コメディ・ライト小説(新)
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- 死なない君ともうすぐ死ぬ僕【完結】【感想、リク募集中】
- 日時: 2018/05/06 01:39
- 名前: シカライダー (ID: SsbgW4eU)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12248
こんにちはシカライダーです。
今回はちょっとだけシリアスで非日常な恋愛ものを書いてみたいと思います。
恋愛もシリアスな雰囲気も苦手なんですが、一生懸命書きますので読んでいただけると幸いです。
感想とか頂けたら死ぬほど喜びます。
次作品のリクエストなどもくださるとうれしいです。
- Re: 死なない君ともうすぐ死ぬ僕 ( No.1 )
- 日時: 2018/05/03 20:39
- 名前: シカライダー (ID: SsbgW4eU)
今日も空は青く、燦々とした太陽が何も知らない顔で僕の脆い体に光を当てる。
ここは、都内の大きな病院。僕は生まれた時からここに通っている。
高校2年生になった今でも変わらない。家にいる時間よりも病院にいる時間のほうが多い。
せっかくの土曜日なのに今日も検査のためにここへ来て、いつものように中庭で座っている。
自分の体が憎い。健康な人が羨ましい。妬ましい。
なぜこんな体で生まれたのか、誰に聞いても答えは返ってこない。
いつものように死人のような目で中庭を見つめていると、
「あれ?…君確か、同じクラスの神谷潤くんだよね?」
声の聞こえた方向に目を向ける。そこにいたのはクラスメイトの名嘉山 春(なかやま はる)だった。
友達が多く、先生にも人気、顔も整っていてスポーツ万能。頭もよい。まるで小説にヒロインとして登場しそうな絵に描いたような学園のアイドルだ。僕とは全く別の人間。
「…そうだけど。」
僕と真逆の彼女が憎い。嫌いだ。その思いがつい態度に出てしまう。
「やっぱり!なんで神谷くんはこんなところにいるの?」
うざい。その質問をするな。お前みたいな人間が一番嫌いだ。
何も知らないくせに土足で人の触れられたくない部分に入ってくる。馬鹿が嫌いだ。
「別に。君には関係ないよ。君は?」
つい聞いてしまった。話をこちらからふってしまった。
このとき、全くガラでもないのに人に興味を持ってしまったのは、なぜだろう。
『なぜ彼女が病院にいるのか』聞いてしまった。僕の人生を、大きく変えてしまうことになるとも知らずに。
「なによー冷たいなぁ。私はね、病気の検査のためにここに来たの。」
病気…?こいつが?全くもって元気じゃないか。いや、軽い病気なのかもしれないし、やせ我慢しているだけかもしれない。どっちでもいい。僕はなぜか無性に気になった。
何の病気か、聞くべきか?聞いてもいいのか?聞いてしまっていいのか?
そんなことを考えていると、彼女のほうから言ってきた。
そして、その言葉を聞いて時が止まったようだった。
僕を、僕の人生を変える、重くて軽い言葉。
「私ね―――――――――」
…やはり僕は君が嫌いだ。
「――――不老不死の病にかかってて、死なないんだ。」
- Re: 死なない君ともうすぐ死ぬ僕 ( No.2 )
- 日時: 2018/05/03 22:14
- 名前: シカライダー (ID: SsbgW4eU)
___不老不死。永久に若く死なないこと。
彼女は今。そういったのか?僕の聞き間違いだろうか。
そんなことがあるわけがない。常識的考えてあり得ない。
ふざけている。馬鹿げてもいる。絶対に無いことは分かっている。
それなのにどうして今の言葉は、こんなにも僕の心に響き渡ったのだろう。
僕が欲しているものだからだろうか。僕は何も言えなくなった。
「…君はばかにしないんだね。」
彼女は少しだけはにかんで言った。少し潤んで見えたその瞳は僕を見つめていた。
「…馬鹿になんてできないよ。それが僕の一番欲しいものだから。」
少し驚いた顔で彼女は言う。
「え…どうして」
この時の僕はどうかしていたのだろう。今まで全くかかわりのなかったクラスメイトに自分のことを言ってしまうなんて。
「僕は白血病にかかっているんだ。貧血、急な発熱は毎日のように起きる。僕がよく休んだり、早退しているのは病院に来るため。家にはほとんどいられない。病院に住んでいるようなもの。不老不死なんて喉から手が出るほど欲しいよ。いや、不老不死じゃなくても健康な体が欲しい。僕は健康な人が憎い。」
彼女は黙る。
僕も黙る。
しばらくの間、間があり、彼女は言った。
「…ごめんね。」
「いや、いいよ。君が悪いんじゃない。」
「違うの。」
なぜか彼女の瞳には涙が浮かんでいた。
なぜ?何が違うんだよ。
同情か?不老不死だから僕に同情しているのか?
