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For Emperor Requiem ご感想お願いします
日時: 2009/11/21 13:12
名前: 神威 琉瑠 (ID: zCJayB0i)

森羅万象のこの世

限りなくゆきわたる

有象無象

嗚呼、つまらぬ

永久に続く命と力があるのに

妾の望みは永久に叶わぬ

嘆かわしいこの世に

今こそ願おう

今こそ欲しよう

妾の望みを

今こそ叶えてみせよ

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Re: For Emperor Requiem ( No.16 )
日時: 2009/09/23 17:05
名前: 神威 琉瑠 (ID: zJordqWS)

第十一話;螺旋運命


「なんで、お母さん・・・・」

目の前にいるのは亡き、母

・・・・正確には意識の死んだ母

私が幼いころに、病で倒れた

そして、もう助からないと医師の宣言

悲しかったが、私はそれを受け入れた

お母さんも笑っていた

私が泣けば、お母さんはもっと悲しむ

幼いながら理解していた

だけど、お父さんは<死>を許さなかった

お母さんの反対を押し切り、延命手術を行い、

お母さんの命を永らえさせた

しかし、その代償として、お母さんは意識を失った

お父さんはお母さんの生命維持装置のために、

莫大な金をつぎこんだ

そのお父さんも、去年、過労で死んだ

その後も、保証期間とかいうやつで、

お母さんは歪んだ生から解放されない

だから私の家は私以外誰もいない

今もお母さんは病院で眠っている

・・・・・・はずなのだ

なのに何故?ここにお母さんがいるの?

「礼、こっちにおいで?」

優しい、温かい笑顔で私に手を伸ばす

伸ばすその手はやせ細っていて、

恐怖の対象となっていた

「い・・・いや・・・・」

私は喉からか細い声を出す

体全体が震える

「どうして?礼、好きだったでしょう?

 お母さんにギュウッ、てされるの」

「・・・ぃや・・・・」

「お母さんも好きよ?礼に抱きしめられるの。

 礼の髪、猫っ毛だからすごく気持ちがいいの。

 それで私に可愛く笑って<お母さん>って」

「ゃだ・・・・・・・・」

「ずっと寂しい思いをさせてごめんね?

 もう我慢しなくていいのよ?

 ほら、おいで?礼・・・」

「いやああああああ!!!!!!!!!」

とうとう泣き出してしまった

怖くて、怖くてたまらなかった

「違う!あんたなんかお母さんなんかじゃない!!」

「・・・どうしてそんなひどいこと言うの?

 そんなに私のことが嫌い?」

「五月蠅い!!!!!!お母さんの姿で!!!

 お母さんの声で私に話しかけないで!!!!!!」

「礼は、私が嫌いになっちゃったの・・・?」

「黙れ!!!!消えろ消えろ消えろ!!!!!!

 消えてしまえええぇぇぇぇえええぇえ!!!!」

シ・・・・・・ンとした

暗闇の中で耳鳴りだけが存在を主張する

「・・・・わかったわ。私、嫌われちゃったのね」

・・・・・・・・・・・・え?

「ごめんね、礼。バイバイ」

ハッと顔をあげる


     ポタ

           ポタポタ

   ボタタタタタタ

生暖かい液体が顔の上を滑り落ちていく

真っ赤な、真っ赤な

オカアサンノ、チ

「っいやああああああああああああああああ!!!」

足の下に血が流れていく

お母さんの体が崩れていく

ただの、肉塊になっていく

「いやだ!!いかないで!!お母さん!!!!!」

泣きわめく、無駄だとわかっていても

そんな私をあざ笑うかのような声が、闇に響いた

「キャハハハハハハッ!!!おっかしい!!!

 あんたが消えろって願ったくせにぃ!!!

 願いがかなったら今度は消えないでぇ?!

 笑っちゃう!!!バッカみたい!!!!!!」

聞いたことのある声

声のした方をみるとあの子がいた

銀髪の、美しい少女

「さぁあて?帝の名を携えし哀れな春さぁん?

 あんたは次にどんな運命を望むのかしらぁ?!

 キャハハハハハハハハハハハッ!!!!!!!!」

どこまでも響くその声は、

今の私には酷く、心に刺さった













あんたが願ったんだよぉ?帝の名を携えし春ぅ?

春の芽生えを促す太陽をさぁ?

消してくれって!

それは<罪>だよねぇ?

Re: For Emperor Requiem ( No.17 )
日時: 2009/09/25 02:17
名前: 神威 琉瑠 (ID: sp6Br4Ue)

第十二話;春と冬


銀髪の少女は意地悪く笑っている

私を断罪するかのように

それを虚ろな瞳で見つめている自分がいる

他人事のようにさえ感じられる

「ねぇ、聞いてんのぉ?

 帝の名を携えし春ぅ?」

痺れを切らしたのか、

少女は、私に話し掛けてくる

「ねぇ、あんたが礼なんでしょぉ?

 キャハハハッ!魔女を神って呼んだってぇ!?

 バッカじゃなぁい!?

