ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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DISSOLVE STORY(七魔将キャラ土属性募集1人限定
日時: 2009/12/26 23:17
名前: はせピン (ID: HnQQx7lG)

書いていた小説が削除されていましたがバックアップ用のがあったので全て追加します。


小説の名前の提案は架凛様です。
(↓は架凛様のスレです。)
>> http://www.kakiko.cc/bbs2/index.cgi?mode=view&no=3274


キャラクター紹介

名前「キース・アンバート」(名前提案:架凛様)
性別「男」
年齢「15」
武器「双剣→剣(サーベル系)」
容姿「赤髪に琥珀色の瞳、服装は黒シャツに灰色のズボン。」
性格「冷静・冷酷(ファーナ対面後、冷酷さがなくなっている。)」

キースイラスト>> http://image-bbs.webclap.com/practice/up_img/1260536781-73999.jpg
(イラスト制作者:菜月様)

名前「ファーナ・クレアス」(名前提案:架凛様)
性別「女」
年齢「14」
武器「(後に発表)」
容姿「セミロングの緑髪に青色の瞳、服装は青い服に白いズボン。」
性格「明るく優しい」

ファーナイラスト>>http://files.uploadr.net/554d816e21/002.JPG
(イラスト制作者:雪梨様)

名前「ミルド・シェトリス」(名前提案:架凛様)
性別「女性」
年齢「12」
武器「メイス」
容姿「腰まである銀髪に蒼色の瞳、服装は黒と紫のローブ」
性格「仲間になる以前は非常に攻撃的であったがキース達と一緒に行動するようになってから穏やかになっている。」


名前「リア・ライトネス」(名前提案:架凛様)
性別「女」
年齢「14」
容姿「桜色のお下げ髪にエメラルドの瞳、服装は黒のチュニックワンピース。」
性格「陽気で明るい。少々強気。」

名前「ゼファー・アラウンド」
性別「男性」
年齢「21」
武器「長剣(グラディウス等)」
容姿「ソリッドアッシュに青色の瞳、服装は白いコートに黒のシャツ、茶色っぽい長ズボン。」
性格「冷静で時には冷酷。



七魔将キャラ

募集スレ>>24
七魔将についてお知らせ>>61
《ネレイド》チャーム>>25(キャラ提案者:haru様)
《名称未定》アリアス>>27(キャラ提案者:のんびり様)
《光を出す死神》ユキ>>37(キャラ提案者:みちる君様)
《神炎》ギリア>>40(キャラ提案者:珠凛様)
《月光の喪壊》ライル(シャロウ・M・ライル)>>50(キャラ提案者:椿薔薇様)

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episode05「逃避」 ( No.6 )
日時: 2009/12/05 22:36
名前: はせピン (ID: hZ1VwQsw)

謎の研究所でガディウスを退け、研究所を出たキースとファーナ。
外の世界を見て喜んだファーナ。
そのファーナを見たキースはフッと笑ってしまい、ファーナに笑顔を出したと言われ、笑みを消す。
そして二人はアルカトラ帝国へと向かった。

アルカトラ帝国第三都市ムガル入口前

「わあぁぁ〜、大きい門!」

数メートルある巨大な門を見たファーナは目をキラキラと輝かせていた。
走り出そうとした途端、キースの腕が前に出た。

「どうしたのキース?」
「様子が可笑しい、何時もなら門番が数十人いる筈なんだが……」

ファーナの問いにキースは答える。
第三都市ムガルは犯罪者と難民と機械人の街。
機械人は主人の許可を取れば、出れるものの一人が通ると同時に犯罪者と難民が脱出しようとする為に門番は第二都市と第一都市とは違い、門番の数はおよそ15人である。
しかし、今いる門番は5人。
大人数で来れば、必ず脱出出来るだろう。
二人は黙って立っていると一人の門番が二人の姿を見て駆け寄った。

「お前等、少しの間第三都市は封鎖だぞ。」
「どうしたんだ?」
「実は義賊が第一都市に来てな、貴族の財産を奪って行ったんだ。」

門番は困ったような声で説明を始めた。

「皇帝陛下は義賊を捕まえようと兵隊を送り出すが腕のある奴等でな……」
「ねぇ、キース。ぎぞくって何?」

可愛らしい声でキースに問うファーナ。

「義賊は貴族や金持ちから奪った金品を貧しい者に与える奴等だ。しかし、貴族や国の政府によっては邪魔者だがな。」

“義賊”の意味を教えるキース。

「そうなんだ〜。」
「まぁ、そんなところだから第三都市に入れるのは夜ぐらいだな。」

門番が手を顎に当ててそう言った。

(夜までか……そう言えば、アグニムにファーナを見せたらどうなる?ファーナは何処かの国の機械人だ。)

