ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ファンタジー・ワールド!
- 日時: 2009/10/30 15:35
- 名前: 魔女 (ID: ZQ92YvOU)
ただいま新型インフルエンザにかかっております、魔女です。
暇なので書いてみようと思ったのですが……。
よければ読んでください♪
- Re: ファンタジー・ワールド! ( No.20 )
- 日時: 2009/11/07 20:47
- 名前: 魔女 (ID: rRtxGeJP)
——7章——
「で、お前どうすんのこれから」
俺は、傷の手当をしてくれるアリスに言った。
「どうするって——もちろん、復讐をやめさせるわ」
なんのためらいもなく、アリスは言った。
「だけどよぉ、クラウスの話聞いたろ。お前は魔法族なんだから、やっぱり魔法族のみんなといた方が——」
「だから、何よ。あんたあたしに殺されたいの?」
「なっ、まさか!そんな」
「復讐だなんて、あたしは絶対いや。悲しいじゃない。そんなことしたって、なんにもならない。元々、人間とは仲良かったのに……」
「だけど、仲間を封印——つまり、殺すほうが、もっと辛いんじゃないのか?」
アリスはムッとして、俺の腕に巻いていた包帯をきつく結んだ。
「いぃってぇ!なにすんだよ!」
「あんたこそなによ!あたしはね、あんたが生まれるずっと前から、この事を決意していたのよ!みんなを殺すんじゃない、みんなを守るためよ!魔法族のみんながまた復習なんてしたら、もっと残虐な手で、人間に殺される。人間からは、モンスターと同じ扱いをされるのよ!あたしはそんなの絶対いや!」
「…………」
アリスは、一体どんな気持ちなんだろう。みんなのためだと言っても、結局はみんなを裏切る事と変わらない。魔法族のみんなからは裏切り者とされ、人間からは、魔法族の者とされ、敵にされるのだろうか。彼女は、それをわかっていて、復讐をやめさせるのだろうか。
それより、自分ひとりで、魔法族の者みんな、倒せると思っているのだろうか——。
俺は、普通の人間だからわからない。でも、彼女は魔法族なのだ。それを望んでいなかったとしても、魔法族として生きて、そして魔法族として封印された。そして、魔法族としてこれから戦おうとしている。
俺って、結局は、本当に弱いんだな、と思った。おれなら、魔法族のみんなと一緒に復讐するだろう。それが嫌でも、みんなについていかなくてはと思うのだろう。
——人間だから——。
- Re: ファンタジー・ワールド! ( No.21 )
- 日時: 2009/11/07 22:09
- 名前: 魔女 (ID: rRtxGeJP)
その頃、アリスはまた、別のことを考えていた。
あの時レンがいきなり強くなり、あのクラウスの右腕を切り落としたなんて——。
普通の人間じゃ、まずありえない。
クラウスは、魔法族の中でもかなり強い。あの火は、破られた事ないのに。それをコイツは、いとも簡単に……。
それに、あの剣は何か魔力が宿っている。
コイツ——絶対、普通じゃない。なにかあるわ。そう確信した。しかし、全く自覚がないらしい。
自覚がないなんて、危険だわ。アリスは身震いがした。自分の力を知らずに、それを使って、誰か殺してしまったら——?いや、その前に、レンを利用しようとするヤツが、いずれ出てくる。
レンを、このままにしてはいけない——アリスは確信した。
- Re: ファンタジー・ワールド! ( No.22 )
- 日時: 2009/11/07 22:46
- 名前: 魔女 (ID: rRtxGeJP)
「これで二度目だけどさ」
あたしはいきなり口を開いた。
「あたしと一緒に来て」
「……」
「断るとは、言わせないわよ。あなたはあたしと来なきゃいけな……」
「わかった」
レンは意外にも、そう言った。あたしは口をあんぐり開ける。
「お前と一緒に、魔法族の奴らの復讐をとめればいいんだな」
「え……まぁ、そうだけど……いいの?」
「あぁ、お前一人じゃ、危ないしな。あ、俺も弱いけど、ハハッ」
そう言って、レンはニッと笑った。あたしは一瞬、ドキッとした。
封印されていて、ずっと味わった事のない感覚——。懐かしく、暖かい気持ち。
あたし、なにやってんだろう。あたしは魔女なのよ……。なぜか、罪悪感を感じる。
「本当に、いいのね?親とも、あえなくなるかもしれないし、あなた自身が——」
「死ぬかもしれないってことは、わかってるよ。でも、お前がやらなきゃ、人間達が何人も殺されるんだ——。俺は、やっぱ人間だから、怖くなって逃げ出したくもなるし、正義のヒーローにはなれないかもしれない。けど、俺一人が死んで、何人もの人が、幸せに生きられるなら、いいじゃん?ってか、カッコいいし
、ナハハッ……」
「……」
正義のヒーローにはなれない、か。
あたしだって、正義のヒーローにはなれない。結局は正義なんてないんだから。あたしが今助けようとしている人間だって、あたしを殺そうとしたのに、あたしは助けようとしている。これって、正義のヒーローって言うか、ただのバカなのかもしれない。
でも——とあたしは思った。コイツ、なんかイイ奴じゃん?
