ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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Fate of Chains-運命の鎖-
日時: 2009/12/05 16:52
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

〆御挨拶
どうもこんにちは、某さんです。
前カキコでこの小説を少し書かせて頂いてたのですが、色々と住み着いているサイトで修正してリメイク版として、こちらにまた持ってきました。
今作は不思議の国のアリス&鏡の国のアリスをモチーフとした、ハイ・ファンタジー系のダークファンタジー小説です。つまりは異世界で繰り広げるダークファンタジー(ファンタジーの方に近いかも)小説です。
まあ相変わらず上手くはないんですが、某さんなりに頑張るので宜しくお願いします。

※荒らし退散。
※どっかの某漫画と似てね?って方。作者自覚してるんで、どうか心の奥に仕舞っておいて下さい。というか不思議の国のアリスモチーフにしてる時点で、少しくらいは被るんでs(ry
※アドバイス歓迎です。俺駄文なので。
※ドイツ語やらフランス語やらが、わいわいと出てきます。分からない場合は某さんに聞いて下さい。またフランス語の使い方がいい加減です。何か正しく使うと語呂が悪いからという某さんの都合←

〆目次
Episode00 Secret-始まりの時- >>1
Episode01 Temptation-ウサギの誘い- >>2
Episode02 Rabbit Hole-悪戯ウサギの通り穴- >>3
Episode03 Black and Black-黒服の二人- >>4
Episode04 Parallel World-異世界と少年- >>7
Episode05 Craig-黒狼(ルー・ノワール)- >>8
Episode06 Discussion-支部長命令- >>9
Episode07 Alice of the Game-少女の退屈しのぎ- >>10
Episode08 Magic-少年への課題- >>12
Episode09 Shadow-光の裏側- >>16
Episode10 Examination-試験官との対面- >>18
Episode11 Faucille de mortel-死神の鎌- >>21
Episode12 Madness Red-狂乱の赤- >>25

〆訪問者様
(( `o*架凛様

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Re: Fate of Chains-運命の鎖- ( No.1 )
日時: 2009/12/01 18:45
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

Episode00
Secret-始まりの時-

「……で、予知ではこうなったわけだ」

 大きい屋敷の一室、三人の人間が何やら内密な話をしていた。一人は長い金髪にエメラルドのような瞳を持つ少女、一人は眼鏡に灰色の髪を束ねた長身の男。一人は銀髪に透き通った蒼い瞳を持つ少女。
 銀髪の少女の言葉に、灰色の男が口を開いた。
 
「へえ、あの白兎(ホワイト・ラビット)自身が動くとはねえ……有難うレイシーちゃん」
「妾にちゃん付けをするなと何回も言っておろう。……まあ、この予知も当たっているか自身が無くてのう。妾の予知は、白兎に邪魔されているからな……」

 銀髪の少女——レイシーは、「はあ」と溜め息をついてキコキコとロッキングチェアを揺する。
 レイシーの言葉を聞いて、金髪の少女も口を開く。

「大丈夫だとは思いますがね。最近の白兎は、何やらこそこそと準備を始めているようですし……。まあ、あのゴキブリウサギさえ邪魔しなければ、副支部長の予知は絶対ですから」

 灰色の髪の男も「うんうん」と同意するように頷く。

「そうそう、私の愛しのルチアちゃんの言う通り……ぐふぇっ!」

 男の恥じらいのない言葉に、金髪の少女——ルチアがすかさず蹴りを撃ち込む。蹴りは脛にヒット。「弁慶の泣き所」など言われるところに蹴りを撃ち込まれれば、さすがに痛い。男はこれには慣れているらしく、苦笑しながら脛をさする。
 そんな男を余所に、ルチアは話を続ける。

「万が一の事がありましても、私が行けば問題ありません。速攻で白兎を抹殺します」
「ルチアちゃん……殺すんじゃないんだからね? 僕たちは白兎を拘束するんだからね? そこ分かってる?」
「五月蝿い黙って下さいロリコン支部長」

