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Carrier
日時: 2010/02/21 13:23
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

クリックありがとうございます。 シリアスで少し暗めで歪んだお話にしていきたいです。 どうぞ。

<Characters>

──愛山 優──アイヤマユウ
16歳 精悍な整った顔立ちと黒い短髪から少年のように見える。 運び屋。 淡々とした性格。

──夜巣咲 洋一──ヨスザキヨウイチ
25歳 運び屋の上司。 「ヨッさん」と呼ばれている。 見目麗しい好青年。 優の保護者。

──稲辺 セイゴ──イナベセイゴ
22歳 金髪にサングラスという派手な見た目。 喧嘩が強く、関わろうとする者はごく少数。『捜し人』

──キサト──
12歳 透明な雰囲気の無口少女。 本名にトラウマがある為、『キサト』は姉であるノドリが付けた。
絵を描くことで相手に気持ちを伝える。 会話手段は筆談。

──柏崎 美影──カシワザキミカゲ
18歳 学校には行かず、闇に手を染める青年。 タヒんだような目をしており、ストレスからか髪の色素が抜けて白髪。

──驫木 音羽──トドロキオトワ
20歳 ニート。 藍とは高校時代からの友人。 能天気な性格。

──神授 藍──シンジュアイ
20歳 ニート。 音羽とは高校時代からの友人。
音羽の暴走に日々つき合わされている。

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Re: Carrier ( No.3 )
日時: 2010/02/05 16:36
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

「おいおい何やってんだ」
「ヨッさん。 困ってるんです。 さっきから覗いてないで助けてくださいよ」

ヨッさんと呼ばれた、見目麗しい美青年が笑いながら姿を現す。
年齢は二十代ごろで、艶やかな黒髪にキレイな顔立ちをしている。 女性からモテそうな顔つきで、軽く女は数人いますーと言われても納得してしまうほどの好青年だった。

「ヨッさん・・・・・、まさか夜巣咲 洋一さんですか?」
愛称を聞いて、男達が反応する。
洋一は不思議そうな顔で男達を見下ろした。
「あ、あの・・・・助けてくださいっ! お願いです、お願いですから我々を、」

男の発言が途中で止まる。
今、自分の目の前に突きつけられているのは銃口だと気づくには、しばらく時間が止まった。

「な、な、なにを」
「ゴタゴタうっさいよー、オッサン。 ンなの俺らが首つっこむタチじゃないっしょ? 自業自得だろ?違うか? ンなの俺らがどーのこーのしてたらこっちの身が持たねェよ」

遠慮も容赦もなく洋一が続ける。

「大体俺にとっちゃお前らなんてどーでもいい商売道具なんだよ。 ンなのに金がないだ? 笑わせんなよ。 こっちだって命賭けてんだからお前らだってタマ張って来いや」

外見に似合わない口調で相手を罵声し、洋一が長く息を吐いた。

「とっと失せねぇと、頭ぶっとぶぜ?」





「何も、あそこまでしなくても」
「阿呆。 だからお前はツメが甘ぇんだよ」

事務所から追い出された男達に少しだけ同情しながら、優が見逃したアニメの動画を探している。
「つくづく思うんだけどさー・・・・。 優はアニメのどこにそんなにハマってるの?」
「全て」

優が慣れた手つきでキーボードを操る音を聞きながら、洋一が両手を軽く挙げる。
「変なトコで人間らしいんだからねぇ」
「で、今度は何の仕事ですか?」
パソコンに向いたまま、優が訊ねる。

シリアスな空気が二人の間を流れた。

「いやーコレがまた変な仕事でさ」
「だから、何ですか」
「・・・・・・・・あるものを、送って欲しいんだと」
「あるもの?」

首を傾げながら優が振り向く。
洋一が書類を見ながら、
「俺もそれが何か知らねェし・・・・・・、第一それは知っちゃならない。 個人情報だしな。 まーでも報酬の金額からかなりヤバめのモンだと想像はつく・・・」

「どこに、持って行けばいいんですか?」
視線をパソコンの画面に戻し、質問する。
「それがさ、ごくごく平凡の高校生の自宅」
「???」

Re: Carrier ( No.4 )
日時: 2010/02/05 17:45
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