「でも、旅になるんだよ?しばらく帰れないよ?」
着てほしいのもやまやまだが、一応聞いておかなくてはと思った。
「旅も、一回やってみたいと思ってたし、いいよ」
はぁ〜、なんてイイ奴!あたしは感動した。
「いいの、ね?」
「あぁ、なんか、俺もお前を一人にしちゃいけない感じがするんだ」
あたしは顔が熱くなるのを感じた。
「じゃあ、さっそく行こう!魔法族の復讐を止めに!」
あたしは、カッコよく言ってみた。旅のはじめは、やっぱりカッコよくしないと。しかし、レンはちょっと微妙な顔をした。
「旅をする前に、ちょっといいか?」
「え?なに?」
「いったん家に帰って、母ちゃんに報告を……」
「……」
一気に体が冷めた。
ぜんっぜんカッコよくない!
- Re: ファンタジー・ワールド! ( No.23 )
- 日時: 2009/11/08 12:36
- 名前: 魔女 (ID: rRtxGeJP)
——8章——
結局俺達は、俺の家に戻る事になった。
アリスはかなり不満そうだったが……。
「ねぇ〜まだなの?」
「早く行かないと、みんな殺されちゃうよ〜?」
と、歩きながらずっと俺に文句を言ってくる。そんな文句に、俺は我慢強く耐えた。
「ねぇ〜、もぉ〜早く……」
「わかったわかった。ほら、着いたよ」
俺が指したのは、ごく普通の村だった。
レンガ造りの建物が綺麗に並び、噴水のある広場で子供達がはしゃぎまわっている。こう見ると綺麗な村だが、一部、壊れかけた建物などがあるので、やはり裕福な村とは言えないだろう。
いつもの風景だった。まだ、魔法族のことは知られてないのだろう……。
「お前が魔女だと知れるとまずいから、またその帽子取れよ」
アリスを木の陰に隠し、俺は言う。
「えぇ〜、また取るの?」
「当たり前だ。本当はその黒い服も脱いだほうがいいんだが……」
「エッチ!」
アリスは怒ったように、乱暴にとんがり帽子を取って俺に渡した。
「なっ……エ、エッチって言うなぁ!」
先に村に入ろうとするアリスを、俺は慌てて追いかける。魔女のくせに……。
「よう!レン!モンスター退治は出来たか?」
村に入るなり、大柄な男が話しかけてきた。
「どうせ結果はわかってんだろう?」
「はっはっはっ!まぁ、お前がモンスターをやっつけられんなら、俺だってもう何匹も倒してるだろうよ!……ところでお前の後ろについてるそのお嬢さんは誰なんだい?」
ドキッとする俺達。男はニヤァっと笑った。
「まさか……モンスター退治サボってナンパなんて……」
「う、うるさい!!」
俺は慌てて男から逃げた。アリスがあきれたように言う。
「別にナンパくらいで怒んなくてもいいんじゃない?って言うか、その方がこの村に居やすいし」
「俺が迷惑なんだよ!俺が女の子をナンパしてきたなんて、村のみんなに知られたら……」
ゾーっとする俺。
「まだまだガキね。そんなこと怖がって……男はもっと堂々としなさいよ」
「お前の時代とは違うんだよ!」
アリスにあってから、嫌な事ばかり起きてる気がする……今日は厄日かな。いや、今日からはずっと厄日かな。
「ほら!早くあんたん家行くよ!」
アリスがそう言って俺の背中をパンと叩いた。
「いってぇぇぇ!!」
「え?あ、まだ治ってなかったのね」
アリスはどーでもよいと言う風に、スタスタといってしまった。
魔女だ。やっぱり魔女だっ……。
- Re: ファンタジー・ワールド! ( No.24 )
- 日時: 2009/11/09 20:15
- 名前: 魔女 (ID: rRtxGeJP)
「ねぇ〜、レンの家って、まだなの?」
振り返るたびに言うのはこの言葉ばかり。
「まだ村に入って少ししか歩いてないだろ〜?」
「あたしの時代とは違うの。村はもっと、もぉ〜っと小さかったわ」
「知るかよ……」
げっそりと、俺はつぶやいた。
「言っとくが、俺の母ちゃん怖いんだぞ……」
「あたし関係ないもーん。あんたが怒られるだけでしょ〜」
そうやって、前も見ずに歩くアリスに、俺はストップをかけた。
「バカ!!前っ、前ぇ!」
「へ?」
アリスが前を見ようとしたときには、俺の母ちゃんの体にドンッとぶつかっていた。
「いったぁぁい!何ぃぃ?」
しりもちをついたアリスに、母ちゃんがドスドスと近づく。
「あんた!人にぶつかっといて、謝ることもできないのかい!?」
そう言って、アリスを子猫のように、えりとむんずとつかみ、持ち上げる。
「……?」
あまりにもいきなりだったので、アリスはボーゼン。そして俺は、ため息をついた。
やっぱり……なるとは思ったんだがな。
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