 男の突っ込みも軽く受け流し、しかも毒舌を吐き捨てるルチア。男はこれも慣れているらしく、苦笑で受け止める。というか苦笑というよりは、にやけているように見えるのだが。
 ——此処までいくとこいつもいよいよマゾだな……。
 レイシーはふとそう思ったが、心の奥で留めておいた。

「さて、話を戻すとしよう。私達の目的は白兎を拘束し、此処に連れてくる事だ。で、それなんだけど……」

 男はちらっとルチアを見る。ルチアも分かっていたようにこくりと頷く。

「んじゃ緊急命令って事で、ルチア=フェデリーチ。お望み通り白兎の拘束を頼むよ。ただし……」

 男はくるりと反対方向のドアを見る。するとそこには、いつの間にか一人の少年が立っていたのだ。レイシーも驚いたように少年を見る。
 ルチアは少年を見て顔を歪めた後「やっぱりか」とでも言うように溜め息をつく。

「監視係としてクレイグ。ルチアが白兎を殺さないように監視するのと、一緒に白兎の捕獲、頑張ってね」
「はいはい、メンドくせーけど……。支部長命令じゃ仕方ねえな」

 クレイグと呼ばれた少年はひらひらと手を振る。そしてちらっとルチアを見た後「チッ」と舌打ちをした。ルチアも快く思っていないようで、クレイグを殺意のこもった眼で睨んでいる。どうやらお互い仲が悪いようだ。
 こんな空気がいつまでも続いても仕方無いと思い、男がこの空気を終わらせるように口を開いた。

「じゃあ、いってらっしゃい」

 ただ一言、そう言った。
 男の言葉に二人は一礼した後、静かに部屋を出て行った。

Re: Fate of Chains-運命の鎖- ( No.2 )
日時: 2009/12/01 18:46
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

Episode01
Temptation-ウサギの誘い-

 <おいで、おいで、こっちに……>

「ん……?」

 何か聞こえた気がして、白髪に蒼と赤のオッドアイを持つ少年——セシルは後ろを振り返る。だが此処は森。セシルの視界に映っているのは、うっとおしい程の木々だけ。聞こえた声は優しげな青年の声だから、セシルは勿論、今一緒に此処にいる女性でもない。
 きっと空耳だったんだ、セシルはそう結論付ける事にした。
 <おいで、おいで、セシル=エヴェレット……>
 しかしまた何か聞こえる。セシルの名を呼ぶ声が何回も繰り返し、繰り返しエコーのように聞こえてくる。それも耳からじゃない、テレパシーのように直接頭に響いてくる。
 ——誰なんだろう……僕を呼ぶ声は。
 声が段々と、セシルの頭を圧迫するように重々しく響く。
 ——駄目だ……意識が遠のいていく……。

「セシル? どうしたの?」

 そこを間一髪、金髪に赤い瞳の女性——シャーロット、通称ロッティの声でセシルはハッとなって意識を取り戻した。
 シャーロットが読んでくれなかったら、セシルはどうなっていたことか……。思わずホッとなる。
 そういえば今の声は何だったのか。頭に響いてきた声が何かを考えてみても、まったく分からない。
 何やら考え込んでいるセシルを心配したのか、シャーロットがセシルの顔を覗き込む。

「いや……何でもないよロッティ姉さん」

 そう言ってはぐらかした。何でもなかったわけじゃない。が、頭に響いてきた声の事なんて言ったところで、答えが見つかるわけでもない。

「そう……。あ、そうえいばそろそろお昼ね。メリッサがお昼を用意して待っているわ。お屋敷に戻らないと」

 そういえばもうすぐお昼なんだな——セシルは半ズボンのポケットから、懐中時計を取り出す。時計の針は1時を指していた。
 ——メリッサはもうお昼を用意して待ってるんだろうな……。
 セシルの家はエヴェレット家という大貴族で、今いる森も実はエヴェレット家が所有している。
 そしてメリッサとはセシルの小さい時から、そのエヴェレット家に仕えているメイドだ。けれどセシルやシャーロットは、メイドとしてではなく友達として接している。
 その友達を待たせては悪いと思い、セシルは屋敷に戻ろうと思った。

