コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 【完結】四年二組のシンデレラ!? 魔法のカボチャと弱虫王子
- 日時: 2016/05/07 20:13
- 名前: ヨミ (ID: Nt.wHtNX)
ヨミと申します、初投稿です。
小学生向けっぽい小説を書いてみたのですが周りに小学生がいないのでこちらに投稿することにしました。
もちろん中学生以上の方のコメントも大歓迎です!
もともとワードで書いた小説をコピペして投稿するので書式が乱れるかもしれません。その時はごめんなさい。
こちらのサイトは初めて使うので(というより小説投稿サイトというものが初めてなので)間違ったことをしてしまうかもしれませんが、その時にはご指摘ください。
==小説について==
こちらの小説は既に完結したものを投稿するので、よっぽどのことが無い限り物語が途中で終わるようなことはないと思います。
ただ30000字ちょっとある作品なのでゆっくりちまちまと投稿していきます。
30000字というと文庫本の1/3冊ぐらいでしょうか
まぁまぁ長いですね
内容はコメディーとファンタジーとちょっぴり恋愛です
キャラクターもストーリーも全てオリジナルとなっています
笑ったり胸キュンしたりしてもらえたら嬉しいです。
- Re: 四年二組のシンデレラ!? その10 ( No.13 )
- 日時: 2016/04/27 19:17
- 名前: ヨミ (ID: Nt.wHtNX)
10
「魔女が現れました! 門番のヨロイをはぎ取られたようです。なおケガ人はいません」
兵士の一人がシャルル王子の元にやってきた。今は王様であるシャルルのお父さんは外出していて城のことを任されているのはシャルル王子だ。
「こんな時に……」
シャルルは苦い顔をした。
「魔女!?」
となりにいた美春は王子の顔を見た。
「ああ。魔法を使えるから何をするか分からない。その気になればあっと言う間に城をくずすことさえできるおそろしい存在だ」
もしかしたらカボチャの馬車を追ってきたのではないかと思うと、美春はこわくなった。
兵士は報告を続ける。
「魔女は『吉野美春をむかえに来た』と言ってました」
王子と美春は顔を見合わせた。
「私、魔女なんて知りません!」
「うん、分かった。魔女の様子をもう少しくわしく教えてくれ」
「はい。美春様より少し身長が大きいくらいの女の子が一人、後ろに男の子が二人いました」
それを聞いた美春はピンときた。
「もしかして、その女の子は髪を二つしばりにしていませんでしたか?」
「はい、していました。……やはり魔女とお知り合いですか?」
「そうかもしれません。でも私の友達は魔女なんかじゃありません!」
「王子、美春様は魔女と関係があるかもしれません。一度軍で預かりましょうか?」
「まだ決まったわけじゃない。それに美春が何であろうとボクは美春を手放す気はない」
シャルルは兵士をにらみつけた。
「失礼しました。ではこれからどうしましょうか?」
「魔女がいるのが事実なら安心はできないな。せめてもの気休めに全軍で城を守ってくれ。くれぐれも魔女を見つけたらにがさないように」
王子は兵士に指示すると、兵士は部屋から去っていった。
美春は兵士の報告が気になっていた。自分と同じぐらいの身長で女一人と男二人という組み合わせというと、カナエ達がむかえにきたのだろうと美春は思った。
「もしさっき現れた三人が私の友達ならば、私は帰ることができます。確かめるために外に出てもいいですか?」
「ダメだ。本当に魔女だとしたら命が危ない」
「でも私、このチャンスをのがしたら元の世界に帰れません」
王子は「帰るな」と言いたかった。でも城にしばりつけて美春と無理やり結婚するようなことはしたくはない。王子はだまって考える。
「分かった。お守りをわたすからちょっと待っててくれ」
王子は美春を外に出すことにした。兵士の話を信じるなら魔女がやってきたわけだし、美春の話を信じるなら友達は魔女ではないということだ。二人の話を信じると、やって来たのは魔女であり友達ではないことになる。魔女から美春を守りさえすれば、美春の気がすんで城にもどってくれると思ったのだ。
