だったか思い出せない。なんか、とてつもなく懐かしい夢だった気がするんだけど...。
まあ、いいか。
目が覚めたら夢の内容を忘れてしまうことなんかざらにある。今回もそういうことなんだろう。
...っていうか、
「ここ!何処!?」
がばっと身体を起こしてあたりをきょろきょろする。わたしはおとぎ話に出てきそうな純白のベッドの上で、これまた純白のふっかふかな布団をかけられ寝かされていた。ベッドにはアンティークのように装飾が施され、どこぞのお姫様の寝台かと思わせるような真っ白なカーテンが天蓋から垂れている。テレビでしかこんなベッド見たことなかったよ...。
確かわたしは...痛々しい少女に設定を聞かされて、「信じさせてあげる」って言われて、そんで...あ、ここから記憶が無い...。
ここ、本当に何処なんだろう。誰かの部屋であることは間違いないけど、当然わたしの部屋ではないし。カーテンの外を見てみれば、部屋も全体的に白で統一された清潔感あふれる内装だった。
とりあえず人を探すか...と決め、ベッドから降りようとした時、どこからか声がかかった。
「ああ、起きた?」
- Re: TRUMP ( No.9 )
- 日時: 2016/03/07 18:29
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
「は、はひっ!?」
突然掛けられた声に驚き、素っ頓狂な声を上げてしまった。恥ずかしくて俯いていると、カーテンをめくってこちらを覗き込む影がひとつ。
さすがに俯いているわけにもいかず、顔を上げた。
「おお、ちゃんと目、覚めたみたいで何より」
そんなことを言う少女が———さっき会った少女とは違う少女がいた。
でも、さっき会った少女と同じく、目にはハートが入っているし、数はひとつだけど頬にもハートが描かれていた。さっきの少女は頬に二つもハートが入っていたけど...。格好はさっきの少女と構造は似ているけれど、幾分か地味で制服みたいだった。
「もう立てるか?」
その少女はそう言ってわたしの手を取り、引っ張って立たせた。
「わわっ」と言いつつも、引っ張られて慌てて立つ。何も無理やり立たせなくてもいいのに、と思っていたら、
「じゃ、行くか」
「は...」
驚く暇もなく、握ったままのわたしの手を引っ張って歩き出したので、またも慌ててついていった。
***
「ラヴ。来たみたいよ」
ウィズに言われて見てみれば、僕が連れてきた子がリーナに連れられやってきていた。おそらくさっき目が覚めたんだろう。...そして何の説明もなくいきなり無理やり引っ張られてきたんだろう。リーナのやりそうなことだ。
僕が言ったのは「この子の目が覚めたら、とりあえず落ち着かせて、それからこの部屋に連れてきてくれるかい?」ということだったはずなんだけど...。完全にキョドっちゃって全然落ち着いてないよ。キョロキョロしちゃってそわそわしちゃって、なんか見てるだけで痛ましい。
「連れてきました」
「ん、ご苦労。でもさリーナ、僕が言ったのは『落ち着かせて』から連れてきて、ってことだったんだけど」
「そういうの苦手なんで。あたしのコミュ障はラヴ様が1番知ってるでしょう」
「あ、ああそう...いやまあそうなんだけどさ...」
んー、そうじゃなくて...と妙に納得いかないが、もうリーナは「役目は終えた」みたいな顔してるし、これ以上何を言っても無駄だろう。
それよりも、だ。
「あ、あのぅ...?えっと、その」とぼそぼそ呟きながら未だにキョドってるこの少女をなんとかしてあげなくては。
「やあ、ようこそ魔法世界へ。実感湧かないと思うから、まあまずは『この世界』をお見せするよ。おいで?」
少女の手を引き、窓際へ誘った。
- Re: TRUMP ( No.10 )
- 日時: 2016/03/07 18:52
- 名前: 鈴 (ID: bUOIFFcu)
———ここは、魔法世界最南部の丘に建てられた摩天楼。
最上階からは、魔法世界が一望出来る。
そんなに広くない世界だ、あの街もこの町もその村も、あの建物もこの道もその家も、ここから全部見えると言って差し支えない。現実世界よりも『ファンタジック』につくった世界の全貌を見れば、なかなか手ごわかったこの少女も、この世界が『そういう世界』であると幾分は納得するだろう。
ふと、後ろの方に目をやる。目線でリーナに合図し、もういいよ、下がってと指示した。リーナはコミュ障なので早く出たかったらしく、そそくさと部屋を後にする。リーナが完全に行ったのを見てから、少女に話しかけた。
「自己紹介が遅れたね。僕はラヴ。R、O、V、E、で、ラヴだよ。君はなんて言うんだい?」
「か、柏木 未帆...普通に柏に木、未知の未に帆掛け舟の帆、です」
「ふぅん。ミホか」
ミホ...可愛い名前だな、と続けて呟く。
僕もそんな名前が良かったなぁ、と心の中でぼやきつつ、自己紹介を進める。
「僕は愛と豊穣を司る神だよ。他には団欒なんかも僕の所属なのかな?そういうことだから、よろしく...って、どうしたの?」
ごく普通に言ったつもりだったんだけど、この子があまりにびっくりした顔するもんだから、なんかおかしいとこでもあったのかな...と思ってちょっと凹んだ。が、どうやらそうではないらしく、
「だ、だって、か、神様...なんて、そんなの...」
「え?ああ、そういうこと?」
よくあるやつだった。
人間っていうのは、いや日本人っていうのは、神の存在を信じていないものらしい。まあ欧米に行ったら行ったで、神のイメージっていうのはどうも僕らみたいな姿じゃないらしいけど。そんなわけで、僕が神だと名乗るとよく驚かれるか、こんなのが神なんて信じないとばかりに頭を横にブンブン振られる。...それならまだ驚かれたい。
「本当だよ。それとも何、また信じられないって?」
「だってっ」
「こんな世界に連れてこられてまで、信じない?」
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