ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- -妖狐と魔術の交差点-
- 日時: 2010/02/09 19:08
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
御挨拶〆
こんばんは、更紗@某さんです。
何故か消えたので、早速復活させました。
やってしまいました、ついにやりたかった妖怪×魔術をやってしまったのです。
九尾を筆頭とし妖怪を始め、天照など日本の神々、魔術や死神も出てきます。
変な作品ですが、どうぞ暖かい目で見守って下さると助かります。
Index〆
第一部 九尾の妖狐
序章 とある少女の逃走劇 >>1
第一章 堕天使は静かに忍び寄る
交差点01 >>2 交差点02 >>3 交差点03 >>4 交差点04 >>5 交差点05 >>6
第二章 魔法名“双翼の闇”
交差点06 >>7 交差点07 >>8 交差点08 >>9 交差点09 >>10 交差点10 >>13 交差点11 >>16
第三章 黒の使者、蠢く
交差点12 >>25 交差点13 >>27 交差点14 >>30 交差点15 >>31
訪問者様〆
イビリ様 (( `o*架凛殿 アド殿 咲夜殿
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.7 )
- 日時: 2010/01/16 17:14
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
第二章 魔法名“双翼の闇”
交差点06
『追われているんじゃ、とある殺し屋に』
『正確には“殺し屋”も兼ねている情報屋の魔術師じゃな』
『因みに魔術師の魔法名は“双翼の闇”と言う』
神埼の頭の中で、次から次へと詩世の言葉が湧き上がる。
今、妄想癖かと思っていた少女の証言が、目の前にいる金髪の少女により確立されたものとなったのだ。
という事は、詩世の言っている事は本当で——詩世は“九尾の妖狐”と云われる妖怪で——目の前の少女は“双翼の闇”と言う二つ名を持つ殺し屋——。
全ての点と点が繋がった今、神崎の生存本能がうるさいまでに唸り始める。早く逃げなければ、神崎は目の前の少女によって亡き者となってしまうだろう。
「——お前は俺を殺しにきたのか?」
「『神崎辰巳を抹殺する』までは、依頼に含まれておりません。ですがこれからの私の命令に応じない場合」
少女は平淡な声で言う。
「貴方を殺す事もありますが」
淡々と言うその姿は、人を殺す事に何の躊躇いも持たない殺し屋の姿。自分とは次元の違う相手に、神崎は嫌な汗が流れるのを感じる。
とりあえず此処から離れなければ、と神埼は思うのだが身体が硬直してしまい動かない。相手は何もしていないのに、相手の存在自体が既に威嚇なように神崎は感じる。
「では先程の事を踏まえて上で。九尾の妖狐をこちらに引き渡して下さい」
「……っ」
相手は予想とおりの事を言ってきた。
詩世は仮にも妖怪とはいえ小さな女の子、それを易々と殺し屋の手に渡していいのだろうか?
「えは……」
「聞こえないのですが」
「双翼の闇、お前は……俺が仮にあいつを引き渡したとして、どうするつもりだ?」
少女は表情を変えず、神崎の問いに答える。
「依頼主からは九尾の妖狐を連れてくるよう、言われています。連れて来る為なら多少傷をつけても構わないそうです。ですので、本人が抵抗する場合は軽く半殺しにでもするつもりです」
それを聞いて、神崎は背筋がゾッとした。怒りではなく、感じたのは恐怖。本当に少女は殺す事に躊躇いなど、人間らしい心など残っていないらしい。まるで命令だけに忠実に従う殺人機械。
もしこの場で詩世を引き渡すような事をしたら、自分はこれ以下の人間だと言われているようで、神崎は拳を震わせる。
もし引き渡したら、詩世は確実に抵抗するだろう。何故なら逃げていたのだから。
渡してはいけないと、詩世を殺し屋の手に渡してはいけないと思った。
「……断る」
「はい?」
「あいつは……詩世はお前には渡さない!」
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.8 )
- 日時: 2010/01/16 17:14
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
交差点07
神崎は何の能力も持たない、普通の人間だ。対して目の前にいる少女は殺し屋である魔術師、あまりにも無謀な宣言だが神崎にはそんな事を巻が手居る暇はない。
神崎の宣言に一瞬、“双翼の闇”は苛立ったように目を細めたが、すぐに神崎を抹殺しようとナイフを取り出す。
「そうですか、貴方の脳は正しい判断さえ出来ないのですね。ならば仕方ありません。——貴方を限界まで痛めつけて、九尾の妖狐を引き渡して貰うまで」
そう言い終えた後、神崎は何が起きたのか分からなかった。
少女の姿が一瞬にして消え——気づけば神崎は何十メートルも先まで吹っ飛ばされていた。
「が……っは!?」
内臓を全て吐き出してしまいたいような痛みが、神崎の身体に伝わっていく。
神埼は腹を抱えながらよろよろと立ち上がる。少女は何か魔術でも使ったのだろうか?
