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- 恋花火—ひと夏の恋—
- 日時: 2017/08/30 02:10
- 名前: Aika (ID: 0otapX/G)
*:+;-prologue-;+:*
パッと咲いて
切なく、 鳴り響く花火の音。
隣には。
愛しい君がいて…
この手を離したくない。
そう思っていた、のに———。
その願いは叶わなかった。
***恋花火—ひと夏の恋—***
更新start→2016.6.11
更新end →
<<目次>>
登場人物紹介>>1
@1:止まった時間
第1話>>2 第2話>>3 第3話>>4 第4話>>5
第5話>>6 第6話>>7 第7話>>8 第8話>>9
第9話>>10第10話>>11 第11話>>12 第12話>>13
第13話>>16 第14話>>17 第15話>>18 第16話>>19
第17話>>20 第18話>>21
@2:絡み合う想い。
第19話>>22第20話>>23第21話>>24第22話>>25
第23話>>26第24話>>27第25話>>28第26話>>29
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.1 )
- 日時: 2016/06/11 18:04
- 名前: Aika (ID: WRt4rHcu)
***登場人物紹介***
*夏宮 空*Natsumiya Sora*♀ 高2*
*九条 蛍*Kujou Hotaru*♂ 高2*
*桜井 七夏*Sakurai Nanaka*♀ 高2*
*椎名 海里*Shiina Kairi*♂ 高2*
*早瀬 青葉*Hayase Aoba*♀ 高2*
*上野 輝*Ueno Hikaru*♂ 高2*
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.2 )
- 日時: 2016/06/11 18:35
- 名前: Aika (ID: WRt4rHcu)
episode1:約束。
『空っ!!』
笑顔で、 わたしの名前を呼ぶ
少し低くて、 元気な声が好きだった。
ずっと、 傍にいられる。
そう思っていた。
だけど
現実はそんなわたし達を引き離すように———。
「俺…この夏が終わったら、引っ越すことになったんだ」
中2の…夏祭りの夜。大輪の花火が夜空に咲く中で。
浴衣姿の君は…顔をうつむいたまま
そっと、 そんなことを口にした。
わたしは…突然のことに
頭が真っ白になって。
何も言葉が出てこなくって。
「そう、 なんだ……」
そう一言。
小さな声で言って、 彼の顔を見ることができず
ただ… 花火だけを見つめていた。
「ごめん…ずっと傍にいるって。約束したのに」
涙混じりの声に。
わたしもつられて、 涙が零れ落ちそうになる。
泣いちゃ、 だめなのに。
だって…
一番辛いのは、 きっと。
———蛍なんだから。
「謝らないでよ…蛍が悪いわけじゃないんだから。…どこに引っ越すの??」
「……京都。父さんの仕事の都合で、さ…」
京都、 か。
東京と京都じゃ…きっと、もう二度と会えないんだろうなぁ…。
じゃあ、わたし達のこの関係も。
終わりって、ことなのかな。
そんなの…。
「空…大丈夫??」
「えっ…あっ…やだな…なんで涙なんか流してんだろう、わたし」
止めなくちゃって。
そう思っているのに。
涙はわたしの気持ちとは裏腹に
とめどなく零れ落ちて———。
止まらなかった。
その時だった。
温かいぬくもりが
わたしの全身をつつみこんだ。
「えっ…」
蛍の力強い腕が
わたしの体を抱きしめていて。
全身が心臓になったみたいに、わたしの鼓動は速くなった。
「空…約束してほしい」
耳元に、 そっと話しかける彼に。
わたしは、 そっと耳を傾ける。
「俺…何年先になるか分からないけど、絶対に東京に帰ってくる。だから…それまで待っててほしい」
その言葉が不思議とわたしの心にすっと入り込んできて。
悲しい気持ちが嘘みたいに吹き飛んだ。
「うん。…絶対、だよ??」
「ああ。…あと、これ…空にあげる」
