ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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ヒトノカオ、コエ、ココロ。
日時: 2010/02/25 19:33
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

何の変哲もない、ただの都会の方にある町。


そこで起きた、一つの殺人事件。


母と息子が口論になり、カッとなった息子が母親をナイフで刺し殺したのだという。


これはどこで起こってもおかしくない、ただの殺人事件。


——の、はずだったが。



『被告人——本田雷歌——は、何か新種の病気にかかっているらしい。しかも、「大人の」顔と声が「認識できない」らしい』



+ヒトノカオ、コエ、ココロ。+



それが分かってからは、警察・検察・裁判所は大騒ぎになった。

『どうやって判決を下せばいいんだ?』

『というか、どういう病気なんだ?』

誰もが疑問を持ち始め、パニックになりかけた時。


『「レインカスミ研究所兼診療所」に依頼するのはどうですか?』


誰かがそんな発言をした瞬間、周りの空気は凍りついた。

『確かに、いい案だが……』

『「あの」機関に頼るのはいかがなものかと……』

周りが再びざわついていく。すると。


「ウチはいつでも受け付けてますよー」


緊迫した空気に似合わない声が響いた。


続く

応援よろしくお願いします。

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Re: ヒトノカオ、コエ、ココロ。 ( No.9 )
日時: 2010/04/02 15:24
名前: アキラ (ID: BLbMqcR3)

実験で簡単に殺されるなんて……。
酷い話です(-"-)ヌヌヌ…

希望が生まれたのに、一体どうしたんでしょう!?
続き、お願いします(#^.^#)

Re: ヒトノカオ、コエ、ココロ。 ( No.10 )
日時: 2010/04/05 11:49
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

「霧江ちゃん、これから君は雷歌くんと一緒にこの檻で過ごしてもらう。いいね?」

「あの、私から抗体を取るとかしないんですか?」

「どうやら君の抗体は体外に出ると死ぬらしい。感染者が直接触れないとダメなんだ」

「じゃあ、村上は光村が連れて行った方がいいんじゃねぇか?」

本田の意見に、村上も頷いて自分も賛成であることを示す。

だが。

「それはしないよ。これからも感染者には僕たちが作ったワクチンを与え続ける」

光村は首を横に振って本田の意見を却下した。

「何ですか、それ! 私の友達や他の人に『死ね』って言ってるんですか!?」

村上は格子を掴んで訴える。すると、光村は呆れたように溜息を吐き、村上と視線を合わせた。


「その通りだよ。他の人には君の存在を知らせないし、ワクチンの実験台になってもらう」


半ば吐き捨てるように光村が言うと、村上は泣き崩れて本田にしがみついた。

「……何故殺す?」

本田は村上の頭を撫でて宥めながら光村に視線を合わせて静かに聞いた。

「『復讐』のためだよ。『世間の大人』に対する、ね。これ以上は今は教えないよ」

ドアノブに手をかけて部屋を出ようとする光村を、村上が小さな声で呼び止めた。

「何?」

「患者に……、嘘は吐かないんじゃっ、なかったんですか……?」

「ああ、それね」

光村はドアノブから手を離し、村上に向かって歩いた。そして、檻の隙間から腕を入れて村上の顔を自分の方に向けさせる。


「それも嘘だよ」


村上の目が見開いた。後ろで聞いていた本田も目を丸くしている。

「君達には分からないよ。僕が受けた屈辱は、ね」

それだけ言い残すと光村は部屋から出ていった。


続く

うわー、またコメントが来たー!!(騒ぎすぎ)
希望が生まれたのにそうはいかなかったとは、こういうことでした!
コメントありがとうございます!
頑張って更新していくので、これからも応援してくださーい!!

Re: ヒトノカオ、コエ、ココロ。 ( No.11 )
日時: 2010/04/05 13:00
名前: スペシャル ◆XHKDIsPEFA (ID: 3L0NyJ0C)

おもしろいですねぇ
更新、がんばってください!!

Re: ヒトノカオ、コエ、ココロ。 ( No.12 )
日時: 2010/04/18 18:38
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

それからしばらく経っても、村上の落ち込み様は酷く、道具さえ渡せば自殺でもしそうな雰囲気だった。

そんな村上が気になり、本田はたまたま食事を運びに来た光村の部下に話しかけることにした。

「おい、お前」

「どうかしましたか」

心配そうな顔も、嘲笑いもせずに部下は聞き返してきた。その様子から、二人なんてどうでもいい存在である、ということが窺えた。

「たまには外を見させろ。最初の感染者と抗体保持者が退屈すぎて死にました、何て洒落になんねーだろ」

「いいですよ」

あまりにもあっさりと許可し、部下は鍵を本田に投げ渡した。

「……何故あっさり渡す? 罠か?」

本田は疑問をぶつけ、鍵をまじまじと見た。

「やだなぁ、罠じゃありませんよ。……ただ、外を見ても気分転換できるかどうかは分かりませんよ」

「あっそ」

聞き終えると、本田は素早く鍵を開け、さっさと村上の手を引いて部屋を出ていった。

「外を見ても、絶望するだけなんですけどね……」

部下の声は二人に届かず、部屋中に響くだけだった。


二人は、『窓在部屋』と貼り紙のしてある部屋の前にいた。

「入るぞ、村上」

「……うん」

ゆっくりとドアを開け、中に入る。すると。

パンパン、パパパン!