「はい、これ。魔法よけのお守りだ。一度だけなら魔女の魔法をふせぐことができる。でも一度だけだから気をつけてほしい。人が魔法にかかったらすぐ死んでしまうからね」
美春は王子からわたされたペンダントを首にかけた。
「私、行ってきます」
「待って、ボクも行くから」
二人はそろって外に出た。
- Re: 四年二組のシンデレラ!? その11 前半 ( No.14 )
- 日時: 2016/05/02 19:13
- 名前: ヨミ (ID: Nt.wHtNX)
11
「うわ、たくさん兵隊が出てきやがった」
健太は木に登って城の様子を見ていた。ヨロイを着た兵士がぞろぞろと現れて城にしのびこむのが難しそうだ。
「あたし達がヨロイ姿になったら逆にしのびこみやすいんじゃないの?」
カナエが上を向いて健太に言った。
「いや、隊列がしっかりしてるからぶらぶら歩いてたらバレる」
「そっか」
健太が城の方を見ていると、小さな二つの人影が見えた。鉄のヨロイを着ていないことから兵隊ではないことが分かる。
健太は目をこらして見る。一人は金髪でズボンをはいている。きっと少年だ。もう一人は白いドレスを着ている。おかっぱ頭の黒髪だ。
「なぁ、おかっぱ頭にドレスってめずらしいよな?」
「おかっぱ頭って吉野さんみたいな髪型だよね。あんまり見ないよね。どちらかというと和風な感じだし」
「じゃあ、もしかしたらあれ吉野かも」
「本当!?」とカナエも木に登った。
「そうだよ! すぐにお城にみはをむかえに行こう!」
カナエは木から飛びおりた。
「ちょっと待てって!」
あとから健太も飛びおりて、三人は城へと走った。
草と草の間から三人は城の様子をうかがう。
門の前にはたくさんの兵が並んでいる。
「健太、その竹刀で全員倒せそう?」
「無茶言うな。せめて日本刀なら何とかなったかもな」
「にゅむにゅむ……」
「竹刀を日本刀に変えなくていい」
健太はカナエのステッキをおさえた。
「魔法で兵士を消すっていうのは?」
「小河さんこわいこと言うね」
カナエは考えたけど、いい城に入るためのアイデアはうかばなかった。
「じゃあここはもう男らしく正面トッパだね!」
カナエは走りだした。
「「おい!」」
タクミも健太も止めようとしたけれど、走り出したカナエは止まらない。仕方なくタクミも健太も走り出した。
「みはー! むかえにきたよー!」
あまりにも分かりやすく現れたカナエ達に軍隊はおどろいた。ここまであからさまだと逆にどう対応していいのか分からずにあたふたしてしまう。走って追いかけようとする者もいるけれどヨロイが重くて早くは走れない。
「みはー! みはー! みはー! みはー!」
大声でカナエは叫び続ける。
その声はヨロイの鉄がぶつかる音にも負けずに美春に届いた。
「シャルル君、私の友達の声が聞こえた!」
みはなんて呼び方をする人なんてカナエしかいない。美春は声の主がカナエだと確信した。
「本当!? どうしよう、想像もしてなかった」
「とりあえず軍隊をどうにかしてください!」
シャルルはラッパを持つ兵士の元にかけつけた。
「ラッパをならして兵を止めてください!」
「でも魔女が現れましたよ?」
「いいから早く!」
ラッパをならすと、ぞろぞろと動いていた兵隊の動きが止まった。
「どうしたんだ?」
健太はとまどって周囲を見回した。
「きっとみはが気づいたんだよ! 早くむかえに行こう!」
カナエ、健太、タクミの三人は美春の元に走った。
美春がカナエに気がついた。
「「どうしたのその格好!?」」
美春とカナエはおたがいの服を見てさけんだ。
「私はカボチャに乗ってたら勝手にドレスになったの」
「あたしは変身したんだよ! 魔女っ子カナちゃんだよ」
「魔女になってたの!?」
美春はおどろいてこしが抜けそうだった。
「どうやらキミは魔女のようだね」
シャルルが剣をにぎる。
「シャルル君、やめて! カナちゃんは私の友達なんです。絶対に私達にひどいことをしまません」
シャルルは剣をはなした。
