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Carrier
日時: 2010/02/21 13:23
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

クリックありがとうございます。 シリアスで少し暗めで歪んだお話にしていきたいです。 どうぞ。

<Characters>

──愛山 優──アイヤマユウ
16歳 精悍な整った顔立ちと黒い短髪から少年のように見える。 運び屋。 淡々とした性格。

──夜巣咲 洋一──ヨスザキヨウイチ
25歳 運び屋の上司。 「ヨッさん」と呼ばれている。 見目麗しい好青年。 優の保護者。

──稲辺 セイゴ──イナベセイゴ
22歳 金髪にサングラスという派手な見た目。 喧嘩が強く、関わろうとする者はごく少数。『捜し人』

──キサト──
12歳 透明な雰囲気の無口少女。 本名にトラウマがある為、『キサト』は姉であるノドリが付けた。
絵を描くことで相手に気持ちを伝える。 会話手段は筆談。

──柏崎 美影──カシワザキミカゲ
18歳 学校には行かず、闇に手を染める青年。 タヒんだような目をしており、ストレスからか髪の色素が抜けて白髪。

──驫木 音羽──トドロキオトワ
20歳 ニート。 藍とは高校時代からの友人。 能天気な性格。

──神授 藍──シンジュアイ
20歳 ニート。 音羽とは高校時代からの友人。
音羽の暴走に日々つき合わされている。

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Re: Carrier ( No.8 )
日時: 2010/02/05 21:04
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

頑張りますです。

Re: Carrier ( No.9 )
日時: 2010/02/05 21:28
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

沖宮ノドリと篠原秀人が出会ったのは、二ヶ月前だと言う。


二ヶ月前、志望校に受かり高校の入学式も終わって晴れ晴れしい学園生活をスタートさせた秀人。

友達もでき、先輩との仲も良好だったが、彼は知らなかった。
自分に向けられた、歪んだ愛の視線を──。

最初はロッカーにラブレターが一通だった。
きちんと名前もあり、クラスも書いていた。
隣のクラスの美少女と噂されている沖宮ノドリ。
大人しそうな清楚な外見とは違い、性格は明るく前向きで男子とも女子とも気軽に話せる存在。

中学は違うし一度も話したことは無いが、ノドリの存在は秀人も充分知っていた。

だからこそ、その彼女が自分に 『好きです。 傍にいさせてください』 なんて今時あまり無い手段で告白してくるなんて驚いたなんてものじゃなかった。
悪戯かとも思ったほど。

で、スルーした。
友達にも誰にも言わず。 本当に自分の事が好きなのか分からなかったからだ。
でも、手紙はちゃんと大切に閉まっておいた。
内心、どこかで期待していたのかもしれない。

沖宮ノドリが自分を本当に好いていてくれたら・・・。

秀人は当時好きな子はいなかったし、ノドリと付き合ってもいいやーと気軽に考える方でもなかった。
慎重に、慎重に。

そして、秀人はノドリの歪んだ愛情を目の当たりにする。



愛してる、そう言われて嬉しくない人はいないだろう。
万国共通で、愛の言葉を聞けば誰だって嬉しいはずだ。
しかしそれは、照れくさくてなかなか言えない。
それが丁度いいからだ。

何回も同じ言葉を言うよりは、ふとした時に心を込めてポツリと言った方がより嬉しい。

でもしかしだけれど彼女の場合は違った。

何回も、何回も、何回も。

会うたび、会うたび、会うたび、

愛してる愛してる愛してる。

ずっとずっとずっと、一緒一緒一緒。

秀人に愛の言葉を投げかけ、メール・電話・手紙・配達、そして更には直接家まで押しかけてきた。
一人暮らしの彼は悩み、悩み、悩み続ける。

どうしたら彼女を止められるか、と。

彼女は永遠に、呪詛の言葉を喋り続けるのだから。

Re: Carrier ( No.10 )
日時: 2010/02/05 23:02
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

「はあ・・・・それで彼女をどこかにやってしまおうと」
「もう我慢ならないんだ・・・・。 どうか、お願いだ。コイツを・・・、ノドリを追放してくれ・・・」

──まぁ、そりゃ気が狂うよな・・・。

少しだけ同情しつつも、迷っていた。
報酬無しで仕事をするほど、『ハイエナ』 はボランティアな組織ではない。
洋一だったら何としてでも断るだろう。
だが優は迷っている。

「・・・・報酬・・・・、あなたは後からキチンと払ってくれるんですよね?」
「ああ! 約束するっ!」
「分かりました。 彼女は僕が責任持って届けます」
「頼む・・・・・・、ここに帰ってこられない場所だ」
「分かりました。 僕の判断でいいんですね?」

力なく頷く秀人を見て、優も軽く頷いた。



秀人が去って───、


優は携帯電話を取り出した。

「あ、僕です。 美影さんですか? ちょっと迎えに来て欲しいんです。 場所は───」




     同時刻  ハイエナ本部にて


「ちょっくら聞きてぇ事があんだが」
「帰れー俺今チョー忙しいのー」

ソファに座り、煙草を吸いながら洋一が必死でリモコンを操っている。
その後ろには、不機嫌そうなセイゴ。

「大体テメーから本部に来るなんざ初めてじゃねェか? 珍しい事もあるもんだなー」
「・・・・・・・つか、お前は何してんだよ。 チャンネル変えては戻し変えては戻し」

洋一が罰の悪そうな顔で、
「・・・・・・お前さ・・・・、アニメの録画の仕方、分かるか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あ?」
セイゴが思わず間抜けな声を出した。

「いや、なんかさっ! 深夜のアニメを優が見たいっつーんだけど、仕事入っちゃってさ! 録画しとかないと怒られるの俺だからさー」
「お前ってホント優に甘いよな」
「そりゃー、あの人の子供だからな」