乾いた音が響き、カラフルな細長い紙が二人に降り注がれた。

「これ……、クラッカー?」

「ご名答だよ、霧江ちゃん」

よほどの数を使ったのか、異様に濃い煙の向こうから声がした。

「雷歌くんも一緒なんだね」

煙が晴れ、その人物が少しずつ見えてくる。

まず目についたのはハーフアップにされた癖のある金髪。フレームレスの眼鏡、薄汚れた白衣、優しげな碧眼も見えた。

「み、光村……さん」


続く

わーい、またまたコメントがー!!(落ち着け)
これからも応援してくださーい!

Re: ヒトノカオ、コエ、ココロ。 ( No.13 )
日時: 2010/04/24 18:23
名前: 転がるえんぴつ (ID: hKAKjiZ3)

「外が見たいのかい?」

笑顔を崩さずに光村は聞いてきた。

光村の背後にある大きな窓には大きな漆黒のカーテンがかかっていた。

「その前に、雷歌くんに渡したい物があるんだ。受け取らないと、外は見せないよ」

まるでからかうような言い方。だが、油断できずに本田は村上の前に庇うように進む。

「そんな警戒しなくてもいいよ。ほら、これだよ」

苦笑して、光村は白い容器を本田に投げ渡した。

「これ……、日焼け止め?」

「うん。今日は晴れてるからね、アルビノの君には辛いかな、って思って」

「……有り難く受け取っておく」

光村に礼を言いつつ、睨み付けることも舌打ちを打つことも忘れずにする。


「さて、そろそろ塗り終わったよね。カーテン開けていい?」

光村は嬉しそうにカーテンに手をかける。

「待て。何故そんなに嬉しそうなんだ?」

「あ、聞きたい? てっきり部下がもう言ったのかと思ってたけど」

一旦カーテンから手を離し、光村は声を弾ませる。この時に見せた笑顔は、心からのそれのように見えた。


「外には、研究所以上の絶望があるからねっ」


白衣の裾を翻し、勢いよくカーテンを開けた。カーテンの隙間から差し込む日光が光村の金髪に当たり、キラキラと輝いている。

その光景『だけ』を見れば、光村を天使の化身だと思う者も出るだろう。それくらい光村は美しかった。

だが、外の光景はそれら全てを吹き飛ばす程の衝撃を本田と村上に与えた。

「何だ……、これ……」

いつもあまり感情を表に出さない本田でさえ、動揺を隠さずにはいられず、窓枠に置いた手がカタカタと震えている。

村上に至っては、意識を留めておくことすら難しく、本田がとっさに腕を掴まなければそのまま意識を手放していただろう。

「ね? 絶望したでしょ?」

外の光景を目の当たりにしても、光村は平然としていた。それどころか、二人の反応を楽しむかのように顔を覗き込んでくる。

「え、声出ないの? じゃあ僕が言っていこうか。あの煙を上げてるビルは……、大企業の本社かな? あはは、窓ガラス全部割れてるし、ビルも大きな穴だらけ。ぐっちゃぐちゃだねー」

先程とは比べ物にならない程の笑顔で、光村は色々な所を指差す。

「あの道、人間の死体が敷き詰めてあるみたいだねぇ。その上を……、親子かな? 二人の人間が歩いてるね。ああ、瓦礫の山が上から落ちてくるね。親が子供を突き飛ばして、自分だけ助かっちゃったよ。ねぇ、知ってる? あの人って親バカで有名だったんだよ。自分の命が危険に晒されているとなると、平気で子供も見捨てるんだねー。

あのビルの屋上、たくさんの人がいるね。あのビルは確か銀行だから、そこの銀行員かな? あ、一人飛び降りたよ。次々飛び降りてく、集団自殺かな?

ねぇ、研究所の入り口辺りを見てごらん。一人のサラリーマンが見えるでしょ? あの人、何日か前に自分の娘をここに売ったんだよー。やっぱり連れ戻したくなったのかなー? でも残念、その子はもう『ノーボフェイス』に感染してるよ。ああ、ほら……、やっぱり殺されちゃった。裏切った罰だよねー」

言えば言う程、光村の表情は明るくなっていく。そこまで言ったところで、やっと声を出せるようになった本田が光村に掴みかかった。

「これ全部、お前の指示か!?」

その叫びを聞いた途端、光村の笑みが完全に消え、代わりに醒めた表情が浮かんだ。

「『当たり前』でしょ? 僕は『大人』に『復讐』したいんだ。これでもまだ足りないくらいだよ」

「だったら、何で関係ないはずの私達『子供』まで傷付けるんですか!?」

本田の影から顔を出して村上が怒鳴る。それを聞いて光村は呆れたように大きな溜息を一つ吐いた。

「『子供』を傷付けることは間接的に『大人』を傷付けることに繋がるからねぇ」

光村は狂ったように嗤った。


「それより君達。これで『終わり』だと思ってるのかい? 研究所に一番近いビルの屋上を見なよ」


二人はその言葉に弾かれるように屋上に視線を移し——村上が絶句した。

村上のすぐ後ろに光村は回り込み、彼女の両肩に手を乗せた。

「霧江ちゃん、屋上に女子高生が見えるよね? あの子と君の関係は?」

「だ、い……親友、です」

「そう、正解。どんな大親友なの?」

静かに、言い聞かせるように、光村は村上に語りかける。

「転校してきた私に……、最初から優しく接してくれた……。すごく、優しくて、一生仲良くしたい、って思った……」

光村は満足そうに笑い、村上を自分の方へと向き直させる。


「そう、大事な大親友だよ。でも、その子とも今日で『お別れ』だね」


続く

放置&変なところで切ってすみません。
あと光村の台詞が長い&狂っててすみません。
何か今回謝罪してばっかだ^^;


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