「美春が言うのなら信じよう。キミは美春をむかえに来たんだね?」
「うん、そうだよ」
「そうか……ねぇ美春、ボクがこの軍を動かしてこの子を追い返すと言ったらどうする?」
カナエの顔が真っ青になった。
「ちょっとあんな何者か知らないけど、そんなこと許されると思ってんの!」
「ボクはこの国の王子、シャルルだ。そして将来美春と結婚したいと思っている。だから絶対に美春を帰したくない」
「そんなの許されるわけがないじゃん! 何? 美春と結婚したいから帰さないの? そんな自分勝手していいわけないでしょ。美春は帰る、あたしは残る、王子様はあたしと結婚する、オッケー?」
「カナちゃん話がこじれるから止めて!」
美春はカナエにおこった後に王子の方を向いた。
「シャルル君が軍を動かすというのなら私にはどうすることもできません。軍を動かせば私は城で暮らすことになるし、動かさなければ帰ることになる。それは事実です。私にはあなたの好意につけこんであなたを拒絶するようなことはできません」
美春は真っ直ぐと王子の瞳を見つめる。
「ただ、これだけは言わせてください。そんなマネをして私をここに閉じこめたとしても、私の心まであなたのものになることはないでしょう」
王子はほほえんだ。
「キミならそう言うと思っていた。軍は動かさない、いくらいくじなしなボクでもそんな卑怯なことはしないさ」
王子は近くにいる歩兵の前に行くと、彼は走って城の中へと入っていった。しばらくすると、兵士はレイピアと呼ばれる針のように刃の細い剣を二本持ってきた。
王子は一本の剣を自分の前の地面につきさした。そしてもう一本を健太とタクミの間の地面につきさした。
「決闘を申しこみたい」
「「「「え!?」」」」
四人は声をそろえて王子を見た。
「ボクはただ美春が去って行くのを何もせずに見ていることなんてできない。美春はボクが弱いから結婚したくないと言ったね。ボクが決闘に勝てば弱くはないだろう? ボクはキミ達の住む世界のだれよりも美春を幸せにする。ボクが勝ったら残ってもらえないか?」
「でも……」
美春はとまどってシャルルの顔を見た。
「もちろん無理強いはしない。いやなら四人で走ってにげればすむだろう。これはボクのわがままだ。受けるかどうかは美春が決めてくれ」
美春は男子二人の顔を見た。
「吉野さん、もし残りたいならぼく達は帰るし、帰りたいなら走ってにげればいい。とにかく決闘なんてやめようよ」
タクミが美春を説得する。美春はなやみ続けている。
「なぁ吉野。オレは相手をしてもいい。タクミの言う通り決闘は無意味かもしれないけど、吉野がなやんでるってことは帰るとか帰らないとかじゃない問題があるんだろ? そんなモヤモヤしてるまま帰ったって気持ちよくない。けじめはつけた方がいい」
「健太君……でも危ないよ、本物の剣だよ?」
「まぁな。でもオレ本物の剣を振ってみたいんだ。本当は日本刀がいいんだけどさ。それにオレ、絶対に負けないし」
健太はニヤリと笑って剣を地面から抜いた。
「シャルル君も、ケガじゃすまみませんよ? 健太君は本当に強いんです、シャルル君じゃ勝てるはずありません。剣で切ったら痛いのですよ? バラなんかと比べものにならないのですよ?」
「キミに認めてもらうためならどんな痛みだってたえられる。それに弱いボクだって勝てるかもしれない。少しでも可能性があるのならボクは全てをささげたい。美春、ボクにチャンスをくれないか?」
美春はなやみ続ける。王子の気持ちを考えると決闘を認めてあげたい。でも健太もシャルルもケガをする姿を見たくはない。それに本物の剣を使うのだから命すらも危ない。そんなことに自分のために健太をまきこみたくはなかった。
「いいんじゃない? みは。健太は絶対に負けない。王子様だって決闘をすれば気がすむでしょ。それに王子様がこんなに愛してくれているのに無視して帰ることなんてできるの? お・ひ・め・さ・ま」
カナエが美春のわき腹をつついて美春から笑みがこぼれた。
「健太君……ごめんね」
「謝るなよ、吉野は自分のことだけ考えればいい」
美春はうなずいた。