キースはファーナの事を考えた。
ファーナは自分とは違い、人と機械の中間である『半機械人』であり、アグニムは『半機械人』の事を知らない。
アグニムはキースを開発した人物であり、知らない事は何でも調べてしまう。
もし、ファーナを見て改造するとしたらファーナは間違いなく死んでしまうだろう。

(戻らない方がいいな、だがそれではアグニムの奴に狙われる。)

逆に逃げようとする手も考える。
しかし、キースの思う通り、逃げればアグニムは他の機械人を使って、キースを狙う事もある。
どちらにせよ、思い通りにはいかないと思っていたがファーナを見ると“逃げる”方向に向く。

(ファーナをアグニムに殺させる訳にはいかないな……)
「キース?キース!」

考えに夢中になっているとファーナに声を掛けられ我に返る。

「どうした?」
「何を考えてるの?」

首を傾げながら問うファーナにキースは真剣な顔をして顔を近づけた。

「ファーナ。」
「えっ、ひゃあ!何!?」

キースの顔が近付き、ファーナは顔を赤くして驚いていた。
その時、キースはファーナに耳打ちする。

(第一都市に行って船に乗って違う国に行くぞ。)
(えっ、どうして?)
(それは教えられない。悪いが第一都市に行って港に向かうぞ。)

キースは強く言うとファーナの腕を引っ張って第一都市へと向かった。


第一都市アスルブ

貴族と僧が住む都市アスルブ。
第三都市のムガルとは違い、高級住宅や教会が建てられている。
歩いている住民達も高級そうなスーツやドレスを着ている。
そんな、貴族や僧が歩いている中、キースとファーナは港へと歩いていた。

「キャー!ひったくりよ!!」

歩いている途中女性の声がし、二人の目の前に鞄を持った怪しい男が走り通って行った。

「ふぅ、人間も不便なものだな。」

哀れむかの様に溜息を吐くキース。

「ファーナはここで待ってろ。すぐに追いつく。」
「あっ、ちょっと待って!」

制止の声を掛けようとするがキースは既にいなくなっていた。

「一人にしないで欲しいのに……」

そう言って悲しげな顔をして待っていると一人の少女がファーナの前で止まった。

「もしも〜し!」
「はい?」

声を掛けられ顔を上げる。
目の前にいる少女は桜髪にエメラルドの瞳、そしてファーナと同い年の少女。

「こんな所で一人で立って何をしているのかな?」
「あ、えっと……人を待ってるんです。」
「ふぅ〜ん?」

疑心暗鬼と言えるかの様な顔をしながら少女はファーナの周りを歩いてファーナを見ていた。

「あの、私に何か?」
「その服で満足してる?」
「えっ?」

少女の問いに目が点になるファーナ。

「私の奢りであの店にある服を選ばせてあげる!何でもいいわ!!」

少女は胸を叩いて強気で言った。

「あ、えっと、その……」
「迷ってないでさっさと来る!」

少女はファーナの腕を引っ張りながら、洋服店へと向かおうと歩き出した。

「あ、ちょっと!ひゃあ〜〜〜!?」

突然の少女の行為と引っ張られる力に敵わず、ファーナは少女に引っ張られながら洋服店へと入って行った。

episode06「高飛び?離陸?」 ( No.7 )
日時: 2009/12/05 22:37
名前: はせピン (ID: hZ1VwQsw)