気がつけば少女は目の前にいる。
「感想を述べますと、正直驚きです。一応“本気で貴方を蹴ってみた”のですか、これで立ち上がるとは余程頑丈なのですね」
——は?、と神崎の思考が停止する。
魔術でも何でもない、タネも仕掛けも無し。少女は只神崎の腹を“蹴っただけ”なのだ。
「蹴っ……? んなの有り得んのかよ……」
「有り得ないのは貴方の方です。大抵の人間はこの一撃で気絶するか、意識があっても全身の骨を折って立ち上がれる筈はないのですよ」
“双翼の闇”の言葉に、神崎は自分の身体の頑丈さに感謝する。——が、これで目の前の殺し屋は終わらせない。勿論神埼もそう思っていた。
“双翼の闇”は神崎に軽くラリアットを喰らわせる。神崎が後ろによろめいたところに、すかさず蹴りを入れ、倒れた神崎の腹を何度も踏みつける。
胃の中身を吐いてしまいそうな神崎に、“双翼の闇”は氷のような瞳で神崎を見ながら問いかける。
「さて、本当ならすぐにでも貴方を抹殺するところですが、今回はそうにもいきません。九尾の妖狐をこちらに引き渡して下さい」
「……っ、こと……ぐっ」
「時間の無駄ですし、私が直接九尾の妖狐を回収するのが早いのですが、別れの挨拶くらいはしたいでしょう? 私なりの慈悲のつもりなのですが、従わない場合は貴方を殺して九尾の妖狐も回収します」
『慈悲』などという言葉は、眼前の少女にはとても似合わないと神埼は思った。
もし神崎が詩世を引き渡す事などすれば、神崎は助かる。が、そんなの自分の保身の為に詩世を売り払ったのと変わりはない。
神埼の喉から、微かに声が発せられる。
「……こと……っわ……る」
「……随分と馬鹿な人間ですね」
「しぜ……は渡さ……ないっ……!」
痛みに耐えながら、神崎は言った。神崎は詩世を引き渡すとは、断じて言わなかった。例え結果が同じでも、自分からリタイアはしたくなかった。
神崎の答えに、“双翼の闇”は冷徹にナイフの先を神崎の方へと向ける。
「では、さようなら——っ!?」
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.9 )
- 日時: 2010/01/16 17:16
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
交差点08
“双翼の闇”がナイフを振り下ろそうとしたところに、光の矢が一閃。“双翼の闇”の手首を貫く。
手首を伝う血の雫も気にせず、“双翼の闇”は後ろを振り向く。
“双翼の闇”、そして神崎の視界に映ったのは銀色の髪に碧眼の少女。“双翼の闇”と同じくノースリーブにスリットが入った黒服を着用し、髪型は短いが横髪だけは伸ばしている。
神埼の時とは違い、今回ばかりは邪魔者の登場に苛立ちを隠せないようだ。表情はまったくの無表情なのだが、かなり殺気立っている。
「……“白銀の討ち手”邪魔をしないで頂きたいのですが」
「伝説の殺し屋がこんなところで何をやっている、“双翼の闇”——いや、ダルシー=キャメロット?」
——ダルシー=キャメロット、それが少女“双翼の闇”の真名らしい。
“双翼の闇”、ダルシーは真名を呼ばれた事に更に苛立ちを増した様。片手に握るナイフが銀色に光る。
「随分と物騒だな、オレが何かしたか? したといえば結界に穴を空けた事くらいだが」
「……邪魔をした事から私の真名を呼んだ事まで、全てが私を苛立たせていますよ」
「そうか」
どうやら“白銀の討ち手”なる銀髪の少女と、ダルシーは知り合いのようだ。それとは関係無いが、女なのに自分のことを『俺』という女性は本当にいたんだなと、神崎はボロボロの身体で少し驚いた。
だがのんびりと考え事をする暇など、一瞬で神崎には無くなった。神崎を足蹴した時のあの速さで、ダルシーが銀髪の少女と間を詰める。そして片手に握っていたナイフで、少女の急所を狙う。
「危ない」と言う間もなく、ダルシーの持つナイフは銀髪碧眼の少女の急所を——。
「……へっ?」
神崎は目の前で起きた光景に、思わず間抜けな声を漏らす。
銀髪少女の急所を狙ったナイフは——“少女の異形な腕によって”カキンと音を立てて狙いを外す。
銀髪少女の右腕を見てみると、肘から下が黄金に輝く“巨大な槌”となっていた。少女のその変わった槌に対して、ダルシーは感想を言う。
「相変わらずですね、貴女の“雷神槌”(ミョルニル)は。あらゆる敵を打ち砕きし“最強の槌”(ウォーハンマー)。昔と同じ、侮り難いもののようです」
「オレの場合、神器ミョルニルを腕と融合させてある事は知っているだろう。そこらのナイフで傷を付けられるモノじゃない」
銀髪少女は無愛想に腕の槌の説明をする。どうやら少女のミョルニルという槌は、少女の肘から下と融合させており、自由に腕を槌に変えられるという物のようだ。どこのファンタジーバトル漫画だと、神崎は唖然としながら眺める。
巨大な槌を目にしたところでダルシーはまったくうろたえず、至って冷静沈着。どいつもこいつも化け物じみた奴らだと、半ば神崎は恐怖する。
