ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ヒストリエ ラスト ナイト2
日時: 2009/11/02 18:16
名前: nothing (ID: 0W9rRz2p)

どうかしましたか?」
 「いえ、私の自給は500タムなんですが。どうもお客様が余り来ないときは本当に長い時間に感じられまして。なんというか暇なんですね。この暇な時間がなんと私の自給の四倍で売れるなんて。バイトしてるのもアホらしくなって…」
 彼女は世の中はなんと無常なのか。と小さく不平を漏らし。それではと言って立ち上がって手続きをする場所へとエルトを案内し始めた。エルトが入った刻売りの店は、小さな店だった。現在の刻売りは、法律などがあってどうやら正式な資格がないと自由に売り買いすることが出来ないのだが、こと最近においてはどうやら違法な店が出回り始めたせいか。規制は強まるばかりである。
 「ところで最近のニュース見ましたか。色々なところで動物の刻目当ての殺人が起きてるの」
 「あああ、最近この街の界隈で起きているとかいう事件ですか」
 最近起きている事件とは、動物を殺して、その生命が尽きるまでの時間を商品として売りとばすことを目的としたもので、其れは人生や、動物の進化の過程をそのまま奪ってしまう可能性があるものである。
 エルトが今購入した時間はほぼ無限といってもいい生命の源である宇宙の闇の中から、少しばかりの時間を商品として売りさばいているもので、これと言って他者にたいする犯罪行為などにならない。いわゆる合法的に売買されている時間であり、この売りさばかれている最小の単位が一刻ということになる。この闇の刻については購入した人でないと使用法や、どういった効果があるかは分からなかった。
 でも動物の時間を買うことはそれとは違っていた。例えばどこかの熱帯雨林にいるようなジャガーやサルの刻を買うとする。この刻は食べ物に例えると生物と同じで、その生物の生命を奪い取ってから時間を抽出するもので。だから少し自分の目や、耳、鼻といった感覚器官をその生物の発達過程や進化段階の経験地を購入者に対して追加することが出来るのである。そうすることで人間が猫並みの瞬発力を持ったり、犬のような聴力を持ったりすることが出来た。中には最近可愛いからと、猫耳なんかをつけたりしている人がいるが、エルトはあまりその手の人体改造はしたくなかった。それに法律では動物同士の時間の混合は許可されているが、人間にたいする刻を伴う能力値は外見だけに限られていた。
 「最近じゃ、とくに猫なんかが人気みたいだし。中には犬の尻尾とかつけたりする人がいるみたいですね。DNA配列を変えた人工的な生命精製は違法ですし。時間を少しばかり買えば、アクセサリー感覚で自分の好きな部分をつけたり出来るんだから。私もやってみようかなあ。とか思っちゃったりしますね。ほら、ペルシャ猫の耳とか可愛いい。とか思いませんか」
 店員はエルトに対してどうかなあ。という風に笑ってみてから、両手で耳を作ってひょこひょこと動かした。
 「似合うかもしれませんね。それにその服装ともあうと思いますよ」
 彼女は少し悩むしぐさをしてから、でもこの安い自給ではね。といった。
 「自給のわりに結構バイトの内容としては責任が重いものなんですが、それでも楽だからやってるんですけどもね…。うんん。少し猫の刻については考えてみよう…」
 エルトと店員は話しながら、ランタンの小さな灯りに照らされた店内の廊下を歩いて、やがて「管理は厳重に! 空けたら閉めること」 と書かれた扉へと突き当たった。

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Re: ヒストリエ ラスト ナイト2 ( No.5 )
日時: 2009/11/02 19:30
名前: nothing (ID: 0W9rRz2p)

書いたやつ貼ってるだけなんで、また貼ります。

Re: ヒストリエ ラスト ナイト2 ( No.6 )
日時: 2009/11/02 19:35
名前: 咲 (ID: Dscjh0AU)

はい。

待ってますね(^^♪

続き頑張ってください

Re: ヒストリエ ラスト ナイト ( No.7 )
日時: 2009/11/02 20:11
名前: nothing (ID: 0W9rRz2p)