ひったくりを追いかけに行ったキースを待つファーナ。
その時、謎の少女に腕を引っ張られながらも洋服店へと入って行き、服を選んでいた。

「わぁ〜、これ可愛い。」

様々な服を見て同じセリフを繰り返していたファーナ。

「どう?ここの生地は全て高級品だから迷うでしょ?」

威張るかの様に腕を組んで仁王立ちをして鼻を鳴らす謎の少女。
目を輝かせながら、次々と服を調べていくファーナだが少女の声を聞いて顔を向けた。

「そう言えば、貴方の名前は?」

ファーナの言葉に少女は組んでいた両腕を解いた。

「あ、私はリア・ライトネス。神王教団の神官護衛隊の一人よ。」
「神王教団?神官護衛隊……?」

少女リアの自己紹介を聞いたファーナは“神王教団”と“神官護衛隊”の言葉を口にしながら首を傾げた。

「神王教団はね。この世界《レジヴァール》を生んだ神《ラピス》様を慕う宗教よ。」
「《ラピス》様……女神様の事?」
「そう!」

首を傾げながら問うファーナにリアは首を縦に振った。

「女神ラピス様を慕う教団、そして女神様を目覚めさせる為に私達は神官様を護衛しながら封印を解いて行ってるの。」
「リアは大丈夫なの?」
「えぇ、私は魔法を持ってるからね。そこら辺の魔獣は簡単よ。」

満面の笑みで言うリア。
そして話し合っているとファーナは一つの服が見入る。
その服は上が青く、下は白いズボン。
見ているとリアが首を出してきた。

「それにする?」
「え、でも……」

困った顔をするファーナを見てリアはファーが見ている服を見る。
値段は3千位でどう見ても貴族にしか買えない値段だった。
しかし、その値段を見ていながらもリアはニコッと笑顔を向けた。

「大丈夫!この程度のお金は楽勝だから♪」
「えぇ!?そうなの?」

驚きながら問うファーナ。
リアは笑顔で頷く。
そしてリアはファーナが見入った服を手にし、カウンターへと向かった。
そして服の値段を払い、ファーナは試着室で着替えてカーテンを開けた。

「ど、どうかな?」
「凄く似合ってるよ。このまま教団に入っても可笑しくないくらい。」

買った服を着て出てきたファーナの問いにリアは驚いた表情をしながら感想を述べた。
そして洋服店から出ると同時にファーナはある事を思い出す。

(そ、そうだ。キースに“待ってろ”って言われたんだった。)

キースに待てと言われながらもリアに引っ張られて服を買ってもらった。
当然、キースがひったくりを追っかけたとしても戦闘能力を特化している機械人であるキースにとっては簡単なもの、キースが怒っている顔を思い浮かべると早くその場に急ごうと行動をし始めた。

「ご、ごめんね。私、行かなきゃならない場所があるから!服ありがとう!」

ファーナは大急ぎでリアにそう言いながらその場を去って行った。
颯爽に去ったファーナを見てリアは呆然とその場を突っ立っていた。


「はぁ……はぁ……」

急いで走っていたせいか息が切れそうになる。
何とか、自分が先程いた場所に着くがそこにキースがいた。

「き、キース?」

恐る恐る声を掛ける。
聞こえたのかキースはファーナに顔を向けて駆け寄ってきた。

「何処に行ってたんだ?待ってろと言ってた筈だぞ……」
「あ、そ、その……」

睨まれながら問われて心の中で怯えながら何を言うか考える。
しかし、その睨みは一瞬で消えた。
服が気になったからだろう。

「どうしたんだ?その服は……」
「あ、これ?神王教団の神官護衛隊のリアちゃんが買ってくれたの。」
「神王教団か……」

“神王教団”の言葉を聞いたキースは目を細めた。

「どうしたの?」
「何でもない、早く港に向かうぞ。」
「あ、ちょっと……」

手を引っ張って港へと向かうキース。
港に辿り着くと木製の大型船が何隻もある中、キースはファーナの手を引っ張りながら、カウンターへと向かった。

「今、何処行きの船が早い?」
「あと5分で離陸する《宗教都市レオール》だな。大人二人で200だよ。」

受付人の話を聞いたキースは懐から200ガイン(200G)を出して切符をもらい、《宗教都市レオール》行きの船に乗り、切符に書いてある部屋へと向かい入った。

「わあぁぁぁ!」

中は普通でベッドやテーブル、椅子がある。
初めて目にした物を見たファーナはベッドに飛び込んでトランポリンをするかのように上で跳ねていた。

(レオールに着いたら、どうするか……)

今まで暮らしていた国から離れたら何をするか考えるキース。


一方その頃、第3都市ムガルでは……



日差しが照らさない第3都市ムガルの空に一話のカラスが飛んでいた。
カラスが向かった場所はアグニムがいる屋敷。
三階の窓を嘴で突く、そこはアグニムの部屋である。
窓が開かれ、カラスは部屋に入る。
丁度、アグニムもいた。

