ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- ___くれないおおかみ___
- 日時: 2010/01/27 21:57
- 名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
月ひとつ、
暗闇は静寂を誘い込み。
星ひとつ、
輝きは徐々に色褪せる。
風ひとつ、
荒野を駆ける荒々しさに。
生ひとつ、
貴方はどれ程足掻くのか。
こえひとつ、
儚く脆く、貴方は生きる。
くれないひとつ、
暗闇に蠢く、嘆きの如く。
- Re: ___くれないおおかみ___ ( No.5 )
- 日時: 2010/01/30 00:16
- 名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode=view&no=13538
Episode3‐暗闇を駆ける使徒の子供‐
「黎さん、明さん、憂さん、樹さん。
・・・仕事の時間です。御準備をお願いします」
夜、須臾の声に4人の子供は反応する。
「・・・もうそんな時間か」
「はい。お時間です」 「早いね・・・」
各々呟きながら、用意をする。
「では、御気をつけていってらっしゃいませ」
須臾が深々とお辞儀をする。
「「「「行ってきます」」」」
そうして、暗闇に紛れていく。
「な、何なんだお前は!!」
中年の、薄汚れた男が這い蹲って怯える。
「・・・俺は、お前を殺しに来た」
懐から、サバイバルナイフを取り出す。
一歩一歩、距離を縮め、
凶器を持った利き手を振り上げる。
「・・・任務、遂行完了」
振り下ろせば、辺りに鮮血が飛び散った。
「私が一体何をしたっていうのよ!!」
若い女が、甲高い声を上げる。
その瞳に浮かぶのも、怯え、だ。
「そんなこと、私は知らない。
・・・私はただ、貴方を殺しに来た」
小型銃を取り出し、女の眉間に突きつける。
「任務・・・遂行、完了」
人差し指に力を入れれば、簡単に風穴が開いた。
「お前等、一体何者なんだ!!」
複数人の男達が、少女と少年に問う。
勇ましく、しかし、愚かに対抗してくる。
「私達は、ただ依頼を受けて、貴方達を殺す」
少女は双刀を構え、冷たく一視する。
「それは、切れない憎しみの連鎖。
畏怖と尊敬の意味で、俺達はこう呼ばれる」
少年は鈎爪を見せつける。
「<Black Regret>。黒き悔恨。
俺達は悔恨の使徒として、お前達を殺す」
少女と少年は、一斉に動く。
一瞬にして、視界は深紅に染まった。
「御帰りなさいませ。お疲れさまでした」
須臾は、タオルを持って待っていた。
「ただいま、須臾」
黎がそう話すだけで、
他の三人は何も話さない。
・・・大分疲れているようだ。
「・・・血の匂いがします。
院長は、あまりお好みにはならないと思います」
「朝までに何とかするよ。
・・・取り敢えず、部屋に戻るから・・・」
「わかりました。皆さんにもそうお伝えください。
・・・おやすみなさいませ」
須臾は会釈すると、
壁を伝いながら、自室へと帰って行った。
「・・・今日も、あっという間だったね」
明がそういう。
「そうだな、いつも、一日が短い・・・」
樹はまどろみながら言う。
「そうですね・・・、でも、こうする以外、
私達に選択できる道は無いし・・・」
憂は、枕を抱いて言う。
「・・・結局、俺達は籠の鳥なんだよ」
黎の言葉に三人は、何も言わなかった。
言えば、虚しくなるだけだと、知っているから。
そして、今日も、夜は更けていく。
- Re: ___くれないおおかみ___ ( No.6 )
- 日時: 2010/01/30 19:26
- 名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
Episode4‐繋がれた銀の鎖‐
「黎、そろそろ起きないと院長来るよ?」
明がゆさゆさと、黎を揺らす。
その振動に目を覚まし、布団から這い出る黎。
「朝からあんな奴の顔見なきゃなんねぇのか・・・。
・・・胸糞悪りぃ・・・」
「黎、それは思っていても口にするな。
後々面倒だからな」
樹は眉間に皺を寄せ、カーテンを開ける。
眩しい太陽の光が、俺達を照らす。
・・・なんて、綺麗で、なんて、疎ましい・・・。
「・・・来ましたよ」
憂が、顔を強張らせて、起き上がる。
その言葉のすぐ後に、
ノックもせずに、入ってきた無粋な男。
「・・・・・・・」
かなり年のいったその男は、
俺達を見下す。
「・・・おはようございます、院長」
俺の言葉の後に続いて、三人は会釈する。
「・・・ふん、ここは鉄臭い、
儂の好む場所ではないわ」
じゃあ、何で来たんだよ。
そんな言葉を飲み込んで、顔を上げる。
「申し訳ありません、院長。
後で掃除しておきます」
「薄汚い子供め・・・。
儂に軽々しく話しかけるでないわ」
院長の言葉にカッとなり、睨みあげる。
「・・・何だ、その目は・・・。
儂に刃向かおうとでもいうのか・・・?」
「・・・・・・っ」
唇が切れるんじゃないかって位、噛み締めた。
・・・そうしなければ、殺してしまいそうだから。
「ただ、死ぬだけだった貴様らに、
生を与えてやったのは、一体誰だと思っている?
