コメディ・ライト小説(新)
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- あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】
- 日時: 2021/02/15 10:57
- 名前: 鳴海埜(なるみや) (ID: apTS.Dj.)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=12684
時は平成。ビルが建ち並び、機械化が進む今、これは[あやかし]という、日本に古くから住んでいる、人
成らざる者達と、[あやかし]が見える珍しい一人の人間との御話__。
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2019年 冬 コメディ・ライト小説部門で銅賞を頂きました。投票して下さった方々誠にありがとうございます。
2020年 冬 コメディ・ライト小説部門で金賞を頂きました。投票して下さった方々誠にありがとうございます。
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【 目 次 】
[詳細] >>1-3
[プロローグ] >>04
* 第 一 期 *
[第壱章] >>5-20
第1話 >>05 第2話 >>06
第3話 >>07 第4話 >>08
第5話 >>09 第6話 >>11
第7話 >>12 第8話 >>14
第9話 >>19 第10話 >>20
[第弍章] >>21-24
第11話 >>21 第12話 >>22
第13話 >>23 第14話 >>24
第15話 >>25 第16話 >>26
第17話 >>
[番外編]
バレンタイン編 >>18
クリスマス編 >>
年越し編 >>
- Re: あやかし町【バレンタイン編】 ( No.18 )
- 日時: 2020/02/28 16:44
- 名前: 鳴海埜 (ID: u5fsDmis)
だーいぶ遅いバレンタイン編です((
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
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[バレンタイン編]※御月と再会前
__ピピピッ……ピピピッ…ピピッ…。
__2月14日6時30分_。
「んん……久しぶりに見たわね…」
昔の夢を見ていた様だ。目覚ましの音で目が覚め、欠伸を溢すと、ふと頬に手を当てると、薄らと湿っていた。
「そっか…今日は…バレンタインね」
そう呟いては、身支度を始める。
バレンタイン_それは一番の思い出。
_お爺様がまだ生きていた頃の話_。
「_ッとと、できたぁ~!お爺様ぁ~!」
今日はバレンタインだ。朝早くから起きては、チョコを使ったお菓子作りをしていた。作っていたのは[ミルク][ビター][抹茶]の三種類の生チョコだ。
出来上がったチョコをいくつか手に取り、お爺様の元へ駆けていく。するとお爺様は、嬉しそうに笑って、ありがとうと言った。そして、『御月にもあげてやってくれるか?』と言った。
私は、元々あげるつもりでいたため、
『もちろん!』と言い、御月を探しに家を飛び出した。
何分かして、いつもの神社に着いた。
鳥居の近くに彼は座っていた。私は、嬉しそうに彼の元へ駆け出した。しかし、足元を見ていなかった為、あと少しという所でつまずいてしまった。私は、『転んでしまう』そう覚悟し目を瞑った。だが、いつまでたっても痛みは来ない。その代わり、体を何やら暖かいもので包まれている事に気付き、慌てて瞼を開くと、私は彼に抱き止められていた。彼は優しく笑うと、心配そうに顔を覗き込んできた。
「大丈夫?ちゃんと足元見ないとダメだよ?咲奈。」
怪我をしていないと分かり、ほっとして、私は彼に抱き付き顔を埋め、少し恥ずかしそうに頬を染め礼を言った。
「ありがとぉ…みつきくん、…」
その後、無事チョコを渡せた。私は、満足そうにほくほくとした笑みを浮かべ、『またね』と彼に手を振り、帰った。その日が、お爺様が生きていた時の最後の思い出だ。そして__