「さて、何かあったかな?」

アグニムがそう尋ねるとカラスは一声鳴いてアグニムに背中を見せて背中から一枚の紙の様な物が出てくる。
カラスも改造していたようだった。
一枚の紙を取り出してアグニムは見る。
その紙を見たアグニムは手に持っていたカップを落とし、紙をクシャクシャにしてゴミ箱に投げ捨てた。
その顔は怒りに満ちていた。

「あの機械人め、私の手下でありながらも逆らうとは……」

そう言いながら電話を取り出す。

「私だ。試作の125を開放し、裏切り者の始末を頼む。」

そう言って電話を切る。

「あの裏切り者めが……後悔するがいいわ。」



宗教都市レオール行き船

「わあぁぁい!!!」

一時間経っていながらもファーナはベッドをトランポリンの様に遊んでいる。
キースはレオールに着いてからの後を考えるが何も思い浮かばない。

「ふぅ、ファーナ。俺は外に行ってくるから、しばらくそれで遊んでいろ。」
「は〜い!」

気に行ったのか子供の様に夢中になっている。
キースは部屋を出て甲板に出て景色を眺める。

(追手が来るのは時間の問題だ……もしこんな時に来られたら間違いなく……)
『おい!何だよあれ!?』

反対側の方から声がし、気になって向かうキース。

「どうした?」
「誰かが追ってきてるんだよ。」
「……!!」

男が指を指している所を見ると、そこには大きい鳥に乗った一人の男がいた。
男の目は狂気に満ちていて両腕には刃が付いている。
男を見たキースはすぐに男が何なのかに気付く。

(アグニムの試作品か!バレたか!!)

アグニムの試作品と分かったキースは両手に小型剣を二丁持って構える。
男は船の上に近付くと大きい鳥から降りてキースの前で合間を取って着地した。

「俺の名はエクステルミ、お前を殺しに来た。」

狂気に満ちた目でキースを見て構える刺客エクステルミ。
キースはエクステルミを睨みつける。

「殺せるものなら、やってみろ。出来ればの話だがな。」
「へへへ、刃が疼くぜ……死ねぇ!!」

エクステルミはそう叫んでキースに飛び掛かった。

episode07「VSエクステルミ」 ( No.8 )
日時: 2009/12/05 22:39
名前: はせピン (ID: hZ1VwQsw)

「ひゃはははは!!!」

笑いながら、両腕に付いている刃(ブレード)で交互に攻撃する刺客エクステルミ。
その攻撃を受け止めて隙を窺うキース。
両腕の刃や踵蹴りでの攻めは変則的であるが力はそれほど強くはない。
しかし、長時間攻撃を受け止めているキースに限界がきていた。

「てあっ!」

一瞬の隙が出来ると同時に片手の小剣を横にスイング。
しかし、エクステルミは寸でにバックステップで避けられる。

「オマエ、やるな……!」

不気味な笑みを浮かべて何時襲い来るか分からない構えを取るエクステルミ。
言葉を聞いていながらもキースは目を細めて構える。
その二人の勝負の行方を船乗りや乗客達は見ていた。

「なぁ、あの狂ってる奴に勝てるのかアイツ?」
「さぁな、あの狂人の攻撃を受け止めながら隙が出来た途端に剣を振ったけど避けられてるしな……」

エクステルミに聞こえないような小声で話し合っている船乗りと乗客達。
金属音が鳴り響くと同時に全員二人の方に顔を向けて見る。
双剣とトンファーの刃の部分が弾き合う中、二人は攻撃を止めない。
片方が攻撃しようとすれば、弾き。
もう片方が攻撃しようとすれば、弾くの繰り返しだ。
時間は一時間を超えていながらもお互い身を引かない。