そう言って、 彼が渡したのは。
可愛いハートのついたネックレス。
「えっ!??いいの??…こんな高そうなのもらっちゃっても…」
「当たり前じゃん。…空のために買ったんだから。…それに俺がそんな可愛いの持ってたらおかしいだろ??」
「……たしかに」
そう言って二人で大笑いした。
こんな風に二人で笑うこともできないのかって思うと
やっぱり寂しい気持ちになるけど。
永遠の別れじゃないから。
二人の気持ちはきっとつながっているって思えるから。
乗り越えられるって…そう思った。
ひとしきり大笑いした後。
わたしは蛍にネックレスを見せながら。
笑顔で言った。
「これっ…一生の宝物にする!!」
そう言うと、 蛍も笑顔で返す。
「大げさすぎ…」
それから
夏休みが終わると。
蛍は東京を出て、 京都に引っ越した。
部屋の中の風鈴の音を聞きながら。
携帯の待ち受けに映る
蛍と笑ってるわたしの写真を見つめながら。
そっと呟いた。
「きっと… また、 会えるよね??蛍」
だけど…
その思いは叶わないまま。
3年の月日が流れて。
「空ー!!期末テストどうだった??」
「無理無理。全然分からなかったよ」
「そう言っててー、どうせ良いんでしょ??」
「いや、そんな事ないってー」
わたしは。
高校2年生になった。
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.3 )
- 日時: 2016/06/15 23:06
- 名前: Aika (ID: syQ.nMvr)
episode2:会いたい。
『空ッ!』
今でも、時々夢に見ることがある。
少し頬を染めながら
照れたようにそっと、わたしの名前を呼ぶ
貴方の姿を———。
触れたい。
そう思って、手を差し伸べるけど
その手は届くことなく
貴方は消えてしまう———。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □
———ジリリリリッ!
目覚ましの音が部屋全体に鳴り響いて
そこではっと目を覚ます。
「久しぶりに見たな…蛍がいなくなる夢」
蛍が東京から引っ越して3年の月日が流れた。
わたしは家から一番近い都立の高校に受かって
ごく普通の平凡な生活を送っている。
蛍とは引っ越してから1年の間だけ
メールや電話のやりとりをして
遠距離恋愛の形で関係を続けていたんだけど———。
中学3年の夏ぐらいから
連絡が突然途絶えてしまった。
電話をかけても、全然つながらなかった。
わたし、何か嫌われるようなことをしたのかな。
それとも、わたし以上に好きになった人ができたのかな、とか
今でも悶々と考えている。
あの日の約束。
『俺…何年先になるかわからないけど、絶対に東京に帰ってくる。だからそれまで待っててほしい』
蛍は、もう忘れてしまったのかな———。
あの時の気持ち…貴方にはもうなくなってしまったのかな。
わたしは、
あの日と変わらず…今だって
蛍が…こんなにも好きなのに———。
■ □ ■ □
「空ー!!おはよ」
「七夏ー!!おはよ。青葉は一緒じゃないの?」
「青葉は今日、朝練で先に行ったんだー」
「そっか。バスケ部は大会前だもんね」
今、隣にいるのは同じクラスで一番仲が良い友達の
桜井七夏。
小柄で目がぱっちりしている
小動物系の可愛い女の子。
「そーなんだよねー。おかげで青葉忙しそう」
「大会終わったら3人でどっか遊びに行く??」
「いいねー!いきたーいっ!!!甘いものとか食べたいー」
青葉も同じクラスでわたしにとって大切な友達。
バスケ部に所属していて、背が高い
ショートカットのクールで大人っぽい女の子。
わたしが憧れるぐらい格好いい女の子なんだ。
七夏とは幼馴染みらしく、幼稚園から高校まで一緒らしい。
「あれ??空に七夏じゃん!オッス」
教室の前の廊下でそんな話をしていると
背中からそんな声がして、とっさに振りかえると、
そこには。
「おー!!海里と輝じゃーん。おはよ」
「何々?3人でどっか出かけんの?俺らも混ぜろよ」
「海里ー。女好きも大概にしとけよー」
「はぁ!?そんなんじゃねーしっ!!」
海里と輝のそんなやりとりがおかしくて