「うん、戻ろうか」

 懐中時計を閉じ、帰ろうと屋敷の方向へと歩き始めたその時、いきなり激しい頭痛に襲われた。
 <行っては駄目だよ……。セシル、こっちに……>
 だがそれを邪魔するかのように、またあの声が響いてきた。しかも今のはさっきの声よりも、ずっと重々しく頭に圧し掛かってくる。

「……姉さん、ちょっと先に帰ってて。僕も後ですぐ追うから……」

 最初は「駄目よ」と反対したシャーロットだが、セシルが「いいから」と言うと、心配そうにセシルを見ながらも、屋敷の方へと帰って行った。
 シャーロットがいなくなると、先程の頭痛は何とか治まったが、まだ声は聞こえる。
 ——何なんだろう、この声は……。
 始めのうちは早く治まってほしいと思っていたセシルだが、声が聞こえてくるうちにある事に気づいた。頭に響いてくる声に、どこか懐かしさがあることを。
 <早くこっちに……>
 頭に直接響いてくるから、どこから聞こえているのかは分からない。
 でも気づけばセシルの身体は自然と歩き始めていた——この先に声の持ち主がいる気がして。
 自然と動く身体に従い、辿り着いた場所には爽やかな雰囲気の一人の青年がいた。頭に白いウサギの耳の付いているミニハットをのせているという、少々変わった外見を除けば、セシルより何歳か年上のごく普通の青年だ。

「やあ。随分と時間が掛かったね、セシル=エヴェレット」

 眼前の青年は、にこりと笑みを浮かべて挨拶をした。
 ——ああ……この声、さっき僕を呼んでいた声と同じだ。

「え……えっと、こんにちは」

 いきなり自分の名前を呼ばれ、途惑いつつもセシルは挨拶を返した。
 一つ頭に引っかかる事があった。それは何故、初対面の青年が自分の名前を知っているか——という事だ。頭に手を当て考えてみるが、一向に分からない。

「何で初対面のオレが、君の名前を知っているか……でいいのかな?」

 セシルはその言葉にビクッと肩を震わせた。何故分かったのか、それとも単にセシルが分かりやすかっただけなのか……。
 セシルの反応を見て、青年はにこりと微笑した。

「図星のようだね?」

 一瞬、ほんの一瞬青年の姿が消えた。そして一秒も経たないうちに、青年はセシルの目の前にいた。
 そんな馬鹿な……青年とセシルの間には、10mもの差があった。これではまるで瞬間移動だ……。

「答えは簡単、オレが君のことを知っているから。それだけだよ」

Re: Fate of Chains-運命の鎖- ( No.3 )
日時: 2009/12/01 18:46
名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)

Episode02
Rabbit Hole-悪戯ウサギの通り穴-

 *

「まったく、何で俺がお前と一緒の任務なのか……。ついてねえな」

 クレイグが独り言のように、ルチアに対しての愚痴を吐く。
 様々な次元と繋がる巨大な穴——通称『ウサギの通り穴』(ラビット・ホール)の中に、ルチアとクレイグはいた。
 何故、そんな穴の中に仲の悪い二人が一緒にいるかというと、彼らにはある任務がかせられていた。

「知りませんよ。少なくとも白兎捕獲は私一人で充分でした。なのに支部長は監視係、しかも貴方のような者を任務に連れて行けと言ったのです」
「お前一人で行かせたら白兎殺しかねないから、俺が監視係として来てるんだろ。それに支部長『連れて行け』なんて言ってねえよ。何で俺がお前の部下みたいな扱いになってんだ。」
「私の方が貴方より上だからです。全てにおいて存在において」
「……一発撃たれたいのか?」