「でやあっ!」

エクステルミの両手のトンファーが振り降ろされると同時にキースは右手の小剣で弾く。
あまりの衝撃かエクステルミは後ろに仰け反り大きな隙が出来る。

「これで……」

キースがそう言うと左手の小剣をエクステルミの胸を切り……

「止めだぁ!!」

その叫びと同時にキースの小剣がエクステルミの心臓に突き刺さった。

「ガハァ!!!!」

口から少量の血を吐いてスローモーションが掛かったかのように倒れようとするが木の床に倒れる途端、エクステルミの片手がキースの剣を掴んだ。

「……!?」
「ひひひ……」

剣を掴みながら立ち上がるエクステルミ。
狂気に満ちた目の灯は消えていなかった。

「オマエ強いな!」

心臓に小剣が突き刺さっているのを関わらずにエクステルミはキースから間合いを取って身構えた。
心臓から血が流れながらも何事もなかったかの様に構えている。

「ふぅ……」
「キース!!」

一息すると同時にファーナの声が響き、後ろに振り返る。

「キース、どうしたの?」
「下がってろ、コイツは俺を殺しに来た奴だ。」
「キース……?」

ファーナの問いに簡潔に答えるキース。
その時、エクステルミがキースの名を呟いた。

「……?」
「キースか!覚えたぞ!!」

心臓から血を流しながら、エクステルミはキースを指指しながら叫んだ。

「キース!!俺の刃の餌食になって死ねぇ!!」

そう叫ぶと高くジャンプし頭上から襲いかかろうとするエクステルミ。

「ファーナ下がってろ……!」

ファーナにそう言ってジャンプするキース。
腕をクロスさせてエクステルミの方へと向かってゆく。

「死ねぇぇぇ!!!!」
「はあぁぁぁ!!!!」

二人の叫びと同時に攻撃を放つ。
しかし、先に放ったのはキースであり、クロスさせていた両腕を開くと同時に二つの小剣の攻撃により、エクステルミは大きく弾かれ……

「うおぉぉぉぉぉ!!!!」

大海原に響きそうな叫びを出して海へと落ちるエクステルミ。
勝ったのはキースだった。
船に着地するとエクステルミが落ちた方に向かって見るが上がって来なかった。

「ふぅ、嫌な奴だった。」

そう言って両手の小剣を鞘に納めるとファーナに駆け寄った。

「キース、あの人は?」
「海に落ちたが、生きてるだろう。」

キースはそう言って海を見ていた。

「アイツ勝ったぞ……!」
「船が壊れなくて良かったよ。」

キースの勝利に船乗りと乗客達は安心していた。
乗客の一人は自分以外の者にバレぬよう、静かにその場を去り、自分の部屋と言える場所に入ると同時に懐から何かを取り出した。

「こちら、《デアボラスタ》016。例の娘はキース・アンバートと共に宗教都市レオールに逃走、及び、Drアグニムが試作品を開放しましたが結果は敗北です。」

その何かは小型無線機だった。
男016は何者かに報告していた。

「そうですか、レオールに逃げられては不利ですね……しばらく様子を見るように。」
「了解!」

報告していた相手の返事が返ってきて返事を終えると同時に無線機の電源を切って懐にしまった。
と、同時に鐘が鳴った。
到着する合図である。

「ファーナ、あれが宗教都市レオールだ。」
「わあぁぁ〜〜〜〜!!!」

甲板に出ていた二人、二人の先にあるのは沢山の教会とその中に巨大な大聖堂があった。

そこは二人が向かう場所『宗教都市レオール』だった。

episode08「宗教都市レオール」 ( No.9 )
日時: 2009/12/05 22:41
名前: はせピン (ID: hZ1VwQsw)

宗教都市レオール 港

船が港に着き橋が降ろされると乗客達は船から降りていく。
その中でキースとファーナもいた。
二人は船を下りて都市の中へと入って行った。
都市はアルカトラ帝国とは違い、ほとんどの人間が僧衣を着ていた。
建築物はほとんどが教会で家はそれほどない。
そして何よりも初めて来た二人が驚いたのは(キースはそれほど驚いていない)数々の教会と家の先にある大聖堂だった。

「あの大きい建物は何?」
「あれはレオールの城だが、ほとんどの奴は“大聖堂”と言っている。」

何時もの様に親子の様な会話を取りながら、大聖堂へと足を進める二人。
落ち着いて歩くキース。
一方のファーナはキョロキョロと辺りを見回している。
落ち着きのないファーナを見てキースは溜息を吐く。
その時、キースは何かを感じ取ったのか目が鋭くなって辺りを見回した。

「キース?どうしたの?」

ファーナは尋ねるがキースは何かに無我夢中で聞こえなかったようだった。

「そっちか!」

キースがそう言うとファーナの腕を引っ張って西の方へと向かって行った。

「あ、ちょっとそんなに引っ張らないで〜!!」

ファーナは声を出すもののキースは走りを止めない。
走り続けるキースは家と教会の間の狭い路地へと入り、走り続けていると空き地と言える場所に着き、そこには凶暴そうな三人の男とその先には茶髪に白いローブの様な服を着た少女がいた。
男達は少女を連れ去ろうとしていたのだ。