エルトはトキの案内に従って、そちらのほうへとゆっくりと歩き出す。
エルトがトキのいる場所へと辿り着いたとき、ほんわりとした赤い光が彼女と彼を照らし出した。光が放たれている壜は、人の背丈のおよそ二倍はある。そして、何故かその壜? のちょうど人の頭上の高さぐらいのところに小さな小窓のようなところがあった。
 「エルトさん、ちょっとここから中を見てください」
 トキはエルトにここですよと言うように、くりくりとした目を少し見開いてこちらを見てくる。それから早く早く。というように彼女は急かすようにエルトに少しヒソヒソ声で呼びかけてきた。
 エルトは言われるままに、大きな壜の小窓から中を見てみた。
 「…………」
 エルトは少しの間、壜の中の光景に吸い込まれるように見入ってしまった。大きな壜の中には、小さな星のような、何かガス雲のような、そういった宇宙が広がっていた。それが宇宙だなんて一言では言えない。でもそこには無数の星などというものは多くはなく。だけども小さな光の粒が点々と一面に広がっていた。
 「すごいでしょう。綺麗でしょう」
 「…………」
 エルトはトキの言葉に、返す言葉が少し見当たらずにただその世界を見ていた。ただいつもは手続きをするだけで、その光景を見たのは初めてだった。
 「之が今回、エルトさんが購入する、闇の刻の源ですよ。ようは闇の中の闇であり、総ての始まりである宇宙です。」
 「宇宙ですか? 」
 トキは少し、そう質問されてううん。と悩んでいたが。そうですねえ。と言ってから。
 「之が何処の宇宙なのかというとですね。私たちが住んでいる世界があるこの惑星とはまた、別の世界にあるらしいんですよ」
 「別の惑星というと、確かパープルチューブの先にある惑星でこの惑星とは別の世界にあるとう場所ですか?」
 トキは、なんだ。結構知ってるじゃないですか? というように、少し残念そうな表情を見せたが。また説明し始めた。
 「パープルチューブというのはですね。ようするのところ、現在私たちが住んでる次元とは別の、灰色の世界へと繋がるものなんです。この灰色の世界というのはですね。蒼い海の下にもぐった世界だと思ってください。そうすると、そこには海の中の世界が広がっているんですよ。その中には私たちと違って、鰓を使って生活する魚たちがいるんです」
 「それで、その世界が私たちとは違う灰色の世界だと?」
 エルトがそう質問すると、トキは、その通り。と、言ってから話を続けた。
 「つまり私たちが生きてはいけない世界が、エルトさんが言ったパープルチューブの先にある世界なんです。灰色と、紫の掛け合わせというと、なんだか変な気もするけども。ようは私たちが生きてはいけない世界が、この壜の中にある世界だと思っていただければいいと思います」

Re: ヒストリエ ラスト ナイト ( No.8 )
日時: 2009/11/03 11:15
名前: nothing (ID: 0W9rRz2p)



エルトは頷いた。其れから、また窓から小さなその灰色の世界と呼ばれるもの性質を眺めてから、そう言えば、なんだか、どこかで見た光景に似ている。それでも何故かそこがとても今の世界とは別の世界にある、或は別の次元にあるような、そういった不思議なものに思えた。それは本で読んだ宇宙や、刻の基本的な購入入門書や、少し真面目な学術書よりも、そこに現実に見ている光景のほうがとても神秘的な境地だからだった。まるでどこかの空想世界の本を読んでいるように。
 「でも、何故か、そこから抽出される刻は、この世界でも通用するんです。だから、どんなことにでも通用する刻として闇の刻は一般的に通用してるんですよ」 
 エルトは購入入門書に書いている通りだと思った。たしか、植物以外の生物の生態的な変異に対しての使用のみ禁止される。と、法律にはあった。それは物理的なものにたいしては何にでも通用するということだ。もっともおこってしまった出来事や、過去の出来事にたいしての関与は禁止されていて、現在から未来にたいしての出来事にのみ適用されるとのことだ。刻の使用方法はまちまちだが、それらは基本的には時間の有効活用という方向の場合が多い。今の時代は時間がほしくてたまらない人間が非常に多いのだ。たとえば、今の世界では、警察というものがいない。だから、市民総警察法というのがあって、事件が発生すると、市民がその犯人を探し出してその被疑者を裁きの場へと連れて行くというシステムがとられている。そういうわけで、その裁きの場で活躍する裁定者と呼ばれ。そのものはザウスと呼ばれ、その被疑者のアリバイなどを操作するために刻のような時間を自分のものとして、活用することが出来るアイテムが重要視されていた。もっとも、そのザウスとはかなりの難関を通らなくてはならないものであるのだが。
 「どうしてなんでしょね。何故、この世界に通用するのでしょうか。それはまた謎なのです。エルトさん。それでも時の解明者たち、いわゆるこの宇宙のなぞを翻訳する人達は、どうにかしてこの謎を解こうとしているようなんですよ…。私は実のところ、この小窓の向こうに広がる世界を見ているだけで満足なんだけど…」
 トキは、とても憂鬱そうな顔を蒼い闇の中に浮かべている。そして、トキがこの世界をあまりいじって壊してほしくないと、言った。それは、トキが今生きている時間の中で感じているものと変わらないもの。小さな壜の中にある宇宙を解明してしまうことにとても嫌な気持をいだいていたから。きっとその世界にトキは自分なりの世界を持っていたから。ただ、それだけのことだったのだと思う。そう、トキは思っていたのだろう。
 トキはそんな顔を少し緩めてから。エルトのへと目を向けてから、舌を出した。なんだそれ。と、エルトは思ったが、とてもチャーミングだと思った。それからトキは、それに、と話し始めた。
 「それに私、この世界が一年の終わりに輝く、最後の夜を見てみたいんですよ。この宇宙が万華鏡みたいに、一面の光で埋め尽くされるんです。あ、そうそう、説明し忘れてましたけども、この星の輝く数が刻のレートを決める基準なんですよ」
 「その一年の終わりに見られるというのは、ラスト・ヒストリエのことですか」
 エルトはトキが説明しているさなかにそう聞いた。