ダルシーは銀髪少女相手に何をするのかと思えば、先程跳ね返された筈のナイフをまた取り出した。
「……お前の“そのナイフ”を見るのは久しぶりだな」
「ええ、貴女に対してはそろそろ魔術を使わないと、さすがに私でも殺されますから」
「できれば本気なんて出さないで、おとなしく倒されてほしいんだがな——残念だ」
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.10 )
- 日時: 2010/01/16 17:17
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
交差点09
銀髪少女こと“白銀の討ち手”と“双翼の闇”ダルシーは、それぞれ武器を構える。
神崎は疑問に思う。ダルシーの持つナイフが、さっきのナイフとどう違うのかが。ダルシーの持っているナイフは先程と同じ、銀色に光るナイフ。
神崎は目をよく凝らしてダルシーのナイフを見る。——文字。何語だかは分からないが、日本語ではない文字がナイフに彫ってある。まるで古代文字のような……。
「“落雷を二つ”(ドゥ=フェール=トンべ=ラ=フードル)」
銀髪少女が何やらカタカナっぽい単語を呟く。おそらく何かの魔術だろう。
神崎の予想は当たった。銀髪少女の右手——神器“雷神槌”(ミョルニル)の先端から轟音がし、二つに分かれた白い雷がダルシーへと襲い掛かる。
だが殺し屋の魔術師“双翼の闇”ことダルシーが、これでやられる筈はなかった。ダルシーは雷が襲い掛かる寸前——何もない空間を、ナイフで引き裂く。
銀髪少女のとまったく同じ雷が、そこに“発生”し銀髪少女の落雷が相殺される。……銀髪少女のはともかく、ダルシーはナイフで何もないところを切っただけ。一体何のマジックだろうか……ダルシーは魔術師だから、魔術(マジック)をしてもおかしくないが。
「……お前のルーン魔術はまったく衰えていないな」
「このナイフにはルーン文字で“雷”と刻んであります。勿論、私の持っているナイフ全てに“雷”と刻んであるわけではありませんが」
神崎の頭に何か引っかかった。『ルーン文字』、聞き覚えがある。その文字自体に魔力が宿っており、その文字を使った魔術のことを『ルーン魔術』というとか。昔ネットで暇潰しに調べてみたが、最終的にはインチキと結論付けたものだ。
だがその“インチキ”だと思ったものは、現実にあったらしい。何故なら今、ダルシーがルーン文字を用いた“ルーン魔術”を使ったからだ。
「そうか、じゃあ“炎”だとかも刻んであったりするのか?」
「“炎”以外にも“風”、水”などもありますが、これもごく一部です」
「……実に面倒臭いな、それ」
「何が面倒臭いのでしょう、ルーン魔術は確立した正当な“魔術”ですが」
「面倒臭いっていうのはそういう事じゃない。これを使うのは実に面倒臭い、オレはコリンヌとは違ってこういうタイプの魔術を使うのは得意ではないからな」
「ぐだぐだとほざいている暇があるのなら、早くその面倒臭い魔術を見せて頂きたいのですが」
そうする、と銀髪少女は己の神器“雷神槌”(ミョルニル)を人間の右腕に戻す。
対してダルシーは黙ってその魔術が発動するのを待つわけでもない、ナイフを何本も取り出して銀髪少女を抹殺しようと襲い掛かる。
「**……****……」
銀髪少女は何か呟いている。何語かは分からない、外国語だろうか……とにかく神崎には、銀髪少女が何を言っているのかは分からなかった。
ダルシーは魔術を発動させまいと、ナイフを銀髪少女へと振り下ろそうとする。
「*……***……**!」
その時、銀髪少女は何かを言い終えた。
- Re: -妖狐と魔術の交差点- ( No.11 )
- 日時: 2010/01/16 17:24
- 名前: 更紗@某さん ◆h6PkENFbA. (ID: YpJH/4Jm)
交差点09までの登場人物おさらい
〆神崎辰巳 ♂
今作の主人公。16の高校一年生。
冬休み初日に詩世と出逢う。ごく普通の高1。
〆詩世 ♀
今作のメインヒロイン。年齢は約800歳。
一人称は「わし」の変わった口調の少女。詩世はあくまでも仮名に過ぎず、真名は「九尾の妖狐」という妖怪。
〆夜桜茉莉 ♀
今作のヒロインの一人。神崎と同い年。
陰陽師で関西弁を喋る。式神には「貪狼」などがある。
一人称は「うち」
〆“双翼の闇”ダルシー=キャメロット ♀
魔法名は“双翼の闇”。殺し屋も兼ねる情報屋の魔術師。
何者かの依頼によって詩世を追っている。丁寧語だが毒舌。金髪翠眼の黒服少女。
武器はナイフでルーン文字が彫っており、ルーン魔術が使える。一人称は「私」
〆“白銀の討ち手” ♀
本名は不明で、“白銀の討ち手”はおそらく魔法名。
神器“雷神槌”(ミョルニル)を右手と融合させており、自由に右手をミョルニルへと変えられる。
一人称は「オレ」の銀髪碧眼少女。
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