_初めて異性にチョコをあげた日だ。
「_行ってきます、お爺様。」
玄関の写真立てのお爺様に笑顔を向け、玄関扉を開け、私はまた、新たな1日のスタートを切った_。
まさか、後に和国に行く事になるだなんて、この時は知りもしなかった_。
[バレンタイン編終]
如何でしたでしょうか。
楽しんで頂けましたでしょうか。
楽しんで頂けたのなら、幸いです。
では、また9話でお会いしましょう。
- あやかし町 第壱章 #9 ( No.19 )
- 日時: 2020/12/13 23:56
- 名前: 鳴海埜 (ID: 0rBrxZqP)
第壱章 #9[偶然]
「おい、聞いているのか?人間。」
私は喰われてしまうのだろうか。そんなことを、ぼーっと立ったまま考えていたが、その一言でハッとした。
「ご、ごめんなさい、…ぶつかってしまって…命だけは……」
私は咄嗟に謝った。すると、鬼神様は、ぽかーんと呆気に取られた顔をして、こちらを見つめていた。かと思うと、突然笑いだした。
何が起きているのだろう。笑われている…一体なぜ…?私は呆気に取られ、またぼーっとしてしまった。慌てて我に返り、なぜ笑っているのか不思議に思い、聞いてみた。
「お前が、…ふふ…突然謝ったと思えば、命請いをしてきたのでな…」
くっくっと笑いを堪えながら、鬼神様はそう言った。そんなに面白かったのだろうか。私はさっぱり分からず、再びぼーっとしてしまった。
『何がなんだか…全然分からないわ…頭が痛い…意識が朦朧とする…。』
御月さんが嬉しそうに鬼神様と話している声が聞こえる…食堂の客のあやかし達の騒がしい声がする…。
私の意識はそこで途絶えた。とても暗い…闇の…奥深くに落ちていく_。何度目だろう_。
「…咲奈?!」
咲奈の体がぐらりと傾くのが見え、咄嗟に駆け寄ろうとすると、いつの間にか鬼神様が咲奈を抱き抱えていた。
側に駆け寄り、声を掛けるが返事はない。何やら…今までとは違い、嫌な予感がする…そんな気がした。
同じく…鬼神もそう感じていた。
それと同時に、鬼神は懐かしさも感じていたのだった_。
第壱章 第9話 終
- あやかし町 第壱章【最終話】 ( No.20 )
- 日時: 2021/01/02 14:10
- 名前: 鳴海埜 (ID: s/G6V5Ad)
第壱章 #10[悪夢]
__ここはどこ・・・・暗い・・・・怖い・・・嫌だ・・・・・誰か・・・助けて・・・・・!!!__
私は、暗闇の中をゆっくりと、下へ下へと落ちていく…。暗く、微かにひんやりと冷たく、何もない空間。暗闇は嫌いだ。昔の…悪夢を…彷彿とさせるから。もう何も知りたくない…思い出したくない…。そんな事をぼんやりと考えながら、私は落ちていく__。
なんとも言えない様な胸騒ぎが止まらない。なんだろう。なんだか懐かしいような、恐ろしいような、身に覚えがある…ような気がする。ぐるぐると同じ様な事を考えじっとしていると、九尾の青年『御月』に声を掛けられた。
「あの…鬼神様…。嫌な予感がするのは気のせいでしょうか…。」
そう言った御月の顔は少しばかり冷汗が伝い、青ざめているように見えた。
「お前もか…。」
やはり、同じことを思っていたようだった。何年か前だろうか。いつだったかは曖昧だが、似たような事が起こった時があった。その時は『奴』が居た。だがもう奴は居ない。あの時のように、うまくはいかないだろう…。今ここに『奴』が居れば…。
_それはそれは…古からの言い伝え_
古より、陰陽の血筋、十八と成り和国へ踏み入れし時、その者、心魔歩み寄り、闇へと引き込まれん。あらがわぬば、永遠と眠りけり。
(古くから、陰陽師の血筋に当たる者、分家の者が18歳となり、和国に足を踏み入れた時、その者の心の奥深くに眠る陰の情が、姿を現して闇へと引きずり込むだろう。あらがわなければ、永遠の眠りへ就くだろう。)
第壱章 第10話 終
- あやかし町 第弍章 #11 ( No.21 )
- 日時: 2020/12/13 23:54
- 名前: 鳴海埜 (ID: 0rBrxZqP)
[読者の皆様へ]お久しぶりです。あやかし町の作者、鳴海埜です。読者の皆様、大変お待たせしました。あやかし町【第弍章】の開幕です。