何が、何が違うんだよ。
「…ごめんね、私…」
泣きながら彼女は言う。
「…死にたいの…私、死にたくて…何度も自殺しようとしてるの…っ…」
僕は、何も言えなくなった。
彼女は相変わらず泣いている。
なんで。なんで死にたいんだよ。健康で、友達もいる。何も苦労しないだろう。
分からない。全く分からない。
「不老不死なんて、いらないのにっ…」
彼女はポケットからカッターナイフを取り出して、勢いよく自分の手首を切りつけた。
余りにも衝撃的なものだった。
止める暇もなかった。いや、そもそも止める必要はなかったのだろう。
「…また…また死ねなかった…なんで、死ねないのっ…」
普通の人なら赤黒いドロッとした独特な匂いのする液体が流れるはずなのだが、彼女の手首にはそんなものは一切、流れていない。それどころか、切った傷すらない。
それからしばらく泣いた後、彼女は「ごめんね」と言って去っていった。
そんなことがあってから二か月、より一層強くなった日差しが僕の肌を焼く。
あの時、あんなことを言っていた彼女は何の違和感もなくいつもどおりだ。
なぜあの時、あんなことを、僕なんかに言ったのだろう。
そんなことを考えていると、雨が降ってきた。
そして、雨が突然降ってきたのは、僕に悪い知らせをするためだったのだろう。
「…神谷くん、率直に言うと君は…」
検査が終わり、医者が言う。
雨が強くなった気がした。
「…もう、長くはもたない。持ってあと一年だろう。」
突然の言葉だった。
だが、予想はしていた。
最近は発作や動悸が激しく、体調を崩すことが多かった。
自分でも何となく分かっていた。
「…そうですか」
そこからの話は覚えていない。
いつものように中庭に向かう途中、彼女に会った。
「…こんにちは、神谷くん」
「…こんにちは」
中庭に行ってベンチに座って話す。
「何かあったの?顔が暗いよ」
そりゃ暗くもなろだろう。
ついさっき死の宣告を受けたんだから。
「まぁね。」
「どしたの?」
「僕、あと一年だってさ。」
…?
沈黙が長い。
そんなにおかしなことを言っただろうか。
彼女のほうを見る。
「え…何で、何で泣いてるの?」
彼女の瞳には涙があふれていた。
「いや…なんでもないよ…」
無理に笑顔にしようとするが全くできていない。
何で彼女が泣いているのか。全く理解出来ない。
彼女は涙を拭き、言った。
「…あのさ、今週の日曜日、どーせ暇だよね?…ちょっと遊びに行こうよ、ふたりでっ!決定ね!」
涙でくしゃくしゃになった顔でへたくそな笑顔を作っている彼女を見て、思わず笑った。
「…楽しみだね」
僕が笑顔で答えたあと、彼女は笑った。
- Re: 死なない君ともうすぐ死ぬ僕 ( No.3 )
- 日時: 2018/05/03 22:42
- 名前: ゆず (ID: 1ZQMbD0m)
どうも、こんばんは。ゆずというものです。
突然すみません。
だけど、この小説始まったばかりだけど、「すごく面白いなぁ」と感激してしまったもので!