「二人とも、ケガをしないようにだけは気をつけてね。殺し合いじゃないんだからね。どっちが傷ついても私はかなしいんだから」
シャルルが右手にはめた白手袋を健太に投げた。健太はそれを拾う。決闘の成立だ。
「もし健太が勝ったら王子は美春を差し出す。もし王子が勝ったら健太があたしを差し出す。この条件でいいね?」
「何が何でもお城に住みたいんだね」
美春はカナエにあきれた。
カナエの言うことは無視して健太とシャルルは剣を持って向かい合った。
「美春、決闘を始める合図をしてくれ」
王子は美春に告げる。
「うん。それでは、始めてください」
- Re: 四年二組のシンデレラ!? その11 後半 ( No.15 )
- 日時: 2016/05/04 12:02
- 名前: ヨミ (ID: Nt.wHtNX)
金属同士がはげしくぶつかり合う音がひびく。
健太はレイピアを持ったのが初めてで、戦い方なんて全く分からない。レイピアは彼がふだん持っている竹刀とちがって片手持ちだし、剣先で相手をつくような戦い方だ。だから健太は竹刀と同じようにレイピアを振った。下手に剣の使い方なんて考えていたら本来の実力が引き出せない。
そんな健太の戦い方を、シャルルは初めて見た。自分が今まで習ってきた剣術が全く通用しない相手にシャルルは守るだけでせいいっぱいだ。
一方的に健太がせめる。
日ごろ体を動かしていないシャルルはステップをふんで健太の剣をかわしているうちに息が切れる。
負けそうな王子を見て周りにいた兵達が声を上げて応えんを始めた。
刃と刃がこすれ、火花を散らす。
シャルルが健太の剣がら頭を守る。その時、シャルルのわきはがら空きになった。
「どう!」
健太が条件反射でシャルルのふところに入る。
(やばい! このままじゃ本当に切る!)
健太は思い切り体をそらせて何とかシャルルの体をさけようとした。が、細い切先がシャルルの肌を深くひっかいた。
シャルルのシャツが血液でじわりと赤くそまる。
健太の剣を持つ手がふるえる。本物の剣で人をきずつけたことなんてなかった。真っ赤な血液を見て急に戦いがこわくなった。
その一瞬のすきをシャルルは見のがさなかった。健太の剣に自分の剣を合わせると、上手くひっかけて健太の剣をはじき飛ばした。
シャルルは勝った、と思った。
あとは首元に切先を向けるだけだ。
シャルルが剣を向ける。
健太はしゃがんでかわした。
健太は地面を転がりながら背中の竹刀袋から竹刀を出す。
シャルルが振った剣を健太は竹刀でふせいだ。
「そんな長い剣を背負いながら戦うなんて、キミやるじゃないか」
シャルルがゼェゼェと息をはきながら言った。
「王子だってこしにもう一本剣を持っているだろ?」
竹刀でレイピアをふせぎながら、健太は起き上がった。
シャルルは剣をかまえて健太に飛びこむ。
——パンパン!
竹がぶつかる音が二回つづけてひびいた。
美春、カナエ、タクミ、兵士に達は何が起こっているのか全く分からなかった。
シャルルの体にビリビリとした痛みがつきぬける。
シャルルの視界には健太はいない。
健太は王子と背中を合わせていた。
シャルルが飛びこんだ一瞬のうちに、健太はシャルルの剣をはらってから頭を打ったのだ。あまりの速さにシャルルは自分がやられたことにも気づかなかった。
シャルルの目の前がくらりとゆがんで、彼はそのまま倒れた。
「シャルル君!」
美春はかけつけてシャルルを抱きしめた。
「……負けちゃったよ。美春、やっぱりボクは弱かったんだ」
「弱くなんてない! こんなきずができても戦うなんて……どうして止めなかったの」
「だって止めたらもう一生美春と会えなくなってしまうから」
「そんな……」
シャルルの元に健太がやって来た。
「ケガをさせてごめん。大丈夫……ではないよな」
「何を謝っているんだい? 決闘にはケガがつきものじゃないか。それにこの程度のケガなんて気にすることじゃないさ」
王子はゆっくりと起き上がった。
「何だか負けたらすっきりしたよ。美春、キミにはこんな遠い所まで命がけでむかえに来てくれるすてきな友達いるんだね。そんな友達がいる元の世界に帰れて良かったよ」
シャルルはほほえんで美春を見つめる。