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第弍章 #11[陰陽]
「咲奈…。…目を覚ましてくれ…。」
咲奈が眠りについてから、今日で3日が経った。僕は、布団で静かに眠る咲奈の頭を優しくゆっくりと撫でた。咲奈は未だに、目を覚ます気配は一切無い。倒れた咲奈は、鬼神様の付き人達によって、鬼神様の屋敷に運ばれた。そして僕は今、鬼神様の屋敷内であり咲奈が眠る部屋に居る。表情の変化もなく、ただただ深く静かに眠る咲奈の姿は、傍目から見れば、まるで亡くなっている様に見える。
「御月よ。居るか…?」
目覚めない咲奈の様子を眺めていると部屋の外から声を掛けられた。きっと鬼神様だろう。
「はい、居ます。…何でしょうか。」
案の定、襖を開ければそこには、この屋敷の主であり、和国内有数の権力者、鬼神様が居た。
「咲奈の様子を見に来たんだよ。…どうだ?なにか…変わったこと等はあったかい…?」
鬼神様はそう問い掛けながら、部屋へと入り、咲奈が眠る布団の横へと腰を下ろした。普段、表情を崩す事がない事で有名な鬼神様の顔には、不安とほんの少しだが、恐怖が滲み出ていた。
「……いいえ…。特に…変わったことは何も…。」
僕がそう答えると、鬼神様は静かに、目を伏せ、小さく頷いただけだった。
きっと、鬼神様自身も答えは分かっていたのだろう。お互い静かになり、ただただ静寂の時間が流れていく。
「ここに…奴が居てくれたら…な…」
そうぼそりと言うと、鬼神様はまた黙ってしまった。鬼神様が言う『奴』とは、一体誰のことなのか。僕には分からなかった。鬼神様が、居てくれたら、と願う程の人物…一体誰だろう。
「あの、鬼神様。付かぬことをお伺いしますが…。鬼神様が先程仰った『奴』とは、一体誰の事なのでしょうか…?」
そう問い掛けると、鬼神様は一度目を伏せ小さく息を吐くと、ぽつりぽつりと言葉を溢して言った。
「…『奴』は…陰陽の血筋の人間だよ。そして、今眠ってしまっている咲奈の祖父、と言ったら良いのかな…。」
陰陽の血筋、人間、咲奈の祖父…。まさか…まさかあの人が、鬼神様と面識があったなんて知らなかった。僕も咲奈のお爺さんとは昔面識がある。とても良くしてもらっていた記憶がある。
「奴の、人間としての名前は知っているだろう。だが、奴にはもう一つの名がある。ここ、和国でも極一部の者しか知らない名だ…。…奴の名は……」
「 _ 陰陽神と言う _ 」
第弍章 第11話 終
- Re: あやかし町【第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.22 )
- 日時: 2020/12/13 00:42
- 名前: 鳴海埜 (ID: 0rBrxZqP)
第弐章 #12[厄月]
「…奴の名は………陰陽神と言う。」
陰陽神とは、あやかしと対話できるだけでなく、あやかしと同等、又はそれ以上に強大な力を持った者の事だ。
まさか、彼がそんなに凄い者だったなんて、知らなかった。むしろ、知るわけがない。何故なら、陰陽神はあやかしの敵でも味方でもない存在。それ故に、敵にまわせば敵う訳がない。そんな恐ろしい事を公言する訳がない。
「ははっ。恐ろしい、と思ったか?他のあやかし達よりも、最も奴の近くに居たのは、御月。お前だろう。」
そうだ。僕が最も彼の近くに居た。"居た筈"なんだ。でも彼は、そんな事を一言も口にせず、そんな素振りもなかった。
「お前は奴の何を見てきた?奴があやかしを殺める様な者だと思うのか?
むしろ、奴は救ってくれたよ。私達を…この和国をな。」
鬼神様はそう言って、ほんの一瞬、寂しそうな少し悲しそうな微笑を浮かべた、様な気がした。
「先程"救ってくれた"と仰いましたが和国に何かあったのですか?」
僕がそう聞いた瞬間、冷酷で淡々とした、普段の鬼神様の表情に戻ってしまった。和国に危険が及ぶだなんて、普通ならば考えられない。和国には、鬼神様を含む、5人の強力なあやかし『五光』が居るのだから。
「あれは…厄月と呼ばれる、あやかしにとって、最も厄介な月の事だ。その年の厄月は、今までの厄月の中で、最も最悪な月だった。」
_そうぽつりぽつりと話し始めた_。
第弐章 第12話 終