ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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届かない? そんなの最初から分かってる。 完結
日時: 2009/03/06 20:14
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

あたしとあの子はあんたを好きになった。


普通だったら、取り合いが始まるかしら?


でも、あたしはそんな事しない。


あたしは黙って身を退くの。


幸いなことに、あんたもあの子もあたしの気持ちに気付いてない。


何故身を退くかって?


だってあんたは——……


そしてあたしは——……


でもね。最後に意地悪してあげる。


あの子には、ある事を伝えない。


あんたには、この花束を、贈っちゃう。


さあ、いつ、本当のことに気付くかな?



+届かない? そんなの最初から分かってる。+


よろしくお願いします! 最初から悲恋&シリアスまっしぐらなので、苦手な人はUターンお願いします。

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Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.1 )
日時: 2008/11/10 12:40
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

「えーっ? 椿っちったら、矢部っちの事好きなのー?」

「ちょ、鈴っぺ! 声大きい!」

鈴の口を塞ごうとする椿。二人は中学校からの親友なのだ。

「大丈夫! あたしは椿っちを応援するよ!」

「……ありがと、鈴っぺ」

すると、同じく中学校からの親友、矢部っちこと矢部が来た。

「矢部っち、おっはよー♪」

「……おい鈴。ちゃんと矢部と呼べ。出来ないんなら名前で呼べ」

しかし、鈴は口笛を吹きながら、

「矢部っちって、名前なんだっけ?」

ゴッ!

「痛いっ! チョップしなくてもいいじゃん!」

慌てて椿が鈴に向かって言う。

「鈴っぺ、名前は卓、だよっ」

「ありがとっ♪ じゃあ、すぐるん」

「お前、ケンカ売ってんのか?」

矢部、もとい、卓の額に青筋が浮かぶ。

そんな一見楽しそうな日常の中、鈴の心情は複雑だった。

(やっぱり身を退いて正解だなぁ……。あたしが二人のキューピッドにならなきゃ)


鈴も、卓が好きだった。


続く

ちなみに卓はすぐる、と読みます。念の為。

Re: 届かない? そんなの最初から分かってる。 ( No.2 )
日時: 2008/11/13 19:51
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

「……鈴、ちょっとこっちに来い」

鈴は、卓に呼ばれて、廊下の隅に来た。


「……何? 卓」

真剣な気配を察して、鈴はあだ名で呼ばなかった。だが、当の卓はそっぽを向いて、顔を真っ赤にしている。それで鈴は、話の見当をつけた。

「あんた、椿が好きなんでしょ?」

それを言った瞬間、卓は耳まで真っ赤になった。

「……何その顔。あたしが気付いてないと思ってた? バレバレだよ、そんな態度だと」

「椿にも……バレてる、のか?」

鈴は盛大に溜息を吐いた。

「椿はちょっと鈍感だから、気付いてないよ。……笑ったり、馬鹿にはしないから、椿のことを話してみな」

そして、卓は今までにないほどの笑顔で椿のことを話していた。鈴は相槌を打ちながら、しっかりと話を聞いていた。

「応援してるよ」

鈴はそう言って、卓に背を向けて歩き出した。


あの笑顔が、あたしに向けられればいいのに——。


続く


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