シャルルは負けてすっきりしたかもしれないが、美春はすっきりしなかった。バラにふれることさえできなかった少年が自分のために剣をとって戦ったのだ。さらに負けてもなみだを見せるどころか、笑って美春を送ろうとしている。
シャルルはこんなにもがんばり屋で心が強い子だったのか、そう思うと美春は胸がドキドキした。
今までシャルルに対して抱かなかった気持ち。
今だかつて経験したことがない胸の高鳴り。
美春は気づいた。
これって初恋なのかもしれない、と。
「吉野、帰ろうぜ。学校で先生もすごく心配してたぞ」
「うん……そうだね」
美春はここに残れないことは分かっているし、元の世界にも帰りたい。でも、生まれて初めて知ったこの気持ちをシャルルに伝えなきゃいけないと思った。
「ちょっとだけシャルル君とお別れするから先に行ってて」
「分かった。ぼく達はあっちの森の中で待ってるよ」
カナエと健太とタクミの三人は先に森の中へと歩いていった。
太陽がしずみ、空が赤くなる。
美春とシャルルは立ったまま向かい合い、一つになった影が長く、長くのびている。
「ねぇシャルル君。今でもあなたは私のことが好き?」
美春の瞳は夕日を映してきらきらとかがやく。
「もちろんさ。この気持ちはずっと変わらないよ」
シャルルは美春の目を見つめる。
「私も、シャルル君が好き」
美春は世界の時間が少しだけ止まったように感じた。
聞こえるのは風の音と心臓の音だけ。
「でも、私には待っている人がいるの。だから帰らなきゃいけない」
「うん。分かったよ。ボクは美春に好きと言ってもらえただけでうれしい。さようなら、元気でね」
「うん、バイバイ」
美春は森に向かってとぼとぼと歩きだした。
足が思うように前に出ない。
そんな美春の頭の中に一つおとぎ話が思いうかんだ。
美春は走って王子の元にもどってはいていたガラスのくつをぬいだ。
「これをあげる」
美春はシャルルにガラスのくつを片方だけ差し出した。
「これは?」
「ガラスのくつを持っていれば、王子様はなればなれになっても女の子を見つけることができるの」
「それはおまじないみたいなもの?」
「そんなところかな」
シャルルはくつを受け取った。
「ねぇ、シャルル君。いつか、私達が大人になったら、あなたは私をさがしに来てくれる?」
「うん。このくつを信じてきっとキミをさがしてみせる」
「ありがとう」
美春はなみだを流しながらほほえんだ。
「シャルル君、最後にお願い、いいかな?」
「何だい?」
「おとぎ話の世界では女の子は王子様と別れる時に魔法が解けちゃうの。だから目をつむっててほしいんだ」
シャルルはうなずいて目をつむった。
美春はシャルルのほほにそっと口づけをした。
シャルルが目を開けると走り去ってゆく美春の背中がじょじょに小さくなってゆくのが見えた。
- Re: 四年二組のシンデレラ!? その12 最終回 ( No.16 )
- 日時: 2016/05/07 20:04
- 名前: ヨミ (ID: Nt.wHtNX)
12
「みは、おそーい! 王子様の元に帰っちゃうかと心配したよ」
「ごめんね!」
大きなカボチャの周りに美春、カナエ、健太、タクミの四人が集まった。カボチャは魔法が解けていてただの大きいカボチャだ。
「さて、みはにあたしの魔法を見せてあげよう」
カナエはステッキを振った。
「にゅむにゅむにゅむぱぱぱぴりぱー! カボチャよ、今度こそステキな馬車になーれっ!」
ボフンと音がなると、カボチャは車になっていた。その車を引くのは——
「——ペガサスだ!」
カナエが大声でよろこんだ。
「やった、大成功だよ! 帰りはみんな馬車で帰れるよ!」
カナエはペガサスの周りでとびはねている。
「カナちゃんずいぶんとよろこんでるね」
「行きはナス車だったからな」
「ナス車?」
「ナスのことなんでどーでもいいじゃん! さぁ、みんな帰ろう!」
四人は馬車に乗りこむと、ペガサスは大きく羽ばたいて空をかけた。
「あれ? みはのドレス光ってない?」
「本当だ!」
美春のドレスをきらきらとした光のつぶが包み、元のシャツとズボンにもどった。それからストッキングはくつ下になり、最後に片足だけになっていたガラスのくつもどろだらけのスニーカーにもどってしまった。