    同時刻  とある病院で


意味が分からなくて、稲辺 セイゴはただじっとその子を見る。

その子はガラス玉みたいな無表情で、絵を描いていた。
透明な雰囲気と、どこか近寄りがたい感じの女の子。
顔にはまだ幼さがあり、長く伸ばした黒髪がキレイだった。
どこか、虚ろな茶色の瞳は真っ直ぐに画用紙に向かっている。

「・・・・アンタが、依頼人か?」

なるべく優しい声色で話すように努力しようとした。
セイゴは見た目からして怖いイメージが先走りして、どうしても人に話しかけると怖がられてしまう。
勿論人との交流にセイゴは何も感じていなかったから傷つく事は無い。

「教えて欲しいんだが。 何を依頼するんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

長い沈黙。 少女は絵を描き続けている。
普段ならセイゴは血管ぶちぎれで椅子か何かをぶん投げるのだが、何故か彼女を見るとその気力も失せていた。

しばらくして、少女はセイゴに一枚の絵を見せた。
先ほどから自分が描いていた絵なのだが、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん」
セイゴはその絵をじっと見た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・これが、依頼か?」
無言でコクリと頷く少女。

絵には、一人の美しい少女が描かれていた。
年は十代ごろ。 長い黒髪で笑っていた。
かなりの腕前でデッサン風に描けている。

「コイツを『捜して』ほしいんだな?」
再び、コクリと少女は頷く、

稲辺 セイゴは『捜し人』だ。 誘拐、拉致、行方不明などの人間を片っ端から調べ、見つける。
時にそれはタヒ体な事もあるが・・・・・・。

昨日セイゴの事務所の電話が鳴り、この病院の院長がどうしてもセイゴに会いたいと願う人間がいると連絡してきた。
その人間の外見や性格を聞いていくうち、セイゴの中に興味が生まれたのだ。

──ンなガキが大量の報酬を払ってまで誰を捜してんだ?

その子供は、精神科で入院していた。
誰とも話さず、表情もなく、ただ絵を描いている。

「コイツは、誰だ?」

セイゴが訊ねると、今度は小さなメモ帳を取り出して、
『姉ちゃん』
とキレイな字で書き記した。
「そうか・・・・・・姉ちゃんか」

──家族、なんて俺は知らんが。

「分かった。 ソイツの特徴とか、名前とか教えてくれよ。 どこどこの高校生だーとか」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

少女がメモ帳に手を伸ばそうとすると、セイゴがそっとその手を遮る。
「?」
不思議そうな表情の少女に、セイゴは問いかける。

「その前に、アンタの名前を教えてくれ」

優しく、優しく。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・キサト」

小さく小さく、少女が自分の名前を答えた。
それまでに大分時間が経ったが、セイゴにとってそれは僅かな時の流れとしか思えなかった。

Re: Carrier ( No.5 )
日時: 2010/02/05 17:58
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

「あの子は何の病気だ?」
「ああ、沖宮さんね」
「オキミヤ? 普通の苗字だな」
「彼女、本名を呼ばれると物凄く怒る・・・・・・いや、壊れるというか・・・・・・」
「あ?」

「いや、何というか・・・。 発狂するんです。 過去にあった事件ご存知ですか? 一家全員監禁事件」
「・・・・・・・・あー、アレだろ? 5年前に一家全員が何者かによって監禁されたっつーやつ」
「あの被害者が、沖宮さんなんです」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「結局犯人は見つかりませんでしたがね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・生き残ったのは?」
「沖宮さんと、彼女のお姉さんです。 当時はご両親と弟さんとで住んでいたみたいなんですが、姉妹二人が奇跡的に生還した、と」

セイゴが無言になる。

「ショックが大きくて、記憶がね。 途切れ途切れで犯人の顔を覚えてないらしいんですよ。 その際に沖宮さんがなんらかの形で本名に対して過剰にパニックになってしまったらしくて」