 魔女は神になれなかったんじゃないのにぃ!!」

尚も笑う少女

それでも私はまだ虚ろに少女を見つめる

少女の返答を聞く迄は

「魔女って言うのはねぇ?罪人なんだよぉ?

 人間には裁き切れないような罪を、

 愚行を犯した者が、魔女になるの!!」

ピクリと目蓋が反応する

瞳に光が戻っていく

「罪・・・・?

 なら、マーシャは罪を犯したから、

 魔女になったの!?」

声をあげる

少女はにやりと笑う

「そうだよぉ。

 アイツも罪を犯した。

 だから魔女に成り果てたんだ」

「・・・アイツも?」

その言葉に引っ掛かる

アイツも、なんて、

まるで少女も・・・・・

「そぅ。アイツも。

 だって、私も魔女だもの」

少女の言葉に胸がざわり、とした

「初めましてぇ。皇 礼様ぁ?

 私の名前はテューリエ。

 人間は私の事を<残酷のテューリエ>、

 とも呼んだし・・・」

次の言葉に、私の鼓動は激しく鳴った

「<冷徹な冬>とも呼んだかなぁ?」

私はただ、目を見開くしかなかった









私と貴方は対なる存在

果たして私たちの役目とは?

Re: For Emperor Requiem ( No.18 )
日時: 2009/09/26 23:49
名前: 神威 琉瑠 (ID: zCJayB0i)

第十三話;古に忘れし己が罪


「冷徹な・・・冬・・・?」

目の前にいる少女、テューリエは頷く

「そう、私は<冬>。あんたと対なる存在。

 だからほら、髪の色も冬っぽいでしょぉ?」

そういって髪を一房取ってみせる

日に照らされた銀雪のようだ

「あなたも・・・・魔女・・・・?」

「うん、そう。魔女。

 でもアイツよりも私は長生きさんなんだよ?

 アイツは新参者だからなぁ・・・。

 <永久のマーシャ>とか言ってるけどぉ。

 かれこれまだ180年程度しか生きてないしぃ」

テューリエは私の隣に座り、髪をくるくる弄る

サラサラで、とても綺麗だ

「長生きって・・・・。

 一体あなたは何年生きたの?」

聞くとテューリエは真顔ではっきりと答えた

「17492年」

「・・・は?」

耳を疑った

「流石にそれは嘘でしょう?」

「魔女は嘘を吐かないっつーの。

 騙しはするけどね。

 だから私は17492年生きたの。

 どぅーゆーあんだぁすたん?」

「・・・・おーけぃ」

馬鹿にされているようで腹が立った

受け答えが変になっているのだが敢えて無視だ

「・・・・魔女は嘘をつかない・・・?」

「うん。嘘つかない」

「ならマーシャは何で私に嘘をついたの?」

「・・・・・・嘘?」

「願いを叶えてくれると言ったわ。

 だけど、私はただの<生贄>だったんだって」

ポツリポツリと話す

それをテューリエは黙って聞いていた

「魔女は嘘をつかない。

 ならマーシャは魔女じゃないのね」

私はそういう

するとテューリエは私をまっすぐ見据えた

「それこそが<嘘>ね」

「・・・は?」

「<魔女は嘘をつかない>。

 言い換えれば<魔女は嘘をつけない>。

 嘘をつけばつくほど人間に近付いていく。

 だから魔女は嘘をつけない。

 ・・・でもね、唯一魔女が嘘つきになる

 ときがあるの」

「・・・うそつき?」

テューリエは私の顔を手で挟み込んで言う

「魔女と対話する時よ」

「魔女と・・・?」

「そう。魔女の暗黙の了解。

 <魔女には嘘つきであれ>。

 お互いがお互いを汚し合うの。

 汚し合うからこそ、人間から遠ざかる。

 それが人間と魔女との違い。

 嘘をつくことが許される瞬間。

 さあ答えなさい、春。

 あんたがそれを聞いたのはいつ?」

「・・・・マーシャが、誰かと話してるとき」

「話し相手はだぁれ?」

「相手は・・・・・・・・・・・」

私の瞳とテューリエの瞳がぶつかる

あの時、あの部屋にいたのは・・・・・・

「・・・・・・・あなた・・・・・・・・・・」

テューリエはにやりと笑った

「だからそれはきっと嘘ね。

 魔女同士が本音を語り合うなんてあまりないから。

 良かったねぇ。春ぅ?」

だんだん腹立つ口調になってきた

「・・・ていうか、あなた魔女なんでしょう?」

「そうだよ。何か文句ある?」

何で喧嘩腰・・・・

「じゃああなたどんな罪を犯したのよ」

「んふふ♪知りたい?」

無邪気に笑うテューリエ

私は適当に頷く

「殺したの」

「・・・・・・・・・え」

その場の空気が凍てつく

「私は、親を殺したの」

私と重なる事実に、目の奥がチカチカした











私は、無意識にお母さんを否定し、殺した

それは<無意識な罪>

私はね、殺意をもって親を殺したの

でもこの罪の名前は<  の罪>

Re: For Emperor Requiem ( No.19 )
日時: 2009/10/24 17:08
名前: 神威 琉瑠 (ID: zCJayB0i)

第十四話;生きた証、死んだ印


「殺した・・・?自分の親を・・・?」

「うん、そうだよ」

テューリエはニコニコ笑ったまま

礼は驚愕で目を見開く

「どうして・・・?」

「知りたい・・・?教えてほしい・・・?」

悪戯な笑みが彼女にはよく似合う、そう思った

「だ、大体!1万年も前に人が生きていられたの?