わたしと七夏は大笑い。
「何だよー。朝から盛り上がってるね」
「あっ。青葉!おはよー」
「青葉ー!聞いてよ。海里がさー」
「バカ!!七夏、言いふらすなよ!」
女友達もいて、男友達もいて。
学校生活は本当に楽しい。
たしかに、そうやって心のなかから思っている。
なのに。
窓から見える夏空をそっと見上げながら
目を閉じて。
貴方の顔を思い浮かべる。
今、 この場所に。
貴方が、 蛍がいたら。
もっと、 楽しいのに———。
もし、許されるなら
もう一度だけ。
会いたいよ、 蛍———。
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.4 )
- 日時: 2016/06/18 00:08
- 名前: Aika (ID: hFExu/cI)
episode3:変わらない想い。
「空ってさぁー…好きなやつとかいんの?」
お昼休み。
不意に隣の席にいた海里にそんなことを聞かれて。
わたしは口を開けたまま、その場でしばらく固まってしまった。
そんなわたしに、七夏と青葉が声をかけてくる。
「おーい…空ー」
「分かりやすいぐらい動揺してんな」
二人のそんな会話が耳に入って。
ようやく目を覚ます。
そ…そりゃあ、動揺するよ。
だって。
みんなには、一度も話したことない
蛍の存在が。
頭の中に浮かんだから———。
「その反応はやっぱりいるんだな」
海里は、いつになく
真剣な顔でそう静かに呟いた。
どうして…
海里がそんなに、切ない顔をするの———??
そう聞きたかったけど
なぜか、わたしはいつもみたいに海里に聞けなくって———。
目線を海里から逸らして、うつむいてしまった。
「ちょっとー…海里が変なこと聞くから、変な空気漂ってるんですけど」
そう青葉がため息混じりに言うと
海里がいつもの調子で言い返す。
「なんだよ、俺のせいかよー」
「まぁ、海里は空気よめねーし仕方ない」
輝がフォローを入れると、そこに海里がツッコミを入れる。
「輝くん、それはフォローでも何でもねーからな。ただ俺の悪口を並べてるね」
そんな二人を見ていたら。
自然と笑顔がこぼれた。
なんで海里があんなこと、聞いたのか真意は分からないけど
たぶん、わたしは今までみんなに恋愛の話なんかしないから興味本意かな、と
そういう解釈をすることにした。
うん、きっと深い意味なんかない———。
その日は自分にそう言い聞かせた。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □
そして、放課後。
いつも通り、青葉は部活なので七夏と
二人だけの帰り道。
七夏が大きな瞳をキラキラと光らせて聞いてきた。
「でさぁ…空の好きな人って誰??」
その瞬間。
肩がびくっと震えた。
わたしは呆れた顔で言う。
「七夏までそんなこと、聞いて…いないよ、そんな人」
「嘘つけ!!絶対にその顔はいるよー」
ごまかしたつもりが、簡単に見破られてしまった。
わたしって、そんなに分かりやすいのかな———。
「まぁ…空は言いたくなさそうだし無理には聞かないけどさ…せめて、どんな人かだけでも教えて」
七夏の無邪気な視線に。
思わず口を滑らして、答えてしまった。
「不器用だけど…わたしの為に一生懸命になってくれる、そんな人」
蛍は…いつだって。
わたしを一番に考えてくれていた。
わたしのことばかり…だった。
貴方には、もう
あの頃の気持ちは残っていないの———??
別れよう、とも言われてないし。
これじゃあ、わたし
貴方を待ってていいのかも分からないじゃん———。
「空…大丈夫??」
黙りこんだわたしに向かって七夏が心配そうな面持ちで聞く。
「うん!!ごめん、全然平気だよ」
そう言うと、安心したように七夏は微笑んだ。
それから七夏は深くは聞かなかった。
七夏は優しいからわたしに気を使ってくれたんだと思う。
真っ赤に染まる夕焼けぞらを見上げながら。
感じたこと———。
きっと、 わたしは
蛍以外の誰かを…好きになんかなれないんだってこと———。
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