5年前の、犯人が未だに捕まっていない事件。

セイゴは同情するような人間じゃない。
不幸な人間を見て、可哀相などとは思わない。
そういった人間だ。

だが、キサトの事が気になる。

自分でも何故だか分からなかったが。

「沖宮さんは・・・・・・お姉さんを捜してくれと依頼されたそうですね」

院長に訊ねられたが、セイゴはそれは個人情報だと教えなかった。
しかし院長はどこか確信したように、
「仲のいい姉妹だったようですから・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だろうな」

Re: Carrier ( No.6 )
日時: 2010/02/05 18:13
名前: 朝倉疾風 (ID: ikrpTGuK)

        Chapter 2
      ──繋がる螺旋──

「あなたが依頼人の篠原・・・・・・」
「秀人」
「あ、そうです。 秀人さんですか?」

一瞬漢字が読めなかった優だが、依頼人である男子学生・篠原 秀人に助け舟を出された。
「で、依頼の物は? わざわざこんな夜中に、しかも路地裏でそれを渡すって事はかなりのブツだと思うんですが」

優を無視して、秀人が傍に置いてあった大きな袋を指差す。
「・・・・・・・・・・・・・アレですか」
「アレだ。 頼む。 どこか遠くにやってくれ。 場所は問わない」
「遠くって・・・・・・曖昧ですね」

優が袋を持ち上げようとするが、重い。
「これ、車で運ばなきゃなー」
「もう、いいだろ。 もう、もう、うんざりだ」
「何があったか知りませんが、報酬を先に渡してください」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

秀人の表情が硬直する。
多少の不審さをかもし出し、優が手を差し出す。
「報酬、ですよ。 お金です。 貰わないとあの人五月蝿いからなー・・・。 あ、今のは独り言です」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
優が袋を離し、秀人に近寄る。

「報酬は、無いんですか?」
「あるっ! あるが待ってくれっ! 俺はっ、まだ学生で・・・・・・っ!」
「待ってくれ待ってくれと懇願して待たなかった人間を、僕は腐るほど見ています」
「頼むっ! 今は用意できないっ!」

半ば呆れ気味に優がため息をついた。
「それじゃ困ります。 こちらだって裏と繋がっていて、いつ命を盗られるかビクビクしてるんですから」
「それは・・・・・、こっちだって一緒だっ!」
秀人が怒鳴り、開き直ったみたいに袋を蹴り飛ばした。

「コイツのせいでっ! 俺はっ! 俺はっ! 人生を狂わされたようなモンだっ! ちくしょっ!」
優の目が、怪しく光る。
「コイツ・・・・・・・。 そのブツは、『人間』ですか」
「っ!」
確信したように優が笑う。 口だけ。
不気味な微笑みに、秀人の背筋が凍りついた。

「なるほど」
「違・・・・・、勘違いすんなっ!」
「焦りで震えていますよ。 誰にも言いませんからご安心を」
「・・・・・・・・・・・・・ッ」

優が蹴り飛ばされた袋をつつく。
「で、どうするんですか? 報酬を払って依頼するのか、報酬は払わずにタヒ体をお持ち帰りするのか」
「し、したい!!?」
声が裏返っている秀人を見て、優が驚いたように目を丸くした。

「あれ・・・・・・タヒんでないんですか?」
「殺.してないっ!」
「へぇ・・・・・・。 生きたままねぇ。 残念ですが、僕はプライバシーを守るので、ブツは見れませんが」
「見なくていいっ!」

──で、どうすんだろう。 この人。

「報酬が用意できないのなら、僕はこれで帰ります」
「・・・・・・・っ、待ってくれ・・・・・・。 本当に耐えられないんだ」
「はあ。 そうですか」
「コイツは・・・・・・、ずっとずっと俺に語りかけてくるんだ・・・・・」

泣き出しそうな秀人に、優は呆れ顔。 
「何を語りかけてくるんですか? 御伽噺?」
「愛だよ」
「────は???」
間抜けな声で優が聞き返した。

「コイツは・・・・・・沖宮 ノドリは俺に愛を語りかけてくるんだよ・・・・・・・」

Re: Carrier ( No.7 )
日時: 2010/02/05 20:50
名前: 嵐猫 (ID: H/64igmC)

新作ですね♪
歪んだお話ですか。大好きです!!←
頑張って下さい。


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