ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- 届かない? そんなの最初から分かってる。 完結
- 日時: 2009/03/06 20:14
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
あたしとあの子はあんたを好きになった。
普通だったら、取り合いが始まるかしら?
でも、あたしはそんな事しない。
あたしは黙って身を退くの。
幸いなことに、あんたもあの子もあたしの気持ちに気付いてない。
何故身を退くかって?
だってあんたは——……
そしてあたしは——……
でもね。最後に意地悪してあげる。
あの子には、ある事を伝えない。
あんたには、この花束を、贈っちゃう。
さあ、いつ、本当のことに気付くかな?
+届かない? そんなの最初から分かってる。+
よろしくお願いします! 最初から悲恋&シリアスまっしぐらなので、苦手な人はUターンお願いします。
- Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.3 )
- 日時: 2008/11/20 20:16
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
「ねぇ、卓さぁ」
卓は鈴に呼び出された。気のせいだといいのだが、鈴の後ろから殺気が出ている気がしてならない。
「いい加減、椿に告白しろよ」
ほとんど脅迫に近い気がする。卓は逃げ腰になりながらも、何とか反論しようとする。
「だがな……」
「うっさい」
簡単に一蹴されてしまった。
「まぁいいや。今日、三人で帰ろ?」
「あ、あぁ」
「それで告白しなかったら、」
鈴は言葉を切り、左手の親指で自分の首を切るマネをした。
「殺ス」
その時の鈴の顔があまりにも怖かったので、卓は即行で頷いた。
帰り道。
予定通り、三人は一緒に帰っていた。
その途中で、鈴がわざとらしく布製の筆箱を落とした。だが、鈍感な二人は筆箱が落ちたことに気付かず、しばらく進んだ。
角を曲がったところで、鈴が鞄を急に探り始めた。
「あっ、筆箱落とした! 椿っち、すぐるん、拾ってくるからちょっと待っててっ」
鈴は再び角を曲がっていった。
筆箱を取りに行ったら告白する。
そう鈴と卓は約束した。そして、今はその時だ。
「おい、五十嵐」
「ふぇ? 何、卓君?」
いざ、本人に言うとなると、結構恥ずかしい。呼んでおいて、卓は視線を泳がせる。
「あ、そうだ!」
急に椿が手をパン、と合わせた。
「何だ?」
「鈴っぺに言わなきゃ殺ス、って言われたの」
椿は少し俯いたが、バッと顔を上げて言った。
「……好き……」
鈴は曲がり角のところで、軽く手を叩いた。
「……おめでとう」
続く
椿の名字は、書いた通り、五十嵐です。
前回で卓は椿を『椿』と呼んでいますが、今回は『五十嵐』と名字で呼んでいます。
これは本人の前では名前で呼べないっていう照れ屋さんを表現してるんですよぅ。
- Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.4 )
- 日時: 2008/12/11 20:19
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
『……好き……』
その言葉は、私が言いたかったのにな。
『……俺も』
そんな言葉、聞きたくなかったのにな。
『本当!? ありがとう!』
そう返事したかったのに。そんな笑顔で喜びたかったのに。
叶わないのなら、最初から夢なんて見なければいいのに。
良い夢を見たぶん、現実は残酷なんだね……。
——そんな私に、最後のチャンスが訪れた——
続く
短くてすみません。
- Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.5 )
- 日時: 2008/12/26 19:32
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
無事に二人が付き合い始めてから五日が経った。
——あと一回、何かがあれば諦められるのになぁ……。
そんなことも何回思ったことか。
制服に着替え、リビングに通じる階段を降りる。
降りていく途中で、不意に足の自由が利かなくなる。
(あ、れ……? 足、動かな……)
不安になる中で、この状況を喜んでいる自分がいる。
——これで、諦めきれる……。
アキラメキレル……
意識が途切れる直前で、母親の悲鳴が聞こえた気がした。
すぐに鈴は病院に運ばれた。
初めは意識不明状態だったが、無事覚醒した。その後、すぐに医者に呼ばれ、診察室に行った。
医者は沈痛の面持ちで告げる。
「今までに見たことがない、新種の病です。診察したところ、もってもあと二週間です」
続く
前回、鈴の一人称が「私」となっていましたが、本当は「あたし」でした。
すみません。
- Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.6 )
- 日時: 2008/12/27 15:45
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
この作品のイメージソングです。
好き、だから嫌い、だから好き。
「オメデトウ」と言ったときの私の顔なんて 誰が知っているんだろう?
笑顔でいた訳じゃない 嬉しかった訳でもない
悲しんでたんだ 泣いていたんだ
誰も知らなかったけど
誰かは気付いてた、って思ってたい
じゃないとまた泣きたくなるから
好き、だから嫌い、だから好き。 好き、だから嫌い、だから好き。
私に笑いかけるあなたは好き あの子を好きなあなたは嫌い
だけどどうしようもなく好き
諦めたいのに……
「サヨウナラ」と言ったときの私の顔なんて 誰が知っているんだろう?
泣いていた訳じゃない 悲しかった訳でもない
嬉しかったんだ 笑っていたんだ
誰も知らなかったけど
誰かは気付いてた、って思ってたい
じゃないとまた笑っちゃうから
好き、だから嫌い、だから好き。 好き、だから嫌い、だから好き。
私と話しているあなたは好き あの子しか見てないあなたは嫌い
だけどどうしようもなく好き
忘れたいのに……
見てくれている人がいた だからもう十分だ
諦められる、忘れられる。
……ありがとうございました。これからも応援お願いします。
- Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.7 )
- 日時: 2008/12/27 16:06
- 名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)
その場に沈黙が流れた。
それを破ったのは鈴だった。
「あと二日ください。二日経ったら、必ず入院します」
そう言い放った鈴は、満面の笑みを浮かべていた。
翌日。
鈴の家には鈴以外誰もいなかった。家を出てみると、大きなトラックが止まっていた。
「……鈴」
トラックに乗ろうとした母親が鈴に気付いた。母親は気まずそうな顔をしていたが、思い切って口を開く。
「……私達は、あなたにもう会うことはないわ。あなたは最高であと二週間しかもたない。別にいいでしょ?」
鈴は聞き終わっても表情を崩さず、むしろ笑みを浮かべていた。
「うん。いってらっしゃい」
トラックはどこかへ行った。
「さ、学校に行こう、っと」
鈴の鞄から何かの届け出用の紙が覗いていた。
続く
あー、文章がそれなりにひどい気がします。すみません。
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