ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

包帯戦争。 番外編
日時: 2009/12/28 12:44
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

またまた消えました。やっぱりダメな言葉があるからでしょうか。
でも、めげずに頑張ります。

http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.php?mode=view&no=12380

上記からどうぞ。
回想シーンもあります。

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



Re: 包帯戦争。 番外編 ( No.40 )
日時: 2009/12/28 14:18
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

はい、もしも僕らが普通のルートを脱線する事なく歩んでいたら、という話です。

Re: 包帯戦争。 番外編 ( No.41 )
日時: 2009/12/28 14:39
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

「ありゃー、ノリちゃんじゃないのさ」
「お邪魔してます、春瀬さん」
ヒナトに似た、童顔で凄く美人なおねーさんが顔を出した。 おねーさんっても、もう何歳だろ。 三十代後半じゃないか?
そんな年を感じさせないような若さで、僕を愛称で呼んでくる。
「お母さん。 後でお菓子運んでね」
「あいよー。 ゆっくりしてけ」
「ありがとうございます」
春瀬さんと僕の母が仲良しで、そのせいでもあるのか昔からここのお宅とは付き合いが長かった。
ヒナちゃんとは、幼なじみという間柄。
「あったあった。 これこれ。 コレなのですよ、祝詞くん」
得意気に見せられた資料をざっと見て、
「コレ、凄く簡単じゃん」 「その簡単が私には理解不能なのだー」 
何故が自慢された。 やれやれ。
内装も和室だ。 畳とかの木の匂いが心地いい。 僕の家は洋風だから、こういうのもたまにはいい。
座敷に男座りして、
「では、シャーペン持ちたまえ」
「あいあいさー」
ヒナトが構える。 真っ白いレポート用紙を目前にして、 「……で、何?」 とな!!
ここまでとは予想外だ。
「ヒナト、何って言われても、課題でしょ? 先生なんて言ってたわけ?」
「…………ほへー」
「いやいやいやいや」
僕とヒナトはクラス違うから、わからんのだよ。

「多分この資料からだと、古代の何かだと思うけど」
「あーもーいーやー」
よくないっす。 マジで赤点、落第決定っすよ。
「留年でもいっかー」
何人生どうでもいい的な事言ってんですか、ヒナトさん。
「はははははっ」 
うぬ? 後ろから笑い声が聞こえたため、首を動かした。 
「もういいじゃん、祝詞。 そいつに何教えても無駄だっつーの」
「うげっ!? ちょっと何言うんだよリトー!! 」
ヒナトが、双子の弟のリツさんにむかって殴りかかる。 安易にそれを阻止して、
「コイツ、もう落第決定だから。 適当にやっとけばいーんだって」
「ば、ば、ば、馬鹿にしないでよっ」
「馬鹿じゃん」
クスクスと笑いながら、ヒナトの怒りっぷりを明らかに楽しんでいる。 うーわー、サディストだ。
ヒナトは思い切り頬を脹らませながら、
「おかーさーん! リトがヘンな事言ってくるー!」
ついには春瀬さん頼み。
「おかーさーん! ヒナ、もう人生棘道突入ー」
「リツさん、大人気ないです」
呆れつつも一応言っておいた。 多分聞こえてない。
いつもながら、ここの兄妹は元気すぎて困る。
突っ込む側の気持ちにもなってくれ。

階段を上って、おぼんの上にお菓子を乗せて、春瀬さんが困った顔で二人を見た。
「もう。 ノリちゃんが困ってるでしょ。 休日の朝に大きな声出さないの」
「リトさぁ、ちょーっと女の子にモテるからって調子乗らないでよねー」
「うっそー、俺モテるわけー? 感激ー」
わざとらしく照れるリトさんを、ヒナちゃんがしかめツラで睨む。
「もーいいしっ! ノリちゃん、出かけよう!」
「えー。 課題はー」
「ンなの後!」
はぁ。 どうでもいい兄妹喧嘩に巻き込まれてしまった。 課題、終わらせないとホントに落第だろうねぇ。