 無理なんじゃない?」

そういうと呆れたように溜息をつかれた

私は大して呆れられるようなことはしていない

「私は<意識>が存在した時代から数えてる。

 肉体の有無問わず、<意識>があったのは

 確かに17492年前からだったの」

・・・スケールが大きすぎはしないか?

「肉体が存在したのは3000年前だよ。

 そこに<人間>としての私が存在するなら

 私の<家族>だって存在するでしょ?」

「・・・・1万年前から意識があったって・・・。

 貴方は一体何者だったのよ」

すると、彼女は、さみしそうな顔をした

ほんの一瞬だったけれど

「私は信仰心によって存在していた意識、精身体。

 人々の信仰の対象だった」

「え・・・それって・・・」

「そう、私は神だった」

彼女は目尻を下げて話し始めた

「私は神で、信仰心によって存在を保っていた。

 けれど所詮は人間。信仰心はいつしか消え去った。

 神としての存在を保てなくなった私は、

 人間に落とされた。

 そして父、母、妹のいる家族になった」

嗚呼、何故そんなにも哀しみに満ちた目をするの

「妹はとても大人しく、人に平等に優しかった。

 可愛くて、愛しい存在だった。

 けれど・・・死んでしまった」

「死んだ・・・?病気か何かで?」

小さく頭を振るテューリエ

「私の両親が殺した。人身御供として。

 金のために殺したのよ。

 その時、自分がどれだけ無力か悟った。

 そのときに、溢れた憎悪を止められなかった」

心臓がドクリと鳴る

「気づけば両親は死んでた。

 原型を留めていなかった。そして、周囲の人間に

 殺された」

「・・・・・・・・・」

「神であった私が罪を犯した罰はとても重い。

 そして私は永遠を生きる汚れた魔女になった。

 ・・・・・っていうのが私の経歴?ね」

何故、こんなにも胸が苦しいのだろう

彼女を見ていると目頭が熱くなった

「今の私が生きた証ね、きっと。

 死んだのは私であって私ではなかったから。

 ・・・ねぇ、礼」

いきなり声をかけられて肩が跳ねる

「あんたは生きたといえる証はある?」

「・・・ない」

「そう、ならまだまだね。

 人間としても、まだ生き足りない、あんたは」

そうね、と言い返した気がする

生きた証、死んだ印、なんて

考えたこともなかった

私が生きた証って、なんなんだろう















自分が知らないことを

他人が知ってるわけないじゃない

知ってるっていうんなら

ソイツは大嘘吐きだわ

Re: For Emperor Requiem ( No.20 )
日時: 2009/11/12 21:47
名前: 神威 琉瑠 (ID: zCJayB0i)

第十五話;帝の真の姿


「・・・ところで礼ぃ。
 
 あんたにずっと聞きたかったんだけどぉ・・・」

初めて私の名を呼んだテューリエに

ほんの少し驚く

「・・・何?」

テューリエがニコリ。ほほ笑む

「あのさぁ。

 あんた疑問に思わないわけぇ?」

「だから何に?」

ほほ笑みから一転。悪魔の笑みを見せる

「あんたの愛しのマーシャはさぁ。

 どこいったのぉ?」

その言葉にハッとする

「あ、マーシャ!!」

立ち上がろうとする

ゴッッッ!!!!!!!!!!!!

「っぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

頭を打った

何故、天井など、先ほどまでなかったというのに

「あれぇ?もう終わりかぁ」

テューリエはクスクス笑う

「おっ、終わりって?」

「閉鎖空間の抹消、無限の間の消失、

 闇世界からの脱却、無音の隠滅、そして、」

テューリエは礼の唇に指をのせる

「永久からの解放・・・・。

 だから言ったでしょぉ?

 あんたは<春>だってさぁ・・・・。

 キャハハハハハハハハハハハハッ!!!!!!」

テューリエが手を翳す

その瞬間、辺りが光に包まれる

そして、声が聞こえた


トコシエ カラ ノ カイホウ ソレコソ ガ

ワラワ ノ ネガイ・・・・・・・・


「っ・・・マーシャ・・・?」

目の前の、光景、

「何で・・・・マーシャ・・・」

真っ白なドレスに、真っ白なベール

真っ白な、胸元の薔薇

「きひひひ、さぁて礼・・・いぃや・・・」

真っ黒なスカートパニエに、真っ黒なケープを

身にまとったテューリエが囁く

「帝たる春、我、冬と共に永久からの解放を」

「永久・・・・から・・・・誰を・・・?」

冬は笑う

「勿論、180年の時を生きた、」

「・・・・まさ・・・・か・・・・・」

「<永久のマーシャ>を」

その言葉が響いた時のマーシャの顔は

ベールで見えなかった











春と冬

死と生

呪縛と解放


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