何というか、題名から。おっ?と惹かれて...( ´ ▽ ` )
あーうまい文章思いつかないなー。
まぁ、いい!
応援させていただきます。
しばらく小説が進んだら、またコメント書きにきますね。
頑張ってください!
- Re: 死なない君ともうすぐ死ぬ僕 ( No.4 )
- 日時: 2018/05/04 19:47
- 名前: シカライダー (ID: SsbgW4eU)
感想いただけてとても感激してます!
これからも応援していただけると幸いです!
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相変わらずの強い日差しは、僕の体を焦がしている。
彼女との約束の時間まであと五分ほどだ。
なぜだろう。死の宣告を受けたはずの僕の弱々しい体は、すこぶる元気で、いつもの自分の体ではないようだ。
なぜだろう。僕は他人に興味なんてなかったはずだ。それなのに、彼女と会うことを心から楽しみにしている。
なぜだろう。なぜ僕はこんなにも彼女に惹かれているのだろう。
彼女が不老不死だからだろうか。いや、自分でも分かっている。
彼女に会いたい理由、それは…
「おまたせっ。待った?」
彼女の明るい声が聞こえた。
反射的に笑顔になってしまう。
「いや、僕も今来たところだよ」
「本当はめちゃめちゃ早く来てたんでしょー。紳士だなぁ神谷くんは。」
クスッと笑う彼女。つられて笑う僕。
笑うなんて、久しぶりだ。彼女に出会うまで笑うことなんてなかったのに。
僕の暗い世界に、ひびが入り、光が漏れてくる。
残りの一年間、毎日笑いたい。
毎日、君といたい。
気が付けばそんなことを考えていた。
「あ、神谷くんクリームついてるっ。…ふふっ。」
「え、どこ?」
駅前のカフェで人気のパンケーキを食べる僕ら。
「ここだよっ」
僕の口元からクリームを指でとり口に運ぶ彼女。
「ちょっ…」
「ん?どうかしたの…あ。」
自分のしたことに気づいた彼女。
頬が赤く染まっていく。
「…あ、えと、その…」
慌てる彼女。
こっちまで恥ずかしくなってくる。
「い、今のは事故、事故だからっ!」
「分かってるよ!」
気まずい空気が流れる。
沈黙の後。僕らは目を合わせて、笑いあった。
しばらく遊んで、日も傾いてきた。
夕焼けは僕らに優しい日を当てる。昼の強い日差しが嘘みたいだ。
「はぁーつかれたねー」
「えー、男の子でしょーこのぐらいで音を上げないの。」
「普通の男子と一緒にしないでよ」
「…してないよ…神谷くんは特別だもん」
少し恥ずかしそうに言う彼女。
声が小さくなり、後半の部分が聞こえない。
聞き返すが、「さぁねっ」と濁される。
いたずらっぽいその動作に癒される。
ますます僕の日常にエラーが増える。そして愛が増えるたび、僕は幸せを感じる。
「ねぇねぇ神谷くん」
「ん?」
「次はどこに行きたいっ?」
そう、彼女は僕の行きたい場所を聞き、そこへ僕を連れて行ってくれる。
僕の、『死ぬ前に行きたい場所』へ。
「そうだねー…人生最後の夏だし。海に行ってみたいかな。」
彼女は硬直する。
「え…う、海…?」
顔を真っ赤にする彼女。
それを見て僕も察した。
「あ、ごめん。嫌ならいいんだよ」
「え、いやいやいや。行くに決まってるじゃん!神谷くんと海、行かないわけないじゃんっ!!」
…一人で興奮する彼女。
何でそんなにテンション上がってるのか、僕にはさっぱりだ。
だが、また彼女とどこかへ行ける。
そう考えたら、まだまだ生きていけるような気がした。