で、来たのは駄菓子屋だった。
シャッターは開いてるけど、人がいない。 僕の親戚のお兄さんがしている。
「ちょー、いるー?」
こんな休日の朝に、あの人は起きているのか?
ヒナちゃんが遠慮も容赦もなく大声で呼ぶ。
「こーはーるーさーん!」 
返事はない。
「借金とりにきやしたー」
返事はない。
「こーはーるー!! こーはーる!! 」
しばらくして、
「だーも! うっせーな、何だよ、騒音おばさんですか! あーそうですか!!」
中から髪の毛ボサボサの小春さんが出てきた。
ギロリと僕らを睨んでくる。 さすが元ヤン。
「何か、売って〜」
「品物とって金置いて帰りゃいーだろ! 何で俺をわざわざ起こす必要あんだよっ!」
この人、常識ないにもほどがある。
「からかいにきましたー」 「てっめー、犯すぞこの野郎ッ!! 」
朝にもっぱら弱い小春さんが、かなりの剣幕で怒鳴っている。 それでもヒナちゃんは怯まずに、
「ラムネあるー?」
「耳かっぽじって聞けや!! 」
「80円かー。 値下げしなよ〜」
「おい、そこの祝詞とかいったガキ!! 」
急に名前を呼ばれて、身を引き締める。 新鮮だろうねぇ、なんてね。
「この女連れて帰れ!! 」
「……ヒナちゃん、行こう。 迷惑みたいだよ」
「私は客だよ! 客に帰れってどゆ事!? 」
あー、また余計な火種に着火した。

「おめ……ッ、俺ナメてるだろーッ」
「今気づいたの?」
「……………………………犯す」
ブチッと小春さんの血管が切れた音がした。 あれ、でも血管切れたらタヒぬ事ない? まー、スルースルー。
で、ヒナちゃんを犯されては困る為、慌ててその細い腕を引っ張った。 手にはしっかりラムネが握られている。
「行こう、ヒナちゃん」
店から出て、しばらく行くと、
「ごらー! 金払えー!! 」
「あ、あ、後で払います!! 」

Re: 包帯戦争。 番外編 ( No.42 )
日時: 2009/12/29 20:13
名前: 朝倉疾風 (ID: VZEtILIi)

ヒナちゃんと一緒に公園に着いた。 小さい頃ここで遊んだ場所。
「ノリちゃんと小春って親戚なんだよね」
「ん、あまり話したことないけどね」
「ふっしぎ〜。 あんなのとノリちゃんが親戚〜」
繰り返すようにそう呟いて、ヒナちゃんが僕をニカッと笑って見た。
「私にもね、従弟がいるんだけどね。 可愛いんだよ〜。 男の子なんだけど、女の子みたいなの!」
「それはそれは」
「ナチっていうんだけど、今14歳かぁ。 あんま会ってないなぁ」
想像がつく。 ヒナトの従弟だから、どうせ天然、かな。
「ねぇ、ノリちゃん」
「ん?」
「大きくなったら、結婚しましょー」
パチパチと、拍手が幻聴で聞こえる。
あれーれー? 僕らって付き合ってたの?
「んう? どしたのさー」
「いや、僕らってカップルなんだーっと思って」
「どええええええええぇぇぇぇぇぇええぇぇぇっ!」
今日一番で大きいヒナトの声。
思わず顔をしかめてしまう。
「え、え、私たちカップルじゃないの!?」
「ない……んじゃね?」
「じゃあ何なの!?」
「……幼なじみ?」
「ノリちゃん、彼女いるの!?」
「いない」
「私も!!」
………だから? そう来たら殴られそうなのでやめておいた。 何事も、人命が最優先♪

「付き合いましょう!」
あら、僕告白されちゃった。
ま、返事はきまって、

「ましょー」

こうだけど。








嘘だよ。 嘘に決まってるだろ。
妄想だよ、こんなの。
本当の僕らを教えてやろうか?

醜くて普通じゃなくて壊れてて狂っていて穢れていて醜悪でひもじくて冷たくて異常で奇怪で異端でおかしくて脱線しててボロボロで感情なくて心なんてどこにもなくて

でもだけどなのにそれでも、

『普通』っていうものにどこか、憧れたりもした。


もう、取り戻す事なんて不可能なのに。
壊れたビデオを巻き戻して再生するなんて出来ないのに。
狂った人生はもう、戻れないのに。

日常で出会う人間たちを見つめながら、それでも僕らは『普通』を求め、憧れ、妬み、そしてそうでありたかった。
僕らは人間性を一つずつ確かめながら、戦争をしたんだ。
何気ない日常に溶けていった、僕らの特別。
心にそっと包帯を巻きながら、それでも血だらけになりながら。

包帯戦争なんて、ばかげてるのにね。

Re: 包帯戦争。 番外編 ( No.43 )
日時: 2009/12/29 20:52
名前: ジョーカー (ID: x9MJPPid)

やっぱ切ないですね・・・・

Re: 包帯戦争。 番外編 ( No.44 )
日時: 2009/12/29 21:31
名前: ラビ ◆bIXnO7zfJs (ID: QxM43kDI)

すごい脳にどわーっと来るいい文章ですー
「ばかげてる」なんて思いながら戦争してたのでしょーか……

素晴らしかったですー。こーしんおつかれさまですっ(゜×゜*)


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11



この掲示板は過去ログ化されています。