アニメが始まるまで、あと5分。

「おいおいおいおいっ! ちょっとコレ何? 意味分かんねェんだけど!」
「おい、何やらかしてんだよ。 ちょっと貸してみろっ!」
「やーっだよ! お前何するか分かんねェしっ!」
「何もしねーよっ!」

セイゴがリモコンを奪い取ろうと躍起になる。
洋一もセイゴを突き飛ばし、ボタンを適当に押す。

見事、撃沈した。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、お前は何しに来た」
「ああ、ちょっくら人捜しで心当たりはねェか? っつー事で来てみた。 情報屋の美影はいるか?」
「アイツなら自分の事務所でなんかやってる。 最近会ってねーよ。 あ、優は数日前に会ったって言ってたけどな」

セイゴが洋一から煙草を奪い、ライターで火をつけるた。
煙を吐きながら、遠くを見る。
「俺ぁ、数日前さ・・・・。 妙なガキに会っちまってな」
「ガキだー?」
子供が嫌いな洋一が軽く眉をしかめる。
「ガキは嫌いだ」 「優は別だろ」 「アイツは・・・・・・・ガキだがちゃんと筋通してるよ」

脳裏に優の姿が浮かび、消えた。

「で、だ。 ソイツに俺はなんつーか・・・気を許したっつーか・・・」
「お? 何だ、お前と合う奴が居たんだな、この世に」
「喧嘩売ってんのか?」

これでは埒が明かないと、セイゴは続ける。
「不思議な雰囲気でよ・・・。 何だか消えそうなんだよ。 らしくねェとは思ってんだけどよ・・・。 アイツを見ると、嘘がつけなくなるっつーか」
「女々しいねぇ」

洋一がニヤニヤと笑いながら話を聞いている。
一瞬ムッとしたセイゴだが、洋一の事は昔から知っている為、別に何も言わなかった。

「で、ソイツの名前は何て言うわけ?」
「沖宮ノドリ」
「ノドリだぁ? 変わった名前だなー」
能天気に洋一が淡々と名前についての感想を述べた。
「ソイツを捜すんだが・・・・全く痕跡がねェんだ」

驚いたように洋一が顔を上げ、
「らしくねェな・・・テメーがスランプとは」
「参った・・・。 痕跡がない」
「・・・沖宮ノドミねぇ・・・。 しゃーない。 ちょっくら優に聞いてみるわ」






「はい、もしもし。 あ、ヨッさん。 え、ウチにセイゴさんが来てるんですか? 珍しい・・・。 あ、はい。 え? ノドリ・・・・・・・・、ノドリ? ノドリさんなら・・・・・・・ここにいますけど」

Re: Carrier ( No.11 )
日時: 2010/02/06 08:52
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

携帯電話を切り、優は内心これでいいのかと迷っていた。
まだ中を確認した訳もなく、彼は殺.してないと言っているものの先ほどからまったく袋は動かない。
生きているのかどうかも怪しい。

──まさか、『捜し人』 まで絡んでくるとは・・・。

「で? 何て言ってたわけー、アイツら」
「説明すると長くなります。 というか、少々複雑な人相模様ができているらしくて」
「ふーん。 どうでもいいが、俺を迷惑事に巻き込まないでくれよ」
「あなたはもう裏に片足突っ込んでるでしょうが」

呆れたように優が隣で車を運転している柏崎 美影を見つめた。
年の割には大人びたキレイな顔に、ストレスで抜けた少し青みがかかった白髪の髪。 
タヒんだような、どこか虚ろな感じの目。

「何じっと見てる? あー俺に惚れちゃったかー」
「はい。 惚れてます」
何の躊躇もなく優は答える。
「あなたの生き方に、惚れてます」
「・・・・・・・・・・・・嬉しい事言ってくれるねぇ」

真顔で自分の汚い人生を 「惚れてます」 と言ってくれる少女。
美影にとってこういう存在は貴重だ。
彼は 『裏』 に憧れ、ごくごく平凡に育ったのも関わらず、義務教育を放棄してこの世界にやってきた。
憧れ、だったのかも知れない。

平凡で平和で何ひとつ変わらないこの世界に嫌気がさしていたからかも知れない。

だけど彼は時々後悔もよぎる事がある。
そういう時、優はいつも決まって、後悔を宥めるような事を言ってくれる。
「大事な連れだよ・・・・・・お前は」
「ありがとう」

優が目を閉じて軽く笑う。
優にとっても、こういった存在は大切で、決して失くしたくない物だった。

「でも、本当に」 


窓の割れる音。



優が振り返る。 そこには一人の少女がいた。
先ほどまでいなかったその少女は、持っていたナイフで思い切り車の窓ガラスを叩き割った。

袋が破れているのを見て、瞬時に優が判断する。
「美影さん、きちんと運転してくださいねっ」
「おーう」
軽い口調で美影は答え、シートベルトを締める。

──セイゴさんも絡んでいるし・・・、殺.すわけにはいかないか。

ポケットからナイフを取り出し、少女──沖宮ノドリの足を狙う。
ノドリも冷静で、車の鍵を開けてドアを思い切り蹴飛ばす。
「っ」 それで定めていた狙いがぶれ、優は座席から身を乗り出し後ろに移る。

しかし、少女の方が早かった。

「ばかっ! 今ここで飛び出したら・・・・・・っ!」
怒鳴りながら、優は少女を止めようと手を伸ばす。
今ここで飛び出したら、どんな怪我をするか分からない。

しかし少女は───

「愛してるわ、秀人」

まったく別のここに居ない人間に愛を告げ───

車から飛び出した。

Re: Carrier ( No.12 )
日時: 2010/02/06 09:32
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

イメソン決まりましたー


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