・・・わかるか?貴様らは、儂の所有物。
生きるも死ぬも、儂次第だということを、
忘れるなよ、死に損ない共が・・・・・・!」
それだけ言って、男は出ていく。
「っ、死ね!!この人非人が!!」
黎はそう言って、机を蹴飛ばす。
「・・・ホントに、嫌な奴・・・・」
明は黎を落ち着かせながら、机を片付ける。
「俺達が死に損ない?笑わせるなよ」
樹は爪が皮膚に食い込むほどに、手を握りしめた。
・・・血が滴り落ちている。
「・・・出来ることなら、殺したいです」
憂は、お気に入りの枕をギュッと握りしめた。
・・・布が裂け、羽毛が溢れだす。
「ああ、殺してやりたいよ。
・・・だけど、そんなことはできない」
そんなこと、とっくの昔に諦めた。
「あいつは、俺達の、<主人>で、
<スポンサー>なんだから」
あいつの支えなしでは、
俺達は生きていけない。
ただただ、血に塗れ、生に溺れるしかない。
首輪についた鎖の先は
あいつが握っているのだから・・・。
- Re: ___くれないおおかみ___ ( No.7 )
- 日時: 2010/01/30 20:40
- 名前: つづ ◆tDMQj0yd6M (ID: xBFeLqnd)
初めまして、つづです!
すっごい面白いですね!
続き、楽しみにしてます★
- Re: ___くれないおおかみ___ ( No.8 )
- 日時: 2010/01/30 20:49
- 名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
ありがとうございます!
続き、頑張ります!!
- Re: ___くれないおおかみ___ ( No.9 )
- 日時: 2010/01/31 18:28
- 名前: 十和 (ID: zCJayB0i)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode
Episode5‐仮面に隠された素顔‐
「おはようございます、黎さん」
「あ、おはよう、須臾・・・」
須臾に声をかけられ、黎は少し、驚く。
「・・・なあ」 「はい?」
「ずっと、気になってたんだけど・・・」
「何ですか?」
ここにきてから、気になっていたこと。
「須臾は、目が、見えないんだよな」 「はい」
「・・・どうやって、俺達を察知するんだ?」
「・・・察知、ですか?」
何と言えばいいのか。
よくわからない。
目の見えない彼女は、どうやって、
俺達を<見る>のだろう、と。
心に、妙に引っかかっていたのだ。
「・・・<五感>ですよ」
「・・・五感・・・?」
「はい。視覚はありませんが、
代わりに聴覚、味覚、嗅覚、触覚が
機敏にはたらくので・・・。
黎さん達のことは、<匂い>と<音>で
判断しています」
「匂いと音・・・?」
「黎さん達の匂いは、皆さん弱冠違いますし・・・。
歩き方も少し違っています。
ですので、皆さんを区別できるんです」
にこり。須臾は笑う。
「・・・そっか、ごめんな、変なこと聞いて」
「御気になさらないでください。
もう何年も前のことですから」
「でも、いいな。それ」 「?」
「聴覚とか、嗅覚とかで、区別できるんだろ?
それが出来れば、きっと楽だろうな・・・」
ぽつり、と零した言葉。
それに須臾が反応した。
「・・・そうでしょうか」 「え・・・?」
「私は、すごく、嫌です。
聞きたくないモノ、匂いたくないモノ、
味わいたくないモノ、感じたくないモノ、
皆、伝わってくる・・・。
すごく辛くて、すごく、息苦しい・・・」
須臾の眉間に皺が寄った。
「まるで・・・****みたいで・・・」
須臾の言葉がよく聞こえなかった。
「?今、何て?」
「・・・いいえ、何も」
またいつもの微笑みを湛えて、
和やかな雰囲気を醸し出す。
「、そっか。じゃあ、用があるから」
「はい、いってらっしゃいませ」
手を振られ、振り返す。
黎の姿が見えなくなる頃、須臾は呟く。
「・・・神の、御加護がありますように・・・」
それは、誰への言葉なのか。
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