「おい……」

キースがそう言うと男達は振り返った。

「あぁ、何だテメェは?」

先頭に立ってキースに寄る一人の男。

「俺達に喧嘩を売ってるようですぜ、兄貴!」
「こんなガキ、ボコボコにしてさっさとこの娘を攫いましょうよ!!」

あとの二人は“子分”の様で先頭にいる男にそう言った。

「そうだな、こんなガキすぐに葬って……」

男はそう言いながら腰に下げている剣を抜こうと柄に手を伸ばしたと同時にキースが素早く、腰にある双剣を抜いて一気に男達の後ろに立った。
数秒の沈黙が経つが男達はドサッと音を立ててその場に倒れた。
キースは双剣を鞘に納める。

「安心しろ、お前等の様な奴はみね打ちで十分だ。」

倒れている男達にそう放つとキースは茶髪の少女に手を差し伸べた。

「大丈夫か?」
「あ、はい……」

少女はキースの手を取って立ち上がった。
少女は服に付いている土埃を落とす。

「ありがとうございます。もし誰も来てくれなかったら誘拐されてました。」
「誘拐?誰かに狙われてるのか?」

キースの問いに少女は首を縦に振った。

「貴方は一体誰?」

ファーナが突然二人の話に口を出す。

「私は……」

少女は困った顔をしながら、キースとファーナから視線を逸らす。

「私はこのレオールの聖女です。名前はアンフィー・フォン・コンスタンツです。」
「聖女か……」

アンフィーの自己紹介にキースはそう呟いた。

「ねぇ、キース。セイジョって何?」
「聖女はこのレオール国の姫の事だ。」
「へぇ〜、アンフィーさんお姫様なんだ〜。」

ファーナの言葉にアンフィーは頷いた。

「この事をお父様に話さなければなりません。私はこれから大聖堂に行きますので失礼します。」

アンフィーは二人に頭を下げるとその場を去った。

「私達も大聖堂に行くのにね。」
「いや、それは無理だろう。」

ファーナの言葉にキースは首を横に振りながらそう言った。

「どうして?」
「大聖堂は他国では城と同じ、重要な人間でなければ中に入る事は不可能だ。」
「そうなんだ……」

入れないのだと教えてもらったファーナはガクリと首が下がった。
子供の様な動作をするファーナを見て心の中で呆れるキースは建物を見回すと酒の絵と看板にGUILDと描かれた建物が目に入った。

(GUILDか……近くにいそうな賞金首の情報があったら狩るか……金が少ないしな……)

目を細めてGUILDを見ながらキースは心の中で考えた。
考えが終わるとキースはファーナに顔を向ける。

「ファーナ、あの店に入るぞ。」
「あの店って何?」
「酒場だが、子供でも飲める物もある。行くぞ。」

キースはそう言ってファーナと一緒にGUILDへと入って行った。



一方その頃……

「聖女を誘拐出来なかったのね……」

暗くて良く見えない場所で少女の声が響く。
少女の前にはキースが倒したチンピラ達が土下座をしていた。

「す、すいません!誘拐しようとしたらガキが来て俺達を……」
「言い訳は無用。」

弁解をするチンピラの言葉が少女の一言に掻き消された。
暗くて顔は分からず、見えるのは紫と黒の混じったローブだけだった。

「最後に聞いてあげる……その男の後に誰かいなかった?」
「あ、そう言えば。緑髪で青色の瞳をした女がいましたぜ。」
「そう……」

少女はそう言うと男達の前に立つと同時に片手を前に出した。
途端、少女の掌の前に炎の球が具現する。

「さよなら、弱い人間……否、人間にもう用はないの……」
「えっ、ちょっと待ってくだ……」

男が制止の言葉を言おうとした瞬間、火球は放たれ男達の中心で爆発した。
砂煙が立ち込め、晴れると男達の姿は無かった。

「私達を開発しておきながら、奴隷の様に扱った人間達をあの方の力で人間を抹殺するわ。」

少女は笑いながら椅子に座った。
笑い声はその場に響いていた……

episode09「GUILD」 ( No.10 )
日時: 2009/12/05 22:43
名前: はせピン (ID: hZ1VwQsw)