ナスとちがってペガサスはとても早く走り、あっという間に畑まで帰ってきた。
空はもう暗くなりかけていて、星が光っている。
「着いたーっ!」
カナエが馬車から出てのびをした。
「本当に大冒険をした気がするな」
つづいてタクミが馬車からおりた。
「まさか本当に竹刀を使うなんて思ってなかったぜ」
健太もおりながらのびをする。
「ひさしぶりに帰って来た感じがする。みんな、本当にありがとう!」
最後に美春が馬車からおりた。
「おーみんな帰ってきたか。よくやった」
畑のおくから魔法使いのおじさんが出むかえてくれた。
「この方は?」
初めて会う美春のためにカナエが説明する。
「この人が馬車の持ち主で魔法使いなんだよ」
どう見てもただの農家のおじさんにしか見えなかったので、美春は人は見かけによらないんだな、と思った。
「どうも、いろいろと苦労をかけました」
「何であれ無事に帰ってきて良かった」
おじさんはにっこりと笑った。
遠くの方から人が走ってくる。
「美春? 美春なの!?」
「ママ!」
走って来たのは美春の母親だ。
母親は畑の中に入って美春を抱きしめた。
「今までどこに行ってたの? 心配したんだから、無事で良かった……」
その姿を見たカナエは男子二人に相談した。
「ねぇ、あたし達も一晩いなかったわけだから大さわぎになってるよね?」
「だろうな。母さんに何て言われるかこわいな」
「先生とかにもだいぶ心配かけたしね。生徒が四人もいなくなったんだから」
二人の意見を聞いてカナエはこわくなった。帰ったら絶対におこられる。学校に行ったら先生におこられる。いやだ、どうしよう。カナエは必死に考えた。
(そうだ、あたしって魔女っ子じゃん!)
「大人におこられなくなる方法思いついたよ!」
「どんな方法?」
健太がたずねると、カナエはにししと悪い笑顔になった。
「にゅむにゅむにゅむぱぱぱぴりぱー! みーんなみんな、今回の事件のことを忘れちゃえ!」
「「おいっ!」」
健太とタクミが止めたけど、おそかった。
ステッキの先からきらきらとした光がたくさんあふれた。
——ぱふん!
大きなはれつ音がなった。
「あれ? あたしこんなところで何してるんだっけ?」
記憶がなくなったカナエは魔女っ子ドレスから私服にもどっていた。
「あっ、何で君がこんなものを持っているんだ」とおじさんがカナエがら金のつえを取り上げた。
「オレ達もこんなところで何してるんだ?」
「あれ? 本当だ。通学路は反対なのに」
健太とタクミの記憶も無くなって、二人は家へと帰っていった。
「あら美春、こんなところで何してるの? おうちに帰りましょう」
「うん、ママ」
美春は右手に片足だけになったくつを持って、左手で母親の手をにぎって、帰り道を歩く。
母親は美春のくつが片方しかないことに気がついた。
「あら、どうしたの? 忘れちゃったの?」
母親は美春のくつを見てたずねたけれど、美春には何についてきかれているか分からなかった。
でも、美春は王子からもらったペンダントを右手でにぎりしめながら大きな声で答えた。
「忘れてないよ、なんにも」
(おわり)
- Re: 四年二組のシンデレラ!? 〜魔法のカボチャと弱虫王子〜 ( No.17 )
- 日時: 2016/05/07 20:08
- 名前: ヨミ (ID: Nt.wHtNX)
やっと完結いたしました!
今まで愛読されていた読者の方はありがとうございますm(__)m
長い文章がずらーっとしてて読みにくかったですかね(;^ω^)
もし最後まで読んでいただいた読者の方がいらっしゃいましたら今後のモチベーションのために「読んだ」ぐらいでも構いませんのでコメントをいただけたら幸いです。
読んでる人がいなかったらやりませんが、もし割といたら他の作品も今後挙げていく予定です。
最後にここまで読んでいただいた読者の方にもう一度お礼申し上げます。
本当にあるがとうございました!
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