ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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___くれないおおかみ___
日時: 2010/01/27 21:57
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

月ひとつ、

暗闇は静寂を誘い込み。

星ひとつ、

輝きは徐々に色褪せる。

風ひとつ、

荒野を駆ける荒々しさに。

生ひとつ、

貴方はどれ程足掻くのか。

こえひとつ、

儚く脆く、貴方は生きる。

くれないひとつ、

暗闇に蠢く、嘆きの如く。

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Re: ___くれないおおかみ___ ( No.1 )
日時: 2010/01/27 22:50
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode1;‐漆黒の序曲は唐突に‐


古いであろう建築物に、光が差し込み、

陽の暖かさが、俺達の部屋を包み込む。

・・・嗚呼。今日もまた、闇に塗れに行くのか。

「ん〜〜!!よく寝たぁ!!」

「ふわぁ・・・。まだ眠いよぉ・・・」

「もうそろそろ起きろよ、お前等」

各々、起床準備に取り掛かっている。

「ほぉら!!!れいも起きなきゃ駄目だよ」

一人の少女が、少年の布団を剥ぐ。

「・・・わかった、起きる、起きればいいんだろ?」

黎と呼ばれた少年は、気だるそうに起き上がる。

「ったく、何であきらは朝から元気なんだよ」

黎は、動き回る少女に、呆れたように言った。

「黎が低血圧なだけだよ!ほら!

 ういいつきも起きてるでしょ?」

「明らかに一人寝てるけどな」

明が指差す方向には、また少年と少女。

丁寧にシーツを整える樹と、

枕を抱いてこっくりこっくりしている憂。

「もう!憂ったら!

 起きなきゃ駄目だよ!うーいっ!!」

「ふゅ、まだ眠いったらぁ・・・」

明は憂をガクガクと揺さぶっている。

・・・毎日毎日、よく飽きないことだ。

「・・・黎、お前も支度しろ。

 始令に遅れるかもしれないぞ」

「樹よ、お前はあの二人を置いていく気か」

「勿論、他人より自分だ」 「左様ですか」

はぁ、と小さく溜め息を吐き、服を着替える。

明も憂も、後から来るだろう。

寝間着を脱ぎ、黒がメインの制服に身を包む。

「じゃあ、先行ってるからな」

未だ奮闘している明と憂を置いて、部屋を出る。

ここは、孤児院だ。

諸々の事情で、捨てられてしまった子供たちを、

養ってくれる、唯一の場所。

・・・表向きは。

「樹、ネクタイ曲がってる」

真っ赤なネクタイを指差す。

「あ、すまん」

器用な手つきで直していく。

ふと、樹のネクタイに茶色いシミを見つけた。

「・・・おい、それ・・・」

「仕方ないだろ?昨日遅かったんだ。

 ・・・洗う暇なんて無かったんだよ」

シミを隠すように、ネクタイを上着の中に折り込む。

「・・・気をつけろよ」 「ああ」

二人でそう話していると、後ろから轟音がした。

「こらー!!黎!樹!置いて言ったでしょ!!」

「あ、明!!早い、早いよぉ!!」

もの凄い勢いで走ってくる明と、

手をひかれて走ってくる憂。

・・・憂が青ざめていて、正直哀れだ。

「明チョップ!!」 「っ!危ねぇ!!」

明が勢いよく飛び込んでくる。

「明!!怪我したらどうするんだよ!!」

「ふん!!私たちを置いて行った黎達が悪いんだ!」

騒々しく騒いでいた俺達。

・・・そこに、樹が封筒の束を抱えてやってきた。

「それくらいにしとけ。

 ・・・仕事の依頼が来てる」

その言葉で、俺達の心が冷める音が聞こえた。


 

Re: ___くれないおおかみ___ ( No.2 )
日時: 2010/01/27 22:57
名前: right (ID: zuIQnuvt)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode

rightです〜。
小説みたよー。
面白そうな小説だねっ。これからが楽しみだーっ!
頑張って!応援してるから!

Re: ___くれないおおかみ___ ( No.3 )
日時: 2010/01/27 22:57
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

ありがとうございます!
がんばります!!

Re: ___くれないおおかみ___ ( No.4 )
日時: 2010/01/28 16:48
名前: 十和 (ID: zCJayB0i)

Episode2;‐抗うことのできない運命‐


「で、今日の依頼は?」

樹にそう話しかける。

「今日は16件・・・だな」

「多いね、一人4件でしょ?」

「今日も夜が遅くなりそうですね・・・」

「人数は少ないんだろ?」 「全部一人だ」

四人の子供達は話し合う。

「なら問題ないな、お互い頑張ろうぜ」

「うん。場所も全部ここから近いしね」

各々、封筒を4つずつ取る。

「ふわぁ・・・。始令も終わりましたし、

 そろそろ食堂で朝ご飯にしませんか・・・?」

「・・・そういえば、晩飯食ってねぇかも」

「なら早く行こうよ!A定食が無くなっちゃう!」

「何ぃ!?それを早く言えよ!!行くぞ!!!」

先程の物騒な雰囲気などぶち壊し、

子供達は猛スピードで走って行った。

      −食堂−

「はあ〜・・・。ギリギリセーフだったね!」

「残り4つって・・・。こりゃ運命だな」

「デザートがグチャグチャですけどね」

「・・・スープも零れてるぞ」

何だかんだ言いながら、朝ご飯を頬張る。

「あら、皆さんおはようございます」

「あ!須臾(しゅゆ)ちゃん!!おはよう!!!」

四人が腰かけているテーブルに、少女が近づく。

瞼が常に、閉じられている少女だ。

「ここ、よろしいですか?」 「どうぞどうぞ」

優雅な仕草で、席に着く。

「皆さん、今日のご予定は?」

「昨日と同じだよ、数は少ないけどね」

「まあ1:10よりマシだろう」

「ですね」 「だな」

「そうですか・・・。お怪我の無いように」

「「「「ありがとう」」」」

定食を食べ終えて、憂、樹の二人は、

用事があるとかで、部屋に戻って行った。

「須臾ちゃんは?今日は何をしてるの?」

「私は、見ての通り、何もできませんので・・・。

 また事務的な仕事を任されています」

眉を少し下げ、弱弱しく笑う。

「須臾はいつも俺達の世話してくれてるだろ?

 何もできないなんてことないさ」

黎がそういうと、明も激しく首を動かした。

「・・・そう、ですか?

 ならこんなに嬉しいことはありません。

 ありがとうございます、黎さん、明さん。

 お二人とも、大好きですよ」

さらりと言ってのける須臾に、照れる黎。

「あー!!!黎、顔真っ赤!!」

「うるせぇ!!」

黎をからかいながら、明は向こうに走っていく。

「・・・ったく、変わらねぇんだから」

黎は明を追いかけようとした。

すると、

「黎さん」 「ん?どうした、須臾」

須臾は、にこりと笑い、言った。

「黎さんと明さんの名前、とても良い名前ですね」

「?そうか?ありがとう」

そう言って、俺走る。

「・・・どうか、神の御加護がありますように」

・・・逃げられない運命へと。


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