Re: ヒストリエ ラスト ナイト2 ( No.9 )
日時: 2009/11/03 18:38
名前: nothing  (ID: 0W9rRz2p)



トキは、え。と、言いい。それからエルトのほうへ可愛い顔を向けると、ニコニコとした顔を浮かべてから少し指を立てた。
 「エルトさん、この世界には色々な星にまつわる神話があるの知ってますか?」
 「ええ、少しなら知っています」
 「その神話が、この壜の中にある宇宙の星たちにもあるんです。それは、解明者たちがこの世界を調べ始めたときからのものではないんですよ。たまたま人々がこの世界をみてそう思われたことが口承伝みたな形で伝わり出来上がったものなんですよ」
 エルトは、少し思い当たる節があると感じた。トキはさっき、この世界のことをあまりいじってほしくないといった。それは多分、今までに聞いてきたこと、それに人々がその世界を見て様々な思いを抱いてきたことが、科学という無機質なものによって理論で片付けられてしまうことが嫌だったのだろう。そう思うと、彼女はどこか冷たい世界で心を躍らしているように感じられた。けして凍ってしまうことはなけど、少し寂しさと、暖かさが感じられるものだ。
 「その話というのがたくさんあるのだけども、その中でも一番有名なのが最後の夜の話なんですよ」
 「さっき言ったやつですね」
 トキは、少し口を尖らせてすっぱそうな表情を見せ、出し惜しみはずるいですねと述べた。
 「エルトさんは、その話の中で、星が笑ってる。というフレーズを聞いたことがありますか? 私はそのフレーズがとても好きなんですが」
 壜の中の光が一つだけ強くひかった。不思議なことに壜の中の宇宙は、外から見ると屈折していて。ただの赤い光を放っているようにしか見えないのに、近づいてみると渦巻いている何かが見える。それに、小窓から見ると視界がとてもきれいに天窓から覗くようにみえるのだ。
 煙突の中から見たらきっとこういうふうに天界が見えるのだろうと思った。
 「一年、といってもこの灰色の世界の一年の終わりというのは、私たちがいる世界の大晦日とは違って、宇宙の死なんだそうです。だけども決してその死を悲しむようなことはないんだと、有る人が言ったそうなんです。それは最後の夜に幾臆の星が輝きを放って死んでいく様なんだそうですけども、それが何故かその人には笑ってるように見えたんだそうです。それって不思議なことですよね」
 トキはそう言ってから、両手の人差し指と親指で三角を作り、そこから片目を瞑ってこちらをのぞくように見た。それは、何? とエルトは聞いた。
 「之は、この世界の縮図ですよ。つまるところ、あれ、よくわかんないな。でも私はそう思うんですよ。この三角ぐらいがちょうどいいんですよ」
 「そうなのか…」
 「お客さん、真顔でなやまないでよ」
 少しおどけたその表情が、またエルトの心を和ませた。


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