「いらっしゃい。」

二人がGUILDに入ると男性がそう言った。
キースはカウンターに腕を置いて話しかける。

「マスター、ボトルを頼む。」

ファーナに聞こえない様に言うキース。
マスターは頷いてカウンターの戸棚から、数枚の紙を取り出し、カウンターの前に置いた。
紙には人の顔の写真が張られていた。
“賞金首”のリストだ。
マスターは酒場の主人だけではなく、GUILDの人間だった。

「………」

黙々とキースは紙を次々と見ていく。
1000〜4000Gといった、様々な賞金首を目にするがキースの実力ではそれ以上の額が合っていた。
と言ってもキースは実力で判断しない。
機械人は人間の奴隷であって捨てられれば、自分で金を稼がなければならない。
キースは以前アグニムの元で働いていたが今では無職であり、ファーナを連れている。
万が一にも額が低くとも稼ごうとしていた。
残り、一・二枚になった時、二枚目の賞金首に目が入った。
額は100万G……

「この賞金首はテロリストか?」
「いや、この賞金首は裏の人間でな……今では世界に手配されている奴だ。」

マスターが皿を布巾で皿に付いている水を吹きながらそう言った。
そして最後の一枚を見ると目が釘付けになる。
その賞金首の額は1億G……

「その賞金首は“七魔将”って言う千年前に暗躍した奴等の一人でな、不老不死で吸血鬼(ヴァンパイア)らしい。」
「吸血鬼(ヴァンパイア)か……」

マスターの話を聞いてキースはそう呟いた。
そう言いながら二枚のリストを交互に見る。
名前は一人はミヤビと書かれていて、もう一人はレオニードと書かれていた。

「七魔将の方なら、北国にある吸血鬼の館にいる。挑戦者が向かった情報は多数聞くが帰って来た者はいないそうだ。」
「恐らく挑戦者全員奴の餌食になったんだろうな、不老不死を持つ敵を倒そう等無駄にしか過ぎない。」

冷酷な言葉を放つキース。
二人の男の写真を見ていると肘を引っ張られていた。
見るとファーナが首を傾げていた。

「何してるの?」
「お前が知ることじゃない。マスター、ホットミルクを頼む。」
「はいよ。」

キースのオーダーを聞いたマスターは戸棚からマグカップを取り出した。
そしてミルクの入ったビンを取り出し、やかんに入れて温めようとガスレンジに置いた。

「その高額な二人に目を付けるとはな……」

100万Gと1億Gの賞金首の紙を見るキースにマスターは苦笑しながら言った。

「別に目を付けてる訳じゃない。」

そう言って二枚の紙をカウンターに置くとマスターはそれを受け取って戸棚に戻した。
そして、やかんに入れたミルクが入っているビンを手にとってマグカップに注いだ。

「ほら、ホットミルクだ。」

マスターがそう呟いて湯気を発しているホットミルクをカウンターに置いた。
ファーナは嬉しそうにマグカップの取っ手を掴んで飲もうと口に運ぼうとした。

「待てファーナ!そんなに早く飲もうとしたら……」
「アツッ!?」

遅かった。
余程の熱さにファーナはマグカップをカウンターに置いて苦しそうにしていた。

「まったく、熱いものを急いで飲んだら火傷してしまうだろう?」
「ご、ごめん……」

子供の様に落ち込むファーナ。
溜息を吐いたキースはマスターに顔を向けて指を一つ立てた。

「マスター、俺の分のホットミルク頼む。」
「はいよ。」

頷いたマスターは温めたホットミルクをもう一つのマグカップに注いでキースに渡した。
キースは軽く頭を下げて、ファーナの手を引っ張って誰もいないテーブルにホットミルクが入ったマグカップを置き椅子に座った。

「美味しい……」

飲めるほどの熱さなのか、ファーナはホットミルクを口にした途端、その言葉が出た。

「そうか……」

キースはそう言ってホットミルクを口にする。
温かく甘い。
浸っていると酒場のドアが乱暴に開かれる。

「た、大変だ!!」

甲冑を着た一人の兵士が大声で言いながら入ってきた。

「どうしたんだ?」

マスターが落ち着いた様子で突然来た兵士に話しかける。

「せ、聖女様が攫われた!!!」

兵士の言葉が酒場内を木霊した。


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