 クレイグはガンベルトから、一つの小型の銃を取り出す。表情は変わっていないが、怒っているのは行動からよく分かった。ルチアもそれに対抗しようと、どこからか取り出したかは分からないが、暗殺用の数本のナイフを取り出していた。
 彼らにかせられた任務とは白兎の捕獲。だがこれでは間違って白兎を殺す前に、仲間同士で殺し合いが始まりそうな雰囲気である。

『おい、二人とも武器を収めろ。今は喧嘩してる場合ではなかろう』

 ルチアとクレイグの耳に、聞き覚えのある声が入ってきた。先程副支部長と呼ばれていた、銀髪の少女レイシーである。何らかの方法で二人に自分の声を届けているようだが、それが何なのかはまったく分からない。

「申し訳ありません副支部長。只監視係が無能なだけで」
「悪かったな無能で……」

 ルチアの容赦の無い罵りに、クレイグの中にふつふつと怒りが込み上げてくる。先程は銃まで出してしまったが今回はレイシーの前なので、何とか心の奥で湧き上がる怒りを抑えた。
 だが当のレイシーはそんな二人の話など無視して、話し始めた。

『そろそろ白兎が、一人の子供を連れて此処へ来る。子供は保護、白兎は拘束して支部まで連れて来い。どうするかは妾と支部長で決める』

 レイシーの言葉に「はい」と二人とも返事をすると、そこでレイシーの声は途切れた。
 声が途切れると、クレイグは「はあ……」と小さな溜め息を付いた。

「どうしたのですか」
「いやさ……何か面倒臭い事になりそうな気がしてな」

 その言葉に、ルチアは無表情で答える。

「貴方のゴミ屑のような勘など、当たらないので大丈夫ですよ」
「そーか、そうだといけどな……」

 *

 ——僕を……知っている? 
 青年の言葉に、セシルは驚きを隠せない。
 それもその筈。セシルと目の前の青年は、今日初めて会ったばっかりの初対面。なのに何故?
 相手はセシルを見てクスクスと笑っている。セシルが驚きを隠せないのを、面白がっているようだ。
 セシルはそんな事目にも止めず、何故青年が自分の事を知っているのかだけを考える。
 そして考えた末に一つ思い浮かんだ。
 目の前の青年はもしかしたら昔会ったことのある人で、只自分が忘れているだけなんじゃないか? 青年の顔は記憶のどこにもないが、声に懐かしさを感じるなど、有り得ない事ではない。
 此処は名前を聞いてみよう、そうセシルは結論付けた。

「あの……名前、教えてもらえますか? 昔会ったことがあるなら、忘れてしまってごめんなさい」

 セシルがそう訊くと、青年は笑顔のまま答えた。

「オレの名前、か……。別に教える必要なんてないんだけど、一応言っておくとしよう。オレはフラン=アークライト。改めて宜しく、セシル」

 ——フラン?
 セシルはその名を聞いた時、何か頭に引っかかった。
 さっき声と同じように、どこか懐かしさがある。でも、一体どこでその名を聞いたのかがまったく思い出せない。
 セシルがまたしても考えているうちに、フランはセシルの手を掴んでいた。セシルが逃げられないように、がっしりと。吃驚して手を離そうとするが、相手の力が強くて逃げられない。

「離して下さい……っ!」

 セシルは何とか逃げようとブンブンと手を振り回すが、一向に手が離れる気配はない。
 セシルの耳に、クスクスと笑い声が入ってくる。自分の事を面白がっているのか……ちらっと顔を上げる。
 フランの表情は先程までのにこやかな笑顔ではなく、「にやり」と見る者を震わせる妖しい笑顔だった。その笑みにセシルは思わず体の力が抜けた。
 
「んー……じゃあ、そろそろ行こっか」

 「どこに?」とセシルが聞こうとした時には、セシルとフランを飲み込もうと、黒い渦が身体を包み込んでいた。
 逃げる暇もなく、セシルはフランと共に闇の中へと引きずり込まれていった。


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